20代の頃、
私は「一生結婚しない」
と信じていた。
結婚するには、相手が自分を気に入る、
そして、自分も相手を気に入る
と2つ条件が満たされる必要がある。
私の場合は、絶対にそんなことは起きない
と思い込んでいた。
そう思うようになったのは、
私の実の両親によるところが大きい。
私の母は、私に対して否定的な言葉を
年がら年中、投げつけてきた。
「あんたは、何もできないし、
性格も悪くて、心が冷たい子だから、
嫁の貰い手なんかない!」
というようなことを、
常に私に言っていた。
確かに、私は不器用で、
家事一般を上手くこなせないし、
できないことが多かった。
正直、自分の性格が悪い
と思ったことはない。
でも、容姿や身体の体型には
全く自信がなかった。
だから、自分を気に入ってくれて
プロポーズしてくれるような人は
いないのだろうと思っていた。
相手が自分を気に入る以前に、
私は「結婚」という言葉を聞くだけで、
嫌な感情が湧いてきた。
自分の両親を見ていて、
「結婚は地獄のようだ」
と感じていたからだ。
男性にとってよりも、
女性にとって、地獄のようだと思えた。
私の日本の実家では、
男尊女卑の風潮が強くて、
父はとにかく偉い存在だった。
いつも、威張っていて、偉そうに振舞っている。
「あれ持ってきて」
「これして」と父が言うだけで、
母は「あれ」や「これ」が何だか分かって、
文句を言わずに「はいはい」
と立ち上がって、父の要求に応える。
父はかなりの気分屋で、
機嫌の良い時には、
優しい態度を見せるけれど、
機嫌を損ねれば、
急に怒鳴り散らして、暴力も振るった。
ロジカルに考えることができず、
自分の感情のまま動いていた。
自分が働いていて
家族を養ってあげているので
自分のことを感謝しろ!
という恩着せがましい態度もあった。
何かあれば、
「お前らは、誰に
おまんま食わせて貰っているのか!」
というセリフが出る。
こういう父親を見ていれば、
「結婚」に対して、幻滅しても
仕方ないだろう。
冷静に考えれば、
自分の両親は、世界の中で、
たった1カップルにすぎない。
世界には沢山の夫婦が存在する。
その中で、たった1サンプルだけを見て、
「結婚は地獄のよう」と決めつけるのは
あまりにも認知が歪んでいる。
でも、自分の親とは、子供の頃から
物理的に一緒に生活をして、
近くにいて、色々見ているから、
彼らから受ける影響は非常に大きい。
「結婚は地獄ではなく、
もしかしたら、素晴らしいことかも」
と思えるようになったのは、
ニュージーランドで3年間
ホームステイをしてからだ。
この時に、日本の実両親とは
全く違う生き方をする夫婦と
生活を共にするようになり、
私の結婚観が180度変わってしまった。
ニュージーランドのホスト宅で
私をお世話してくれた夫婦は、
年齢的には私の実両親と同じ世代。
でも、私の実両親とは全く違う
夫婦関係だった。
この家庭では、奥さんの方が
旦那さんよりも威張っている。
「お茶入れて」と頼むのも、奥さんの方。
この奥さんは料理が嫌いで、
ほとんど毎晩、夕食を作るのも旦那さん。
でも、この旦那さんは
奥さんの尻に敷かれることが大好きで、
喜んでやっているのだ。
とにかく、夫婦仲が非常によい。
夫婦一緒の時間を大切にしていて、
週末や長期の休暇中には、
2人で色々なところを旅行したり、
釣りをしに行ったり、
仲良く楽しんでいる様子だった。
日本の実両親の
厳しく苦しい夫婦関係を見た後、
こんなに幸せそうな夫婦と生活して、
そのギャップの大きさに、私はとても驚かされた。
私のホスト夫婦のような関係ならば、
自分と気の合ったパートナーがいる方が
人生楽しくなるだろう、
と確信までした。
ニュージーランドのホスト夫婦と知り合ったのも、
実は不思議な出会いによるものだ。
私が20代の頃、ニュージーランドで
短期の英語研修を受けた後、
日本に帰国する飛行機の中で出会った。
その時のことを話せば長くなるので、
また、別の機会にお話したい。
でも、今となれば、
このニュージーランドの夫婦は、
私にとっては、
ニュージーランドのパパとママだ。
彼らと私がこのような関係になれたのも、
おそらく、神様からのギフトだった
と私には思えて仕方ない。
実の両親との人間関係に
非常に苦しんでいた私に、
神様からプレゼントがあった
と私は解釈している。
この夫婦と出会って、
「人生に連れがいるのはいいな」
と思うようになり、
気がついたら、私も結婚していた。
もっと家事ができなければ、
結婚はムリだろうと思っていたのに、
そんなことはなかった。
私は未だに家事が大の苦手だ。
そんな私でも、「全く構わないよ」
と言ってくれる人がいた。
日本に住んでいた頃、
私が想像したのとは全く違う
結婚生活を私は送っている。
自分がこのように満足できる
結婚生活を送れるようになったのも、
日本の実の両親から
物理的に離れたお陰かなと思う。
ニュージーランドに移住して、
本当に良かった、と今でも思える。