日本の職場で働くのと、NZの職場で働くのとでは、どこがどう違う?

今回の話は、日本の職場で働くのと、
NZの職場で働くのとでは、
どんな違いがあるのかについて。
両国の組織で働いたことのある私が、
感じたことをお話してみたい。

最初にお断りしたいのは、
私が仕事をした組織での経験に基づくだけなので、
サンプル数は少ないし、
偏りがあるかもしれないこと。
単に私が感じたことなので、
「日本では絶対にこうだ」とか、
「NZでは必ずこう」と言うつもりはないこと。
単なる個人の一感想として
聞いて頂ければ、幸いだ。

最初に感じた違いは、職員の管理について。
日本の組織は
マイクロマネージメントなのに対して、
NZはマクロマネージメントであること。
日本の組織では、上司が部下に対して、
行動を細かくチェックして、
常に部下を管理している様子だ。
正直、ちょっと過干渉ではないか?
と感じたこともある。

それに対して、NZの組織では、
上司はおおまかな方向性は示すけれど、
細かい仕事のやり方については、
ある程度、部下の自主性を尊重して、
部下がやりやすいように仕事させてくれる。
もちろん、部下のやり方が悪いために、
期待される成果が出ない時には、
何が問題なのか?一緒に話し合うことになる。
しかし、普通に業務をこなせているなら、
上司は部下に何も口出ししない。

次に組織内の上下関係について。
日本もNZも組織内の階層的構造はある。
しかし、日本の組織では、地位の上下関係が、
かなり明らかであり、私には強く感じられた。
部下は上司に対しては
絶対的に服従する姿勢であり、
たとえ、上司が間違ったことをしていても、
部下がはっきり「間違いです」とは言いにくい環境だ。

それに対してNZでは、
ポジションによる上下関係はあっても、
それをあまり感じることはない。
部下の昇進や昇給は、
直属の上司の評価にかかっているので、
上司に気に入られるよう、
中には媚びへつらう人もいる。
しかし、全員が全員、そんな感じでもない。
どちらかと言えば、組織内でも
「平等精神」が行き渡っているようだ。
おそらく、これは日本とNZの文化の違いだろう。

日本では今までは終身雇用が一般的だった。
そのため、通常は年上の人が上の立場の役職につく。
当然、上司も自分よりは年上になる。
しかし、NZではそうではない。
NZでは新卒を決まった時期に一斉に雇用することはない。
ポジションの空きが出た際、
そのポジションに必要なスキルを持つ人なら、
誰でも採用の対象として考慮して貰える。
採用時には職務内容をあらかじめ明確にして、
その職務をこなせる人ならば、
年齢には関係なく採用される。
だから、上司が自分よりも
年齢的に若いことも、しばしば起きる。

次に「残業」について。
日本の職場では残業は当たり前だった。
残業することは、仕事熱心だと受け取られ、
残業の多い人は尊敬される傾向にある。
しかし、NZではそうではない。
決められた時間内に業務をこなせないから、
残業しなければならないと解釈する人が多い。
効率よく働けないから、やり方が悪いから
そのようになってしまう、
とネガティブに受け取る上司もいる。
そのため、NZでは、残業の必要がないように、
極力、時間内に仕事を終了させて、
勤務時間が終われば、
直ぐに職場から出る人がほとんどだ。

日本の場合は、
残業すれば、残業代がつくことも多い。
しかし、NZでは年俸給与が決められていて、
基本的には、時間外で仕事をしても、
残業代がつかないことも普通だ。
家族との時間を大切にするNZ人は、
退社時間になれば、サッサと帰宅する傾向にある。

ジョブ型雇用を通常とするNZでは、
新しく組織に入ってくる人は、
新卒者でない場合も多い。
他の企業や組織である程度経験を積んだ人も、
転職により、その組織に加わることになるので、
「新人」に対する姿勢も、日本とNZではかなり違う。

私がNZの組織に入ったばかりの頃、
もう既にその組織で5年間勤めた人から、
意外な質問をされた。
「5年も同じ所で働いていれば、
すべてのことが当たり前に感じられる。
たとえ、やり方がオカシクても、
それが当然に思えるようになり、
自分では分からない。
新しく入ったあなたに、この組織のやり方で、
変だと思うようなことがあったら、教えて欲しい」とのこと。

日本の組織では、新人に対して、
そんな質問をする人はいないだろう。
長年同じ職場で働けば、
その組織の良くない点にも疑問を持たず、
当然のこととして受け入れているだろう。
しかし、その人は、新人の私に「どう思う?」
と聞いてきたわけで、
これには私もかなり驚いた。

また、別の経験では、
NZの組織に入社してから3カ月後くらいに、
私は上司に対して、「今のこのやりかたよりも、
こうしたほうがいいと思います」
とポロッと言ってしまったことがあった。
日本の感覚では、
新人がそんな生意気なことを言えば、
お叱りを受けるのが当然だ。
しかし、意外にもNZ人の上司の反応は違っていた。
「ああ、いいよ。じゃあそれでやってみて」
と答えたのだ。
新人に対して、「この職場のやり方に従え」
と一方的に命令するのではなく、
きちんと意見を言わせるのは
「スゴイ!」と私も感心した。

次に、同僚や上司との時間外のお付き合いについて。
日本の職場では、アフターファイブも
同僚や上司と食事に行ったり、
飲みに行ったりすることも多かった。
個人的には行きたくなくても、
「参加しなければならない」
というプレッシャーを感じていた。

NZの組織でも、日本ほどではないが、
時々アフターファイブのイベントがある。
参加する人もいるが、
「他に用事があるから」と言って、
サッサと帰ってしまう人もいる。
日本の組織とは違って、
行きたくないのにムリに参加しなければならない
という雰囲気は全然ない。
「気が向かないな」と言えば、
「じゃあ、やめれば」と同僚が答える。
お陰でプレッシャーを感じることなく、
かなり助かった。

最後に休暇について。
日本もNZも一年間の有給休暇数は
そんなに変わりはないようだ。
どちらも年間4~5週間の有給が与えられる。
しかし、日本の場合は休暇があっても取りづらい。
特に長期間の休暇はなかなか取れない。
それでも、幸運なことに、
私が東京で勤めていた日本企業では、
一度に2~3週間有休を取ることも可能だった。
当時の日本ではかなり恵まれた状況だ。

大抵の長期休暇は、海外旅行をするためだ。
その場合、いくら私的な旅行であれど、
旅行日程を作成して、
それを会社に提出する義務があった。
何便のフライトで何処へ行き、
どの都市でどのくらい滞在して、
何便のフライトで帰国するのか、
事細かに書いて、
上司に知らせる必要があった。

NZでは、いくら有給休暇であれど、
私的な旅行の詳細を
勤め先の会社に伝える義務などない。
会社側がそんなことを要求すれば、
プライバシー侵害で大問題になるだろう。

NZの組織では、有給休暇は
「絶対に消化してください」
とムリに取らせる傾向にある。
その理由は、残った有給休暇に対して、
雇い主が職員に対して
お金を支払う義務があるからだ。
社員の多くが有休を取らず、
会社がその分経済的負担を負うことは、
会社の出費となり、避けたいことだ。
そのため、休暇を取らない部下に対して、
上司は「早く休暇を取りなさい」
とまで言ってくる。

また、日本では無給休暇を取ることは
よっぽどの理由がなければ、やらないだろう。
しかし、NZではちょっとしたことでも、
有給では足りない場合、
無給休暇を取る人も多い。
その理由は旅行であったり、
家族のためであったり、
単に自分が休みたいからという場合もある。
雇い主側も理由が何であれ、
あまり追及することなく、
普通に無給休暇を許可している。

ということで、今回は、
日本とNZの組織で働いてみて、
どんな違いを経験したのか、
私が感じたことをお話してみた。