今回は「ニュージーランドは
オーストラリアと仲良しか?」
というテーマでお話しします。
私はニュージーランドに
34年間暮らしていますが、
オーストラリアに住んだことはありません。
学生時代に
シドニーで短期間ホームステイをし、
その後も何度か旅行しました。
そんな私が
ニュージーランドに長年住む者の視点から、
個人的に感じたことを語ります。
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ニュージーランド人はオーストラリアをどう見ているのか?
結論から言えば、
大きく二つの感じ方に分かれます。
ニュージーランド人の中には、
オーストラリアに親しみを感じ、
頼れる隣国だと思っている人が多くいます。
一方で、
あまり良い印象を持たない人も
少なくありません。
オーストラリアに親近感を抱く理由として、
一番近い外国であることが挙げられます。
さらに、ニュージーランドでは
オーストラリア製品が広く流通しており、
テレビ番組もオーストラリア制作のものが
多く放送されています。
また、家族や親戚が
オーストラリアに住んでいる人も多く、
そうしたつながりが親しみを感じる要因に
なっているのでしょう。
一方で、オーストラリアに
良い印象を持たない人もいます。
そんな人たちの中には
オーストラリアなまりの英語を聞いて
「おかしい」と笑う人もいます。
私の個人的な考えですが、
こうした否定的な感情の背景には、
少なからず妬みがあるのではないか?
と思います。
というのも、オーストラリアは
ニュージーランドと比べて経済的に豊かで、
生活水準も高い国だからです。
その違いを目の当たりにすると、
どこか羨ましく思う気持ちが
生まれるのかもしれません。
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両国の不平等な制度
実は、
ニュージーランド国籍を持っていれば、
オーストラリアで働いたり
生活したりすることができます。
逆に、
オーストラリア国籍を持っている人も、
ニュージーランドで同じように
働いたり暮らしたりすることが可能です。
同じ職種でも、
オーストラリアのほうが給与水準が高く、
特に技術職では
年収がニュージーランドの2倍になることも
珍しくありません。
最低賃金の仕事に関しては
それほど大きな差はありませんが、
この賃金格差もあり、
オーストラリアで働きたい
と考えるニュージーランド人は多いのです。
問題なのは、両国の間に
不公平な制度があることです。
たとえば、オーストラリア人が
ニュージーランドに移住した場合、
入国したその日から
ニュージーランド国民と同じ
社会保障を受けることができます。
しかし、ニュージーランド人が
オーストラリアに移住すると、
オーストラリア国籍を取得するまでは
社会保障を受けられません。
そして、国籍を得るには時間がかかり、
簡単に自動的に
取得できるわけではないのです。
つまり、
オーストラリアの高い給与に惹かれて
移住しても、
もし失業すれば失業保険を受けられず、
生活が不安定になる可能性があります。
こうした制度に対し、
多くのニュージーランド人が
「不平等だ」と感じ、
不満を抱いています。
しかし、オーストラリア側は
「ニュージーランドに移住するオーストラリア人は
少ない一方で、
オーストラリアに移住するニュージーランド人は
圧倒的に多い」という理由を挙げ、
現行制度を変えるつもりはないようです。
ただ、昨年の新しい政策により、
ニュージーランド国籍を持つ人は
オーストラリアに合計4年間住めば、
国籍取得の申請ができるようになりました。
これにより、以前よりは
オーストラリア国籍を
取得しやすくなったものの、
それでも依然として「不平等だ」
と感じる人は少なくありません。
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オーストラリアで育ったのにニュージーランドへ強制送還?
オーストラリアに住むニュージーランド人は、
オーストラリア国籍を取得した後でも、
重い犯罪を犯した場合には
ニュージーランドに
強制送還されることがあります。
特に厳しく感じるのは、
赤ちゃんのときに両親とともに
オーストラリアへ移住し、
その後ずっとそこで育った人たちも
対象になる点です。
幼少期から
オーストラリアで教育を受け、
成人後もオーストラリア人として
生活してきたにもかかわらず、
重大な犯罪を理由に
ニュージーランドへ
送り返されるケースがあるのです。
当人にとっては、生後数か月で
オーストラリアに来て以来、
ずっとオーストラリアが
「母国」だったにもかかわらず、
強制的にニュージーランドへ
移されてしまいます。
以前、ニュースでそのようなケースが
報じられていました。
その人はニュージーランドに
家族も親戚も友人も全くおらず、
ほとんど外国のような場所に
突然送り込まれたのです。
その状況を思うと、
あまりにも気の毒に感じました。
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ニュージーランド経由の移民問題
オーストラリアが
ニュージーランド人に対して
国籍を簡単に与えないのには
理由があります。
オーストラリアは経済的に豊かで、
アジアの近隣諸国からも
移住先として非常に人気のある国です。
そのため、オーストラリア国籍の取得は
厳しく制限されています。
一方で、ニュージーランドは
オーストラリアに比べると
永住権や国籍が取得しやすい国です。
こうした背景から、
最終的にオーストラリア国籍を目指す人が、
まずニュージーランドの永住権と国籍を取得し、
それを利用して
オーストラリアへ移住するケースが
増えてきました。
オーストラリア政府としては、
こうした「ニュージーランド経由」での移民を
防ぎたいと考え、ある時期から
ニュージーランド国籍保持者全員に対し、
簡単にオーストラリア国籍を
取得できない仕組みへと変更しました。
特に、ニュージーランド国籍を持つ
アジア系移民の大量流入を
避けたかったのではないか
と考えられています。
私の個人的な印象ですが、
ニュージーランドでは
アジア系移民に対する嫌悪感が、
オーストラリアほど強くないように
感じます。
もちろん、ニュージーランドにも
人種差別をする人はいますが、
その数はオーストラリアよりも
少ないのではないでしょうか?
実際、私自身ニュージーランド人から
「オーストラリアではなく
ニュージーランドに来てよかったね。
オーストラリアには人種差別があるから」
と言われたことがあります。
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オーストラリアはニュージーランドより先進的
オーストラリアは、
ニュージーランドと比べると
先進的な面が多くあります。
看護師の友人によると、
ニュージーランドの病院で
何度検査しても原因不明だった病気が、
オーストラリアの病院で検査を受けたところ、
一度の検査で原因が判明したそうです。
医療の分野でも、
オーストラリアのほうが
ニュージーランドより
進んでいるのでしょう。
また、医師や看護師などの医療従事者は、
ニュージーランドよりも
オーストラリアで働いたほうが
高収入を得られるため、
移住する人が少なくありません。
その結果、ニュージーランドでは
医療分野の人材不足が深刻化しています。
実は、こうした人材流出は
医療分野に限ったことではなく、
多くの技術者がオーストラリアへ移り、
ニュージーランドでは技術者不足が
大きな問題となっています。
また、これは
数年前にメガネを作ったときの話です。
メガネ屋で視力検査を受け、
注文をしたところ「2週間ほどかかります」
と言われました。
「そんなに時間がかかるんですか?」
と驚くと、スタッフの方は
こう説明してくれました。
「順調にいけば
1週間ほどでできますが、
余裕をもって2週間とお伝えしています。
実は、この注文は
オーストラリアに送って
作ってもらっているので、
すぐにはお渡しできないんですよ」
日本のメガネ店では、
視力検査のあと少し待つだけで、
その場でメガネを仕上げてくれます。
しかし、ニュージーランドでは
そうはいきません。
おそらく人口が少なく、
メガネ製造用の機器への投資が難しいため、
オーストラリアに
依存せざるを得ないのでしょう。
そのときは正直、
「ニュージーランドって、
オーストラリアの属国みたいだな……」
と思ってしまいました。
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大切な隣国オーストラリア
私にとって、
ニュージーランドとオーストラリアは
文化的に似ているように感じます。
しかし、
ニュージーランド人の認識では、
両国はまったく異なり、
別物だと考えられているようです。
実際、同じ英語でも
ニュージーランド英語と
オーストラリア英語では
発音やなまりが異なります。
また、イギリスに対する国民感情にも
大きな違いがあります。
ニュージーランドでは今でも
イギリスを崇拝する傾向が
強く感じられますが、
オーストラリアでは
そこまでではない印象を受けます。
ニュージーランド人の中には
オーストラリアを悪く言う人もいますが、
何だかんだ言っても、やはり
ニュージーランドにとって
オーストラリアは
最も大切な隣国なのだと思います。
今回は「ニュージーランドは
オーストラリアと仲良しか?」
というテーマでお話ししました。
これはあくまで私個人の意見ですので、
参考程度に読んでいただければ幸いです。
このトピックについては、
YouTubeでも
トーク動画を投稿していますので、
よろしければそちらもご覧ください。
リンク:https://youtu.be/oKl9B1-8H6w?si=cU0mIWy4u0p9QldQ