ニュージーランドは肥満大国の一つ。
非健康的な食生活や生活習慣が原因で
糖尿病や心臓病、脳卒中、がんなどの
病気に罹る人も少なくない。
ニュージーランドでは
国立病院での治療や入院費用は
基本的には国がお世話をしてくれる。
福祉が進んだ環境下にいれば、
人はあまり積極的に自分の健康に
気をつけようとは思わなくなるようだ。
予防医学を意識する人は
この国には少ないように感じられる。
でも、病気の人が多ければ、
国家財政にも大きな負担となる。
それだけでなく、病気になった本人は
クオリティー・オブ・ライフ(生活の質)
が低くなる傾向にあり、
幸せに生きることも難しくなるだろう。
肥満の人が多いことは、この国でも
深刻な社会問題になっている。
ニュージーランドで生活を始めて、
最初の1年間で、私の体重も10キロ増えた。
特に間食が多かったわけではないが、
ニュージーランド人家庭で
ホストファミリーと
同じ食生活をしていただけで、
このようになってしまった。
ニュージーランドで実際に生活してみて、
なぜ、肥満になる人が多いのか?
その理由が分かるような気がする。
肥満大国ランキングで
日本よりも遥かに上位にある
ニュージーランドの食生活は、
日本の食生活とはかなり違う。
日本の食事では、
ごはん、汁物、お漬物、メインディッシュ、
サラダ、付け合わせの料理など、
何種類もの品数を少しづつ食べるが、
ニュージーランドでは品数がかなり少ない。
そういう意味では質素だが、
少ない種類を大量に食べる人が多いようだ。
ホストファミリー宅での話をすれば、
フィッシュ・アンド・チップスの時には、
野菜を付け合わせることはなく、
フィッシュ・アンド・チップスだけを食べる。
衣がついた揚げ魚は、
油切れがよくなくて、油でギトギト。
チップスは半端ない量で、
食べきれないほどだ。
でも、勿体ないから、皆、
頑張っていっぱい食べようとする。
サワークリームやトマトソースにつければ、
食べやすくなるので、
最後の方はソースをたっぷりかけていた。
更に食後のデザートはもっとスゴイ。
アイスクリームを2―3スクープくらい
山盛りにしたものが、毎晩出てきた。
私のホストファミリー宅では、
毎晩、ホストファーザーが料理をしていた。
ホストファーザーは料理好きで、
とても料理が上手。
ホストマザーがメインの食事を
作ることはほとんどなかったが、
ケーキやクッキーを焼いたり、
ジャムを手作りすることは
よくやっていた。
メインの食事の作り方は
全然分からなくて、
学ぼうとする気持ちはないようだ。
でも、なぜかケーキやクッキー作りには
気合が入って、新しいレシピを試すなど、
かなり積極的だった。
友人が遊びに来たら、
手作りのお菓子でもてなすのが
ホストマザーの楽しみのようだ。
実は、私の義理の母も
ホストマザーと似ていて、
メインの料理には興味がなく、
冷凍食品を使用することが多かった。
でも、デザートのケーキやクッキーは
こまめに焼いている。
たった2人だけでサンプル数は少ないけど、
ホストマザーと義理の母を見ていると、
この国ではデザートがとても重要だ
という印象を受けた。
ニュージーランドは日本と同様に
周囲を海に囲まれた国だ。
魚介類は豊富なはずなのに、
なぜか皆、魚よりも肉を好んで食べるようだ。
スーパーマーケットに行っても、
魚コーナーは非常に貧弱。
でも、お肉コーナーは大きくて
色々な種類が売られている。
ホストファミリー宅では
ほとんど毎日が肉料理だった。
お魚を食べるのは、
フィッシュ・アンド・チップスの時だけ。
お肉は牛肉、ラム肉、ウサギの肉、チキンなど。
なぜか豚肉を食べる機会はほとんどなかった。
ホストファーザーは
肉の脂身を切り落とすことなく、
「ここが一番美味しい部分」といって
満足そうに頬張っていた。
肉を煮る時に出るアクも
取り除くことなく、そのままにしている。
ホスト宅から離れて、
一人暮らしを始めた時に、
気づいたことがある。
この国で売られている食品類には、
砂糖の量が半端なく多いということだ。
日本で売られているチョコレートやクッキー、
また、ヨーグルトなどと比べれば、
ニュージーランド製のものは、かなり甘い。
お菓子だけに限らず、
ほとんどすべての食品類が
異様に甘ったるい感じがした。
これは、おそらく味覚の違いなのだろう。
私の夫は日本製のお菓子を「不味い」と言う。
その理由は、甘さが足りない
ということだ。
チョコレートにしろ、クッキーにしろ、
全然甘くないので、美味しくないそうだ。
肥満の問題は大人だけでなく、
子供にも見られる。
ニュージーランドの学校を訪問した時、
太り過ぎて身体が重そうな
子供の姿を時々見かけた。
子供たちが幼稚園、小学校の時には、
子供のクラスに行くこともあり、
他の子供たちが
どんなお弁当を持ってくるのか
見せて貰ったことがある。
この国ではお弁当には
サンドイッチが定番だが、
それ以外には、果物やお菓子が入っている。
中には、サンドイッチよりも、
お菓子が沢山入っているお弁当もあった。
具体的にはポテトチップスとか、
クッキーやミューズリーバー。
中にはグミやジェリービーンズのような
駄菓子が入っているお弁当もあった。
こういう食生活をしていれば、
体重が増えても当然だな、
と思うようなお弁当も沢山あった。
肥満の原因は、食生活のみならず、
「車社会」ということもあるだろう。
ニュージーランドでは、
ほとんどの大人が車を運転する。
公共の交通機関が
日本のように発達していないので、
どこへ行くにも自家用車を利用する人が多い。
時には、自転車やジョギングで
職場や学校へ行く
健康志向の人たちも見られるが、
そういう人たちは少数派だ。
ほとんどの人が、通勤も、
子供の学校への送り迎えも、
ショッピングも、ソーシャルイベントも
すべて車を使って移動することが普通だ。
私が学生時代に住んでいた
パーマストンノースという都市では、
町中から郊外の住宅地に行くバスは
1時間に1本しかなかった。
しかも、最終バスが午後5時45分なので、
バスに頼っての生活は、かなりキツかった。
東京で車の免許を取った後、
駐車場で隣の車にかすってしまい、
運転に恐怖を感じた私は、
長い間、ペーパードライバーだった。
もう一生、車を運転することはないだろう、
とまで思っていたが、
ニュージーランドでは、車無しでは
日常生活が非常に困難だと分かり、
留学2年目には渋々車を購入した。
車があれば、かなり便利だ。
でも、それが当たり前になってしまい、
何処へ行くにも車に頼ってしまう。
これが肥満になる原因の一つかなと思う。
日本では、多くの場所に鉄道が通っていて、
通学、通勤で電車に乗る人は多い。
日本に住んでいた頃には
駅の階段を上り下りするのも
当然のようにしていたが、
今考えれば、この駅の階段の上り下りが、
かなり良いエクササイズになっていて、
スリムな人が多いのかな?と思うくらいだ。
最後に一つ興味深いことがある。
ニュージーランドには
南太平洋の小さな島国から
来た人たちが沢山住んでいる。
学生時代にもサモアやトンガからの
留学生と話す機会が多かった。
ある日、パーティーに行った時、
「緑、あなたは痩せすぎよ。
もっともっと沢山食べて太りなさい」
といって、私に食べ物を勧めてくる人がいた。
その人も南太平洋の小国出身だったが、
その人の国では、
「女性は太っているほど美しい」
と思われているそうで、皆、沢山食べて、
太るように努めているそうだ。
日本では、やせ形でスリムな女性が
美しいとされている。
だから、多くの人がダイエットをして
できるだけスリムになるよう努めている。
どこへ行っても、
スリムであることは美の条件の
一つだと思い込んでいたから、
「私の国では女性は太って大きい方が美しい」
と言われて、とてもショックを受けた。
所変われば、価値観や感じ方が随分違うものだ、
と驚いた記憶がある。
ということで、
今回はニュージーランドでは
肥満が深刻な社会問題となっていること。
また、なぜ、肥満になる人が多いのかを
私の知っている範囲でお話してみた。