私たちの心の中では、
自分の望みを発する声があります。
しかし、
日々の忙しさに追われて、
その声がかき消されてしまい、
本来自分が求めていることが
わからなくなることもあるでしょう。
この小さな声に気づくことが、
自分らしい人生を築くための
第一歩です。
この記事は、
心の声に耳を澄ませて、
自分が心底望むものを
実現しようという内容です。
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なぜ心の声を聞けなくなるのか?
多忙な日々の暮らしの中で、
私たちは次から次へと
やるべきタスクに追われ、
自分の心と向き合う暇もなく、
心の声を聞く機会を失いがちです。
仕事の予定をこなし、
家事をこなし、
人との約束を守ることに
集中していると、
気づいたころには
一日の終わりが近づいていて、
「ああ、今日もあっという間だったな」
と感じることもあるでしょう。
こうした慌ただしさが続くと、
自分が何を望んでいるのか、
どんなときに喜びを感じるのかを
考える余裕もなくなってしまいます。
本来、私たちの心の奥には、
自分の望みを
そっと伝える声が宿っています。
しかし、
多忙な日常に追われていると、
その声を聞く力は鈍ってしまい、
自分が本当に望んでいるものを
見逃すことも珍しくありません。
さらに、
効率や成果を重視する社会の中では、
「役に立たないことを考えるのは無駄」
「利益にならない行動は避けるべきだ」
という考え方がはびこり、
結果的に、
自分の本音や願いを感じる前に
「そんなことをしても
意味がないのではないか」と思わせ、
心が発する声を
抑えつけてしまうこともあるのです。
しかしながら、
自分自身が心底何を望んでいるのか、
何に喜びを見いだすのかを
見失ったまま走り続けると、
いつか大きな疲労感や空虚感に
襲われることになり、
幸せからは遠ざかってしまうでしょう。
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『モモ』が教えてくれる、私たちを束縛するものの正体
ミヒャエル・エンデの名作『モモ』を
読んだことがある人もいるでしょう。
この物語には、
人間の時間や心の余裕を奪っていく
不思議な存在が登場します。
彼らは「効率化」や
「時間の節約」を勧め、
人々をより忙しくさせることにより、
人生で大切なものを
見えなくさせてしまうのです。
この物語の中では、彼らが
象徴的な呼び名で呼ばれています。
それは、「灰色の男たち」です。
実は、この存在が
現代を生きる私たちの心の中にも
潜んでいて、私たちから幸せを
奪っているのではないでしょうか?
「灰色の男たち」は私たちに
「もっと役に立つことをしろ!」
「何かを生み出す行動こそが正しい!」
とささやきかけ、やがて
私たちの心のゆとりを奪っていきます。
その声に耳を貸してしまうと、
私たちは常に
「やるべきこと」ばかりを追いかけてしまい、
自分が本当に求めているものを
ないがしろにしてしまうのです。
現代社会は、まさに
この「灰色の男たち」が好むような
環境と言えるでしょう。
私たちは成果や利益を第一に考え、
いつも「もっと効率よく動かなくては」
「可能な限り生産的でなくては」
というプレッシャーの中で生きています。
そうした価値観の中で
生活しているうちに、
ふと気づくと心の声はかき消され、
「自分が本当は何を感じ、
何を望んでいるのか」という問いすら
忘れてしまうのです。
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死を意識したとき、人は本当に大切なものに気づく
この「灰色の男たち」は
私たちから人生で本当に大切なものを
奪っているわけですが、
私たちは意識次第で
彼らの言うことから
解放されることができます。
それは「死を覚悟したとき」です。
たとえば、
重い病気を宣告され、
残された命の時間が
限られているとわかったとき、
人は突然「本当に大切なこと」
に気づきはじめます。
日常的に私たちを縛っていた
「やらねばならない」
という思い込みが薄れはじめ、
むしろ「自分が生きているうちに
何を成し遂げたいのか」
「どんな時間を過ごしたいのか」
という切実な問いが湧いてくるのです。
看護の仕事を通して
多くの人の最期を見届けてきた
ブロニー・ウェアは、その著書の中で
「余命宣告を受けた人々が
死の間際に抱く後悔」をまとめています。
そこでは
「もっと自分に正直に生きればよかった」
「働きすぎなければよかった」
「愛する人に気持ちを伝えればよかった」
「友人と連絡を取り続ければよかった」
「幸せをあきらめなければよかった」
という5つの大きな後悔が紹介されています。
どれも私たちが生きるうえで
大切にすべきことばかりでしょう。
死を意識するとき、人は初めて
「灰色の男たち」のメッセージから目覚め、
自分が本当に何を望んでいるのかを
思い出します。
しかし、
実際に余命宣告を受けなくても、
私たちは工夫しだいで
似たような気づきを
得ることができるのです。
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余命3日のシミュレーションで見えるもの
ここであるワークを
紹介しましょう。
もし、今、
「あなたはあと3日しか生きれません」
と余命宣告を受けたとしましょう。
その状況下で、あなたはこの3日間で
何をやりたいでしょうか?
誰に会いたいか、
どこでどのように過ごしたいかなどを
細かく頭の中でイメージしてみるのです。
その3日間で
本当にやりたいこと、
心から大切にしたいことを
紙に書き出してみましょう。
このワークを通して気づくのは、
あなたが今まで
一生懸命やってきたことを、
残りの3日間やり続けたい
とは思わないことではないでしょうか?
どちらかと言えば、
そうではなく
自分が本当にやりたかったことは
案外シンプルなことかもしれません。
たとえば、
「家族や親友と思い切り笑い合いたい」
「子どものころから好きだった
絵をまた描いてみたい」
「言えずにいた感謝を伝えたい」
というように、そこには
お金や成果に直結しない行動も
多くあるのではないでしょうか?
些細に思えることかもしれませんが、
自分にとっては
かけがえのない時間や体験だった
と気づくでしょう。
もしかしたら、
「そんなことをしたって
何の役にも立たないのでは?」
と否定的な声が
頭に浮かぶかもしれません。
それこそが、私たちの中に潜む
「灰色の男たち」のささやきです。
それでもなお、あと3日で
人生が終わるとわかったとき、
「役に立つかどうか」
を最優先にするでしょうか?
むしろ、人は残された時間の中で
いかに心満たされる瞬間をつくるかを
考えることでしょう。
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日常の中で心の声とつながるために
実際には、ほとんどの人が
余命3日という状況に
置かれているわけではありません。
だからこそ、
心の声を取り戻すための
「小さな習慣」を
取り入れてみてもよいでしょう。
具体的には、一日のうちに
わずか数分でも静かな時間をつくり、
「今日、自分の心は
何に反応していたのだろう?」
「今、心が本当に求めているものは
何だろう?」と、自分にそっと
問いかけてみるのです。
最初はなかなか答えが
浮かばないかもしれません。
でも、毎日これを繰り返していくと、
少しずつ心の声のかすかな響きを
キャッチできるようになるでしょう。
これはスピリチュアルな話ではなく、
人間がもともと持っている感受性を
意識的に磨く行為と言えます。
ときには散歩をしてみたり、
音楽を聴いてみたり、
日記に感じたことを書き留めてみたりして、
さらに深く心の状態を
探ってみるのもよいでしょう。
日々の忙しさの中でも、
自分の内側に
目を向ける時間を持つことで、
心の声は少しずつはっきりと
聞こえるようになっていくでしょう。
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本当に大切なものを選び取る勇気
死を直前にした瞬間、
人は多くのものを手放すと同時に、
心の奥底から湧き起こる
本当の願いを見つめる時間を
強制的に与えられます。
そのとき、これまで無理をして
追いかけてきた仕事や
社会的評価に執着するよりも、
むしろ残された時間をどう満たすかに
意識が向かうはずです。
しかし、そのように
極限的な状況でなければ
本当の望みに気づけないのでしょうか?
決してそうではありません。
人生が有限であることは
誰にとっても揺るぎない事実であり、
私たちは日常の中で
いつだってそのことを
思い出すことができます。
一旦「命には終わりがある」
と受け止めることで、
「だからこそ今をどう生きるか」
という思いの方向性が
浮かび上がってくるのです。
これはシンプルでいて、
非常に力強い考え方でしょう。
ただし、そのためには
「灰色の男たち」のささやきを
脇に置く勇気が必要です。
生産性や有用性を求められる世の中で
生きる私たちには、
「本当にやりたいこと」を
実行に移すことが怖いと
感じることもあるでしょう。
周りから批判されるかもしれないし、
お金にならないから
損なのではないかという不安も
あるかもしれません。
それでも、
自分の心に正直になり、
興味を持ったことや
胸をときめかせる活動を始めてみるとき、
大きな解放感と「自分らしさ」を
取り戻す実感が得られるでしょう。
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おわりに:心の声を聴きながら生きる未来
この記事では、
心の声に耳を澄ませ、
自分らしい豊かな人生を生きるための
ヒントをお伝えしました。
私たちは
日々の多忙な日常に追われ、
心の内にある本音を聞くことなく、
自分の本当の望みを実現できずに
生活していることも珍しくありません。
特に効率や成果を
重視する社会の中では、
心の声に耳を傾けることさえ、
無駄で意味のないものだ
と感じるかもしれません。
しかし、それでは、
自分らしく豊かな人生を
手に入れることはできないでしょう。
生産性や効率を
追い求めること自体が
悪いわけではありませんが、
そればかりを崇拝して
本質的な幸福を見失うことは、
残念なことだと言えます。
誰もが仕事や義務を放り出して
暮らせるわけではありませんし、
社会的な責任を果たすことも大切です。
それでも同時に、
自分の内側にある声に耳を澄ませ、
心が求めていることを
満たしてあげることも、
自分らしく豊かな暮らしを
送るためには欠かせません。
ほんの少しずつでも
「心の声に耳を傾ける時間」を
意識的に持つようにして、
自分の心を満たしてあげてください。
心の声を聴くという習慣が
根づいてくると、日々の中に
新たな発見や喜びを感じやすくなり、
人生の充実度が
確実に変わっていくでしょう。
灰色の男たちのささやきに
飲み込まれることなく、
自分の足で自分らしい人生を
歩んでいるという実感も
高まってくるでしょう。
心の声に耳を傾け、自分を満たす行動を
選択できるようになれば、
充実感を楽しむこともできるでしょう。
いつか誰にでも訪れる人生の最後を、
後悔よりも
納得に満ちたものにするために、
心の声を聴き取る生き方を
日常に取り入れてみては
いかがでしょうか?