ニュージーランドの皿洗い

ニュージーランドの皿洗い(旧式)を紹介したい。
ニュージーランドに来たばかりの頃
私はニュージーランド人家庭で
3年間ホームステイをした。
生活習慣上、いろいろな違いがあり
驚くことも多かったが、
皿洗いの方法は、私にとっては
かなりのカルチャーショックだった。

具体的なやり方は次の通り。
1)シンクに栓をしてお湯をたっぷり張る
2)お湯のなかに洗剤を入れ、手で泡立てる(これで準備完了)
3)皿洗い専用ブラシで食器類をゴシゴシ洗い、泡立ったお湯のなかでリンスする
4)汚れが落ちたら、食器類をラックに上げる
5)この状態では、洗剤が食器類についたままだが、これを濯ぐことなく、布巾で拭きとり食器棚に戻す
以上、こんな感じだ。

ニュージーランドでは、タンクの中に水を溜め、
タンクを温めることでお湯を作る家庭が多く、
お湯の量には制限がある。
お湯を大切に使わなくては、お湯が出なくなってしまう。
日本のように、湯を流しながらリンスするのは
以ての外なのだろう。
それでも、やはり、上記やり方のステップ(5)は
私にとっては、かなり抵抗があった。

日本に住んでいた時には、
「洗剤は身体に良くないから、
十分濯いで、きちんと落とすようにしなさい」
と母から教わった。
また、小中学校の家庭科の時間でも、
調理実習の時には、教師が全く同じことを言った。
だから「洗剤は有毒だ」ということが、私の頭の中にある。

ホームステイ先のファミリーに
「洗剤をきちんと落とさなくて、大丈夫なの?」
と質問してみた。
毎晩、皿洗いを担当していたホストファーザーは
「洗剤は毒なんかじゃないよ。僕たちはずっと
こういう風に皿を洗っているよ。だからと言って、
そのせいで、病気になった人もいないし、死んだ人もいない。
大丈夫に決まっているじゃない」と返事が返ってきた。
こう言われて、私は何も言えなかった。

卒業後、ホームステイを出て、別の都市で
一人暮らしをした時、多くの日本人に出会った。
その人たちと話しているうちに、
洗剤を気にするのは、私だけではなく、
ほとんどの人が、私と同じように感じている、と知った。
だから、ニュージーランドに住みながら、
日本風にお皿を洗う人もいる。

お湯の量に制限があるので、
日本と全く同じにはできなくても、
上記ステップ(3)の後に、
洗剤の入っていないお湯をシンクに溜めて
そこで一度リンスするステップを加えた。
暫くはこの方法で皿洗いをしていたが、
ニュージーランド人の旦那様と結婚した後は、
再び、我が家の皿洗いは、伝統的なやり方に
戻ってしまった。

最近は、ディッシュウォッシャーがある家も多いが、
残念なことに、我が家にはない。
古い家に住んでいて、スペース的にも狭いので、
我が家にディッシュウォッシャーを入れることは
難しいだろう。
そんなわけで、今後も今まで通り、旧式のやり方で
お皿を洗い続けてゆくと思う。

しかし、慣れというのは、本当に怖い。
いや、別の言い方をすれば、慣れはスゴイ!
最初はあんなに抵抗があったことでも、
今では普通になってしまい、何も感じなくなった。
人間には適応能力が備わっているということだろう。
今後も、このように皿洗いをしてゆくよ。