成人した子どもと、
いつまでも良好な関係を保ちたい
と願うのは、
親としてごく自然なことでしょう。
しかし、気づかぬうちに、
親の何気ない言動が
子どもとの距離を
広げてしまっていることも、
けっして少なくありません。
この記事では、
親が無意識のうちに取りがちな、
望ましくない
子供との関わり方を
7つご紹介します。
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子どもが自分から離れていく?
「子どもが成人したあとも、
できれば仲の良い関係でいたい」――
そんな思いは、
多くの親に共通する願いでしょう。
ところが、
知らず知らずのうちに、
子どもが離れていってしまうような
言動をとっていることも
あるのが現実です。
「どうして最近、
子どもとの会話が
減ってしまったのだろう?」
「以前はよく話してくれたのに、
今は距離を感じる…」
そんなふうに感じることがあるなら、
もしかしたら、その原因は
親側にあるのかもしれません。
愛情を込めて
関わっているつもりでも、
その関わり方が
子どもにとっては重荷になっていたり、
自分らしく生きることを
妨げている場合もあります。
親子関係は、
長年の積み重ねによって
育まれるものです。
だからこそ、
日々の何気ない関わり方を
見直すことが大切なのです。
ここからは、
親が無意識にしてしまいがちな
「子どもとの距離を生む
7つの関わり方」をご紹介し、
今からでも取り入れられる
改善のヒントをお伝えします。
親子関係に
悩みを抱えている方はもちろん、
これからもっと良い関係を
築いていきたいと考えている方にも、
きっと参考になる内容です。
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子どもだけが生きがいになっていませんか?
親にとって
子どもは大切な存在ですが、
もし子どもを
「唯一の生きがい」としているなら、
のちに思いもよらない問題が
起きることがあります。
一見すると
深い愛情のように見えても、
実はその想いが、子どもにとって
大きな重荷となってしまうことが
あるからです。
親が自分自身の人生の目標や
楽しみを持たず、
子育てだけを生きる目的としていると、
無意識のうちに
子どもに依存するようになります。
「子どもが唯一の生きがい」
という状況では、親は子どもに
過度な期待をかけたり、
過干渉になったりしやすくなります。
子どもの成功を自分の成功と感じ、
子どもの失敗を
まるで自分の失敗のように
受け止めてしまうのです。
こうした環境で育った子どもは、
常に親の期待に応えなければならない
というプレッシャーを
感じ続けるでしょう。
親を失望させたくないという
不安に苛まれることも、
珍しくありません。
その結果、自分らしい人生を
歩むことが難しくなり、
やがては自分自身を守るために、
親から距離を取るようになることも
あるのです。
理想的なのは、親自身が
日々の生活の中で
夢中になれる活動を持ち、
自分の人生を充実させていることです。
親が自立した大人として
人生を楽しんでいる姿は、
子どもにとっても
大きな安心感につながるでしょう。
その安心感こそが、
子どもとの健全な関係を築くための
土台になるのです。
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過度なコントロールが招く反発
小さな子どものうちは
分別がつかないため、
親の導きは欠かせません。
しかし、
子どもの成長にあわせて、
親の関わり方も
少しずつ変えていく必要があります。
子どもはやがて親から独立し、
自分自身の人生を
歩み始めるからです。
ところが、子どもが成長しても、
小さな子どものように
逐一コントロールしよう
とする親もいます。
子どもの交友関係や恋愛、
進路、就職といった、
本来は子ども自身が
選ぶべきことにまで干渉し、
親の言う通りに
従わせようとするのです。
こうした関わり方は、
子どもにとっては
自由を奪われることを意味します。
人には自由を取り戻そうとする
本能的な欲求があるため、
過度なコントロールを受けた子どもは、
それに対抗しようとする行動を
取ることもあるでしょう。
その結果、親から
距離を置くように
なることもあるのです。
「助言」は望ましくても、
「命令」は
控えたほうが無難です。
助言とは、
子どもの選択を尊重しながら、
親の経験や知恵を伝えること。
一方、
命令は子どもの意思を無視し、
親の思い通りに
動かそうとする行為です。
子どもが本当に求めているのは、
「自分で考え、自分で決める」
機会を与えられることです。
親として
心配になることもあるでしょうが、
子どもの自己決定を
尊重することこそが、
長期的な信頼関係を築く
鍵となるでしょう。
たとえ子どもが
間違った選択をしたとしても、
それもまた成長の一部として
捉えるべきです。
そのようなとき、
親の温かく見守る姿勢が
何より大切なのでしょう。
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恩着せがましさが関係を冷やす!
「育ててやった」
「お金をかけてやった」といった言葉を、
子どもに繰り返す親がいます。
これらの言葉は、
親の愛情や努力を
伝えているつもりかもしれませんが、
子どもにとっては重くのしかかる
負担となってしまうでしょう。
「誰の金で育ったと思うのか?」
「大学まで出してやったのに」
といった言葉は、
子どもに感謝の気持ちを抱かせるどころか、
むしろ反発心を生み出す原因になります。
こうした関わり方を続けていては、
良好な親子関係を築くのは
難しくなるでしょう。
愛情とは、本来
見返りを求めるものではありません。
親が子どもに注いだ愛情や努力は、
何かを見返りに得るためではなく、
ただ子どもの幸せを
願ってのものであるはずです。
真の感謝の気持ちは、
押し付けられて生まれるものではなく、
自然に芽生えるものです。
親が見返りを求めず、
変わらぬ愛情で
子どもに関わり続けることで、
やがて子どもはその深い愛情に気づき、
心から感謝するようになるでしょう。
恩着せがましさは、
そうした自然な感謝の芽を
摘んでしまうものです。
親ができることは、子どもが自ら
感謝を感じられるような関わり方を
心がけることであり、
それを押しつけることではありません。
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正しさよりも共感を
子どもが何かを話しているとき、
親はつい「正しい答え」を
教えたくなるものです。
けれども、
子どもの主張を否定したり、
自分が正しいと思うことを
押しつけたりする親は、
次第に子どもから
距離を置かれるように
なってしまうでしょう。
子どもは、自分の感情を
親にわかってほしくて
話をしています。
ところが、
親がその感情を受け取らず、
「理屈」や「正論」で返してしまうと、
子どもは「理解されていない」と感じて、
失望するでしょう。
「でも、それは違う!」
「なんでそんな考えなの?」
「お前の考えは甘い」といった言葉は、
子どもの心を閉ざす原因になります。
このような関係では、
子どもは「話しても無駄だ」
と感じるようになり、
親との対話を避けるように
なるでしょう。
親としては良かれと思って
助言しているつもりでも、
子どもにとっては
「気持ちを否定された」
と受け取られてしまうのです。
「正しさ」が関係を壊してしまうのは、
そこに子どもの感情が
置き去りにされているからです。
子どもが本当に求めているのは、
まず自分の気持ちを
理解してもらうことなのです。
たとえ子どもの考えが未熟に思えても、
まずはその気持ちに
寄り添うことから始めましょう。
「そうなんだね」
「そう感じているんだね」
といった共感の言葉が、
子どもの心を開く鍵になります。
「わかってもらえている」
と感じることで、
子どもは親の助言にも
耳を傾けやすくなるでしょう。
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プライバシーの侵害はNG行為
子どもが成長するにつれて、
親が子どもの
プライバシーを尊重することは、
ますます重要になってきます。
許可なく子どもの私物を見る、
勝手に携帯電話を確認する、
日記や手紙を読む――
こうした行為は、子どもの
心理的な領域への侵入にあたります。
このような関わり方は、
子どもの心の境界線を
踏み越えることになり、
個人の領域が守られない環境では、
信頼よりも警戒心が
育ってしまうでしょう。
「関心」は望ましくても、
「干渉」は避けるべきです。
関心とは、
子どもの安全や幸せを思いやること。
一方で干渉は、子どもの
自律性やプライバシーを無視して
子供の領域に無断で踏み込むことです。
親の愛情や心配が、子どもにとっては
「監視」として
感じられてしまうこともあるため、
注意が必要です。
子どもは成長の過程で、
自分だけの空間や時間を
必要とするようになります。
これは、自立した一人の人間として
育っている証です。
親がこの成長を尊重し、
適切な距離を保つことで、
子どもは安心感を持ちやすく
なるでしょう。
信頼される親になるためには、
「見守る姿勢」が欠かせません。
困ったときには安心して
相談できる存在でありながら、
普段は過度に踏み込まず、
適度な距離を大切にすること。
プライバシーを尊重することは、
子どもを一人の人間として
認めることでもあります。
この尊重の姿勢こそが、
長く続く信頼関係の土台に
なるのです。
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親の問題に子どもを巻き込まないことの重要性
夫婦関係や親戚との間の問題に、
子どもを巻き込んでしまう親がいます。
特に夫婦関係がうまくいっていない場合、
一方の親が子どもを味方につけて、
もう一方に対抗しようとすることがあります。
「お父さんよりママの味方だよね」
「あの人、ひどいと思わない?」
といった言葉で、子どもに無関係な問題を
背負わせてしまうのです。
また、子どもを
自分の愚痴の聞き役に
してしまうこともあるでしょう。
これは、親の感情のはけ口として
子どもを利用しているようなものです。
親の感情処理に巻き込まれた子どもは、
本来担うべきではない問題を
背負わされることになります。
それは子どもの健やかな成長を
妨げるだけでなく、
親子関係にも深刻な影響を及ぼします。
子どもは
「親を支えなければならない」
というプレッシャーを感じ、
自分自身の気持ちや問題を
後回しにしてしまうようになるからです。
もちろん、親にも心の余裕がなく、
苦しい状況の中で
そうしてしまうこともあるでしょう。
しかし、
子どもを自分の問題に巻き込めば、
その負担は子どもの心に
重くのしかかります。
このような状態が長く続くと、
子どもはやがて心を閉ざし、
親との距離を
取るようになることもあるのです。
そうならないためにも、
自分の抱える問題に
子どもを巻き込まない意識が必要です。
家族の健全な関係とは、
それぞれの役割と責任を明確にし、
適切な距離感を保つことです。
子どもは
「親の相談相手」ではありません。
親の問題は、
親自身で向き合うか、
適切な大人に相談すべきものです。
子どもには、子どもらしく
安心して過ごせる環境を与えることが、
親の大切な責任なのです。
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過保護が奪う成長の機会
子どもが本来自分でやるべきことまで、
親が先回りして
やってしまうことがあります。
これは「過保護育児」と呼ばれ、
一見すると子どもへの
深い愛情のように
見えるかもしれません。
しかし実際には、
子どもの成長を妨げる
要因となることが多いです。
なぜなら、
親が何でも先回りして
やってしまう環境では、
子どもが自分で選び、試し、
失敗を通して学ぶ経験が
奪われてしまうからです。
失敗は、成長に欠かせない
大切なプロセスです。
子どもは失敗から学び、
次によりよい選択が
できるようになるでしょう。
けれども、親が常に
失敗を避けさせようとすると、
その貴重な学習機会が
失われてしまうのです。
過保護な関わりが続くと、
子どもの「自分で決める力」が
育ちにくくなります。
何ごとも親が決めてくれる状況では、
自分で判断する習慣が身につかず、
次第に依存的な傾向が
強まっていくでしょう。
そして、大人になったとき、
自分の依存状態に違和感や
居心地の悪さを
感じることもあるでしょう。
その反動として、
「もう親に頼りたくない」と強く感じ、
親との距離を
広げてしまうこともあるのです。
これは皮肉なことに、親の愛情が
裏目に出た結果とも言えるでしょう。
「任せる勇気」を持つことは、
親自身の成長でもあります。
子どもが失敗するかもしれない
とわかっていても、
あえて経験させることが、
長い目で見れば大きな力になります。
失敗から学ばせるという
愛情の形もあるのです。
親にできることは、
子どもが失敗したときに
子どもに寄り添ってあげること。
失敗を
避けさせることではありません。
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関係修復への道のり:今日からできる小さな変化
これまで、
親が無意識にしてしまいがちな
7つの望ましくない関わり方を
紹介してきました。
読んでいて、思い当たることが
あった方もいるかもしれません。
しかし、そのことに
落胆する必要はありません。
親も人間ですから、
不完全な存在です。
また、「変わろう」とする姿勢を持ち、
今の自分にできる
小さな変化を重ねていけば、
親子関係は改善していくものだからです。
まず大切なのは、
「話を聞く姿勢」を持つことです。
子どもが話しているとき、すぐに
アドバイスをしたり、
否定したりするのではなく、
まずは最後まで耳を傾けましょう。
子どもの気持ちに共感し、
その感情を受け止めることが、
信頼関係の土台となります。
次に、子どもの選択を
尊重する練習をしてみましょう。
小さなことからで構いません。
子どもが自分で決めたことには、
たとえそれが親の考えと違っていても、
まずはその選択を受け入れる姿勢を
示すことが大切です。
心配になることもあるでしょうが、
子どもの成長を信じて見守ることも、
立派な愛情の表現です。
また、
これまで自分がしてきたことに対して、
子どもから感謝を求めたり、
見返りを期待したりすることは、
避けたほうが無難です。
そして、何よりも大切なのは、
親自身が「自分の人生を楽しむこと」です。
趣味を見つけたり、
友人との時間を大切にしたり、
新しいことに挑戦してみることで、
親自身の世界が広がっていくでしょう。
親がいきいきと
日々を過ごしている姿を見ることは、
子どもにとっても大きな安心につながり、
自然と敬意の気持ちが育っていくものです。
親の「変わろうとする姿勢」は、
たとえ時間がかかっても、
きっと子どもに伝わります。
完璧である必要はありません。
一歩ずつ、少しずつでも
前に進もうとするその姿勢を、
子どもはしっかり
感じ取ってくれるでしょう。
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おわりに
この記事では、
「成人した子どもと
良好な関係を維持するために、
親が避けるべき7つの関わり方」
についてお話ししました。
ご紹介したのは、
1)子育てだけを生きがいにすること
2)子どもを自分の思い通りにコントロールすること
3)子どもに対して恩着せがましい態度を取ること
4)子どもに自分の正しさを押しつけること
5)子どものプライバシーを侵害すること
6)親自身の問題に子どもを巻き込むこと
7)子どもに対して過保護になること
です。
どれも、無意識のうちに
やってしまいがちなこと
かもしれませんが、
これらの行為は知らず知らずのうちに
子どもの心を遠ざけてしまう可能性があるため、
注意が必要です。
これまでの望ましくない関わり方に気づき、
今この瞬間から
少しずつでも変えていこうとすれば、
親子関係はきっと改善していくでしょう。
子どもとの関係は、
一朝一夕には築けません。
それでも、日々の積み重ねによって、
親子関係を健全で温かいものに
変えていくことは可能です。
どうか焦らず、
自分自身の人生も楽しみながら、
今日からできる一歩を
踏み出してみてください。
その一歩が、これからの親子関係を
より豊かなものへと
導いてくれるでしょう。