人生を楽しみ、
豊かに生きていくためには、
子どものような「遊び心」と、
大人としての「現実に向き合う力」の
どちらも大切です。
この2つをバランスよく育て
統合していくことで、
日々の暮らしを味わいながら、
充実した人生を
歩んでいけるようになるでしょう。
この記事では、
この2つの資質をどう育み、
どう活かしていけるかを
考えてみます。
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「遊び心」を育てる――内なる子どもとのつながりを取り戻す
人生に
喜びや彩りをもたらすためには、
自分の中に眠っている「遊び心」を
目覚めさせることが大切です。
心理学者のマズローは、
「自分が何を喜びとしているかを
見る能力を取り戻すことが、
自己を再発見する最善の方法である」
と語っています。
つまり、自分の心が何にときめき、
何にワクワクするのか?
その声に耳を傾けることが、
自分らしさを取り戻す
第一歩になるのです。
この「遊び心」は、心理学でいう
「内発的動機」と深く結びついています。
内発的動機とは、
外からの評価や報酬ではなく、
自分の内側から湧いてくる
関心や好奇心によって
自然に動き出す心の働きです。
子どもたちが
無我夢中で遊んでいる姿を
思い出してみてください。
「これをやると褒められるから」ではなく、
「ただ楽しいから」やっている。
そんな純粋なエネルギーにあふれています。
これが内発的動機によるものです。
大人になった私たちも、
この内発的動機を大切にする時間を
少しでも持てたなら、
「遊び心」は自然と育まれていくでしょう。
とはいえ、日々の暮らしには
やらなくてはならないことも多く、
内発的動機だけで行動するのは
現実的ではないかもしれません。
だからこそ、
日常の中にほんの少しだけでも、
自分の心が喜ぶことを
取り入れてみることが大事です。
たとえば、寝る前の30分だけ、
自分の「楽しい」で心を満たしてあげる。
あるいは、
休日の予定を立てるときには、
頭ではなく心の声に耳を澄ませてみる。
そんな小さな習慣から、
「遊び心」は
少しずつよみがえってくるでしょう。
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現実にしなやかに向き合う――「現実適応力」を育てるために
「現実適応力」とは、
自分が影響を及ぼせる範囲を
正しく見極め、その中で
自分の力を最大限に
活かしていく力のことです。
この力が育っていくと、
自然と日常生活を切り拓く力――
いわゆる「生活力」も高まっていきます。
現実適応力を磨いていくためには、
まず「切り分ける力」、つまり
適切な境界線を引く力が欠かせません。
では、「切り分ける力」とは何かというと、
「できること」と「できないこと」、
「変えられること」と「変えられないこと」、
「現実的な目標」と「妄想的な願望」、
その間に線を引いていく力のことです。
そしてその根っこにあるのが、
「諦める力」なのです。
「諦める」という言葉には、
少しネガティブな響きが
あるかもしれません。
でも、本来の意味は
「明らかに見きわめる」ということ。
つまり、変えられることと
変えられないことを
しっかり見きわめて、
変えられないものは潔く手放す。
これが、本来の「諦める」姿勢です。
元アスリートである為末大さんは、
著書『諦める力』の中で、
「やればできる」「夢はかなう」
という言葉の持つ落とし穴について
触れています。
努力を重ねても結果が出ず、
引き際を見失ったことで、
人生のタイミングを逃してしまう人もいる――
そんな実例を挙げながら、
「諦めることの大切さ」を伝えています。
また、「経営の神様」として知られる
松下幸之助さんも、
「自分の意志で道を選ぶことは
大切だけれど、同時に、
良い意味での“あきらめ”を持って、
与えられた環境に深く没入することが必要だ」
と語っています。
彼の成功も、意思の力と
諦観のバランスがあってこその
ものだったのでしょう。
この「諦める力」を育てていくことで、
私たちは「できないこと」
に専念することをやめ、
「できること」に集中できるようになります。
為末さんの言葉を借りるなら、
「できないことの数が増えるほど、
できることがより深くなる」
ということです。
自分の影響が届かないことを
潔く手放すことで、
届く範囲に意識とエネルギーを注ぎ、
その中で自分らしい力を
発揮していけるようになります。
それこそが、
現実にしなやかに適応していく力――
「現実適応力」の本質なのです。
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自分で選ぶ喜び:主体的な感覚が人生を変える
人生というゲームを
もっと楽しむために、
もうひとつ大切にしたいのが
「主体的に生きる感覚」です。
自分で選び、自分で進む――
そんな意識があるだけで、
私たちの感じ方や行動は
大きく変わっていくものです。
シーナ・アイエンガーのベストセラー
『選択の科学』には、
印象深い研究結果が紹介されています。
ロンドンの研究所が、長年にわたって
公務員の健康状態を追いかけたところ、
組織の中で階層が低い人ほど
心臓病による死亡率が高いことが
明らかになりました。
そしてその背景には、
「自分の行動を自分で選んでいる」
という感覚――つまり、
主体性の違いが
大きく関わっていたのです。
役職が上になるほど、
「自分の意思で選んでいる」という意識で
仕事に取り組む傾向があります。
一方で、階層が下になるほど
「やらされている」という
受け身の感覚が強くなり、
その結果、仕事のストレスも
増していたのです。
この研究で得に興味深いのは、
人々の健康に
最も大きな影響を与えたのは、
実際の自己決定権の大きさではなく、
自分で決めているという認識だった
という点です。
つまり、
どれだけ自由に決められるかよりも、
「自分が選んでいる」という感覚を
持てるかどうかが、
私たちの心身に
大きな影響を与えるということです。
では、この発見を日常生活に
どう活かせばよいのでしょうか?
たとえば、
上司の指示で仕事をしている場面でも、
「私は今、この指示に従うと自分で決めた」
というふうに、意識の持ち方を
少し変えてみるとよいでしょう。
そんなふうに主体的な立場で
物事に向き合っていくと、
「人生の主役は自分なんだ」
という実感が湧いてきます。
そして、人生というゲームに、
自分の意思で参加しているという感覚も、
少しずつ育まれていくのです。
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制約の中の自由:ゲームとしての人生を楽しむ
どんなゲームにも、
必ずルールがあります。
かくれんぼや鬼ごっこのような遊びも、
トランプやオセロといったゲームも、
スポーツの試合も、
すべてルールによって
動きが制限されています。
けれど、それがあるからこそ、
おもしろいのです。
限られた条件の中で、
どうやって自分の望む結果に
たどりつくのか?
知恵をしぼり、工夫を凝らし、
持っている力を活かして挑戦する――
そこに、ゲームの楽しさが
あるのではないでしょうか?
人生もまた、同じように
制約の中で進んでいくものです。
自分の限界を受けとめたり、
思い通りにならない状況に
向き合ったりしながら、その中で
どんな工夫ができるかを探していく。
そして、与えられた条件の中で、
自分なりにベストを尽くしていくこと。
それが、人生というゲームに
豊かさや彩りを加えてくれるのです。
もうひとつの視点として、
人生を「壮大な実験」と
捉えてみるのもよいかもしれません。
ラルフ・ウォルドー・エマーソンは
こう語っています――
「人生はすべて実験である。
実験の数は多ければ多いほどいい」。
実験とは、やってみて、結果を観察して、
そこから何かを学ぶこと。
たとえうまくいかなくても、
その過程で得られる発見は、
次に活かすための
大切な学びとなるでしょう。
新しいことに挑戦するのが
怖いと感じるときでも、
「これは実験だから」と割り切ってみると、
心が少し軽くなるでしょう。
試してみることを大切にしながら、
結果を冷静に受けとめて次に生かす――
それは、「遊び心」と「現実適応力」を統合させた、
人生の達人の姿勢なのです。
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おわりに
この記事では、人生というゲームを
より深く味わいながら進んでいくために、
「遊び心」と「現実適応力」という、
一見すると対照的な2つの資質を
バランスよく育て、
統合していくことの大切さについて
お話ししてきました。
現実にある制約や限界を見つめ、
その中で自分の影響が届くところに
意識を向け、力を尽くしていく――
それが、大人としての「現実適応力」です。
そして、そんな制約の中にあっても、
心を柔らかく保ち、
「おもしろそう」「やってみたい」
という気持ちを忘れずに、
実験するように挑戦していく――
それが、子どものような「遊び心」です。
私たちは、年齢を重ねる中で
「大人」であろうとするあまり、
内にある「子ども」の声を
置き去りにしてしまうことがあります。
あるいは逆に、「子ども」の感覚を
大切にするあまり、
現実に向き合う力が育たないことも
あるかもしれません。
けれど、どちらかに偏るのではなく、
その両方を大切にしながら、
自分の中でうまく折り合いをつけていくこと。
それが、人生を軽やかに
豊かに歩んでいくヒントに
なるのではないでしょうか?
あなたの中の「子ども」と「大人」、
両方の要素を大切に育てていきましょう!
その2つが手を取り合うとき、
あなた自身の人生はもっと豊かに、
より味わい深いものになるでしょう。
日々の小さな選択も、大きな決断も、
「遊び心」と「現実適応力」の両方を携えて、
あなたのペースで、あなたらしい形で、
人生というゲームを楽しんでいきましょう!