日本とニュージーランドの人間関係は、こんなところが違う!

ニュージーランドに住んで
31年になる私が感じた
「日本とNZの人間関係の違い」
について、お話したい。

大きな違いは、
日本の人間関係が「縦」
なのに対して、
NZのそれは「横」だということ。

日本では上下の人間関係が
基本となっているが、
NZでは、皆が平等精神
を持っている。

日本の上下関係は、
社会的地位や役職、肩書、
家族内での立場、
組織に所属している年数、
年齢などに応じて、

どちらが上で、
どちらが下かが決まる。

下の人は上の人に対して、
敬意を表し、
上の人が言うことを尊重して、
それに従うのが通常だ。

口に出すことはなくても、
上の人は優位で偉く、
下の人は劣った立場、
というように優劣の関係を
心で感じている人も多い。

その一方で、NZでは、
子供も成人年齢に達すれば、
一人の立派な人間として
平等に扱われる。

社会的地位や肩書、年齢などに
関係なく、すべての人が平等だ
という空気が流れている。

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話す言葉を見ても、
このことが明らかだ。

日本語には「敬語」
というものがあり、
自分よりも上の立場の人に使う
特別な言葉が存在する。

相手に応じて
どんな言葉を使うのかが
決まっており、

それを間違えてしまえば、
礼儀知らずと思われて、
悪い評価が下される。

同じことを伝えるにも、
上司が部下に使う言葉と、
部下が上司にする話し方は
同じではない。

学校でも、大学でも、
教師や教授は偉い立場にあり、
「~先生」というように
必ず「先生」という語尾をつけて
呼ばれるもの。

それとは反対に、
下の立場にいる学生は、
「山田」とか、「田中」とか
名前のみで呼び捨てにされることも
しばしばだ。

NZでは
このようなことはない。

同じことを言う場合には、
部下が上司に話す言葉と
上司が部下に使う言い方は、
似たようなものだ。

NZでは大学生にもなれば、
一人前の大人として扱われ、
学生が教授を呼ぶ際にも、
「オリバー」とか、「ジョージ」とか、
ファーストネームを普通に使用している。

同年齢の友達に声をかけるように
ファーストネームだけで気軽に
学生が教授に話しかけることは、
日本出身の私には、
けっこう違和感が強かった。

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「先輩」「後輩」という概念を
強く意識するのも
日本人の特徴だろう。

なぜだか分からないけれど、
少しでも長く組織に属した人が
「先輩」として、敬われる。

1年先に入学した学生は、
1年後に入った人よりも、
その学校での経験が
1年間長いので、「先輩」となる。

たったの1年でも、
先輩は後輩よりも偉くて、
後輩に対して
威張った態度を見せている。

後輩は先輩の言うことを聞いて、
先輩に逆らうようなことを
しないのが日本の特徴。

しかし、NZでは、
先輩・後輩の関係を意識する人は
あまりいない。

学校でも学年に応じて
シニア、ジュニアと
分類されることはあっても、

シニアはジュニアよりも
偉くて優っている
と考えることはなく、

単に違う段階にいる人たちとして
分けられているだけだ。

日本のような感覚で
上下関係を
感じることはほとんどない。

職場でも似たようなことが
言える。

日本的な感覚ならば、
勤続年数が長い人に
新入社員が仕事上で
自分の意見を述べることはNG。

しかし、NZでは新入社員でさえ、
仕事上のやり方で
「こうしたほうがいい」と提案しても、
何も問題が起きないこともしばしば。

部下が上司と異なる意見を持てば、
それを上司に話すことも
普通に許可される。

上司が部下の意見を
取り入れるかは別として、
一応、聞く耳を持つ上司が多い。

その組織での経験が長いから、
より優れているとは
思わないようだ。

その証拠に
勤続年数が長い人が、
たった今入ったばかりの人に
「このやり方はどう思う?」
と聞くことさえある。

長くいる人のほうが
先輩として優っていて、
短い人は後輩だから劣っている
とは考えないようだ。

実際の勤続年数よりも、
どんな素晴らしいアイデアを持つか?
のほうが重要視される。

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日本で上下関係が甚だしく
感じられるのは、
サービス提供者とお客さんの関係。

モノを売る側、サービスを提供して
お金を頂く側は、
下の立場となり、

お金を払ってモノを買う側、
サービスを受ける側は
上の立場になる。

売る側はお客様に対して、
敬語を使い、
丁寧な応対をする。

たとえお客が
失礼な態度を取ったり、
理不尽な要求をした場合にも、

サービス提供者は
礼儀正しくお客に接して、
お客を侮辱することはない。

たとえば、昔の日本ドラマで
こんなシーンがあった。

ロサンジェルス行き飛行機が
目的地の空港が火災になり、
遅延することになった。

この場合は、航空会社に
落ち度があり、
飛行機が遅れたわけではない。

それでも
CAさんがお客さんに対して、
頭を下げて丁寧にお詫びしているのだ。

お客の中には
「現地で重要な商談があるんだ!
時間に間に合わないと困るんだ!
何が何でも飛行機を飛ばせ!」
とCA相手に不当な要求を
してくる人もいた。

このシーンを見た時、
私は「日本的だな」と思った。

もし、NZで
同じようなことが起きても、
航空会社が謝罪することも
ないだろうし、

ニュージーランド人には
このような不当な要求を
するお客もほぼいない。

正当な理由により、
安全に着陸可能になるまで
飛行機を飛ばさないのは
正しい決断だ。

よって、航空会社は、
お客さんに謝る必要はない
と考えられる。

それどころか、
乗客の安全のため
適切な判断をしたということで
会社は感謝されるはずだ。

どんな状況でも、お客は
モノやサービスを売る側よりも
上の立場にいると勘違いして、
横柄な態度を取るのは、
日本でけっこう見られるシーンだ。

NZ社会にすっかり慣れた私には
お客とサービス提供者の関係は
ちょっと異様に感じられることも
しばしばある。

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医者と患者の関係も
日本とNZとではちょっと違う。

日本でも、NZでも
お医者さんは尊敬される立場。

しかし、日本の場合には
医者は医学知識が豊富な
絶対的な存在であり、

自分の意向を
患者に押し付けても
何も問題ないと考える人も多い。

NZではそれはない。

医者は患者の今の状態を
ありのまま伝えて、
どのようなオプションがあるのか、
きちんと説明する義務がある。

それぞれのオプションに対して、
どのような結果が見込まれるのか?
についても教える。

その上で、
医者がどうしたいのか?
というよりも、
患者がどうして欲しいのか?
を尊重する傾向にある。

NZでは医者のほうから
患者に一方的に
「この治療をしなさい」
と強要することはまずない。

医者としての意見は言っても、
自分の意見と患者さんの意見を
対等に考えるのが
NZの典型的な医者の姿勢だ。

実際に病院へ行けば分かるが、
日本とNZとでは
病院の雰囲気も大分違う。

日本の病院は
ちょっと怖い感じがする。

威厳ある医者に対して、
委縮してしまう患者も多いのでは?
と思われるような雰囲気だ。

その一方で、NZの病院では、
けっこう和やかな空気が
流れている。

NZでは通常、
お医者さんが患者さんを
待合室まで迎えに来てくれる。

初対面の時には、
「僕は~です」と医者のほうから
自己紹介して、
患者と医者が握手して
挨拶するのが普通だ。

学生が教授を
ファーストネームで呼ぶように、
患者が医者に対しても
ファーストネームで呼ぶ。

時々「DR~」と言う人もいるが、
そちらのほうが
数は少ないだろう。

こういう面でも、
NZは平等精神なのだな
と感じる。

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また、家族間でも
平等精神が行き渡っている。

子供が小さな頃には
親は子供をきちんと躾けて、
親の言うことに従わせる。

でも、子供が成人した後は、
いくら自分の子供でも
一人の大人として
子供の意向を尊重する親が多い。

親は子供に対して
こうなって欲しい
と望むことがあっても、

もし、子供の意向が
親とは異なるのなら、
親は自分の考えを
子供に押し付けるのではなく、
子供がやりたいように
やらせるのがNZ式だ。

その代わり、子供は親から
経済的にも、精神的にも
自立するよう促される。

自分のしたいようにしても
構わないけれど、
きちんと自立してやって欲しい
という感じだ。

日本の場合は
親のほうが人生経験が長いので、
成人した子供に対しても、
自分と平等に扱うことはまずない。

親のほうが上だ
と思っている人も少なくない。

しかし、NZでは
成人した子供は
自分と同じように独立した
一人の人間。

たとえ子供が
自分の意向と異なることをしても、
子供を同等に扱って、
本人の考えを尊重する。

もちろん、全員が全員
そうだとは言えなくても、
このような傾向が強い
と私には感じられる。

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ということで、今回は、
日本とNZの人間関係の違いを
お話してみた。

先輩と後輩、部下と上司、
学生と教師、医者と患者
などの間に、
上下関係がはっきり見られるのが
日本の人間関係。

それに対して、
どんな社会的地位であろうと、
どんな肩書であろうと、
上下関係を意識するのは
ほとんどなく、「皆が平等」
と思うのがNZの人間関係だ。

どちらが良い、悪い
と言いたいのではなく、
このような大きな違いがある
ということを伝えたかった。