具体と抽象の切り替えで、仕事も暮らしもスムーズに

私たちは日々の暮らしの中で、
「具体的に考えること」と
「抽象的に考えること」を
行き来しながら過ごしています。

ただ、その切り替えを
意識することは
あまりないと思います。

実際には、この二つの視点を
適切に使い分けられるようになると、
コミュニケーションの質が向上したり、
問題解決能力が高まったり、
日常生活がより豊かになるでしょう。

この記事では、具体と抽象を
場面に応じて切り替えることの
重要性をお伝えします。

====

具体と抽象とは何か?

具体とは、私たちが目で見たり、
耳で聞いたりと、
五感で直接捉えられる個別の出来事や、
数字や固有名詞のように、
はっきりと示せる情報を指します。

具体的に考えることの役割は、
情報の精度を高め、
相手との認識のズレを
小さくすることにあります。

それにより話が食い違いにくくなり、
次に何をすればよいのかという
行動にも結びつきやすくなるのです。

一方、抽象とは、
いくつかの具体的な事例に
共通するポイントを取り出し、
ひとつの考え方として
まとめたものです。

抽象的に考えることには、
物事を応用しやすくする
という役割があります。

目の前の出来事を
いったん概念として捉え直すことで、
別の場面や分野にも
共通する考え方を見つけ出し、
これまでの経験を
生かせるようになるでしょう。

具体と抽象は、
相対的な関係を示すもの
ともいえるでしょう。

同じ対象であっても、
どこに目を向けるかによって、
具体にも抽象にも
なりえるからです。

たとえば、「ゴールデンレトリバー」は
「犬」というくくりの中では
具体的な存在ですが、
「うちで飼っている
ゴールデンレトリバーのポチ」と比べると、
より抽象的な表現になります。

====

具体的思考のメリットとデメリット

具体的に考えることの
大きなメリットは、
行動に結びつきやすい点にあります。

「健康になりたい」と考えるよりも、
「毎朝6時に起きて
30分ジョギングする」と思ったほうが、
何をすればよいのかがはっきりし、
実際の行動に移しやすくなるでしょう。

このように、
具体的な表現は迷いを減らし、
実行への一歩を後押ししてくれます。

また、具体的な言葉は
誤解を生みにくく、
意思疎通をスムーズにします。

「報告書を改善して」と言われるよりも、
「この報告書に市場分析のグラフを
3つ追加してください」と伝えられたほうが、
求められていることを正確に
理解できるでしょう。

さらに、具体的思考は
結果を確かめやすい
という特徴も持っています。

「サービスを向上させる」
という表現では
結果を確かめにくいですが、
「顧客からの問い合わせに
24時間以内に返信する」と決めておけば、
達成できたかどうかを
はっきり判断できます。

このように、具体性は
振り返りや検証を
しやすくしてくれます。

一方で、具体的思考には
注意すべき点もあります。

その一つが、
柔軟さを失いやすいことです。

計画を細かく決めすぎると、
状況が変わったときに
対応しにくくなります。

たとえば、旅行の予定を
時間単位で組んでしまうと、
思いがけない出来事や出会いを
楽しむ余裕が
なくなってしまうでしょう。

また、目の前の具体的な事柄に
意識が向きすぎると、
全体の流れを見失う危険もあります。

個々の事例を
丁寧に見ようとするあまり、
社会全体の動きを見逃してしまう、
といった場面がそれにあたります。

具体的思考も
使い方を誤ると視野が狭くなり、
望ましくない結果に
行き着いてしまうこともあるのです

====

抽象的思考のメリットとデメリット

抽象的に考えることの
大きなメリットは、
応用の幅が広く、
柔軟に使える点にあります。

ひとつの抽象的な考え方を
理解していれば、
状況が変わっても
対応しやすくなります。

たとえば「顧客満足」の本質を
捉えていれば、
レストランでもデパートでも、
あるいはオンラインショップでも、
それぞれの場面に合わせて
活かすことができるでしょう。

環境が違っても
共通する軸を持てる点が、
抽象的思考の特徴です。

また、抽象的思考は
発想を広げる力にもつながります。

目の前の細かな条件や制約から
いったん距離を置くことで、
これまでとは違う見方が生まれ、
新しいアイデアに
気づきやすくなるからです。

決まった枠にとらわれずに
考えられることが、
創造性を後押ししてくれるのです。

さらに、抽象的思考は情報を整理し、
本質を見抜く助けにもなります。

多くのデータや出来事の中から
重要な流れを見つけたり、
関係がなさそうに見える事柄の
共通点に気づいたりするためには、
物事を抽象化する視点が欠かせません。

この力は、先を見通した判断や、
長い目での計画を考える場面でも
役立ちます。

一方で、
抽象的思考には弱点もあります。

その一つが、
行動に結びつきにくいことです。

「よりよい人間関係を築きたい」
と思っても、それだけでは
明日どんな行動を取ればよいのかが
見えにくいままです。

また、抽象的な表現は、
人によって
受け取り方が変わりやすい
という面もあります。

「早めに」と言われたとき、
ある人は数時間後を思い浮かべ、
別の人は数日後を
想像するかもしれません。

このように、
抽象度が高すぎる指示は、
意図が伝わらず、結果として
行き違いが起こることも
あるでしょう。

抽象的思考は
視野を広げてくれますが、
具体性を欠くと
問題が生じることもあるのです。

====

部下のマネジメント――個性や状況に合わせた指示の出し方

部下への指示は、
具体と抽象を
適切に使い分けたい場面です。

経験の浅い新人には、
できるだけ具体的な
指示が求められます。

「この資料を参考にして、
同じフォーマットで
顧客リストを作成してください。
会社名、担当者名、電話番号、
メールアドレスの4つを記入し、
明日の正午までに提出してください」
といったように、
手順や期限を明確に伝えることで、
新人は戸惑うことなく
作業に取り組めるでしょう。

一方で、
経験を重ねたベテランや、
自分で考えて動ける部下に対しては、
抽象的な指示のほうが
力を発揮しやすいです。

「来月のプロモーション企画を
考えてほしい。
ターゲットは30代の女性で、
予算は50万円以内です」
といったように、
目的と条件だけを示し、
進め方は任せることで、
部下の発想力や主体性を引き出せます。

細かく指示を出しすぎると、
かえって能力を発揮しにくくなり、
意欲も下がってしまうでしょう。

さらに大切なのは、
同じ部下であっても
状況に応じて使い分けることです。

新しい業務や
初めて取り組む内容については
具体的に、
すでに慣れている仕事については
抽象的に指示を出すなど、
仕事の性質に合わせて
調整していきます。

また、成長の段階に応じて、
少しづつ指示の抽象度を
高めていくことで、自分で考え、
判断する力を
育てていくことができるでしょう。

====

目標設定――具体と抽象のバランス

目標を立てる場面でも、
具体と抽象のバランスは
大切なポイントになります。

「英語が上達したい」
という抽象的な目標だけでは、
何から手をつければよいのか、
どこまで進めばよいのかが
見えにくいです。

これを「1か月で
新しい英単語を100個覚える」
という具体的な目標にすると、
日々の学習内容を考えやすくなり、
進み具合も確かめやすくなります。

ただし、具体性に寄りすぎた
目標設定には注意も必要です。

たとえば、
ダイエットに取り組む人が
「1か月で5キロ減らす」という
数字だけを追いかけてしまうと、
「健康」という大切な目標を
見落としてしまいがちです。

より自然で健康的な方法に気づいても、
最初に決めた数値にとらわれるあまり、
無理のないやり方へ
切り替えられないかもしれません。

理想的なのは、抽象的な大きな目標と、
具体的な小さな目標を
組み合わせることです。

「健康的な体をつくり、
無理なく続けられる生活を送る」
という全体の方向性を大切にしながら、
「週に3回、30分の運動を取り入れる」
「夜遅い間食を控える」といった
具体的な目安を設定するのです。

こうすることで、
自分の状態に合わせて
調整しながら
前に進みやすくなるでしょう。

====

日常生活での実践――意識的な切り替えを習慣に

具体と抽象を
柔軟に使い分けることができれば、
日常生活の多くの場面で役立ちます。

たとえば、味のバランスや
食材の特徴を理解するという
抽象的な知識があれば、
レシピが手元になくても、
美味しい料理を作れるでしょう。

一方で、初めて試みる
エスニック料理を作るときには、
レシピどおりに具体的な手順を
追ったほうが、
失敗は少なくなります。

子育てにおいても、
「午後8時には寝る」という
具体的な決まりと、
「規則正しい生活が成長を支える」
という抽象的な考えを
あわせ持つことで、
その日の体調や状況に応じた
対応がしやすくなるでしょう。

目指したいのは、
具体と抽象を自由に行き来できる、
しなやかな思考です。

そのときの状況に合った視点を
選べるようになることで、
仕事においても人間関係においても、
よりよい選択ができるようになり、
そうした積み重ねが、
日々の暮らしをより充実したものへと
導いてくれるでしょう。

====

おわりに

この記事では、具体と抽象を
意識的に使い分けることの
大切さをお伝えしました。

具体と抽象の視点を、
状況に応じて適切に選ぶことで、
それぞれの強みを生かし、
よりよい選択を重ねて、
よりよい結果へ
つなげることができるでしょう。

具体的に考えることは、
行動を起こしやすくし、
認識のズレを減らしてくれます。

一方で、抽象的に考えることは、
応用力や柔軟性を高め、
本質を見抜く助けになります。

仕事の指示や目標設定、
日常の判断においても、
この二つを
上手に組み合わせることで、
最適解に近づけるでしょう。

もし最近、物事がうまく進まない
と感じる場面があれば、
具体と抽象のバランスが取れているか、
自分に問いかけてみるのも
一つの方法です。

具体と抽象を行き来する視点は、
日々の意識の積み重ねで
育っていきます。

日常の中で
思うようにいかなかったことがある場合、
それを少し違う距離から
眺めてみてはいかがでしょうか。

もしかしたら、問題解決のヒントが
見えてくるかもしれません。