恋愛初期の甘い時間が過ぎると、
相手との違いばかりが
気になるようになるものです。
そんなとき、
多くのカップルは
「この違いこそが問題だ」
と考えがちですが、
実はその思い込みこそが
関係をこじらせる
真の原因かもしれません。
この記事では、お互いの違いを
より豊かな関係へと
発展させる可能性として
捉え直すことを提案します。
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恋の魔法が解けたときに起こること
「恋は盲目」という言葉が示すように、
恋愛初期には、相手との違いが
新鮮な魅力として映るものです。
自分とは異なる価値観や好み、
考え方に心を躍らせ、
「未知との遭遇」に胸を高鳴らせます。
相手の欠点ですら
愛おしく感じられ、
「こんなに素晴らしい人は他にいない」
と思えるほど、
相手の魅力に惹き込まれていくでしょう。
ところが、しばらく経つと
恋の高揚感は次第に薄れ、
まるで魔法が解けたかのように
現実が見え始めます。
かつては魅力的に映った
「自分とは違う部分」が、
今度は深刻な「問題点」として
感じられるようになるのです。
価値観の違い、好みの不一致、
考え方のズレが、
関係の障害として立ちはだかります。
興味深いのは、相手そのものは
何も変わっていないということです。
変わったのは、その違いに対する
私たちの感じ方だけなのです。
そして、この感じ方の変化は、
多くのカップルが直面する
課題と言えるでしょう。
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無自覚でも夫婦間には相補作用が働いている
生活を共にするにつれて、
もう一つ興味深い現象が
見えてきます。
それは、パートナー同士が
無意識のうちに
相補的な役割を
担い合うようになることです。
まるで太極図の陰陽のように、
一方が極端な方向へ進めば、
もう一方は自然と反対の極へと
引き寄せられていきます。
たとえば、夫が思い切った決断や
大胆な行動を取るようになると、
妻は慎重さを増し、
リスクを避ける傾向が強まります。
どちらかに不足があれば、
もう一方がそれを補おうとする動きが、
知らず知らずのうちに
生まれるのです。
夫が白なら妻は黒、
夫が革新なら妻は保守、
妻が現実的なら夫は夢追い人──
そんなふうに、対極的な役割を
演じるようになります。
これは、「夫婦」という
一つのシステムが
バランスを保つために
自然と備えた
調整機能なのかもしれません。
しかし多くの場合、
当事者はその仕組みに気づかず、
「なぜパートナーは
私と正反対のことばかりするのだろう」と嘆き、
イライラを募らせてしまうことも
少なくありません。
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古代の知恵が教える創造の原理
ここで、
少し視点を変えてみましょう。
古代中国の哲学書『易経』には、
宇宙の秩序や自然の変化を
象徴的に表した
思想体系が記されています。
この書物には、
万物創造の根本原理が示されており、
それによれば、
宇宙の根源である「太極」から
陰と陽という二つの対極が生まれ、
その相反する二極が統合されることで、
新たなものが創造される
とされています。
つまり、
何か新しいものが生まれるためには、
まず両極への分化が必要であり、
その後に訪れる統合のプロセスこそが、
創造の核心なのです。
この視点から夫婦関係を見てみると、
パートナーとの価値観や好みの違いは、
決して悪いことではありません。
むしろ、二人が
より豊かな関係を育むための
可能性を秘めた状態
と捉えることができるでしょう。
火と水、陽と陰、動と静──
これら対極的な要素が出会い、
調和するとき、
どちらか一方だけでは生み出せない、
より豊かな状態が創り出されます。
パートナーシップにおける違いもまた、
同じように
大きな可能性を秘めているのです。
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捉え方が変われば、感じ方も変わる
物事の捉え方が変わるだけで、
感じ方がまったく違ったものになる――
そんな例として、興味深い話があります。
ある女性が夫との関係を
占い師に相談したところ、
「あなたは水の性質、
あなたの夫は火の性質で真逆です。
相性が悪いので、
喧嘩をしないよう気をつけなさい」
と告げられました。
この言葉を聞いて以来、
彼女の家庭では
夫婦喧嘩が絶えなくなって
しまいました。
占い師の言葉によって、
「夫婦の違いは悪いものだ」
という思い込みが強まり、
以前なら気にも留めなかった違いまでもが
問題として
感じられるようになったのです。
そして彼女は、
「占い師の言った通り、
私たちは相性が良くない」
と嘆くようになりました。
ところが、その後しばらくして
別の占い師から
まったく違うことを言われます。
「この世に火と水ほど
相性の良いものはありません。
火の熱する作用と水の冷やす作用、
その両方があるからこそ
バランスが保てるのです。
料理だって、火加減と水加減の
絶妙なバランスがあってこそ
美味しくなる。
夫婦も同じで、お互いが相手にないものを
持っているからこそ補い合えるのです。
火と水は最高のパートナーなのですよ」と。
この言葉を聞いてから、
夫婦喧嘩は劇的に減りました。
このことが意味するのは、
捉え方が180度変われば、
同じ現実でもまったく違ったものとして
見え始めるということです。
「私と夫は意見が対立してしまう。
これは問題だ」と思っていたことが、
「私の足りない部分を
夫が補ってくれていたんだ」
と捉え直すことで、
相手に対する感じ方が一変したのです。
そしてそこから行動も変わり、
二人はより豊かな関係へと
進んでいったのでした。
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関係をより豊かにする視点転換
では、どうすれば
「違い=問題」という見方から、
「違い=可能性」へと
発想を転換しやすくなるのでしょうか?
まず必要なのは、
自分の「正しさ」から
少し距離を置くことです。
「私は正しく、
あなたは間違っている」という考えを
いったん脇に置き、
自分の価値観もまた、
無数にある選択肢の一つにすぎないのだと、
謙虚な姿勢を持ちましょう。
これは決して
自分を否定することではありません。
むしろ、物事をより広い視野で
見つめ直すための第一歩です。
次に大切なのは、
相手の価値観を尊重する
と心に決めることです。
たとえ相手の意見に賛同できなくても、
その価値観がどこから生まれたのかを
理解しようと努めてみましょう。
相手には相手なりの経験や背景があり、
その中で育まれた価値観は、
相手にとっては「正しい」
と感じられるものです。
重要なのは、
相手の考えに同意できなくても、
その考えを尊重する姿勢を持つことです。
「私はこの点について、
あなたとは考え方が違います。
だから、
あなたの考えには同意できません。
けれど、あなたの考えを
心から尊重しています。
そして、私とあなたの両方が
受け入れられる新たな解決策を
一緒に見つけていきたいのです」――
そんな方向へ進んでいきます。
つまり、自分か相手かの
どちらか一方だけを
満たそうとするのではなく、
両者が受け入れられる
「第3の解決策」を
協力しながら探すことです。
それは、
自分の意見を押し通すことでも、
相手の考えにすべて合わせることでも
ありません。
また、単なる妥協とも違います。
そうではなく、
違いを活かし合いながら、
これまで思いつかなかった
新しい可能性を
ともに探っていくアプローチです。
そのプロセスの中で、
対立や妥協を超えた
第三の道が
開けてくることもあるからです。
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共通点を祝福し、相違点を資源として活用する
一見、正反対に見える夫婦関係でも、
よく観察してみれば
必ずどこかに
共通点が見つかるものです。
その関係は、まるで「お椀と蓋」
のようだと言えるでしょう。
向きは真逆で
役割もまったく異なりますが、
同じ材質でできていて、色も揃い、
ぴたりと重なったときに
初めて本来の機能を果たします。
夫婦も同じで、
表面的には価値観や好み、
考え方が正反対に見えることが
あるでしょう。
しかし、注意深く目を向ければ、
「関係をよりよくしたい」
「子どもを大切に育てたい」
「健康に過ごしたい」といった、
根底に流れる願いや目的に、
多くの共通点があることに
気づけるはずです。
まずはその共通の想いを確認し合い、
お互いに大切にしていくことから
始めましょう。
そのうえで、夫婦間の違いは
望ましくないものではなく、
成長や新しい発見につながる「資源」として
受けとめる姿勢が大切です。
相手の中にある、
自分にはない視点や考え方、
能力や感性を、
関係をより豊かにしていくための
材料として活用してみるのです。
違いがあるからこそ生まれる
創造性を信じ、その中にこそ
夫婦としての可能性が広がっているのだ
と思えるようになれば、
関係の質は
大きく変わっていくでしょう。
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あなたが最初の一歩を踏み出す?
理想を言えば、
夫婦のどちらもが同時に
このような視点を持ち、
互いを理解し合おうとする姿勢を
持つことができれば、
それに越したことはありません。
しかし、現実は
そううまくはいかないものです。
だからこそ、
どちらかが最初の一歩を
踏み出す必要があります。
そして、その「どちらか」とは、
今この考え方に気づいた
あなたではないでしょうか?
もしあなたが、
相手との違いを受けとめ、
相手の考えや感じ方を
尊重しようとする姿勢を見せたなら、
水面下で小さな変化が
芽生え始めるでしょう。
すぐに劇的な変化が
訪れるわけではありませんが、
その姿勢は少しずつ相手の心にも届き、
やがて相手もあなたの思いを
大切にしてくれるようになるでしょう。
種をまいても、
すぐに花は咲きません。
けれども、水を与え続ければ、
やがて芽を出します。
焦らず、無理のない範囲で、
今のあなたにできることを
少しずつ積み重ねていきましょう。
その一歩こそが、より豊かな関係を
育むことにつながるからです。
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おわりに
この記事では、
「違いは問題ではなく、
より豊かな関係への可能性である」
という視点をお伝えしました。
恋の魔法が解けたあと、
かつて魅力に感じていた
相手との違いが、いつの間にか
悩みや不満の種に
なってしまうことがあります。
でも、違いは本来、
悪いものではありません。
それどころか、より豊かで
バランスの取れた関係を築くための、
貴重な資源になり得るのです。
夫婦関係には、意識せずとも
自然と補い合うような役割が
生まれやすく、
それぞれの違いが見事に調和し、
関係全体のバランスを
保つことがあります。
これは、太極図に描かれる
陰と陽のような関係
ともいえるでしょう。
異なるものが出会い、
融合することで、
新しい力が生まれます。
火と水のように
正反対に見える性質でさえ、
共にあるからこそ
豊かさを生み出せるのです。
そのような関係を築くためには、
まず「自分の正しさ」にこだわりすぎず、
相手の価値観にも
耳を傾けてみることが大切です。
たとえ納得できない考え方であっても、
すぐに否定せず、
「そういう見方もあるんだな」
と尊重してみるのです。
その姿勢が、二人にとって
新たな可能性の扉を開く
きっかけになるでしょう。
さらに大切なのは、
違いばかりに目を向けるのではなく、
二人の間にある共通点にも
意識を向けることです。
そして、
その共通点を大切にしながら、
違いを創造の材料として
活かしていくことで、
思いもよらなかったような
素晴らしい関係へと
育っていくこともあるでしょう。
違いは、可能性です!
その可能性を信じ、
共通点に支えられながら、
二人だけの豊かな未来を
一緒に育んでいきませんか?