ニュージーランドは、一面では福祉国家。
国立病院での診察、治療、入院費は
基本的には無料だし、
妊娠、出産費用に関しても、
国がほとんどすべてを負担してくれる。
そういう意味では、非常に有難いが、
歯科治療の点では? と言えば、
ちょっと遅れているのでは?
と感じることが多い。
ニュージーランドでは、
子供が18歳の誕生日を迎える日までは、
基本的な歯科治療は無料で受けられる。
定期検診や、歯石取り、歯のポリッシュ、
フッ素塗り、虫歯を削って詰め物をすること、
ダメージが大きい場合には抜歯をすること等、
これらの治療は、無料で受けられる範囲だ。
歯科矯正などはこの範囲外であり、個人負担となる。
デンタルナースが定期的に小中学校を訪問して、
児童の歯科検診を行っている。
検診日には子供たちが検診結果の紙を
自宅に持って帰ってくる。
その紙に治療が必要であるか否かが書かれていて、
必要な場合には、予約を取るよう指示される。
簡単な治療であれば、デンタルナースがして、
少し高い技術が必要な治療になれば、
歯科医師が担当することになっている。
高等学校へ行ってからは、
デンタルナースではなく、
歯科医師が検診をしてくれる。
ただし、すべての歯科医師が無料歯科サービスを
提供するわけではないので、
そこは注意が必要だ。
事前に確認してから予約を取る方が無難だ。
このように17歳までの子供に対しては、
歯科治療の点において、福祉が行き届いているが、
それ以上の年齢になった人に対しては、
国はほとんど援助をしてくれない。
大人が歯医者さんに行って、
検診を受けたり、治療を受けるのは、
かなりお金がかかる。
住んでいる地域や歯科クリニックにより、
治療費はまちまちだが、
私がお世話になっている歯科医院では
定期検診で85ドルくらい。
また、数年前に歯の詰め物が取れて、
新たに詰め直して貰った時には、
1回の治療で200ドル以上もかかった。
現在の換算レートで計算すれば、
検診で6,500円くらい、そして、
簡単な歯の詰め物で15,000円くらいだ。
最近は、ニュージーランド国内でも、
貧富の差が大きくなりつつある傾向にある。
理想的には、1年に1度は定期検診を受けて、
歯石を取ったり、ポリッシュして貰った方が
口腔内の健康のためにはよいが、
経済的にそうすることが難しい人もいる。
何も問題がないと思い、
何年も歯科検診を受けないでいて、
気がついた時には、虫歯があまりにも酷く、
単なる治療では済まず、
歯を失ってしまったということも
よく聞く話だ。
国は低所得者に対して、緊急の場合にのみ
歯科治療の一部を無料で提供することはあるが、
これも、国立病院や、国が指定する歯科医院での
抜歯がほとんどだそうだ。
経済的に困難であれば、
歯の状態が非常に悪くなるまで、
何もすることなく、手遅れになってから、
抜歯して、歯を失うことになる、
という悲しい現実がある。
歯や口腔内の健康は、
身体全体の健康と深く関係しているので、
大人に対する歯科治療の点でも、
国に援助をして欲しいと希望する人は多いが、
現実的には、政府予算にも限界があり、
なかなかそれができない現状があるようだ。
私自身も最近、歯のトラブルがあった。
今から1年前の話だが、その当時、
ニュージーランドでは、新型コロナウィルス
蔓延防止のため、ロックダウン中だった。
警戒レベル4という最高のレベルで、
学校も職場も閉鎖。不要な外出や
国内移動も厳しく禁じられていた。
病院やGPなどの医療機関は開いていたが、
歯科医院に関しては、ほとんどすべてが
閉まっていた。
こんな時に、私の歯が痛み出したのだ。
「ああ、どうしよう。こんな時に
歯が痛くなって、困ったな」と焦ったが、
激痛というほどではなかったので、
どうにか、ゴマカシながら乗り切った。
ロックダウンが終了して、
すぐに歯科医院へ駆け込んだ時には、
「歯の付け根の部分に膿が溜まっている」
と言われて、口腔外科に行くことに。
口腔外科に行ったら、
「もう、この歯はダメだね。
今のうちにインプラントにした方がよい」
と言われて、渋々インプラントにすることになった。
結局、半年前にインプラントの手術を受け、
6カ月ほどは一時的な仮の歯が入っていた。
そして、先週、ようやく永久的に使う歯を
入れて貰ったところだ。
やれやれと思ったが、
自分の歯とは、感覚的にかなり違う。
1週間経つ今でも、
口の中に異物が入っているようで、
あまり心地よい感じはしていない。
若いころには歯の健康は
ほとんど気にしていなかったが、
50代になる今では、
「歯は本当に大切な身体の一部だ」
とひしひしと感じている。
歯が悪ければ、身体全体の健康に
悪影響を及ぼすし、
気分的にもスッキリしない。
また、経済的な負担も大きい。
今のところは、大丈夫だと思っている時でも、
将来のことを考えて、
きちんと定期的な検診を受けて、
早期発見で手遅れにならない時に
適切な治療を受けておくことが大切だと痛感する。
ところで、
日本の歯科技術はとても優れているらしい。
私がお世話になっている歯科医は、
「ああ、この歯の詰め物、日本でしたでしょ?
日本の技術はスゴイんだよな」って感心する。
同じ詰め物にしても、使う素材が
日本とニュージーランドでは違うそうだ。
日本のものは長持ちする素材で、
詰め物を付ける接着剤に関しても、
日本製のものは、強力で質が高いようだ。
そんな話を歯科医師から聞かされて、
「さすが、日本!」と思った。
ということで、
今回はニュージーランドでの
歯科サービスについて、
私が知っている範囲でお話してみた。