今回の話は、
「どんなに親しい関係であっても、
自分と相手は異なる」という内容です。
多くの方がこのことを
当然と感じるかもしれません。
とはいえ、
このシンプルな事実を
深く理解していないために、
人間関係に亀裂が生じることも
珍しくありません。
人間関係を健やかに維持するためには、
「どんなに親しい関係であっても、
自分と相手は異なる」ということを
改めて認識することが大切です。
なぜそうなのか?
その理由を詳しくお話しましょう。
====
親しい人間関係において、陥りやすい罠
どんなに多くの点で同意し合い、
どんなに共感し合う仲であっても、
自分と相手は同じではありません。
「それは当然」
と思われる方も多いでしょう。
しかし、この当たり前のことを
十分に理解していないために、
人間関係でのトラブルが
起こることも少なくありません。
何かのきっかけで意気投合し、
「この人は自分を理解してくれる」と感じ、
深い関係を築くことは、
多くの人が経験することでしょう。
相手との距離感が近くなり、
「この人なら信頼できる!」と心から感じ、
幸福感に包まれる瞬間は、
何ものにもかえがたいです。
だからこそ、一度築いた親密な関係が
突如として壊れることは、
非常に辛いものでしょう。
残念なことに、
人間関係はそれほど脆いのです。
親密な関係が崩れる原因には、
「親しいから、自分と相手は
同じように考えるはず」と、
無意識に思い込んでしまうこと
があります。
自分の価値観や考え方を、
相手も同じだと
早とちりしてしまうこと
にあるのです。
====
自分と全く同じ人間はどこにもいない
どんなに似ていると感じる人でも、
完全に全てが一致する人は、
この広い世界に一人も存在しません。
似ている点は多くても、
何かしら違う部分があるはずです。
というのも、私たち一人一人が
異なる背景を持っているからです。
生まれながらの気質や性格、
年齢や性別、人種、
生まれた家庭や育った環境、受けた教育、
これまでの経験や健康状態まで千差万別で、
一人一人が異なる人生を歩んできたのです。
だからこそ、似た者同士であっても、
完全に同じ人はいません。
そのため、相手に対して、
自分と同じように感じたり、
考えたりすることを
期待してはいけないのです。
多くの話題で共感を得られても、
全ての点で意見が一致することは
あり得ないと言ってもよいでしょう。
====
過度な期待の罠
親しいと感じるほど、どうしても
相手に自分と同じ行動や考えを
期待してしまいがちです。
「自分がこうするのだから、
相手も同様にしてほしい」と、
過度な期待を寄せてしまいます。
しかし、残念ながら、相手は必ずしも
自分の期待に応えてはくれません。
思うように言ってくれなかったり、
期待する通りに動いてくれなかったり、
自分の考えと同じ方向には
進んでくれなかったりします。
そうした瞬間、裏切られたと感じて、
相手への失望や怒りの感情が
湧き上がって来るでしょう。
相手に過度な期待を抱くと、
その期待が裏切られたときに
強い失望感が生まれ、
それが人間関係を維持する上での
障害となってしまうのです。
====
共感と対立
例えば、子供の教育について、
自分と相手が同じ考えを
持っているとしましょう。
このテーマに関しては、双方が合意し、
似た価値観を
共有することができます。
そうなれば、相手への親近感が湧き、
心の距離も自然と縮まるでしょう。
しかしながら、他のテーマに移ると、
必ずしも意見が
一致するわけではありません。
たとえ子供の教育において
意見が一致していたとしても、
政治のテーマでの議論では、
まったく反対の立場を取ることも
あるのです。
また、高齢者介護に関する考え方も、
大きく異なるかもしれません。
一つのテーマで意気投合しても、
全ての面で同じ感じ方や考え方を
するとは限らない、
というのが現実です。
ある一面で
共感を得られたからといって、
他の面でも
必ずしも共感を得られるわけではない、
ということを理解するのは大切です。
共感できる側面は大切に共有し、
一致しない部分については、
素直に受け入れ、
割り切る姿勢が
望ましいと言えるでしょう。
====
血縁や家族も同じとは限らない
このことは、親子関係においても、
当てはまります。
血縁関係があるから、
同じ家族であるからと言っても、
すべてが同じではありません。
親は子供を自分の分身のように思い、
同じ価値観を共有して欲しいと
願うことも少なくありません。
自分と同じ考え方や感じ方を
して欲しいと望んでいるのです。
しかしながら、そのような期待は
現実的ではないでしょう。
確かに、
血縁による共通点や類似性は
存在します。
でも、それだけが全てではありません。
親子の間には、
生きてきた時代が大きく異なり、
その差は価値観にも影響します。
親が自然と感じる「当たり前」が、
子供にとっては
そうでない場合もあるのです。
相手が自分の期待に応えてくれない場合、
自分は裏切られたと感じ、
怒りの感情が沸き起こることで、
関係性が破綻することもあります。
血縁のある親子であれ、
永遠の愛を誓い合った夫婦であれ、
長い間仲良くしてきた親友であれ、
信頼していた人であれ、
親近感や親しみを感じていても、
「この人は自分とは違う」という自覚を持つことが、
人間関係を健全に保つためには
不可欠です。
====
まとめ
どんなに親しい関係でも、
自分と相手が異なる存在である
と認識することは、
人間関係を築く上での基石となります。
確かに、
共通の考えや価値観は
絆をより深くします。
しかし、相手に常に
同じ考えや行動を期待するのは
現実的ではありません。
なぜなら、私たち一人一人が
異なる背景や経験を持つからです。
共感できる部分とともに、
異なる意見や立場を
受け入れる柔軟性が求められます。
このバランス感覚こそが、
人間関係をより強くかつ健康的にする
鍵となるでしょう。
共感できる部分を大切にしつつ、
違いを受け入れることで、
より良好な関係を築いていきましょう!