何らかの出来事に遭遇したとき、
惨めな気持ちになったり、
落ち込んだりすることが
あります。
そのようなとき、
気持ちを楽にするために
何ができるでしょうか?
今回は、辛い気持ちになったり、
気分が沈んでしまったときに
役立つ方法をお話しします。
ネガティブな感情がこみあげてきて、
心が重たいときには、
無意識のうちに考えていること
が原因である場合が多いです。
この記事では、
自覚せずに起きている
思考に焦点を当て、
その扱い方について考えてみます。
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自動思考とは何か?
私たちの日常生活では
さまざまな出来事が起こり、
それに対して私たちは
心の内でさまざまなことを
考えながら生活しています。
「自動思考」とは、
心理学で用いられる概念で、
ある出来事が起きたときに
瞬間的に浮かぶ考えやイメージのこと
を指します。
これらの思考やイメージは
自動的に起こるため、
私たちはそれが発生していることに
気づきにくいものです。
自動思考は日々の出来事や
状況に対して
素早く反応するために役立ちますが、
ときには否定的または誤った思考が
自動的に現れることもあります。
たとえば、
何か失敗をしたときに
「私は何をやってもダメだ」
と自動的に思うことが
それにあたります。
このような否定的な自動思考は、
ネガティブな感情を引き起こし、
自己評価を下げる原因となったり、
消極的な態度を引き起こすことにも
つながります。
そのため、自動思考には
十分注意が必要です。
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まずはどのような自動思考が生じたのかを考えよう
悲しい気持ちや
落ち込みを感じたとき、
その感情を引き起こした自動思考が
自分の心の内に隠れているはずです。
そのように考えたから
悲しい気持ちや落ち込みが
生じたというわけです。
ネガティブな感情に襲われたときに
やるとよいことは、
まず自分の中に自然と湧いてきた
自動思考はどのようなものであったか
を探ることです。
意識しなければ
気づけないことも多いですが、
意識して考えてみれば、
自分の心の内にあった自動思考に
気づけるかもしれません。
そして、
自動思考に気づくことができたら、
その思考に対して
多角的な視点で考察することが
役立ちます。
そうすることで、
より広い視野で柔軟に
物事を捉えることが可能になり、
心も軽くなるでしょう。
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多角的視点で自動思考を見つめる
多角的視点で
自動思考を見つめるために、
まず紙とペンを用意しましょう。
そして、最初に、起きた出来事と
そのときに感じた感情を
書き出してみます。
ここで一つ具体的な例を挙げて
説明しましょう。
例:
今日、会社のプレゼンで、
私は資料の一部を間違えて
誤った情報を提供してしまった。
それに気づいたとき、
私は恥ずかしさと不安で
いっぱいになった。
このように、
まずは起きたことの事実と、
そのときに心の内に湧いてきた感情を
書き出します。
次に、その感情を生んだ自動思考は
何だったかを探ります。
自動思考が見つかったら、
それも書き出してみましょう。
このケースでは、次のようになります。
例:
私は仕事ができない、
周囲からの評価が下がるだろう。
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自動思考を裏付ける根拠と、反証する矛盾点を考えよう
ここまでで、紙には
出来事の事実、感情、自動思考が
書かれていることでしょう。
これら3つが揃ったら、
ここから自動思考を多角的な視点で
とらえる作業が始まります。
まず最初に、その自動思考が
その通りであるとしたら、
その根拠や事実は何かを考えて、
それも書き出してみます。
例:
– 誤った情報を提供したことで、
同僚や上司に誤解を与えた。
– 会議中に数人の同僚が驚いた顔をしていた。
– 上司も私に厳しい視線を向けた。
自動思考を裏付ける
と考えられる根拠を書き出した後には、
今度は逆に、その自動思考を
反証するような点を考えてみます。
つまり、
自動思考がその通りではないとしたら、
その根拠や事実は何かを考えて、
これも紙に書いてみます。
例:
– その後、そのミスを訂正し、
適切な情報を提供したので
信頼を取り戻せるはず。
– 他のプロジェクトで成功しており、
一度のミスが全体の評価を
覆すことはない。
– 同僚や上司も過去に似たような
ミスをしたことがあり、
私だけではない。
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最悪と最善のケースも考える
次にするべきことは、
この出来事により
最悪の事態が起きるとしたら、
どのような最悪な事態が
起こりうるかを想像してみます。
ここでは、
現実には起こり得ないくらいの
最悪の状況を想像して
書き出してみましょう。
例:
私が提供した誤った情報が原因で、
プロジェクトが大きく遅れ、
結果的に会社に大きな損害を
与えてしまった。そして、
その責任を問われて
私は左遷されてしまった。
次に、これとは正反対のことを
やってみます。
もし、その出来事により、
自分にとって最善なことが起きるとしたら、
どのような最善なことが
考えられるでしょうか?
ここでも、
同じように想像力の限りを尽くし、
非現実的なほど
素晴らしい理想的なシナリオを
考えて書き出します。
例:
このミスを教訓として、
より詳細に資料をチェックする
新たなプロセスが導入され、
全社的にミスが減少する。
私はこの改善提案で評価され、
信頼されるリーダーとして認められる。
最悪と最善の結果を考えたあとで、
現実的にはどんなことになりそうかを
考えやすくなるでしょう。
最悪と最善は極端すぎるため、
実際にはこれらの間の状態に
なる可能性が高いです。
このケースでは次のように
考えられるでしょう。
例:
ミスを認め、その後きちんと訂正したので、
同僚や上司は理解してくれ、
大きな問題になることはなかった。
今後同じようなミスをしないように
注意しよう!
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友達が悩んでいたら、どんな助言をしてあげる?
次に、もし自分と同じようなことが
親友に起きて、
その人が悩んでいるとしたら、
あなたはその人に
どんな言葉をかけてあげますか?
実際に、
相手が目の前にいる状況を
頭に思い浮かべながら、
相手に何かを言ってあげてください。
例:
一度のミスが
すべてを決めるわけではないよ。
後できちんと訂正したから大丈夫。
自分のミスを謙虚に認められて、
君は立派だよ!
自分事であると
客観視することが難しいですが、
他人ごととして考えれば、
少し離れた位置から
俯瞰して物事を捉えやすくなります。
そのため、
親友が同じ状況にあったら
自分はどう考えるか、
というアプローチが役立ちます。
自分のことだと思えば、
大きな問題に感じられても、
他人ごととして考えれば、
同じ問題でも
それほど大きなことではない
と気づけるかもしれません。
もしそうならば、
あなたのやったことも、
自分が思うほど
重大なことではないのです。
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ミスや失敗を将来に活かすには
ここまでのエクササイズを通じて、
自分の自動思考を
多角的に見ることができたはずです。
そして、少し気分も
楽になったことでしょう。
最後に行うべきことは、
その出来事から学んだことや、
今後自分が将来のためにできることを
考えてみることです。
このケースでは、
次のようなアクションが
考えられます。
例:
今後のプレゼンでは、
事前の確認作業を徹底しよう!
出来事を悪く捉えてしまい、
落ち込んで悲しむだけでは
前に進むことも困難です。
しかし、多角的な視点でとらえ、
冷静に出来事を見つめることができれば、
その出来事を将来に活かす方法も
見つけやすくなるでしょう。
つまり、失敗やミスから
学ぶことができる
ということです。
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まとめ:より柔軟な思考でより豊かに生きるために
私たちの思考パターンは、通常、
かなり凝り固まっています。
自覚はありませんが、
私たちは同じような自動思考を繰り返し、
同じような感情に
苛まれる傾向にあります。
その凝り固まった思考のせいで、
落ち込むことや
悲しくなることが多い場合には、
思考を多角的な視点で見つめることが、
心を軽くするために有効です。
今回は、具体的に
どのようなアプローチで
多角的な視点で見ればよいか、
具体例を挙げてご紹介しました。
紙とペンを用意して、
以下のことを書き出します:
出来事、感情、自動思考。
自動思考を裏付ける根拠を考えます。
また、それを反証する点も
探してみます。
起こりうる最悪と最善の状態を
想像力を働かせて考え、
その後、現実的に起こるだろうことを
想像してみます。
これが他人事だったら、
相手にどのような言葉をかけるかを考え、
最後に、今後どのようなことが
できるかを考えてみましょう。
ここまですれば、
今までの偏った見方ではなく、
思考をかなり柔軟にすることも
可能になるでしょう。
ことあるごとに
このエクササイズを試みて、
より柔軟な思考で、
より豊かな生活を目指しましょう!