「どうしてあの人はこうなの!」と悩んだときの処方箋

人間関係に悩み、
「相手が変わってくれれば…」
と願うことはあるでしょう。

しかし残念ながら、他人を
自分の思い通りに変えることは、
ほぼ不可能
と言ってもよいでしょう。

それでも、
相手との関係性を見直すことで、
悩みを軽減することは可能です。

この記事では、
うまくいかない相手との関係を変え、
心の負担を減らすヒントを
探ってみます。

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他人は変えられないという現実

人間関係でストレスを感じるとき、
私たちの多くは
「相手が〇〇してくれればいいのに…」と、
つい相手の変化を期待してしまいます。

そして、ときには相手を
無理に変えようとすることも
あるでしょう。

しかし、そのような試みは、
たいてい失敗に終わります。

なぜなら、
他人を自分の思い通りに
変えることはできないからです。

実際、「過去と他人は変えられない」
という言葉があるように、
誰かに「変わってほしい」と願っても、
人は変わりません。

変化が起きるのは、
本人が「変わりたい」
と心から思ったときだけです。

つまり、こちらから働きかけて、
相手の性格や考え方、
価値観を変えようとすることには、
そもそも無理があります。

そのため、相手を
自分の理想通りに変えようと
努力を重ねても、結局は
自分の大切な時間やエネルギーを
浪費するだけでしょう。

そして最後には、成果も得られず、
自分自身が
疲れ果ててしまうかもしれません。

それだけでなく、
こちらの強引なアプローチによって、
かえって相手との関係が
悪化するおそれもあります。

「他人は変えられない」
という現実を受け入れ、
相手を無理に変えようとすることは
避けたほうが無難です。

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関係を変えるというアプローチ

では、相手に不満があるとき、
私たちはただ
我慢するしかないのでしょうか?

そんなときこそ、
発想を少し変えてみることが
役立ちます。

相手そのものを
直接変えることはできなくても、
自分の工夫次第で
「相手との関係」を
変えることは可能です。

たとえば、
自分の接し方や伝え方を変えることで、
相手の反応が変わり、
その結果として
関係がよい方向へと
変化することはよくあります。

実際、他人を
直接変えることはできなくても、
自らが変化することで、
相手との関係性に変化が生じ、
「相手が変わったように」
感じられることもあるのです。

つまり、こちらのアプローチ次第で、
相手の態度や言動が変わり、
まるで相手そのものが
変わったかのように
見えることがあるということです。

大切なのは、
自分にコントロールできる部分に
目を向けることです。

多くの人間関係の悩みでは、
相手を変えようとするあまり、
自分自身の言動や関わり方を
見直す余裕を失ってしまいがちです。

だからこそ、
一度立ち止まって考えてみましょう。

「相手にどう変わってほしいか」
ではなく、
「自分は相手と
どんな関係を築きたいのか? 
そして、そのために
自分にできることは何か?」を。

相手への期待を一旦手放し、
こちらから関係を変えるための
小さな試みを
始めてみるとよいでしょう。

このように
視点を少し変えることで、
あなた自身の態度や
コミュニケーションが変化し、
その変化が相手にも伝わって、
少しずつ関係が変わっていくことは
決して珍しくありません。

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無理のない小さな変化を積み重ねよう!

とはいえ、
関係を改善したいからといって、
いきなり劇的な変化を試みるのは
現実的ではありません。

大切なのは、
無理のない範囲でできる
小さな変化を、
少しずつ積み重ねていくことです。

人は急には変われません。

だからこそ、今できることから
一歩ずつ試していく姿勢が
必要なのです。

ファミリー心理カウンセラーの吉岡さんも、
「人は急には変わらない。だからこそ、
環境や考え方、物の見方を少し変えて、
少しあきらめて、少し手放し、
受容の幅を広げていく。
そうした日々の積み重ねによって、
少しずつ歩み寄れるようになる」
と述べています。

焦らず、コツコツと、
コミュニケーションの取り方や
リアクションを少しずつ変えてみることで、
関係性は時間をかけて、
ゆっくりと改善していくでしょう。

たとえば、これまで
ほとんど会話がなかった相手には、
まず「おはよう」「こんにちは」といった
挨拶から始めてみてもよいのです。

これも立派な一歩です。

小さな変化であっても、
積み重ねていけば、
関係に少しずつ
あたたかさが生まれてくるものです。

以前、ある人が「ほんの少し
話しかける回数を増やしただけで、
人間関係が信じられないほどよくなった」
という体験を話してくれました。

このように、
一度に大きく変えようとするのではなく、
今の自分に無理なくできることから
一つひとつ実践していくことが大切です。

それを続けていけば、
気づいたときには、
相手との関係が驚くほど
スムーズになっているかもしれません。

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家事分担の悩みを小さな工夫で乗り越える

ここで、夫婦間の
具体的な例を見てみましょう。

共働きのAさん(妻)と
Bさん(夫)は、
家事の分担をめぐって
対立していました。

毎日仕事で疲れて帰宅する中、
Aさんばかりが料理や掃除、
子どもの世話までこなしており、
Bさんは
ほとんど家事に関わっていません。

Aさんは「どうして
私ばかり大変な思いをするの?」
と不満を漏らし、Bさんに
文句ばかりをぶつけていました。

しかしBさんは
「仕事で疲れているのに
責めないでほしい」と防御的になり、
話し合いは平行線のままでした。

Aさんは「夫を変えなければ、
この状況はよくならない」
と感じて苛立っていたのです。

ところが、あるとき
Aさんは発想を転換します。

「夫そのものを変える」のではなく、
「夫との関係のあり方」を変えてみよう
と思い立ったのです。

まず、Bさんに対して
責める口調で要求するのをやめ、
落ち着いたタイミングで
自分の気持ちを伝えるよう
心がけました。

「私も仕事でくたくたで、
あなたの助けが少しでもあると
本当に助かるの」と、
自分がどれほど疲れているか、
そして助けてもらえたらうれしい
という気持ちを、
素直に伝えてみたのです。

また、要求は一度にたくさん出さず、
まずは無理のない範囲で
できそうなことを一つだけ
頼むようにしました。

たとえば、「今日疲れているから、
ごめんね、
ゴミ出しだけお願いできるかな?」と、
具体的に一つだけ
お願いしてみたのです。

そして、Bさんが
それをしてくれたときには、
「助かったよ、ありがとう」と、
感謝の言葉を忘れませんでした。

こうした小さな工夫を
積み重ねるうちに、Bさんにも
少しずつ変化が
見られるようになりました。

最初は渋々だったゴミ出しも、
回を重ねるうちに習慣になり、
やがてBさん自ら
「他に何か手伝おうか?」と
声をかけてくれる日も出てきたのです。

実際、ある調査でも
「妻が家事をしている間に
夫が何もしないでいると、
妻は強い不満を感じるが、
夫が自分から家事をしようとする姿勢を
見せるだけでも、
妻のストレスが軽減される」
ことがわかっています。

この夫婦の場合も、Bさんが
少しずつ家事を
してくれるようになり、
Aさんの精神的な負担は
かなり軽くなりました。

Aさんも、
「相手に不満を言う」のではなく、
「できないことは素直に頼る」
という姿勢に変えていきました。

その結果、2人のあいだには
以前より協力的な空気が生まれ、
家事分担をめぐるピリピリした雰囲気は
少しずつ和らいでいったのです。

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相手のやり方を尊重する

また、AさんはBさんに
細かく指示を出すのではなく、
いったん任せた部分については、
多少やり方が違っても
口を出さずに見守るようにしました。

すると、Bさんも自分なりに
工夫しながら
責任を持って取り組むようになり、
家事全体への当事者意識が
次第に高まっていったのです。

もちろん、Bさんが急に
別人のように家庭的な夫へと
生まれ変わったわけではありません。

それでも、
Aさんが接し方や頼み方を工夫し、
小さなステップを積み重ねたことで、
「家事をまったく手伝わない夫と、
不満を抱え込む妻」という関係性には、
変化の兆しが見え始めました。

今では、Aさんが一人で抱え込まず、
Bさんに遠慮なく頼れる場面も
増えてきました。

Bさんもまた、「自分にも
家のことを担う役割があるんだ」
という自覚を持ちはじめています。

相手を無理に変えようとしなくても、
自分の関わり方に
小さな変化を積み重ねていくことで、
やがて関係そのものが変わり、
お互いの意識にも
少しずつ変化が生まれることがあるのです。

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愚痴ばかりの関係から抜け出すには

パートナーから毎日のように、
仕事や人間関係の愚痴を聞かされ、
自分ばかりが一方的に
聞き役になっている……。

そんな関係に、
疲れてしまうこともあるでしょう。

こうした状況で
「相手を変えてやめさせよう」
と無理に頑張っても、
かえって口論になり、
相手はストレスのはけ口を失って、
関係が悪化してしまうおそれもあります。

こんなときも、やはり
小さな働きかけによって、
関係のパターンを変えることは可能です。

たとえば、
相手が落ち着いているタイミングで、
「あなたの気持ちは分かるし
支えたいけれど、
毎日愚痴を聞いていると
私もつらくなってしまう」と、
自分の正直な気持ちを
そっと伝えてみましょう。

そして、
愚痴を少しだけ聞いたあとで、
「お互い楽しく過ごす時間も持ちたいから、
一緒にテレビでも見ない?」などと、
代わりになる提案を
してみるのもひとつの方法です。

ポイントは、
相手の気持ちそのものを
否定しないことです。

「愚痴を言うな」と責めるのではなく、
「あなたの話を
理解したいと思っているけれど、
自分も明るい話題がほしい」
というスタンスで伝えることで、
相手も受け入れやすくなるでしょう。

実際、小さな提案を重ねるうちに、
相手も少しずつ
自分の愚痴の頻度に気づき、
会話の内容に
気を配るようになるかもしれません。

あるいは、愚痴をこぼす代わりに、
一緒にリラックスできる別の活動
(散歩をする、映画に行くなど)
を取り入れることで、
ネガティブなやり取りのループから
抜け出せる可能性もあります。

大切なのは、ここでも
相手にいきなり
完璧を求めないことです。

愚痴を一切言わない人に
変えるのは難しくても、
自分のアプローチ次第で、
「愚痴を言う人と、
それをただ聞くだけの人」という関係は、
少しずつ変えていくことができるのです。

そして、やがては、
会話の雰囲気や内容も、
以前より前向きなものへと
変化していくでしょう。

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おわりに

この記事では、
相手に不満を感じて悩んだとき、
どうすればその悩みを
軽減できるのかについて
考えてきました。

相手そのものを
変えることはできなくても、
「相手との関係」
を変えることは可能です。

そのためには、
まず自分にできる小さな変化を、
少しずつ積み重ねていくことが大切です。

そうすることで、徐々に
関係性を改善していけるでしょう。

「相手が変わってくれない」
と感じていた問題も、
こちらからの働きかけ方を
工夫することで、
解決の糸口が見えてくることもあります。

相手を変えることばかりに
意識が向いていたときには
気づけなかった道が、
自分の態度や接し方を変えることで
開けてくるのです。

大切なのは、
完璧を目指すのではなく、
「今の自分にできること」
から始めること。

そして、
小さな変化が起きたときには、
その積み重ねを信じて
続けていきましょう。

人間関係は不思議なもので、
一方が変わることで、
もう一方にも
変化が生まれることが多いです。

「自分が変われば相手も変わる」
という言葉は、
まさにその通りだと思います。

関係性は常に相互の作用で
成り立っているからこそ、
こちらが前向きな変化を起こせば、
相手もそれに応えてくれる可能性が
高まるのです。

たとえ相手の性格や習慣そのものを
変えることは難しくても、
「相手との関係」は、
あなたの手で
変えていくことができます。

小さな一歩を重ねながら、
ぜひ前向きな関係改善を
目指してみてください。

きっと、
これまでとは違う景色が
見えてくることでしょう。