苦情を述べることは、
一般的には
あまり好ましいとされません。
しかし、特定の場合には、
苦情を述べることが
適切な場面もあります。
今回のテーマは、
積極的に言うべき苦情と避けるべき苦情
についてです。
同じ苦情でも、
良い苦情と悪い苦情があります。
では、
良い苦情と悪い苦情の違いは
何でしょうか。
結論を先に述べると、
良い苦情とは、その結果として
自分と相手の双方が
良い方向に向かうための
建設的なものです。
一方で、避けるべき苦情は、
言ったところで
状況が改善されないばかりか、
相手を不快にさせるだけのものです。
具体例を挙げて
詳しく説明しましょう。
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以前、カフェでランチしたときの
出来事です。
お店のスペシャルメニューである
「フィッシュ・アンド・チップス」
を注文しました。
きつね色にきれいに揚がったお魚が、
テーブルに運ばれてきた時、
私の心は躍りました。
「美味しそうなお魚フライだ!」
と一口噛みしめ、
「ああ、これは美味しい!」
と感激しました。
しかし、
二口目や三口目に進むうちに、
口の中に違和感を覚えました。
魚の表面はきれいに焼けていますが、
芯の部分がまだ冷凍状態です!
瞬く間に
テンションが下がりました。
すぐさまお店の人を呼び、
その事情を伝え、
お魚を再度調理してもらうよう
お願いしました。
こういったケースでは、
遠慮せずに
積極的に苦情を伝えるべきです。
その理由は、お金を支払って
何らかのサービスを受ける際、
お客の立場としては、ある程度の水準を
期待するのが当然だからです。
安全な食事をすることは、
お客の当然の権利だと言えます。
もしもこの食事が原因で
私が食中毒になったなら、
店の評判に悪影響を及ぼす可能性も
あるでしょう。
こうした事態を未然に防ぐためにも、
私が苦情を述べることは
悪いことではありません。
さらに、
お客の建設的な批評を真摯に受け止め、
それを活かして改善する姿勢があれば、
お店にとってもチャンスです。
これにより、
お店のサービスが向上し、
将来的には多くのお客を引き寄せ、
ビジネスを成功に導くことも可能です。
良いサービスが提供されれば、
お客は喜び、
提供者も利益を得ることができます。
このように考えれば、
この苦情はお客とお店の双方にとって
ウィン・ウィンの状況と言えるでしょう。
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それに対して、
言わない方がよい苦情もあります。
たとえば、飛行機での旅行中には、
天候の影響で
予定の目的地に
着陸できないという事態が
発生することも少なくありません。
霧深いために安全な着陸が難しい場合、
隣の都市の空港に
ディバートすることも
珍しいことではないでしょう。
しかし、こうした状況でも、
「今日は~時から大事な会議があるんだ!
どんなことをしてでも、
予定の目的地に
着陸させてもらわないと困る!
迷惑だ!どうしてくれるの?」
と不満を口にする人もいます。
航空会社のスタッフが、
「申し訳ありません。安全上の理由から
今は予定の目的地に着陸できないのです」
と説明しても、その人は怒りを収めません。
客側にとっては
不都合かもしれませんが、
このようなケースでは
文句を言わないほうが良いでしょう。
視界が悪いまま
無理に着陸を強行すれば、
事故の危険性も高まります。
天候の悪さは
航空会社の責任ではありません。
天候は航空会社のコントロール下には
ないものです。
無事で安全な着陸を果たすことは、
全ての乗客にとって
ありがたいことでしょう。
こうした状況では、
サービス提供者は
どうしようもない状況に対処し、
乗客の損失を最小限に抑えるために
努力しているのです。
そのため、
サービス提供者は
むしろ感謝されてもよいでしょう。
文句を言うのではなく、
その姿勢を評価すべきです。
日本の文化では、
サービス提供者と受ける側において、
ヒエラルキーが存在します。
「お客さまは神様です」というように、
お客は上位の立場
とされることもあります。
そのため、サービス提供者が
どうしようもない状況であっても、
客の強い立場を利用して
不満を表す人もいます。
しかし、このような姿勢は
好ましくありません。
避けるべきでしょう。
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積極的に言うべき苦情であっても、
言い回しには
気を配る必要があります。
なぜなら、言い方によっては、
相手に嫌な感情を抱かせてしまい、
お互いに不快な気分に
なることもあるからです。
お客の立場で不満が湧き上がっても、
怒りを表に出すのではなく、
冷静になり落ち着いて
マナーを守って話すことが大切です。
言うべきことは、
最低限の内容にとどめ、
余計なことは言わないようにすると
よいでしょう。
私のカフェでの場合、
「お魚の芯が生焼けです。
もう一度しっかり
火を通していただけますか」
という伝え方が適切です。
「こんな食事を提供するなんて、
これでお客が食中毒を起こしたら
どうするつもりなの?」
といった苦情の仕方は
避けたほうが良いでしょう。
言葉を選び、マナーを守りつつ、
必要な内容だけを伝えることが
望ましいのです。
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今回の話をまとめれば、
苦情には良い苦情と悪い苦情の
2つのタイプが存在します。
サービス提供者が
責任を果たしておらず、
サービス基準を満たさない場合、
お客はその事実を伝えるべきです。
お客の指摘により、
サービスの向上が可能であり、
その結果として
お客自身もサービス提供側も
利益を得ることができるからです。
その一方で、
サービス提供側に非はなく、
どうしようもない状況の場合、
お客が満足しなくても、
苦情を述べないほうが賢明です。
時には、サービス提供者が
どうしようもない状況でも、
お客のために色々な配慮を
してくれることもあります。
こうした場合、
受けたサービスが
自分にとって都合が悪くても、
お客は不満を表すのではなく、
むしろ感謝の意を示すべきです。
言うべき苦情の場合でも、
その表現には十分な注意が必要です。
一時的な感情に
振り回されることなく、
冷静になり、丁寧な口調で、
改善が必要な部分のみを
簡潔に指摘するとよいでしょう。
満足できないサービスに対しては、
苦情を伝えるべきかどうかを
適切に判断して、
言うべき苦情だけを
適切な言葉で丁寧に表現しましょう!