過剰反応 ― HSPだと思ったけれど、原因は他にあった!

日本でHSPの概念が
広まって以来、

「私が今まで苦しんできたのは、
自分がHSPだったから」
と思う人が増えた。

「実は、私もHSPなの……」
と言う人たちが、
続々と出てきたのだ。

HSPの提唱者アーロン博士によれば、
全人口の約20%が
この気質の持ち主だとのこと。

それにしても、
なぜ、日本でこんなにも
多くの人たちが「自分はHSPだ」と
言うのだろうか?

ある心理カウンセラーの話では、
自分がHSPだと思っている人でも、
実は、そうでない場合もあるそうだ。

ちょっとした刺激に
かなり敏感だからという理由で
HSPだと判断する人も多いが、

そんな人たちでも
感受性は平均的、
HSP気質もほとんどない場合も
しばしばあるらしい。

別の原因から、
小さな刺激に敏感に
反応するようになり、

その原因はHSP気質とは
全く別のものだ。

今回の話は、
その別の原因について。

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その前にHSPについて、
少し説明しよう。

HSPとは
Highly Sensitive Personの略で、
生まれつき繊細な気質を
持つ人たちのこと。

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の
体感覚が普通の人よりも
かなり鋭く、感受性の強い人たちだ。

この特性のために、
ちょっとした刺激にも
敏感に反応して、

日常生活に支障をきたし、
生き辛さを感じることも多い。

その一方で、
豊かな感受性を活かして、
芸術、アート面で
大活躍する人たちもいる。

HSPは病気ではなく、
生まれ持った特性だ。

小さな刺激に敏感だ
という理由で、
自分がHSPだと思う人もいるが、

こう思う人すべてが
HSP気質を持っている
とは言えない。

別の原因により、
刺激に対して、
病的なほど敏感になってしまう
場合もあるからだ。

その原因とは、
幼少期の家庭環境や状況、
育てられ方、家族との人間関係の中で、
徐々に形成されてゆくもの。

HSPとは違って、
生まれた後に作られる
後天的なものだ。

具体的には、
3~12歳くらいの間に、
何らかの事情により、
家庭環境に安心、安全がなかったこと。

家に居ても、
自分は守られていると思える
安全基地がなかったことだ。

これが後に人を
極度に敏感にさせる
原因になったのだ。

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具体的には、
どんな環境だったか?

たとえば、夫婦喧嘩や
嫁姑のいさかいが絶えない
家庭環境だったり、

兄弟姉妹間の仲が悪く、
家庭内でほっとできる
状態ではなかったり……。

親が精神的に未熟であったり、
メンタルを病んでいたりして、
家の中が平和な状態では
なかった場合。

そのため、安心感を得られず、
常に不安な状態で
緊張して生きてきた人が多い。

そういう状態が長く続けば、
子供もそれなりに自分自身を
その環境に適応させる必要がある。

このようなツライ環境下で
子供は考える。

「いったい、誰のせいで、
こうなっているのだろうか?」と。

この時、「自分が悪いから、
親がこういう風になってしまった」
と勝手に解釈して、

自分自身を
責めてしまう子供もいる。

自分が迷惑な存在であり、
そのために家庭不和が起きている
と罪悪感まで抱く子供もいる。

「学校でも成績は悪いし、
スポーツもできない。
だから、自分のせいで、親もこうなる」

と無価値観や劣等感まで
抱いてしまう子供もいる。

本当のところは、
子供が悪いわけではなく、
子供側には全く非はない。

しかし、親が未熟であり、
親自身に余裕がないから、

親の都合で、罪なき子供に
八つ当たりして、

子供を傷つける言動を
平気でしてしまうのだ。

それにより、子供も
「自分が悪いんだ」と
不当な思い込みをするようになる。

家庭内不和が長ければ長いほど、
子供の心の傷も深く、

後の人生において、
トラウマに発展することも
しばしば起きるのだ。

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周りの人の
ちょっとした言動に、
いちいち強く反応するのは、

心の傷が深すぎて、
トラウマがあるから。

罪悪感、無価値観、劣等感に
苛まれているからだ。

日々の生活の中で、
普通の人にとっては
些細な出来事でも、

トラウマがある人は、
強く反応して、
心が傷ついてしまう。

同じことが起きても、
隣の席の人は
何とも思っていないようだ。

自分だけが
酷く傷ついている。

「なんで、自分は
こうなんだろう?

客観的に観れば、
大したことではないのに、
やはり傷ついてしまう……

そうかHSPというものが
あるんだ!

自分はきっと
それに違いない」と
勝手に思い込んでしまう。

しかし、
小さなことに大きく
反応する点では同じでも、

こういう人たちは
他のHSP気質がない。

単に、敏感に反応する
ということだけが同じだけ。

その他のHSP要素は
見られないのだ。

HSPではないのに、
心に傷があるために、
小さなことで敏感に反応する人は、

自分の心の傷やトラウマに
気づいていない場合が多い。

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心に大きく深い傷のある人、
トラウマのある人が、
なぜ、ちょっとしたことに
敏感に反応するのか?

それは、嫌な出来事に
遭遇した時、

癒えていない心の傷が
芋づる式に引き出されて
しまうからだ。

過去に起きた出来事
そのものは覚えていなくても、

昔、それが起きた時、
自分が体験した嫌な感覚、
ツライ感覚、悲しい感覚だけが
傷として残っている。

そして、
ちょっとした嫌なことで、

過去の不快な感覚が
数珠つなぎで出てきてしまう。

そのため、今起きたことが
1くらいのツラさでも、

10倍くらいの大きさとなり、
苦しんでしまうのだ。

自分の心の内に
未だ癒えていない傷が
残っているために、

このような現象を
引き起こすことになる。

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ちょっとしたことに
強く反応して、
心の平安が強く乱されることに
悩むのであれば、

自分が本当にHSPなのか?
それとも、過去に負った
心の傷が癒えていないから
そのようになるのか?

はっきりさせることは
非常に大切だ。

なぜなら、ラクになるための
対処法も違ってくるからだ。

HSPの場合は、
生まれ持った性質であり、
メンタル疾患ではない。

そういう性質がある
ということだけで、
治療は必要ではない。

もともとの性質を
変えようとしても、
なかなか難しい。

そんな場合は、
HSPによるデメリットを
どうすれば最小限に減らせるか?

そして、HSPのメリットを
最大限に活かすには、
どうすればよいのか?

そちらの方向で
考えた方がよいだろう。

それに対して、
心の傷が深くて大きく、
トラウマを抱えた人は、

適切な治療を受ける
方向へ動いた方が賢明だ。

子供時代に負った
心の傷を癒してゆき、

トラウマの程度を
軽減させてゆくのが
必要だからだ。

できれば、心理専門家に
お願いするのがいいだろう。

インナーチャイルドの癒しや、
セルフヒーリングの方法など、
適切な心理療法を受けるのが望ましい。

それにより、心に負った傷を
完全に取り除くことは
できなくても、

100あったものを
50に減らして、
少しでもラクになることは可能だ。

そうできれば、
ちょっとしたことで
過剰反応を起こすことも減り、

生き辛さを感じることも
大分防げるだろう。

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今回の話をまとめれば、

ちょっとした小さな刺激に
敏感に反応するのは、

HSPが原因の場合もあるが、
必ずしもそうとは限らない。

幼少期に形成された
心の傷(トラウマ)により、

同じような現象が
起きるからだ。

自分の場合は、
何が原因なのか?
はっきりさせることが必要だ。

なぜなら、対処方法が
全く違うからだ。

HSPが原因なら、
自分の特性を変えることなく、

敏感なことで生じる
デメリットを、どうすれば
減らすことができるのか?

感受性が高いことで
得られるメリットを
どう活かせばいいのか?

これらのことを
考えるとよい。

その一方で、
心に傷がある人は、
それなりの癒しが必要だ。

自分でネットで調べて
セルフヒーリングを
試すのもあり。

自分だけで解決できないのなら、
専門家の指導の下で
傷を癒していくといいだろう。

いずれにせよ、まず最初に、
自分の過剰反応の原因が
どこにあるのか? 
はっきりさせることが重要だ。