「万能感」と「有能感」
の二つの言葉には、
似たような響きがあります。
しかしながら、
これらの意味には、
根本的な違いがあります。
本記事では、
これらの言葉の意味の違いを
明らかにし、万能感ではなく
有能感を目指すべき理由について、
解説したいと思います。
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万能感と有能感、その違いを理解する
心理学において「万能感」とは、
目の前の課題に
コツコツと取り組むことなく、
「自分はすごい結果を出せる」
という幻想にしがみついている状態
のことを言います。
努力や練習を避けつつも、
「自分の隠れた才能さえ開花すれば、
自分はすごい結果を出せる」とか、
「自分は自分の人生を、
あるいは他者を、
自分の思いどおりに
コントロールすることができる」といった、
心の成熟度が低い人が
陥りやすい万能幻想を指します。
このような万能の自己像に
しがみつくことで、
自尊心を保っているのです。
地道な努力を続ける自分は、
魅力に欠け、かっこう悪く、
万能感からは程遠いと感じるため、
目の前の課題に対して
積極的になれません。
夢を語ったり、
大きな目標を掲げたりしながらも、
実際には小さな一歩も踏み出さず、
「自分が本気を出せば、
いつでも成果を出せる」と豪語しつつ、
実際にはその「本気」を見せることがない、
そんな状態が、
まさに万能感に囚われている状態です。
それとは対照的に、「有能感」は、
「自分にはできる」という信念や、
「練習を積めば物事を身につけられる」
という確信、「自分には○○する力がある」
という自覚など、より現実的で
建設的な感覚を指します。
万能感とは異なり、有能感は
努力や行動を促す動機付けに
なるものです。
夢や目標に向かって一歩一歩、
着実に行動を積み重ねていく力を
与えてくれるものなのです。
夢や目標を追いかける過程で、
思い通りにならない状況に
直面することも少なくありません。
しかし、そのようなときでも、
試行錯誤を重ね、挑戦を続けることで、
困難を乗り越え、
成功体験を積むことができます。
そして、そうした経験が
有能感をさらに強めていくのです。
また、万能感は、
「他人と比較して、自分が優れている」
「周囲を驚かせるような成果を出す自分」
といった他者意識が特徴です。
それに対して、
有能感は、他者と比較せずに
「自分はできる」
と感じることができる心理状態です。
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なぜ有能感が万能感より望ましいのか?
万能感はしばしば、
現実の能力を超えた信念に基づいており、
客観的な評価や現実の限界を
見過ごす傾向があります。
特に、経験が少なく
心の成熟に欠ける若者や、
努力をせずに偶然にも
物事が上手く運んだ経験を持つ人々に
顕著に見られます。
これに対して、有能感は、
努力によって
実際に成し遂げた成功体験や、
未知の分野への挑戦を通じて
困難を克服した経験から育まれます。
有能感が高い人は、
困難に遭遇した際に
柔軟に対応する能力を持っていますが、
万能感の強い人は
現実の挑戦や制限を過小評価しているため、
失敗や挫折に遭遇した際に
適切に対処することができません。
有能感は具体的な経験や学習を経て
徐々に構築されますが、
万能感はしばしば根拠のない自信に由来し、
現実から乖離していることも
珍しくありません。
つまり、非現実的だ
と言えるのです。
たとえ一時的に成功したとしても、
長期的な成長は
見込めないでしょう。
このような観点から、
有能感が万能感よりも優れている
という結論に至ります。
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万能感と有能感、そして心の成長
万能感は
まだ心が成熟していない人が
感じやすい感覚です。
これに対して有能感は、
自分のありのままの姿をきちんとみつめ、
等身大の自分の姿を
受け入れられる人が抱くものです。
言い換えれば、
有能感を抱くためには、
心の成長が求められる
というわけです。
人が生きていく中で
さまざまな経験を通じて、
失敗や挫折を
何度も経験することでしょう。
そして、
そうした経験を重ねるうちに、
人は次第に等身大の自分の姿に気づいて、
自分が万能ではないことを悟ります。
自己の限界や有限性を
認められるようになるのです。
これは、心理的にも精神的にも
成熟する上で欠かせないプロセスであり、
成熟への「通過儀礼」とも言えます。
自分自身の限界に直面したときに感じる
失望感や悔しさは、簡単に
受け入れられるものではありません。
これを受け入れるには
成熟した心が必要であり、
この段階に達するには、
心の広さを育て、
強くしていくことが必要です。
自分が万能ではないことを悟り、
それを受け入れられるようになると、
現実的な生き方を
始められるようになるのです。
現実に即した適応力や、
他人との協力関係を築く能力も
養われてゆきます。
こうして、
地に足の着いた一歩を踏み出し、
自己を磨き始めることができる
というわけです。
心が成熟するにつれて、
万能感から有能感へと変化し、
精神的に大人へと成長していくことが
望ましいとされています。
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有能感を育むためにできること
有能感を育むためには、
自己受容の練習を繰り返して
自己肯定感を高めることが有効です。
自己受容とは、
自分の長所だけではなく、
短所や弱点も含め、
自分自身の全てを全面的に受け入れ、
それらを肯定的に捉える
能力のことを指します。
成功したときはもちろん、
失敗や誤りを犯したとき、
自分が望ましくない状態にあっても、
自己の価値を認めてあげることです。
これは、実際には
難しいことかもしれませんが、
自己受容ができるようになれば、
どんな自分であっても
自分自身にOKを出すことができ、
自己の価値を認めることが可能になります。
自己受容を実践する際に重要なのは、
自分がどんな感情を持っていても、
それをそのまま受け入れることです。
たとえ不快な
ネガティブな感情であっても、
その感情を持つ自分自身を認め、
受けいれてあげることが大切です。
このようにして
練習を重ねることで、
あらゆる状況において
自分自身に「このままでよい」
という許可を出せるようになり、
自己肯定感が向上します。
自己肯定感が向上すると、
有能感も自然と育っていくものです。
自己をありのままに受け入れ、
可能な範囲で前向きに事に当たり、
現実に根差して確かな一歩を
踏み出せるようになるでしょう。
このプロセスを経て、
私たちは内側から強くなり、
難しい状況にも柔軟に
適応できる力を身につけてゆきます。
自己受容と自己肯定感の向上は、
有能感を養う基礎となり、
精神的な強さやレジリエンス力へと
つながるのです。
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まとめ:万能感を超え、有能感を育む
今回は「万能感」と「有能感」の
本質的な違いに焦点を当てて
解説しました。
「万能感」は、
根拠のない自信に由来する
非現実的な幻想であり、
心の成熟度が低い人が
陥りやすい状態です。
「他人と比べて自分が優れている」
と感じるこの感覚は、
他者への意識が強いことが
特徴と言えます。
万能感に固執することで
一時的に自尊心を保つことはできますが、
実質的な自己成長へと
つながるわけではありません。
その一方で、「有能感」は
努力と実績に基づく実際の成功体験や、
新しい挑戦を通じて得られる
困難の克服から生まれます。
有能感を持つ人は
自己の現実を受け入れ、
手の届く範囲で自己改善に
取り組むことができます。
成長の過程で人は、
繰り返される失敗や挫折を経験し、
等身大の自分の姿を見つめ、
自分が万能ではないことを悟ります。
この過程で直面する
失望や不満を受け入れるのは
容易ではありません。
しかし、
その受容が可能になると、
心はより強固に、
精神はより成熟していきます。
自己の限界を認識することは、
心理的にも精神的にも
成熟するための重要なステップです。
このプロセスを経て、
人は万能感から距離を置き、
有能感の育成に必要な土台を
築くことができるのです。
有能感を育むためには、
自分の感じる感情をそのまま
受け入れる姿勢が大切です。
あるがままの自分の感情を
感じるまま受け入れることにより、
自己受容が深まり、
自己肯定感が増してゆきます。
そして、それに伴い
有能感も育まれてゆくのです。
有能感が高まれば、
自分の限界を認めつつも、
自分の能力を最大限に引き出し、
充実した人生を送るために役立ちます。
万能感と有能感の違いを理解し、
有能感の向上を目指すことで、
より充実し、幸せに満ちた人生を
歩んでいきましょう!