傍から見れば、
普通の家庭。
親は普通に働いていて、
ちゃんと収入を得ている。
子供も衣食住は満たされて、
普通に学校へ行けている。
外から見れば、
大きな問題もなく、
普通に生活しているように見える。
しかし、
そんな普通の家庭で育った子供が
家庭環境が原因で
メンタルを病む場合もある。
今回は、
なぜそんなことが起きるのか?
について。
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その背景には、
家庭の裏と表が極端に違う
事実がある。
外の人に見えている部分と、
家の中に入らなければ
分からない部分が
あまりにも違いすぎる。
親は、家庭の外では何も支障なく、
普通に生活しているように
振る舞っている。
時には、
大きな不満があっても、
満たされているふりをして、
背伸びした自分を
他人に見せることも珍しくない。
しかし、実際はそうではなく、
幸せからはほど遠い状態だ。
ムカつくことが多くて、
フラストレーションも溜まっており、
イライラすることばかりだ。
そんな自分の不満を
どうにかして晴らしたく、
近くにいる立場の弱い人を
利用してしまうのだ。
父は母を利用して、
憂さ晴らしをする。
そして、
父からの被害に遭った母は
子供を利用して
欲求不満を晴らす。
子供の立場では
親は絶対的な存在だ。
子供は自分一人では
生きてゆけないから、
親を頼るしかない。
小さな頃には
親の言うことや、やることは
すべて正しいと思っている。
親から不当な扱いを受けても、
親は正しいから、
自分が間違っていると
思い込んでしまうのだ。
親から理不尽な扱いを
受け続ければ、
子供は徐々に「自分はダメだ」
と間違った自己イメージを
持つことになり、
そのせいで、その後の人生も
生き辛いものになる。
親の欲求不満のはけ口として
使われた子供は
心を徐々に病んでゆく。
体裁の良い表向きの家庭の姿を見れば、
「なんで普通の家なのに、
子供はこんなに病んでしまうの?」
と不思議に思うだろう。
しかし、実際には、表の姿とは
全然違う裏の事情があり、
それが分かれば、
「そうなるのも当然だ」と納得できる。
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父は毎日仕事へ行く。
台風で大荒れの時も、
風邪ひいて体調が多少悪くても、
「休むのは良くないから」と言い、
無理してでも出勤する。
朝は早くに家を出て、
夜はほとんど毎日残業。
勤労意欲が高くて、
真面目で一生懸命働いている。
これだけ見れば、
立派なお父さんだ。
しかし、これは
父のほんの一面であり、
家に帰ってくれば、
ガラッと人が変わる。
夕食の料理の一品に
気にくわない味付けがあれば、
「なんだこれは!
全然味がしないじゃないか!
専業主婦のくせに、
まともに料理もできないのか!」
父の怒鳴る声が
隣の部屋から聞こえてきた。
お茶や食べ物が
少しでも冷めていれば、
「入れ直せ!」と命令調。
まるで王様のような
振る舞いだ。
そんな態度を取られても
専業主婦の母は何も言えない。
「すみません」と謝って、
父の機嫌を取るために
言われた通りに動く。
その理由は、
もし父に逆らえば、
「女子供は黙れ!」と怒鳴り散らされ、
引っ叩かれることもあるからだ。
そして、その後は父の口から
決まり文句の台詞が出る。
「お前ら、誰のお陰で
おまんま食えていると思うの!」
「俺に感謝しろ!」
と恩着せがましい態度だ。
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そんな父の姿を
家庭内で見ていれば、
父の職場に一緒について行った時、
驚くことが多かった。
誰に対しても穏やかな口調で
丁寧に会話する父。
まるで紳士のようだ。
父の同僚が
「可愛らしいお嬢さんですね」
と褒めてくれたら、
嬉しそうに微笑みながら、
「いやそうでもないですよ」
と言いながら、私の頭を撫でた。
同僚にも表面上は
礼儀正しく接している父。
しかし、家に帰れば、
その同僚の悪口を
平気でバンバン言っている。
父が上司や同僚のことを
非難する時、
聞き役になるのは、いつも母。
母は父に同情して、
「なんて酷い人たちなんでしょう」
と言い、父を慰めているのだ。
職場の人たちの目の前では
素晴らしい紳士的な
振る舞いをする父でも、
家に帰れば、
全然違う姿に変身する。
小さな子供の私は、
あまりのギャップに驚かされ
ショックを受けた。
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機嫌が良い時、悪い時、
その時々で見せる態度が
全く違う父。
ご機嫌な時には、
同じことを言っても
叱られないのに、
ご機嫌斜めになれば、
子供を蹴っ飛ばしたり、
引っ叩いたり、
どなり散らしたりすることも
しばしばだった。
こういう親の元では
子供は安心できない。
親の機嫌を損ねないよう
つねに親の顔色を伺い、
ビクビクと生活している。
上機嫌の時の父は、
お寿司やケーキのお土産を
家に持ち帰ることも多かった。
「これ美味しんだよ! 早く食べな!」
と母や子供の私にも勧めてきた。
そんな時、私たちが
それを直ぐに食べて、
「うん、本当に美味しいね」
と喜ぶ姿を見せれば、
父は満足な様子だ。
しかし、
「お腹がパンパンだから、
今は食べれない」と言えば、
機嫌を損ねて、
「なんだよ!
せっかく買ってきたのに!
感謝もない!」とブツブツ言い、
怒ってしまうこともあった。
父にとっては、
相手が心底喜ぶことをするよりも、
自分自身を喜ばせることのほうが
ずっと大事だった。
子供や妻を喜ばせることができる
立派な自分に自惚れて、
気分良くなりたかっただけだ。
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こういう父と生活していれば、
母もフレストレーションが溜まる。
イライラして、欲求不満で、
その不満をどこかにぶつけたい!
本当は不満の原因である父に
ぶつけるべきなのに、
養って貰っている以上、
そうすることはできない。
そのため、
父への反発の気持ちは
押し殺されて、
立場の弱い子供に
母の欲求不満の矛先が
向いてしまう。
子供のやることを
いつも見ていて、
常にあら探しをしている状態だ。
小さなミスが見つかれば、
因縁をつけて、
「こんなこともできないの!
本当に困った子ね」とダメだしする。
母は私のすることなすこと
すべてを否定しまくった。
「こんな髪型じゃ
みっともないでしょ!」
私が外出する時には、
団地のベランダから私の歩く姿を
いつも見ている。そして、
「大股で歩かないで
もっと上品に歩きなさい!」と𠮟りつける。
「化粧がなっていない!」
「そんな服を着ないで、
これを着なさい!」
母は、私がやろうとすることに
「そんなのダメ」と反対して、
自分の好きな服装、
気に入った髪型にさせようとした。
幼い子供のうちなら
親からコントロールされるのも
仕方ない。
でも、成人に近い年齢になっても
こんな調子で子供を
支配しようとするのは
どうだろうか?
おまけに母は、
「女の子なら、掃除、洗濯など
家事が楽しめなければ
いけないのよ!」と言う始末。
「嫌いでも家事を手伝いなさい」
というのなら、分かるけれど、
母の場合は、
「女だから~が好きでなくてはならない」
と、自然と湧く「好き嫌いの感情まで」
否定してくるのだ。
「好きになれない!」と返せば、
「近所のA子ちゃんは、
家事を立派にこなすだけでなく、
お菓子作りも上手なのよ!」
と他人との比較で
私に劣等感を植え付けようとした。
毎日、毎日、
親に細かいところまで干渉されて、
ネチネチ言われ続ければ、
子供の神経がオカシクなるのも
無理はない。
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裏の見えないところでは、
子供に平気で暴力を振るい、
怒鳴りつけたり、罵倒したり。
しかし、それは
家の中で起きているだけ。
一旦外に出れば、
そんな様子は一切見せない。
それどころか、
紳士淑女的に振る舞って、
いかに自分が立派な親か
見せる姿もある。
体裁は、実際よりもかなり立派。
よって、普通の家庭だ
と外の人には見えるだろう。
でも、一旦、家の中に入れば、
全然違った親の姿がある。
皆、このことを知らずに、
表面的なことだけを見て、
「あなたのお父さん、
優しくていいね」なんて羨ましがる。
確かに、機嫌の良い時には、
優しい言葉をかけることもあるが、
しかし、それは
機嫌の良い時だけ。
ご機嫌斜めになれば、
180度違った性格になり、
大暴れする父だ。
機能不全家庭と言えば、
親が無職でアル中で、
子供もネグレクトを受けている
と想像しがち。
もちろん、
そういう家庭は誰が見ても
機能不全家庭だと理解できる。
しかし、そんな家庭だけが
機能不全家庭なのではない。
家庭の裏と表があまりにも違う、
子供が安心して生活できない
厳しい環境の家庭も
機能不全家庭のひとつになる。
ただ、外の人には
それが見えないから、
分からないだけ。
そんな家庭で生活すれば、
子供の心の健康は徐々に蝕まれてゆき、
そのうちメンタルを病んでしまっても
不思議ではないのだ。