日本とニュージーランドの両国に
長年住んだ私は、
両国の違いがよく分かる。
様々な違いがある中、
今回話したいのは、
「ワークライフバランス」の違いについて。
日本の外から日本を見れば、
「やはり、日本人は勤勉だ」と感じる。
勤勉なこと自体は悪くはなく、
むしろ、立派なことだ。
しかし、自分のパーソナルライフを
犠牲にしてまで働き過ぎる傾向にあり、
「ちょっと問題ではないか?」と思う。
今回、このテーマを取り上げたのは、
精神科医・樺沢紫苑先生が、
ユーチューブに興味深い動画を上げたからだ。
そのテーマは「うつになるほうが正常」というもの。
樺沢先生の視聴者が
「世の中が狂っているから、
うつになるほうが正常ではないか?」
と言ったのに対して、先生も同意した。
なぜ、樺沢先生は
「うつは正常だ」と考えるのだろうか?
脳科学的には、
偏桃体の活性化が長期間続けば、
うつを誘発するらしい。
偏桃体の活性化は、
不安や危険に晒された時に起きるものだ。
つまり、不安な状態が長期間続き、
身体が危険な状態を知らせるために
「うつ」が起きるということだ。
こう考えれば、
「うつ」は非常警報装置の役割を果たす。
タバコの火が部屋で燃えだし、
煙が部屋に充満した時、
非常警報装置が作動して、
スプリンクラーが水をまき散らす。
もし、火が燃え上がっても、
スプリンクラーが作動しなければ、
「異常」な状態で、
家は火事で全焼するかもしれない。
身体が危険な状態になった時、
「うつ」の症状が出て、
私たちに「もう、これ以上はムリがある」
と知らせてくれれば、
それなりに、仕事量を減らして、
休養する時間を取ることも可能だ。
うつの症状があるのに、
無視して放置しておけば、
「自殺してしまった」
という悲しい結果を招いたり、
難治性のうつに発展して、
なかなか治りにくい状態になるだろう。
こういう悪い状況を防ぐために、
「うつ」の症状を出して、
私たちに警告してくれるのが、「うつ病」だ。
ストレスがかかって、うつになるのは、
正常な人間の身体の反応だと言ってもよい。
樺沢先生が動画で伝えたいのは、
うつは非常警報装置のようなもので、
私たちに危険を教えてくれるもの。
この症状が少しでも出たら、
何らかの対策を取らなければ、
大変なことになるということだ。
なんらかの対策と言うのは、
ワークライフバランスを整え、
働き過ぎで私生活が犠牲にならないよう
気をつけるということ。
日本とニュージーランドの
ワークライフバランスが
なぜ、全く違うのかと言えば、
「残業に対する考え方の違いからくる」
と私は個人的に思う。
日本では、残業することは、
「仕事熱心で素晴らしい」と捉える。
それに対して、ニュージーランドでは、
残業しなければならないのは、
「その本人が効率的に働けないから」
と解釈する人が多い。
勤務時間内に終了できないほど、
手際や要領が悪いからということだ。
つまり、「仕事ができないから、
残業しなければいけなくなる」
と考えるのだ。
日本の組織では、
定時に退社せず、残業している人がいれば、
「労働意欲が強く、スゴイ!
ご苦労様です」と尊敬される。
しかし、ニュージーランドでは、
「まだ、タスクを終わらせられないのか。
なんて、要領が悪いんだろう」
と思われてしまう。
また、雇用や給与の支払い方も、両国では違う。
日本では残業をすれば、
残業シートに時間をつけて、
残業代が支払われることが多い。
しかし、ニュージーランドは、
基本的にはジョブ型雇用で、
ポジションごとに
年額で幾らと定められるのが普通だ。
場合によっては残業代が出ても、
常に残業代を貰えるわけではない。
そのような背景もあり、
ニュージーランドでは、
多くの人は、極力、時間内に
やるべきことを終了させて、
定時には帰宅する人が多い。
定時に帰宅できれば、
家族と過ごす時間も沢山ある。
パートナーと食事に行ったり、
子供たちとスポーツを楽しんだり、
私生活を十分満喫することができる。
ワークライフバランスが整っていれば、
心身の健康にも良い影響が出るので、
仕事をする時にも、より効率よく働ける。
勤務時間内には、能力を最大限発揮して、
アフターファイブには、
パーソナルライフ充実させて、
緩急つけた生活が可能になる。
とても健全で幸せな働き方だ。
ワークライフバランスの点では、
日本もニュージーランドを
見習った方がよいのでは?
と私は個人的に思う。
でも、定時になっても職場を離れず、
残業することが素晴らしいことだ
という価値観がある以上、
ワークライフバランスを整えるのは
困難なことだろう。
残業しなければ
仕事を終えられないのは、
手際が悪いから、要領が良くないから、
効率的ではないから、
と捉えるような社会があることも、
日本の人たちに知って欲しい。
残業、残業、残業続きで、
働くだけが人生のほとんどになれば、
「いったい、何のための人生なのか?」
分からなくなってしまうからだ。
「世の中が狂っているから、
うつになるほうが正常ではないか?」
と言う人が出てきても、オカシクない。
効率よく働いて、
仕事時間を短縮して、
パーソナルライフをもっと楽しみ、
心身ともに健康な状態になって欲しい
と願う気持ちが強い。
樺沢先生、役立つトークを
有難うございました。
参考動画:「うつになるほうが正常?」
(ユーチューブ 精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル)