自己肯定感が高く、
自分らしく
幸せな人生を歩める人を
育てるには、
どのような点に気をつけて
子どもに接すればよいのでしょうか?
この記事では、親の立場から、
子どもが丈夫な心の器を
育むためにできることや、
母性と父性の両方を
バランスよく働かせることの大切さ
についてお話しします。
子育て中の親御さんに
参考になる内容です。
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心の器とは何か?
私たちは誰もが、それぞれ
自分の「心の器(心的容器)」
を持っています。
この心の器が
丈夫でしっかりしているほど、
自分の中に湧き起こる
さまざまな感情をそのまま受けとめ、
しっかりと感じて
味わうことができます。
心の器が丈夫な人は
「自己受容」がしやすく、
自己肯定感も
高くなる傾向があります。
自分の感情を上手に扱えるため、
自分らしい人生を、より楽に
幸せに歩みやすくなるのです。
心の器がしっかりしている人は、
よくない出来事が起きて
気分がひどく落ち込んだときでも、
がっかりした気持ちや悲しみを
無理に否定せず、
「今はとても落ち込んでいるんだな」
と素直に認めることができます。
湧き上がる感情を押し込めたり、
感情に振り回されたりすることなく、
心の器の中でしっかりと
抱え込むことができるのです。
この心の器は、
子ども一人の力だけで
自然に大きくなるわけではありません。
幼いころから
親との関わりを通じて形作られ、
それを自分の中に
取り込みながら育っていくものです。
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しっかりした心の器を育むために親ができること
子どもは日々、
泣いたり笑ったり、
ときには怒ったりがっかりしながら、
感情を素直に
あらわにすることが多いものです。
こうした子どもの感情に対して、
親が「器」となって
受けとめる役割を果たすことで、
子どもは「自分がどんな気持ちになっても
大丈夫なんだ」と安心感を得ます。
これが、子どもの「心の器」を
育てる最初の一歩になるのです。
たとえば、
子どもが友達とケンカをして
泣きながら帰ってきたとき、
母親が「友達とケンカして悔しかったね」
「悲しかったね」
と声をかけてそばにいてあげると、
母親は子どもの「悔しさ」や「悲しみ」を
受けとめる器となっていることになります。
このとき子どもは、
抱えきれない感情を
「泣く」という形で外に出し、
あふれ出た感情を
母親が「器」となって
受けとめて抱えてくれます。
そのことで、
子どもは安心できるのです。
このとき母親は、まだ「心の器」が
十分に育っていない子どもに、
「心の器」の機能を
提供してあげているとも言えるでしょう。
子どもは、こうした安心を
何度も繰り返し体験するうちに、
それを少しずつ
自分の内面に取り込んでいきます。
親が提供してくれた
「心の器」の機能を
自らの中に取り込み、
内在化させながら、
自分自身の「心の器」を
形づくっていくのです。
こうして「心の器」が育つことで、
「自己受容力」も高まっていきます。
これこそが理想的な
「心の器」の育成過程であり、
自己受容する力の土台になるものです。
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母性と父性が人を育てる
人を育てるうえで大切なのは、
共感的・受容的な「母性」と、
枠組みをしっかりと設定して守る
「父性」の両方が
バランスよく働くことです。
どちらか一方だけでは不十分で、
両方がそろってはじめて
健全な心の器が育まれていきます。
母性は、子どもの感情を
丸ごと受けとめることに象徴されます。
子どもがうれしい、楽しい、悲しい、
怖いといった感情を抱いたときに、
「うれしいね」「楽しいね」
「悲しいね」「怖いね」と、
どのような気持ちもそのまま受けとめ、
抱きしめるように受容するのが母性です。
一方、父性は
何でも許してしまうのではなく、
「できること」と「できないこと」、
「やってよいこと」と「やってはいけないこと」
をはっきりと伝える役割を担います。
こうすることで、子どもは必要な
秩序や境界線を学ぶことができます。
そして、思い通りにならない場面に
直面したときにも、少しずつ
その状況に耐えられる力を
育んでいけるのです。
父性は一般に「厳しさ」
と結びつけられることが多いですが、
必ずしもそうとは限りません。
たとえば、
子どもがいけないことをしたときに、
厳しく叱りつけるのではなく、
「それはいけないことだよ」
と優しく伝えることも、
立派な父性的な働きと言えます。
こうした父性が
しっかりと示されることで、
子どもは社会や家庭のルールを学び、
円滑に社会生活を
送れるようになっていくのです。
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子どもの欲求にどう応えるか?
子育ての中で、
子どもの欲求に
どこまで応えればよいのか
悩んだ経験のある方は
多いのではないでしょうか?
何でも子どもの言う通りに
与えてしまうと、
「世の中はすべて自分の思い通りになる」
と誤解したまま成長してしまいます。
しかし、
まったく願いを聞き入れないと、
今度は「自分は理解されていない」
と感じさせてしまうでしょう。
ここで大切なのが、
母性的な受容と
父性的な境界設定の両立です。
たとえば、小学生の子どもが
「スマートフォンを買ってほしい」
と強く求めてきたとします。
「みんな持っているのに、
自分だけ持っていないのは恥ずかしい」
と訴えられたとき、
親としては悩ましい場面です。
このような場合、子どもに
スマートフォンを無条件で
与える必要はありません。
夫婦で話し合った結果、
買わないと決めるのも
一つの選択です。
その際には、子どもに
「今は買えない理由」を
丁寧に説明してあげればよいでしょう。
同時に、「どうしても欲しいのに
手に入らないのはつらいよね」
「友達との話題に入れなくなるのは
不安だよね」と、
子どもの気持ちには
しっかり寄り添ってあげることが大切です。
つまり、行為(doing)の面では
「買えない」という
父性的な境界を示しつつ、
「欲しいと感じる気持ち」や
「仲間外れに
なるかもしれないという不安」には
母性的に寄り添い受けとめるのです。
こうした経験を通じて、
子どもは「世の中には
手に入るものと
手に入らないものがあるけれど、
自分の気持ちは大切にされる」
と実感できるでしょう。
これにより、
思い通りにならないことへの耐性が
育まれると同時に、
どんな感情を抱いていても
自分は受け入れられているのだ
と学んでいくのです。
これこそが、
父性と母性がともに働く
理想の形です。
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母性と父性の考え方を自分自身にも活かそう!
母性と父性の視点は、
子どもに対してだけでなく、
自分自身に対しても役立ちます。
自己受容というと、
自分の欠点や失敗も含めて
すべてを無条件に「肯定」するような
印象を持たれるかもしれませんが、
実際にはここでも、
感情(being)と行為(doing)を
分けて考えることが大切です。
自分の感情がどんなものであっても、
「そう感じているのだ」
と認めてよいのです。
一方で、行為については
「改善できる点はないだろうか」
と振り返る必要があるでしょう。
たとえば、あるチームリーダーが
プロジェクトの遅延を
部下のせいだと決めつけ、
思わずきつい口調で責めてしまったあと、
「自分は失格だ」と落ち込んでいる場面を
想像してみてください。
行為の面では、
部下を責め立てたという事実があり、
その結果、部下に屈辱的な思いをさせ、
周囲の雰囲気も
悪くしてしまったかもしれません。
そこは反省し、
改善策を考える余地があるでしょう。
しかし感情の面では、
「納期が迫っていて焦っていた」
「ミスを繰り返されて
苛立ちを感じていた」といった自分の気持ちを、
そのまま受けとめてあげてよいのです。
ここを否定したり、
「こんなことでイライラするなんて、
自分は人間としてダメだ」
と責めすぎたりすると、
行為の改善以前に
自分を追い詰めてしまうでしょう。
つまり、自己受容には、
自分の感情を「それでいい」
と認める母性的な働きと、
行為を「ここは直せるかもしれない」
と区別して考える父性的な働きの、
両方をバランスよく持つことが
望ましいのです。
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母性も父性も両方必要
ここまで見てきたように、
丈夫な心の器を育むためには、
母性と父性の両方が欠かせません。
感情に寄り添う母性がなければ、
私たちは傷つきや不安を
誰にも受け止めてもらえないまま孤立し、
自分の感情をうまく扱えなくなり、
心を苦しめてしまうでしょう。
一方で、父性がまったく機能しないと、
何でも許されてしまう世界で
自分勝手に振る舞うようになり、
社会で必要なルールや責任感を
身につける機会を逃してしまうでしょう。
父性は秩序や境界を示し、
母性はそのそばに寄り添い、
安心感を与えます。
この2つが同時に働くことで、
子どもは安心して感情を表現しながらも、
必要なルールを理解し、
行動を自ら
調整できるようになっていくのです。
これは大人でも同じで、
自分の感情をきちんと受けとめつつ、
行為の面では
周囲と協調しながら
成長を重ねていけるのです。
母性と父性が
バランスよく働く環境では、
人は安心して「自分らしさ」を
発揮することができます。
「どんな気持ちでも受け止めてもらえる」
と感じられれば、弱音や本音も
口にしやすくなるでしょう。
そして、たとえ
間違った行動をしてしまっても、
「正すべきところは正そう」
と前向きに受け止めることが
できるでしょう。
こうした環境の中でこそ、
人は自分の可能性を
のびのびと育てていけるのです。
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おわりに
この記事では、
「自己肯定感が高く
幸せに生きられる人」
を育てるために欠かせない
「心の器」という考え方や、
母性と父性がバランスよく
働くことの重要性について
お伝えしてきました。
子どもの感情に寄り添い、
受けとめる母性的な働きがあるからこそ、
子どもは安心して
自分の思いを表現できるようになります。
一方で、「やってよいこと」
「やってはいけないこと」を
しっかりと示す父性的な働きが、
社会のルールや責任を学ぶ機会を与え、
思い通りにならないときにも
折れずに立ち直る強さを育んでいくのです。
さらに、私たち大人自身も、
自分の感情を母性的に認めながら、
行動の面では父性的に
改善を図る視点を持つことで、
自己受容を深めると同時に、
社会生活をより円滑に送る
手助けにもなるでしょう。
母性と父性の
どちらか一方に偏るのではなく、
両方の視点を意識して取り入れれば、
親子ともに
心豊かに成長していけるでしょう。
どうか、あなたのペースで
母性と父性を意識したコミュニケーションを、
お子さんとも、
ご自身とも実践してみてください。
その積み重ねが、お子さんの
自己肯定感と幸せを支える、
土台となっていくでしょう。
そして、
自分自身の心の器も丈夫になり、
より楽に生きていけるように
なるでしょう。