なかなか答えが見つからない問題に
直面したとき、
多くの人は「もっと考えなければ」と、
同じ問題について
さらに考え続けようとします。
しかし、それがかえって
行き詰まりを深めてしまうことも
あるでしょう。
そんなときに役立つのが、
「類推」という考え方です。
この記事では、「類推」とは
具体的にどのようなことなのか、
問題解決にどう役立つのか、
そして私たちが日常生活の中で
類推力を高めるには、
何ができるのかを考えます。
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目の前の問題だけを見ていると、答えが見えなくなる
私たちは問題にぶつかると、
その問題の周辺に
答えがあると思いがちです。
売り上げが伸びないなら、
販売方法について考える。
人間関係がうまくいかなければ、
その相手との関係について考える。
仕事の流れが悪ければ、
その仕事の進め方について考える。
もちろん、
それ自体は間違っていません。
ただ、同じ問題について
長く考え続けていると、
知らないうちに考える範囲が
狭くなってしまうことが
あるでしょう。
たとえば、会社で
一人の社員Aさんに
問い合わせが集中し、
仕事が滞っていたとします。
「Aさんの仕事が滞っている状況を
改善するにはどうすればよいか」
とだけ考えていると、
Aさんの担当業務を減らす、
残業してもらう、
といった発想になりやすいです。
でも、ここで少し視野を広げて、
「一か所に処理が集中しているため、
全体の流れが悪くなっている」
と考えてみたらどうでしょうか?
すると、交通渋滞、スーパーのレジ、
病院の受付、コンピューターの通信など、
一見まったく関係のない分野でも、
同じような問題が起きていることに
気づくかもしれません。
そこで、「交通渋滞は
どのように解消されるのだろう?」
「スーパーでは混雑を
どう分散しているのだろう?」
と考えてみるのです。
すると、問い合わせを
複数の担当者に振り分ける、
受付窓口を増やす、
簡単な問い合わせは
別の窓口で処理する、
といった新しい発想が
生まれやすくなるでしょう。
これが
「類推」の基本的な働きです。
類推とは、一見すると
関係のない二つのものの間に
共通する仕組みを見つけ、
ある分野の考え方や解決方法を
別の分野の問題に
応用することです。
簡単に言えば、
「この問題は、
別の何かと似ていないだろうか」と考え、
別の世界に問題解決のヒントを
探してみることです。
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医療の問題と要塞攻略に共通するもの
「類推」を説明するときに
よく知られている例として、
「腫瘍問題」と、
それに似た構造を持つ
「要塞問題」があります。
ある患者の体内に
腫瘍があるとします。
強い放射線を当てれば
腫瘍を破壊できますが、
一方向から強い放射線を当てると、
途中にある健康な組織まで
傷つけてしまいます。
では、どうすれば
健康な組織を傷つけることなく、
腫瘍だけを
破壊できるのでしょうか?
ここで、一見すると
何の関係もない
軍事上の問題の解決方法を
応用してみるのです。
ある国の中央に要塞があり、
それを攻略するには大軍が必要です。
しかし、要塞へ向かう道路には
地雷が仕掛けられていて、
大軍が一つの道を進むと危険です。
そこで、軍隊を小さな部隊に
分けてみたらどうでしょうか?
それぞれの部隊が
別々の道から進み、
最後に要塞へ同時に到着します。
一つひとつの部隊は小さくても、
要塞に到着したときには、
大きな戦力を一点に
集中させることができるでしょう。
この方法を
腫瘍の問題に当てはめると、
解決の方向が見えてきます。
一方向から
強い放射線を当てるのではなく、
複数の方向から弱い放射線を当て、
腫瘍の場所に集中させるのです。
医療と軍事では、
表面上の問題はまったく違います。
しかし、その構造に目を向けると、
どちらも「途中では
大きな力を使えないため、
小さな力に分け、
最後に一点へ集中させる」
という共通点があります。
類推で大切なのは、
見た目が似ているものを
探すことではありません。
表面的な違いにとらわれず、
その奥にある仕組みの共通点を
見つけることが重要です。
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自然界の仕組みが、新しい発明につながることもある
類推は、
科学や技術の世界でも
よく使われています。
わかりやすい例の一つが、
「面ファスナー」です。
植物の実の中には、
人の服や動物の毛にくっついて
運ばれるものがあります。
その仕組みを観察し、
「小さな突起が
繊維に引っかかる仕組みを
人工的に再現できないか?」
と考えたことが、
面ファスナーの発明につながりました。
ここでも重要なのは、
植物が持っている
「引っかかる仕組み」に着目し、
それを別の用途に応用したことです。
自然界からヒントを得た例は、
ほかにもあります。
鳥の翼から
飛行の仕組みを学んだり、
魚や鳥の群れの動きから
集団制御の考え方を得たり、
蜂の巣の形を参考にして
軽くて強い構造を
考案したりすることなどです。
自然界には、長い時間をかけて
形づくられてきた仕組みが
たくさんあります。
「人間の問題を
人間の世界だけで解こう」
と考えるのではなく、
「自然界では、似た問題を
どのように解決しているのだろう」
と問いかけてみることも、
類推のよい例といえるでしょう。
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私たちも類推を使って考えている
私たちは日常生活の中でも、
知らず知らずのうちに
「類推」を使っています。
たとえば、
新しい仕事を覚えるとき、
「これは以前使っていたソフトと
似ている」
と思うかもしれません。
初めて訪れる街で、
「このあたりは
自分の住んでいる街の駅前と
似ているから、
大通りの近くに
店が集まっているのではないか」
と予想することもあるでしょう。
料理でも同じです。
ある料理を作っている途中で
材料が足りないとき、
「この食材は味や役割が
あの食材と似ているから、
代わりに使えるかもしれない」
と考えます。
このように、類推は
私たちが日常的に行っている
思考の一つです。
ただ、それを意識して
使うかどうかによって、
問題解決に生かせる範囲も
大きく変わってくるでしょう。
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まずは、問題を一段上から眺めてみる
では、類推力を高めるために、
何ができるでしょうか?
まずは、目の前の問題を
少し抽象化して考えることです。
たとえば、
「商品の種類が多すぎて、
お客さんがなかなか選べない」
という問題があったとします。
この問題をそのまま考えると、
「商品数を減らすべきか」
「説明を増やすべきか」といった
発想になるでしょう。
でもそこで、少し視点を変えて、
「選択肢が多すぎるため、
判断しにくくなっている問題」
と捉え直してみるのです。
すると、似たような問題は
商品選びだけでなく、
レストランのメニュー、
動画配信サービス、進学先選び、
保険選びなど、さまざまな場面で
起きていることに気づくでしょう。
そこから、
「選択肢をグループ分けする」
「お勧めを示す」
「いくつかの質問に答えるだけで
候補を絞れるようにする」といった、
別の分野で使われている工夫を
取り入れられるかもしれません。
問題を抽象化することで、
比較できる対象が
どんどん広がっていきます。
そして、それが
よりよい解決策を見つけることに
つながる場合もあるのです。
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自分と関係のない世界を、あえて見てみる
類推力を高めるには、
知識の幅も重要です。
ただし、専門知識を
大量に覚えなければならない
ということではありません。
大切なのは、
自分とは少し違う世界にも
関心を持つことです。
仕事で経営に関わっている人なら、
経営書だけではなく、
スポーツ、料理、生物、歴史、
教育、建築などについての本も
読んでみる。
文章を書く人なら、
小説や文章術だけではなく、
広告、映画、心理学、
デザインなどにも触れてみる。
異なる分野に触れるほど、
「これはあの話と似ている」という
共通点に気づきやすくなるでしょう。
同じ業界の成功例を
参考にすることも大切ですが、
それだけでは発想が
似通ったものになりがちです。
むしろ、
「自分とは関係がなさそう」
と思う世界の中にこそ、
新しい考え方が隠れていることも
少なくありません。
だからこそ、
普段はあまり触れることのない分野にも、
意識して目を向けてみることが
大切なのです。
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「もし○○だったら」と考えるだけでも発想は広がる
もう一つ、
簡単にできる方法があります。
それは、
「もし別の世界だったら、
どうするだろう?」と意識的に
問いかけてみることです。
たとえば、
会議がいつも長引くなら、
「もしこれがテレビ番組の収録だったら、
限られた時間の中でどう進めるだろう?」
と考えてみます。
新しい商品がなかなか知られないなら、
「もしこれが映画の宣伝だったら、
どうやって人々の興味を引くだろう?」
と考えてみてもよいでしょう。
社内に情報がたまりすぎて
必要なものが見つからないなら、
「もしこれが博物館だったら、
どう整理し、
どのように案内するだろう?」と、
別の世界にヒントを求めます。
もちろん、そこで出た答えを
そのまま使えるとは限りません。
しかし、
このような問いを投げかけることで、
それまでとは違う視点から
問題を見ることができるでしょう。
類推の目的は、正解を一発で
見つけることではありません。
考え方の選択肢を
増やすことです。
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一つの問題に、三つのたとえを考えてみる
類推力を鍛えるために、
手軽にできる練習があります。
何か問題が起きたとき、
一つだけではなく、
三つくらいの別のものに
たとえてみるのです。
たとえば、
「仕事が増えすぎて処理できない」
という問題があるとします。
これを交通渋滞に
たとえることもできます。
水があふれそうなダムに
たとえることもできます。
また、飲食店の厨房に
注文が殺到している状況に
たとえることもできます。
同じ問題でも、
何にたとえるかによって、
見えてくる解決策は
変わってくるでしょう。
交通渋滞なら、
「流れを分散させる」
という考え方が浮かびます。
ダムなら、
「一時的にためておく場所を作る」
という方法が考えられます。
厨房なら、
「簡単な仕事と難しい仕事を分ける」
という発想に
つながるかもしれません。
このように、一つの問題を
構造が似ている別の問題に
いくつか置き換えて考えることで、
一つの見方にとらわれず、
さまざまな角度から
解決策を探せるようになるでしょう。
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知識は「つながり」で力になる
創造的な人というと、
何もないところから
次々と新しいアイデアを生み出す人を
想像するかもしれません。
しかし実際には、
新しいアイデアの多くは、
すでに知っているもの同士を
新しい形で結びつけるところから
生まれています。
その意味では、重要なのは、
自分の持っている知識を
どれだけ結びつけられるか
ということです。
同じ本を読んでも、ある人は
「面白かった」で終わるでしょう。
一方、別の人は
「これは自分の仕事にも使えそうだ」
と思うかもしれません。
同じ出来事を見ても、
「変わったことが起きた」
で終わる人もいれば、
「これは以前見たあの出来事と似ている」
と考える人もいるでしょう。
こうした小さなつながりが
増えるほど、
知識は単なる情報ではなく、
問題解決に役立つ道具に
なっていくのです。
類推力を高めるとは、
特別な発想術を
身につけることではありません。
自分の中にある知識の間に、
少しずつ橋をかけていくことなのです。
そして大切なのは、
こうしたつながりを意識して
見つけようとする姿勢です。
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おわりに
この記事では、問題解決に
行き詰まったときに役立つ
「類推」という考え方について
お伝えしました。
類推とは、目の前の問題と、
一見すると関係のない出来事との間に
共通する構造を見つけ、
別の分野ですでに使われている
考え方や解決方法を、
目の前の問題に応用することです。
医療と要塞攻略のように、
表面上はまったく違う問題でも、
その構造には
共通点がある場合があります。
また、自然界、交通、料理、
スポーツ、教育、店の運営など、
私たちの周囲には
類推の材料がたくさんあるでしょう。
類推力を高めるには、
問題を少し抽象化して考えること、
自分とは異なる分野にも関心を持つこと、
一つの問題を
複数のものにたとえてみること、
そして「もし別の世界なら、
どう解決するだろう」
と問いかけてみることが
役立ちます。
もちろん、類推によって
必ず答えが
見つかるわけではないでしょう。
それでも、
同じ方向から考え続けて
行き詰まっているときには、
思考の向きを変えるきっかけに
なるはずです。
次に何かの問題で
行き詰まったときには、
「もっと考えよう」とする前に、
一度、自分に
問いかけてみてください。
「これは、
ほかの何と似ているだろう?」
その問いによって、
それまで無関係に見えていた世界との間に、
一本の橋がかかるかもしれません。
そして、その橋の向こう側に、
今まで思いつかなかった
解決のヒントが
見つかるかもしれません。