ニュージーランドには、日本のような教習所はない。ドライビング・スクールはあるが、大抵は個人事業で、インストラクターが教習車を所有しているだけ。教習所の敷地はなく、いきなり一般道で練習が始まる。インストラクターは教習車で生徒を自宅まで迎えに行き、交通量の少ない場所に連れてゆく。そこで練習が始まるのだ。
ドライビング・レッスンを受ける前には、「ラーナーズ・ライセンス」を取得する必要がある。ラーナーズ・ライセンスのテストは、道路交通法の理論試験。このテストの準備のために、クラスに通って勉強することはなく、「ニュージーランド道路交通法」の本を買って読んだり、ネット上で自分で勉強するのが一般的だ。ラーナーズ・ライセンスの試験は16歳の誕生日を迎えた日以降、受験できる。
ラーナーズ・ライセンスに合格したら、実際に車に乗って運転の練習ができる。この時に、ドライビング・スクールを利用する人が多いが、実は、ドライビング・スクールにお世話になる必要はない。フル免許(正式な免許)を取ってから2年以上経つ人がいれば、その人が同乗して教えることができる。
ニュージーランドは車社会なので、大抵の大人は車の運転をする。16歳になったら、親の車を使って、親がインストラクターとなり、教える場合もしばしばだ。
暫くフル免許のある人から運転を教えて貰い、練習する。そして、ラーナーズ・ライセンス合格後6カ月が経った時点で、次は「リストリクテッド・ライセンス」を受験できる。リストリクテッド・ライセンスとは、制限付きのライセンスで、これを持っていれば、自分一人で車の運転が可能になる。
リストリクテッド・ライセンスの制限は、運転できる時間帯が決められていたり、車に同乗できる人が制限されている。具体的には、1人で運転する場合は、午前5時から午後10時までの間だけ運転できる(フル免許のある人が同乗すれば、この時間帯以外も運転可)。また、自分の両親が免許を持っていない場合でも、両親であれば同乗させてよい。家族内に心身の障害を持つ人がいれば、その人も乗せてよいということだ。
リストリクテッド・ライセンスを取得してから18カ月が経過すれば、いよいよ正式なフル免許の試験を受験できる。そして、これに合格すれば、晴れてフル免許保有者となり、制限なしで運転できるようになる。
リストリクテッド・ライセンスの18カ月間を長く感じる場合、この期間を短縮することも可能だ。そのためには、ディフェンシブ・ドライビング・コースを受講すればよい。このコースは理論のセッションで、実際に教室に通う必要がある。ただ、合計9時間という短い時間で終了するので、かなり簡単。セッションでは、様々な運転の場面で、どんなことに気をつければ安全運転できるかを具体的に教えてくれる。ディフェンシブ・ドライビング・コースを受講すれば、リストリクテッド・ライセンス合格後、12カ月でフルライセンス受験の資格が得られる。そのため、多くの人がこのセッションを受講するようだ。
日本では初心運転者標識として「若葉マーク」があるが、こちらでは「Lプレート」と呼ばれるマークを車の前方、後方に表示する。これは、黄色のバックグランドの上に黒の「L」字が描かれたマークだ。我が家でも、娘が免許取得のため練習中なので、私達の車にはLプレートがついている。
ニュージーランドでは、高等学校高学年になれば、リストリクテッド・ライセンスや、場合によってはフルライセンスを取得可能になるので、車を運転して通学する学生も少なくない。
ということで、今日はニュージーランドの教習事情をお話してみた。ニュージーランドでは色々な法律が短期間で変わることもよくあるので、もし、今現在の正確な情報が必要ならば、NZ Transport Agencyのウェブサイト(https://www.nzta.govt.nz/driver-licences/)で確認することをオススメする。