今回の話は、
楽観主義の方が悲観主義よりも
逆境を乗り越えやすいのか?
について。
最初に結論を言えば、
必ずしもそうではなく、
楽観主義と悲観主義の
両方の姿勢を持つことが
必要だということ。
なぜそうなのか?
お話したい。
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「楽観主義」とは、
物事のプラス面に
焦点を当てる姿勢。
それに対して、
「悲観主義」は
マイナス面にフォーカスする。
楽観主義者はどんなことでも
意識をポジティブ面に
向けるので、
自然とエネルギーが湧き、
やる気も出てくる。
元気で明るく
建設的な行動を取りやすく、
良い結果を生むことも多い。
一方、悲観主義者は
ネガティブ面ばかりを
見ているので、気力を失い
「どうせダメなんだから」
と言い、消極的。
結果的には
意義ある行動をしなくなり、
たとえ目の前に素晴らしいチャンスが
転がっていたとしても、
それが視界に入らない。
こう話せば、
楽観主義者の方が望ましく、
逆境を乗り越える力も
悲観主義者よりもあるのだろう
と思われる。
しかし、現実的には、
楽観主義者の方が
すべてにおいて
優位であるとは言えない。
それを裏付けるような事例も
過去にはあるからだ。
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「ストックデールの逆説」
という話がある。
ストックデールとは
アメリカの軍人の名前で、
ベトナム戦争で捕虜となり、
8年間も拷問生活に耐えた偉人だ。
毎日、毎日、鞭で打たれ、
死にたくなるような状況下で
他の捕虜たちと収容所で暮らした。
時が経つにつれて、
仲間たちが次々と
命を落としてゆくのを
目のあたりにした。
しかし、そんな苦境下でも、
ストックデールは
希望を捨てなかった。
「私は結末には
ここから出れるだけではなく、
『勝利』を収める」と
ゆるぎない確信を持っていた。
そして、8年後、
彼が信じていたことが
本当に実現した。
ストックデールは
生還して祖国に帰れたのだ。
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ストックデールは生還後に
メディアの人たちから
インタビューを受け、
それが大きな話題を呼んだ。
インタビューの質問の一つは
「拷問生活に耐えられずに
途中で死んでいった人たちは、
どういう人たちですか?」
というもの。
それに対する彼の返答が
かなり意外なもので、
多くの人たちを驚愕させた。
「逆境で命を落としたのは、
楽観主義の人たちですね」
と答えたからだ。
普通ならば、この言葉に
「えっ?」と驚かされるだろう。
しかし、実際には、
プラス面に焦点を当てていた
楽観主義者たちの方が
早くに参ってしまい、
生き残れなかったのだ。
楽観的な捕虜は
「クリスマスまでには
収容所から出られるだろう」
と堅く信じていた。
でも、クリスマスが過ぎても、
事態は全く変わらなかった。
次に彼らが願ったのは、
「イースター祭までには出られる」
ということ。
しかし、それも叶わなかった。
そして、彼らが次に想像したのは、
「感謝祭までには出れる」こと。
でも、残念なことに
感謝祭にも何も起こらず、
今まで通りの拷問生活が
永遠と続いていった。
楽観主義者は自分が信じていた
ポジティブな考えとは
全く別の事態に遭遇して、
そのうち激しい失望感に
襲われることになる。
ストックデールによれば、
「最終的にはここから脱出できる」
と強く確信することは大切だ。
しかし、それと同時に
今自分が置かれた状況下で
最も厳しい現実を直視することも
必要であるとのこと。
楽観主義者が次々と
亡くなっていった背景には、
彼らがネガティブ面を
受け入れられなかった事実がある。
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ストックデールの逆説から
学べることは、
物事のポジティブ面を見ることは
重要でも、
それと同時にネガティブ面とも
向き合う必要があるということ。
つまり、
ポジティブ面とネガティブ面の
両方のバランスを取ることが
一番望ましいということだ。
私たちが生きる世界には、
ポジティブなこともあれば、
ネガティブなこともある。
それなのに、楽観主義者は、
ポジティブは良いもので、
ネガティブは悪いものだ
と勝手に決めつけ、
ポジティブな部分だけを見て、
ネガティブ面から目を背けたり、
なかったことにしたりする。
しかし、このような姿勢では、
現実的には存在する
マイナス面を無視するから、
不自然が生じる。
ネガティブ面を悪者扱いして、
全く受け入れなければ、
この世界の本当の姿に
大きく失望して、
生きる意欲まで失われてしまうのだ。
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ネガティブ思考で
ネガティブに偏りすぎる人がいれば、
「もっとポジティブになろうよ」
とアドバイスするのもあり。
意識してポジティブ側に動き、
ニュートラルな位置に
戻ることが望ましいからだ。
しかし、
「ポジティブ万歳!」と叫んで、
ポジティブ側に強く傾いている人も
そのままの位置にいるのではなく、
少しネガティブ側に動き、
バランスが取れる状態に
した方が賢明だ。
現代社会では、
ポジティブが絶対的に良い
と思う風潮もあるが、
これはあまり感心できない。
ベストなのは、
ポジティブとネガティブ、
プラスとマイナスで
良い具合にバランスを取ることだ。
「自分は悲観主義だ」と思い、
そのことに悩む人がいれば、
悲観主義にも
素晴らしい面があることを
知って欲しい。
その上で
ニュートラルな姿勢を
目指すのが理想的だ。
楽観主義だけに固執すれば、
逆境を乗り越えるのも
困難になることを覚えておこう!