私たちの心の中には、
自分らしく生きるのを妨げたり、
自分を縛りつけている
「禁止令」があります。
今回は、
その禁止令の一部である
「重要であるな」
「自分で決めるな」
「存在するな」という3つに
焦点を当てます。
これらの禁止令を緩めて、
自分らしく自由に生きるために
できることもお話しします。
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禁止令って何? どうやって形成されたの?
私たちの多くが、心の中に
禁止令を持っています。
禁止令とは、子供のころに定めた
「~してはならない」
というルールのことを指します。
禁止令の形成には
親からの影響が
大きく関わっています。
子どものころ、
意見を言ったときに、親から、
「そんなことに
子どもは口出ししなくていいのよ」とか、
「子どものくせに、そんなことまで
考えなくていいのよ」などと言われたり、
自分の意見を
尊重してもらえない経験を
繰り返しすると
形成されやすくなります。
親のそのような言葉を幾度も聞けば、
子どもは「自分は重要な存在ではない」
という思い込みを
持つようになるのです。
人間は無意識に
自分の思い込みに沿って
生きようとするので、
「自分は重要な存在ではない」
という思い込みを持った子どもは、
自分に対して「重要であるな」
という禁止令を定めます。
「自分で決めるな」という禁止令は、
子どものころに、親から、
「階段を上ってはダメ!」とか
「遠くに行っちゃダメ」とか
「Aちゃんは悪い子だから、
Aちゃんと遊んではダメ」などと、
自分で何かやろうとするたびに、
「それはよくないからやめなさい」
と止められる経験を繰り返すことで
身につけるものです。
そのような経験が多ければ、
自分で決めることに自信がなくなり、
「自分で決めるな」という禁止令を
持つようになることも
珍しくありません。
「存在するな」という禁止令は、
子どものころ、親から、
「お前を養うために、
俺は苦労したんだよ」とか、
「お前がいたから
お母さんはお父さんと離婚できなくて、
ずいぶん我慢したのよ」などの言葉を
繰り返し聞くことによって
身につけるものです。
そのような言葉を何度も聞けば
「自分は、いないほうがいいんだ」
という思い込みを持つようになり、
「存在するな」という禁止令を
持つに至ってしまうのです。
親としては
悪気はなく話しているのですが、
純粋な子どもの心には、
自分の存在を揺らがせる
メッセージに聞こえてしまうことも
あるのです。
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禁止令は生きづらさの原因となる
子どものころに身につけた禁止令は、
大人になっても
そのまま持ち続けることが多いです。
そして、その禁止令により、
自分自身を不当に縛りつけ、
生きづらさの原因となったり、
自分らしく生きることの
妨げとなったりするのです。
「重要であるな」
という禁止令を持つ子供は、
大人になっても劣等感が強く、
自分の意見を言うのが苦手で、
目立つことを避けがちです。
仕事上の会議などでも
なるべく発言をせず、
目立たないようにする
傾向があります。
子供時代に「重要であるな」
という禁止令を身につけた人は、
大人になっても
自己表現に苦労することが多く、
これがキャリアの発展の妨げや
人間関係の悪化に
つながることもあるのです。
自己肯定感の低下は
精神的な健康問題を
引き起こす原因となったり、
個人の潜在能力の発揮を
妨げることにもなり得ます。
「自分で決めるな」
という禁止令を持つ人は、
物事を自分一人で決めることが苦手で、
結果として優柔不断な性格に
なりがちです。
これが原因で、
職場では指示を受けることを
好む傾向にあります。
このような人は、
カリスマ的なリーダーや上司に
依存することが多く、
自己主導でプロアクティブに
行動できません。
また、カリスマ的な講師が主催する
自己啓発セミナーや
カルト宗教に傾倒しやすい傾向も見られ、
これらの環境で依存心が
さらに強まることも
珍しくありません。
「存在するな」という禁止令を持つ人は、
自分の存在自体に罪悪感を持ち、
自己否定が強い傾向にあります。
自己表現を抑制し、
自分を隠そうとする一方で、
他人からの承認や評価を
強く求めることもあります。
結果的に、過剰に
他人に気に入られようと努力し、
自分本来の欲求や感情を
見失いがちです。
このような状態は、
精神的なストレスや不安、
自己肯定感の欠如といった問題を
引き起こすことも
少なくありません。
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禁止令の緩め方
禁止令を緩め、
生きづらさを軽減し、
自分らしく生きるためには、
どうすればよいのでしょうか?
その答えは、アロワーという
許可証を自分自身で
たくさん発行することです。
アロワーとは、
自分に与える許可のメッセージ
のことを言います。
「重要であるな」
という禁止令を持つ人は、
「あなたは大切な存在だよ」
といったメッセージを
自分に語りかけてあげるとよいでしょう。
「自分で決めるな」の禁止令を持つ人は、
「決めることが怖い」という自分自身に対して、
「そりゃ怖いよね」と
まずはそんな自分を
しっかり受け入れてあげます。
その上で
「自分で決めてもいいんだよ」
「間違ってもいいんだよ」
「失敗してもいいんだよ」
というアロワーを
与えていくことが有効です。
注意点としては、
「自分で決めなければいけない」などと
自分を追い込んだりしないことです。
自分で決められないときは、
「そりゃ無理もないよ。
決めるのって怖いよね」と、
決められない自分を
受け入れることが大切です。
「自分で決めてもいいんだよ。
だけど自分で決められないときは、
それでもいいんだよ」という
受容的スタンスを取り、
時間をかけてアロワーを
与え続けるとよいでしょう。
「存在するな」の禁止令を持っている人は、
「君はそのままで素晴らしい。
生まれてきてくれてありがとう」
というアロワーを
くり返し自分に
かけてあげることが効果的です。
アロワーを与えるやり方は、
いくつかあります。
たとえば、お風呂に入ったときに、
自分の身体を
自分の両手で包むように抱いて、
アロワーになる言葉を
繰り返しささやきかけてもよいですし、
朝と晩に10回ずつ鏡の中の自分に
アロワーを心をこめて
言ってあげてもよいでしょう。
ただし、アロワーを与え始めたから、
すぐに禁止令が緩むことを
期待しないほうが無難です。
子どもの頃から今まで
長年持ち続けた禁止令ですので、
アロワーとなる言葉を
少し唱えたくらいでは、
直ぐに効果は感じられないでしょう。
最低でも3ヵ月くらいは
続ける必要があります。
焦らずに気長に構えて
アロワーを言い続けることが
ポイントです。
これができれば、徐々に
アロワーが心の中に浸透してゆき、
今まで禁止されてできなかった行動が
少しずつでもできるように
なってきます。
そして、
行動ができるようになれば、
喜びを感じることも増えるのです。
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禁止令を悪者扱いしなくてもよい
禁止令と取り組むときに大切なことは、
禁止令を悪いものだ
と捉えないことです。
自分が禁止令を持つに至った背景を
正しく理解し、その禁止令に
感謝することが大切です。
なぜなら、禁止令は、
子どものころの自分を
守ってくれた存在だからです。
私たちは子ども時代に
禁止令を自分で定めて
持つようになったわけですが、
それは、子どものころの自分が、
親や家族との関係の中で
自分自身を守るために、
持たざるをえなかったルールなのです。
自分が傷つくのを避けるためには、
そのルールが
必要だったというわけです。
たとえば、
自分がやりたいことをすると
親が不機嫌になった場合、
そうなれば自分が傷つくことになるので、
それを避けるために
「自分で決めるな」という禁止令を
自分で定めたのです。
自分が重要視されることを期待すると、
その期待を裏切られたときに
傷つくことになるので、
そのような傷つきから
自分を守るために「重要であるな」
という禁止令を自分に定めたのです。
このように子どものころの自分が
自分の安全を守るために
定めたルールが禁止令なのです。
そのことを理解し、
そうやって自分を守ろうとした自分自身を
しっかりねぎらってあげるとよいでしょう。
そして、禁止令と取り組むときは、
自分を守ってきてくれた禁止令に
感謝した上で、その禁止令を
無理やり緩めようとするのではなく、
じっくり時間をかけて
緩めていく姿勢が大切です。
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まとめ:禁止令から解放されて豊かに生きる
今回は、私たちの心の中にあって、
自分らしく生きるのを妨げていたり、
自分を縛りつけている「禁止令」と、
それを緩めるための「アロワー」について
お話ししました。
禁止令は子供のころ、
親との関わりの中で形成され、
大人になっても
そのまま持ち続けることが多いです。
禁止令は適切ではなく、
個人を不当に縛りつけたり、
生きづらくさせたり、
自分らしく生きる妨げとなり得ます。
自分の心の中に潜む
禁止令に気づくことができれば、
禁止令を緩める方向へ
動くことが賢明です。
禁止令を緩めるのに効果的なのは、
アロワーという、
自分に与える許可のメッセージを
自分自身にやさしく
語りかけてあげることです。
毎日、継続的に自分自身に
アロワーを言い続けることが
ポイントです。
即効性はありませんが、
3カ月くらいやり続ければ、
徐々にアロワーが心の中に浸透していき、
今までできなかった行動が
少しずつでも
できるようになるでしょう。
そして、その新たな行動の結果として、
喜びを感じることが
増えてくるでしょう。
禁止令の存在を知れば、
禁止令を望ましくないものだ
と考えるかもしれませんが、
そのアプローチは適切ではありません。
なぜなら、禁止令は
子ども時代に自分自身を守ってくれた
存在だからです。
禁止令を持つに至った背景を
正しく理解し、その禁止令に
感謝することが大切です。
その上で、その禁止令を
無理やり緩めようとするのではなく、
その禁止令のことも尊重しながら、
じっくり時間をかけて
緩めていきましょう。
いずれは禁止令から解放されて、
自分らしく
より豊かな人生が
可能になるでしょう。