日本では謙虚さを
高く評価することが多いが、
ニュージーランドではその逆。
謙虚だと「自信がない」と
ネガティブに捉えられることがしばしば。
結果、損をすることもある。
これを象徴した出来事が
私の留学時代に起きた。
ドイツからの研究者グループが
私の留学先大学を訪問した。
その際、ドイツ語が堪能な学生に
通訳 兼 お世話係のアルバイトの
求人を教授が出したのだ。
応募者の中に私の知人が2人いた。
一人は日本語専攻のニュージーランド人。
もう一人は日本からの交換留学生だった。
ニュージーランド人の志願者は
とても自信ありげで、堂々と話す。
「僕はドイツにも行ったことがあるし、
ドイツ語はかなりできます」と。
それに対して、日本人の留学生は
「僕は日本の大学で、ドイツ語のコースを
取りました。ペラペラではないけど
少しはできます」と。
結局、ニュージーランド人の学生が
通訳 兼 お世話係の仕事を得た。
両者の姿を見れば、
当然、ニュージーランド人の彼が
その機会を得るだろうと思われたので、
不思議ではなかった。
でも、ここから話は面白くなる。
ドイツ人研究者グループ訪問の当日、
ニュージーランド & ドイツの
ジョイントイベントが開催された。
その時、志願した日本人留学生と一緒に
私もそのイベントを見学した。
基本的には皆、英語で話していたが、
時々、コミュニケーションが
円滑に行かないとき、通訳のバイトがヘルプした。
自信ありげのニュージーランド人の彼だが、
会話がスムーズでない時もある。
お互いの言うことが分からない時、
突然、日本人の留学生が介入したのだ。
そして、この留学生のお陰で
コミュニケーションが円滑に行く
ということを目の前で見せられた。
通訳のアルバイトに志願したが
仕事を貰えなかった日本人学生。
でも、彼のドイツ語能力はすごかった。
周りで見ていた人たちも、
彼の話しぶりに感心していた。
この2人の志願者を比較すれば、
「僕は少しだけできます」と控えめな
人の方が、実際の実力は上だ。
しかし、堂々と自信を持って
「できます」と言わないから、
アルバイトの仕事を貰えなかった。
たった1度限りのアルバイトなら
貰えても、貰えなくても、さほど重要でない。
でも、これが長期または半永久的な
仕事のポジションであれば、話は別だ。
どんなに実力があっても
控えめで、謙虚であるがために
仕事をオファーされなければ、
とても残念なことだ。
堂々と自信を持って話す人は、
他人に信用される傾向がある。
話の内容が「ちょっとイマイチ」
という場合でも、
それでも、最初は信用されて
他人から好感を持たれる。
逆に、正しいことを言っていても
話す時の態度が自信なさそうだったり、
小さな声で話していれば、
誰にも信用して貰えない。
ニュージーランドに暮らして
私はもうすぐ30年になる。
日本に住んだ時間よりも、
ニュージーランドの方が長くなった。
それでも、私が生まれ育った
日本の文化や価値観は、
今でも私の中に
深く根付いている。
私自身も謙遜しがちな人間で、
できることでも、「自分はできます」
と堂々と言えない方だ。
こういう姿勢でいれば、
この国では損をすることを分かっている。
でも、意識して気をつけていないと
自然と控えめで、謙遜した態度を
取ってしまっている。
どちらの文化が良い、悪いというつもりはない。
ただ、言えることは
ニュージーランドで生活する時は、
やはり、この国のやり方を採用しないと
損することが多いと感じる今日この頃だ。