日本に住んでいたときには
庭のある一戸建てに住みたい
と夢見ていたが、
ニュージーランドに来て
実際に庭のある家に住んでみたら、
庭は厄介なもの、と感じるようになった。
ニュージーランド人は
庭の手入れが好きな人が多い。
趣味でやっているので
休日は、この作業に
平気で何時間も費やす。
「庭の手入れをしていると、
心が落ち着いて、リフレッシュ
できるのよ」と旦那の親戚は言う。
好きで積極的にやりたい人は
いいのだろうが、そうでない人は
かなりシンドイというのが本音だ。
夏場には、あっという間に芝生が伸びる。
常に芝生を綺麗に保つには
休日になるたびに芝刈りする必要がある。
この作業、けっこう大変だ。
電動の芝刈り機を押すのも
私にとってはかなり重い。
今のところ、我が家では、この作業は
すべて旦那さまが担当している。
旦那が芝刈りできなくなったら
私がやらねばならないのか?
想像しただけでも、ぞっとする。
我が家は小さな私道の奥にあるので
人目につかない場所だ。
多少、草が伸びていても
誰も文句を言う人はいない。
でも、公道に面した家に住む
ご近所さんの話だと、
庭の手入れをお休みしていたら、
近くの住人から苦情がきたとのこと。
自分の庭の手入れをきちんとするのは
義務だと考える人がいて、
隣の家の庭が荒れていれば
「綺麗にして下さい」と
わざわざ言いに来るのだ。
我が家は「芝」ではなく、
「木」でご近所と揉めたことがある。
以前、我が家の敷地内に
大きな木が生えていた。
その大木が隣宅の窓付近にあり
日照阻害となると言うのだ。
そのため、木を切って貰えないか
と依頼された。
早速、ガーデンセンターに
問い合わせをして、
木を切って貰うのに、どのくらい
お金がかかるか見積もりをお願いした。
でも、あいにく、「ここまで大きな木だと
ガーデンセンターでは手に負えない」と
断られた。それで、木こりビジネスに
問い合わせるようにと指示された。
木こりの人に自宅に来て貰い
問題の木を見せたら、
「大きいから、2000ドルは
かかりますね」とのこと。
「えっ、冗談だろ、2000ドル
なんて高すぎる!」とショックを受けた。
1ドル100円くらいの感覚の
私にとっては、この金額はかなり大きい。
そこで、旦那が「頑張って自分で切ろう」と試みた。
でも、こういう類のことが苦手の旦那には、
どんなに頑張ったところで、なかなか木が切れない。
隣宅のドイツ人の奥さんは気が短い。
「早くしてよね!!!」と急かしてくる。
ここから、隣宅との人間関係が
悪くなっていった。
そんなに簡単に切れない木を
「早く切れ」と言われて、
私も腹立たしく思うようになった。
木を切らなければいけないのか?
困っていたので、相談に行くことに。
ニュージーランドでは
Citizens Advice Bureau と呼ばれる
市民相談所のようなところがある。
ここでは、定期的に法律専門家が
無料の法律相談をしてくれる。
なんて、素晴らしいことか!
その専門家に事情を話したところ、
ニュージーランドでは、庭の木で
近所と揉めることは、よくある話だそうだ。
庭の木で近所と揉めた場合にどうするか?
というパンフレットまであり、
私はとても驚いた。
それによれば、次のような規則がある。
近所の木が自分の家の日照阻害になれば、
近所に木を切って貰うよう
お願いできる権利がある。
ただし、木を切る場合は
木を切って欲しい人が
100パーセント金銭的な負担を負うこと。
また、ニュージーランドに自生する木に関しては、
どんなに日照を妨げても、切ってはいけない。
という規則だった。
これを聞いたとき、私はほっとした。
我が家で2000ドル負担する必要はなく、
隣の人に支払いをお願いできると思い、安心した。
早速、木を切ることに関するパンフレットを
持参して、このことを隣宅に伝えに行った。
すると、ドイツ人の奥さんは
「ウソでしょ。2000ドルなんて
支払えるわけないでしょ!」と怒った様子。
でも、パンフレットにその旨書かれていれば、
彼女もこれ以上、何も言えなくなった。
結局、直ぐには何もできずにいたところ、
ドイツ人家族は別の場所へ
引っ越してしまった。
私たちは、その隣宅に新しく来た家族と
揉め事を起こしたくなく、
最終的には、我が家はこの大木を
業者に切って貰うことにした。
最初に見積もりを取った
木こりではなく、別の人にお願いした。
3回に小分けにして切れば、
1回400ドル程度で済む。
時間をかけて、何回かにすれば
自腹を切っても、それほど大きな
負担にはならなかった。
それにしても、自宅の敷地内にある木のことで、
近所とこんなに揉めるなんて思ってもみなかった。
「ああ、庭のない家に住めたら
どんなにラクだろう」と今は思う。
実は、これと同じくらいのサイズの大木が、
我が家の敷地内の他の場所にも生えている。
これも、いつかは切らねばならないのか?
この木が何も問題を起こさないよう、
私は祈るばかりだ。