「努力しても意味がない」
「挑戦するだけ無駄だ」
「また失敗するに決まってる」
などと心の中でつぶやくことが多い場合、
学習性無力感に
陥っている可能性があります。
今回は、
学習性無力感が生じる背景、
その弊害、そして学習性無力感を
克服する方法についてお話しします。
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学習性無力感とは何?
学習性無力感とは、
何度も失敗を繰り返したり、
困難な状況に長くいるうちに、
どれだけ努力しても結果が変わらない
と思い込んでしまう心理状態のことです。
心理学者マーティン・セリグマンの実験では、
犬が電気ショックから
逃れられない状況に長期間置かれると、
最終的に逃げる努力を
しなくなることが観察されました。
この現象が
学習性無力感の基礎となっています。
人間も同様に、どれだけ頑張っても
長期間に渡って
状況を変えられない状態が続くと、
無気力になりがちです。
「どうせ何をやっても無駄だ」
「頑張っても意味がない」
という気持ちになるのです。
そうなれば、ストレスから
逃れられるチャンスが訪れた場合でも、
そのチャンスを掴もうとはせず、
その状態に留まってしまいます。
学習性無力感は、人間だけでなく、
犬やネズミなどの動物でも
起こることが知られています。
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学習性無力感に陥りやすいケース
学習性無力感に
陥りやすいパターンとして、
周囲の人から
繰り返し否定されるケースがあります。
たとえば、教師や上司から
何度も怒られる経験をした人や、
親にダメ出しされ続ける子どもは、
学習性無力感に陥る可能性があります。
このような状況が続くと、
「自分は何をやってもダメだ」
「どうせまた失敗する」
といった心理状態になり、
学習性無力感に陥ってしまいます。
いくら勉強をしても
成績が上がらない場合、その本人が
「頑張っても成績は上がらない」
と思い込み、
勉強をやめてしまうケースがあります。
苦手科目に対してやる気を失い、
全く勉強しなくなるのも、
学習性無力感の
例と言えるでしょう。
自分の行動に
影響力を感じられない場合も、
学習性無力感に陥ることがあります。
たとえば、
一生懸命頑張っているのに
上司から何もフィードバックが
得られない場合です。
単にフィードバックができない上司に
あたってしまっただけかもしれませんが、
部下はフィードバックがないため、
自分の努力が何の役にも立っていないと感じ、
努力しても自分には影響力がない
と思い込んでしまいます。
そのため、
学習性無力感に
さいなまれるようになるのです。
個人のマインドセットによっても、
学習性無力感に陥りやすい人と
そうでない人がいます。
たとえば、上司の注意を受けた場合、
その注意を自分が成長するために必要だ
と捉えられる人と、そうできない人とでは、
学習性無力感に陥るリスクが異なります。
同じ状況でも、
前者は陥ることが少なく、
後者は陥りやすいです。
環境によっても、
学習性無力感に陥る人がいます。
たとえば、周囲の人たちが
改善案を次々と出しても、
まったく聞き入れてもらえない環境です。
そのような場合、
「改善案を伝えても無駄だ」
という空気が流れるようになり、
自分が否定されていなくても、
学習性無力感を感じるのです。
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学習性無力感の弊害
学習性無力感は、個人の日常生活や
メンタルヘルスに
悪影響を与えるリスクがあります。
「頑張ってもどうせうまくいかない」
と思い込んでいるため、
仕事や勉強に対する興味を失い、
モチベーションが低下して
やる気がなくなります。
結果として、自分の能力を
発揮することもありません。
学習性無力感に陥ると、
夢や目標を持つことがなくなります。
自分は何もできないと信じているため、
新しい挑戦をせず、成長や自己実現の機会を
逃してしまうのです。
この状態が長く続けば、
自信がなくなり、自己評価も低下し、
さらなる無力感に陥るという
悪循環に陥る危険があるでしょう。
さらに、学習性無力感は
精神的な健康にも影響を及ぼし、
うつ病や不安障害などの
メンタル疾患のリスクを
高める要因となります。
また、学習性無力感は
周囲の人にも
悪影響を与える可能性があります。
無気力な態度が
相手とのコミュニケーションの妨げとなり、
孤立感や誤解を生む原因と
なることもあるからです。
家族や友人が無力感を抱える人を
サポートしようとしても、
本人が変わることができない
と信じ込んでいる場合、
周囲の人々も疲弊し、
関係が悪化することがあります。
学習性無力感は、
個人の生活全般や周囲の人たちにも
悪影響を及ぼすことが懸念されます。
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学習性無力感の克服方法
では、学習性無力感は
どうすれば
克服できるのでしょうか?
まずは「学習性無力感」の存在を
知ることが重要です。
自分が親や教師、上司など
指導的立場にいる場合、
子どもや生徒、部下が
学習性無力感に陥らないように
注意することも大切です。
たとえば、欠点やミス、
改善点を指摘するだけでなく、
良くできた点や優れた点を
言葉にして伝え、「ここを少し変えれば、
もっとよくなるよ」と励ますことが有効です。
人間はさまざまな性格や背景を
持っているため、
同じ状況に置かれても
学習性無力感に陥る人と
そうでない人がいます。
もし部下や子どもが
学習性無力感に陥っている
と疑った場合、自分の注意の仕方や叱り方、
その頻度について
見直してみるとよいでしょう。
学習性無力感は、
完璧主義の気質を持つ人に
多く見られます。
完璧主義的なマインドセットを持つと、
ちょっとした失敗やミスを大げさに捉え、
自分を責めてしまいがちです。
このような人は
不足部分にばかり目が向き、
ポジティブな部分やできている部分に
注目しない傾向があります。
そのため視野が狭くなり、
物事を正しく見ることができません。
そもそも人間は不完全な存在であり、
すべてを完璧にこなすことは不可能です。
このことを理解し、
完璧主義的なマインドを
緩めることが望ましいです。
できなかった部分だけに
焦点を当てるのではなく、
できた部分にも意識して
注目する姿勢が大切です。
目標設定の際には、
いきなり大きな目標を狙うのではなく、
スモールステップのアプローチを
取るほうがよいでしょう。
つまり、大きな目標を
いくつかの小さな目標に分けるのです。
最終的な目標が100だとしても、
初めから100を目指すのではなく、
まずは10を目標にし、
それが達成できたら次は20、
その後30、40、50……と
少しずつ目標に近づけていきます。
こうすることで、
小さな成功体験を積み重ね、
着実に目標に向かって進んでいる
という感覚を得ることができ、
モチベーションも
高く保ちやすくなります。
指導的な立場にいる人は、
完璧主義的なマインドを持つ部下がいる場合、
誰もが完璧にはできないことを知らせ、
完璧を求めるのではなく、
以前より少しでも改善することを
目標にさせるよう心がけるとよいでしょう。
また、大きなタスクを
いくつかの小さなタスクに分け、
一つずつ着実にこなせるような環境を
作ることも重要です。
自分自身が
学習性無力感を克服したい場合には、
自分を一歩引いた位置から見つめ、
自分の良き指導者として、上述のような指導を
自分自身に対して行うとよいでしょう。
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まとめ:無気力から脱出して豊かな人生を送る
今回は、学習性無力感の概念を探求し、
そのメカニズム、影響、そして
克服方法についてお話ししました。
学習性無力感とは、
人が繰り返し失敗したり、
困難な状況に長期間いることで
「何をやっても無駄だ」と感じ、
行動する意欲を
失ってしまう心理状態です。
この状態は、日常生活、仕事、学業、
人間関係、そして
メンタルヘルスに
深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。
学習性無力感は克服可能です。
まず、学習性無力感という
心理状態があることを認識し、
自分や子ども、部下、生徒が
学習性無力感に陥っていないか
注意することが大切です。
悪いところばかりを指摘するのではなく、
良い面やできている面も
意識して伝えることも重要です。
「ここをこうすれば良くなる」
と具体的な改善策を教え、
励ますことも効果的です。
また、完璧を求めるのではなく、
今より少しでも改善できれば良い
というスタンスで、自分や相手に
接することが大切です。
大きな目標を
いきなり目指すのではなく、
大きなタスクを小さなものに分けて、
無理なく一つずつこなしていくプロセスを
取ることも有効です。
こうすることで、
小さな成功体験を積み重ね、
徐々に自己効力感を
取り戻せるでしょう。
学習性無力感から脱出することで、
新たな挑戦に対する意欲が湧き、
自己成長や自己実現の機会が広がります。
無力感に支配されることなく、
自分の力を信じて
少しずつ前進していくことで、
より充実した豊かな人生を
送ることができるでしょう。