感情を抑え込むとどうなる? 心と人間関係への影響

以前の記事で、多くの人が
「~してはならない」という禁止令を
子どものころに心の中で定め、
大人になってからも
それを持ち続けることが
珍しくないことについて
お話ししました。

その禁止令が、
人生を生きづらくしたり、
自分らしく生きることの
妨げになることも解説しました。

この記事では、
以前の記事では触れなかった
「感情を表すな」という禁止令の弊害
について考えてみたいと思います。

この禁止令を持つ日本人が
かなり多いからです。

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「感情を表すな」という禁止令の背景

日本には
自分の感情を表すことを
良くないこととみなす風潮が
あります。

特にネガティブな感情は
その傾向が強いです。

そのため、
自分が感じていることを
表現することなく、
自分の中で抑え込む人も
少なくありません。

「感情を表すな」
という禁止令を持つ日本人が多いのは、
このような社会的な背景が
大きく関与しているのでしょう。

社会風潮のみならず、
子どものころの家庭環境に
影響を受ける人もいます。

子どものころに、
「いつまでも泣いているのは
弱い子よ。早く泣くのをやめなさい」とか、
「怖がらなくてもいいのよ。
あなたは臆病じゃないでしょ。
怖くない、怖くない」とか、

 

「調子に乗って、
はしゃぐんじゃありません!」
などといったメッセージを
親から繰り返し言われた子どもは、
「親に受け入れてもらうには、
感情を表してはいけない」
という思い込みを持つようになります。

そして、無意識のうちに、
自分に対して「感情を表すな」
というルールを心の中で定め、
そのルールを
その後の人生においても
持ち続けることになるのです。

親は悪気があって
そのように言うのではなく、
何気なく言っている場合が多いです。

また、子どもを慰めたり、
元気づけるために
言うこともあるでしょう。

親の悪気のない言葉が
子どもに悪影響を与え、子どもを
生きづらくしてしまうのは、
残念なことだと言えるでしょう。

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感情を表さない禁止令の弊害

感情を表さないことは、
日本では望ましいこと
と捉える人も多いです。

しかし、実際には
多くの弊害をもたらしていることも
否定できません。

「感情を表すな」
という禁止令を心の中に持つ人は、
感情を抑える癖があるため、
他人に自分の気持ちを打ち明けたり、
自分の弱さを
開示することができません。

そのため、オープンな
コミュニケーションが行えず、
情緒的に相手とつながることが
できないのです。

結果として、他人と
本当の意味で
深い人間関係を構築できず、
友達がいても
表面上の付き合いになりがちです。

情緒的なつながりがないため、
人間関係から
満足感を得ることもないでしょう。

感情を抑圧することは、
個人のメンタルヘルスにも
悪影響を及ぼします。

感情を表現できないせいで、
ストレスや不安が心の中に蓄積され、
心の健康を
脅かすことも少なくありません。

うつ病や不安障害などの
精神的な問題を抱える人が多いのも、
そのせいだと考えられます。

感情を抑えていても、
人の心の許容量には限界があります。

感情を抑え続けた結果、
心の中に
抑え込まれたものが徐々に蓄積し、
ある日、心の許容量を
超えてしまうこともあるのです。

そのようなときには、
溜め込まれた感情が
突然大爆発を起こし、
周囲の人に迷惑をかけたり、
他人との人間関係を
悪化させてしまうことも
珍しくありません。

一見望ましいと思われる
「感情を表さないこと」は、
このような弊害があるのも
事実です。

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感情を表さずに正しさを主張しがち

「感情を表すな」
という禁止令を持つ人は、
自分の気持ちを表現する代わりに、
正しさを主張する傾向にあります。

何か事が起きたとき、
自分の気持ちを語ることなく、
自分の正しさを主張して、
相手を論理的に
説き伏せようとするのです。

このことを
夫婦関係の例で見てみましょう。

専業主婦のA子さんは、
夫が会社に行っている間に、
義理の母親から
たびたび電話を受けます。

義理の母親は
A子さんの小学生の息子や娘について、
さまざまなアドバイスをしてきます。

躾の仕方や、
学校に持たせるべきお弁当の内容、
習い事や勉強に関する
細かなことまで助言してくるのです。

A子さんはいつも
義母からの電話に
良い気分がしていませんでしたが、
義理の親なのでハイハイと
素直に聞いているふりをしていました。

しかし、ある日、
彼女の我慢が限界に達し、
強い怒りに襲われました。

その晩、夫が帰宅してから、
A子さんは夫に対して
文句を言いました。

「あなたのお母さん、
何度も何度も電話をしてきて、
些細なことまで上から目線で
ああしなさい、こうしなさい、
それはすべきではない
とうるさくて、もう我慢できないわ!
どうにかしてよ!」と怒って言いました。

すると夫は
「何言っているんだ!
お母さんのことをそんなに悪く言うな!
お母さんは人生の先輩だ!
俺たちのことを思って
言ってくれているのだから、
有難いと思え!
なんなんだ君のその態度は!
お母さんに向かって失礼じゃないか!」
と言い返しました。

それに対して、A子さんは
「なによ、あなたはいつも
仕事で疲れているからと言い訳をして、
子育てに少しも協力しないじゃない!
父親というものは、多少たりとも
子育てに参加するのが当然なのよ!
それができないあなたは父親失格でしょ!」
と言いました。

すると夫はさらに怒りを強めて
「父親失格とはなんだ!
母親の助言も素直に聞けない君こそ、
嫁失格だよ!」というように、
彼らの怒りの言葉の投げ合いは
徐々にエスカレートしていきました。

このように、「感情を表すな」
という禁止令を持つ人は、
感情を表さない代わりに、
自分の主張を相手にぶつけて、
正義対正義の戦いを
してしまうことが多いのです。

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心が通じないのはなぜ?

A子さんと彼女の夫の例でも、
両者が自分の言い分が正しくて、
相手が間違っていると信じていますが、
実際にはそうではありません。

人間は主観的な生き物なので、
正しさは人の数だけあるものです。

100人いたら、100通りの
正しさがあるというわけです。

正しさを主張し始めれば、
「平行線」になり、
終わりのない戦いになるでしょう。

A子さんは、「感情を表すな」
という禁止令を
強く持っていると思われます。

そのため、
自分の本来の感情を抑えつけ、
無意識のうちに
本来の感情を怒りにすり替えて、
それを夫に向けてしまったのです。

もし、A子さんが
自分の本来の感情に気づいて、
「いくらあなたのお母さんでも、
あんなに細かなことまで
色々と言われてしまうと、
私はきちんと
子育てしていないような気持ちになって、
悲しいな」と素直に自分の感情を
表現できたら、

夫も「ごめん。
そんな気持ちにさせていたんだね。
僕は君の味方だよ。
おふくろが干渉しないように、
なんて言えばよいのか一緒に考えよう」
と言ったかもしれません。

A子さんが正しさを主張しなければ、
夫も正しさで
対抗する必要がないからです。

A子さんが心を素直に開けば、
夫とも心の通った会話が
しやすくなるでしょう。

しかし、それを妨げていたのが
「感情を表すな」
という禁止令だったのです。

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禁止令を緩めていくためには

「感情を表すな」という禁止令を
緩めていくためには、
どうすればいいのでしょうか?

これも以前の記事で紹介した通り、
アロワーという許可証を
自分自身にたくさん発行することです。

「感情を表すな」という禁止令の場合には、
「感じるままを感じていいんだよ。
感情を表現してもいいんだよ」とか、

「悲しいときは
悲しんでもいいんだよ。
寂しいときは『寂しい』って言っても
いいんだよ。泣きたいときは
泣いてもいいんだよ」というような
許可のメッセージを、
自分にたくさん
ささやいてあげることです。

ネガティブな感情であっても、
自分の感じる感情を否定することなく、
自分自身の気持ちを
受け入れてあげることが大切です。

そして、ことあるごとに、
このアロワーを
自分自身に優しく
言ってあげることです。

アロワーを継続的に唱え続ければ、
いずれ自分の心の中に浸透してきて、
行動が変わってきます。

つまり、今までできなかった
「正直な気持ちを表すこと」
が少しずつ
できるようになってくるでしょう。

どのような感情を抱く自分に対しても
OKを出せるようになり、
気持ちも楽になります。

他人との
情緒的なつながりが可能になり、
人間関係も良好になり、
人間関係から
満足感を得ることができたり、
心が軽くなり、心を病むことも
防げたりするわけです。

正しさを主張することも
少なくなるため、
正義対正義の戦いが起きることも
減るでしょう。

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まとめ:人間関係を豊かにし、心穏やかに生活するために

今回は「感情を表すな」
という禁止令と、その弊害に
焦点を当ててお話ししました。

この禁止令を持つ日本人が多いのは、
社会的な風潮や
幼少期の家庭環境に起因します。

「感情を表すな」
という禁止令を持っていると、
他人と深い人間関係を築く妨げとなったり、
心身の健康を損ねたり、
人間関係を悪化させてしまうことも
珍しくありません。

感情を表す代わりに、
自分が正しいと思うことを
主張する傾向が強いため、
正義対正義の
終わりなき戦いに
陥ってしまうことも多々あります。

それが原因で、人生が
生きづらくなってしまうことも
あるでしょう。

以前の記事で紹介した
他の禁止令と同様に、
この禁止令も自らの意志により
緩めることが可能です。

そのためには、自分自身が
どのような感情を感じていたとしても、
その感情を受け入れてあげること
が大切です。

悲しいときには
「悲しいよね。悲しんでもいいんだよ」と、
悔しいときには
「そりゃ悔しいよね。わかるよ」と
ネガティブな感情を抱いている自分にも
「そうだよね」と共感してあげます。

これを意識して続けていれば、
どんな感情を抱く自分にも
OKを出せるようになるでしょう。

そして、適切なタイミングで
自分の感じていることを
他人に伝えることも
できるようになるのです。

「感情を表すな」
という禁止令から解放されれば、
他人とも豊かな人間関係を築き、
心もより健全になり、
充実した人生を
歩みやすくなるでしょう。

もしあなたが「感情を表すな」
という禁止令を持っていると感じたなら、
それから解放されるチャレンジを
してみませんか?

きっと素晴らしい人生が
あなたを待っているでしょう。