子どもの教育において、
私たち大人が
どのような視点で子どもを受け止め、
どのような言葉をかけるかは、
子どもの自信や学びへの意欲に
大きな影響をもたらします。
同じ行動を目にしても、
「できていないところ」に目を向けるのか、
それとも「できたところ」に
目を留めるのかによって、
教育の質は大きく変わってくるでしょう。
この記事では、
「減点法」と「加点法」という
二つの教育アプローチを取り上げ、
それぞれの違いを具体的に解説します。
そのうえで、子どもが自分らしく
健やかに成長していくために、
親御さんにできる関わり方について
考えていきます。
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「減点法」と「加点法」その違いは?
教育の現場では、子どもを
どのように評価するかによって、
関わり方そのものが
大きく変わってきます。
その代表的な考え方が、
「減点法」と「加点法」
という二つのアプローチです。
言葉の印象からも分かるように、
減点法は「引き算」、
加点法は「足し算」に
たとえられることが多いです。
まずは、それぞれの違いを
見ていきましょう。
「減点法」とは、
理想的で完璧な状態を基準に置き、
そこからできなかった部分や
失敗した点を見つけて
評価していく考え方です。
満点からスタートし、
間違いや不足があるたびに
点数を引いていくもの
と言えるでしょう。
この関わり方では、
「何ができていないのか」
「どこが間違っているのか」
といった視点が中心になります。
それに対して加点法は、
ゼロの状態から出発し、
子どもができたことや
前進した部分に目を向けて
評価していく考え方です。
小さな努力や向上、
挑戦そのものを大切にしながら、
できている部分、
うまくいっている部分を足して
評価する方法です。
完璧であるかどうかではなく、
今ここにある成長や可能性を見つけ、
その価値を認めていく姿勢が、
このアプローチの大きな特徴です。
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減点法の教育、こんな場面で見られます!
減点法による教育は、
日常生活の中で
意外と多く見られます。
たとえば、子どもがテストで
85点を取ってきたとき、
「なぜ100点取れなかったの?」
「ここを間違えたのはケアレスミスでしょう」
といった言葉をかけ、
取れなかった15点に
意識を向ける関わり方です。
このような場面では、
85点という結果そのものは
受け止めてもらえず、
足りないところばかりを
指摘されるため、
子どもは達成感を感じられません。
また、子どもが自分から
部屋の片付けをしたとき、
机の上はきれいになっているものの、
床にはまだおもちゃが
残っている状態だったとします。
そのときに
「床がまだ汚いじゃない」
「ちゃんと最後までやりなさい」と、
できていない部分だけに
目を向けるのも、
減点法的な関わり方だ
と言えるでしょう。
自主的に行動したことや、
机を片付けられたということは
まったく評価されず、
不十分な点だけが強調されます。
さらに、習い事や運動会などの場面で、
「あの子はもっとできているのに」
「去年よりタイムが遅くなった」と、
他の子どもや過去の結果と比べて
劣っている部分を指摘することも、
減点法の一例です。
子ども自身の成長や努力の過程ではなく、
外側の基準に届いていない点が
問題にされるため、
子どもは常に「足りない自分」を
意識させられることになり、
自信を失っていくでしょう。
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加点法の教育、具体的にはこう関わります
加点法による教育では、
同じ場面であっても、
関わり方は大きく変わってきます。
85点のテストを
持ち帰ってきた子どもに対しては、
「85点も取れたんだね、頑張ったね」
「この問題、難しかったのに解けているね」と、
取れた点数や理解できている部分に
目を向けた声かけをします。
そのうえで、
「次はどの部分を伸ばしてみたい?」
と問いかけることで、
子ども自身が前向きな気持ちで
次の目標を考えやすくなります。
部屋の片付けの場面でも、
「机の上、すごくきれいになったね。
自分でやろうと思ったんだね」と、
できたことや行動を起こした気持ちを
きちんと認めてあげます。
そのあとに、「床も片付いたら
もっと気持ちよくなるね。
一緒にやってみようか」
と声をかけることで、
否定されることなく、
次の行動へと
つながりやすくなるでしょう。
習い事や運動会の場面では、
「前は怖くてできなかったのに、
今日は挑戦できたね」
「この動き、練習を重ねて
できるようになったね」と、
その子自身の成長や努力の過程に
目を向けます。
結果だけを見るのではなく、
挑戦しようとした姿勢や、
少しずつ上達していく様子、
あきらめずに取り組んだことなど、
過程の中にある前向きな点を
言葉にして伝えていくことで、
子どもは自分の成長を実感しやすくなり、
「もう少し頑張ってみよう」
という意欲も自然と育っていくのです。
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なぜ加点法が子どもの成長を支えるのか?
加点法が減点法よりも
子どもの成長につながりやすい理由は、
子どもの心の発達や学びへの意欲と
深く関係しています。
中でも大きなポイントは、
加点法が子どもの自信を育てる
関わり方であるという点でしょう。
常に「できていないこと」ばかりを
指摘される環境では、
子どもは「自分はダメだ」「どうせできない」
といった否定的な自己イメージを
抱きやすくなります。
それに対して、できたことを
きちんと認められ続けることで、
「頑張ればできるようになる」
「自分にも価値がある」という
前向きな自己認識が育っていくのです。
また、加点法は
子どもの内側から湧き上がる
学習意欲を引き出しやすい
という特徴もあります。
減点法では、叱られないため、
点を引かれないために行動する
という外側からの動機づけに
なりがちです。
その結果、大人が見ていない場面では
頑張らなくなったり、
完璧にできそうにないことには
最初から取り組まなくなったりする
可能性もあります。
一方、加点法では
小さな成功体験を繰り返し
実感できるため、
「もう少しやってみたい」
「次も挑戦したい」という
内発的な意欲が
自然と育ちやすいのです。
さらに、
失敗を恐れずに挑戦する力も、
加点法の関わりの中で
養われていくでしょう。
減点法の環境では、
ミスをすると評価が下がる、
叱られるという不安から、
子どもは安全な選択ばかりを
選ぶようになり、
挑戦を避けるようになります。
それに対して、加点法では
挑戦したこと自体が
評価の対象となるため、
うまくいかなかったとしても
「やってみたこと」が受け止められます。
この安心感があるからこそ、
子どもは新しいことにも
前向きに取り組み、
失敗から学ぶという大切な経験を
重ねていけるのです。
加点法はまた、親子関係や
教師と子どもの関係を
良好に保つうえでも
大きな役割を果たします。
否定的な指摘が続くと、
子どもは大人に対して
不信感や反発心を抱きやすくなります。
加点法では、
子どもは「自分は理解されている」
「認められている」
と感じやすくなり、
親や教師に対しても
自然と信頼を寄せるようになるでしょう。
そうした信頼関係があるからこそ、
助言や働きかけも
素直に受け止めやすくなり、
よりよい教育の循環へと
つながっていくのです。
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加点法を取り入れていくためのポイント
加点法を取り入れる際には、
いくつか意識しておきたい
ポイントがあります。
まず最初に
「小さな成長を見逃さない」
という視点です。
子どもの日常には、
大人がつい見過ごしてしまいがちな
小さな成長や努力が
たくさんあります。
朝、自分で起きられたこと、
靴をそろえたこと、
弟に優しく接したこと、
宿題に自分から取り組んだこと。
こうした一見些細な行動の
一つひとつに、
「気づいたよ」「うれしいな」
と言葉をかけてみてください。
自分の姿を見てもらえている、
認められていると感じることで、
子どもはよりよい行動を続けよう
という意欲がわいてくるでしょう。
次に大切なのは、
「結果よりもプロセスに目を向ける」
ことです。
テストの点数や試合の勝敗、
作品の完成度といった
結果だけを見るのではなく、
そこに至るまでの努力や工夫、
挑戦した姿勢をしっかり
認めてあげましょう。
「毎日少しずつ練習していたね」
「難しい問題にあきらめず向き合っていたね」
といった声かけは、
努力そのものに価値があることを
子どもに伝えます。
結果は環境や条件に
左右されることもありますが、
取り組む過程は子ども自身が選び、
積み重ねてきたものです。
そこを認めることで、
「自分の力で成長できる」
という感覚が育っていきます。
また、「他の人と比べず、
その子自身の変化を見る」ことも大切です。
兄弟姉妹や同級生、あるいは
親自身の子ども時代と
比べることはNGです。
人それぞれ、個性も成長のペースも
異なるからです。
「書けなかった漢字が
書けるようになったね」
「去年は不安そうだったけれど、
今年は楽しめていたね」と、
その子の過去と今を比べて伝えることで、
確かな成長を実感しやすくなるでしょう。
一方で、加点法を実践する際に
気をつけたいのは、
「褒めすぎ」にならないことです。
何でも大げさに褒めたり、
事実とは異なる点まで評価したりすると、
子どもは違和感を抱くでしょう。
大切なのは、
どこがよかったのかを具体的に伝え、
誠実に向き合うことです。
さらに、加点法を
より深いものにするためには、
「子ども自身に気づいてもらうこと」を
取り入れる姿勢が効果的です。
「今回、自分なりに
工夫したところはどこだったかな」
と問いかけてみるのもよいでしょう。
自分の頑張りや工夫に
目を向けることで、
他人の評価を待つだけでなく、
自分で自分を認められる心が
育っていくからです。
そうした積み重ねが、
子どもの中に主体性と自信を
ゆっくりと根づかせていくのです。
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減点法にも意味がある?バランスの取れた教育を目指して
ここまで加点法のよさを
お伝えしてきましたが、
減点法にも一定の役割があることを
理解しておくことは大切です。
社会の中で生きていくうえでは、
ルールを守ることや期限を守ること、
求められる基準を満たすことなど、
「減点されない」行動が
必要とされる場面も確かにあります。
また、安全に関わることや、
倫理的に問題のある行動については、
あいまいにせず「それはいけない」
とはっきり伝える必要があります。
大切なのは、
減点法と加点法のバランスです。
基本の姿勢としては
加点法を土台にし、
子どもの成長や意欲を支えながら、
どうしても譲れない点や、
社会のルールとして
守るべきことについては、
いけないことはきちんと伝える。
そのようなメリハリのある関わりが
求められるのです。
その際も、子どもの人格そのものを
否定するのではなく、
どの行動が問題だったのかを
具体的に伝えることを
意識したいところです。
さらに、
子どもが成長していくにつれて、
自分自身を振り返り、
評価する力を育てていくことも
重要になります。
常に大人が判断を下すのではなく、
「自分ではどう感じた?」
「どこがうまくいったと思う?」
と問いかけることで、
子どもは自分の行動を見つめ直し、
次につなげる力を身につけていきます。
これは加点法を一歩進めた関わり方
とも言えるもので、
主体的に学び続ける姿勢を
育てるための大切な土台となるでしょう。
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おわりに
この記事では、
「減点法」と「加点法」の違いに
目を向けながら、
なぜ加点法が子どもの成長を支えるのか、
その理由をお伝えしました。
減点法と加点法、
どちらの視点で子どもを見つめるかは、
その子の将来に大きく関わってきます。
減点法は、「まだ足りない」「不十分だ」
というメッセージを
無意識のうちに送り続け、
挑戦する前から身を引いてしまう姿勢を
生みやすくなります。
一方で加点法は、
「あなたは成長している」
「あなたには可能性がある」
という思いを伝え、
安心して一歩を踏み出す力を
育てていくでしょう。
教育の目的は、子どもを完璧な存在に
近づけることではありません。
その子がもともと持っている力や
可能性を引き出し、
自分らしく歩んでいくための土台を
整えることにあります。
そのためには、大人が
「できたこと」「成長したところ」
「頑張った過程」に目を向け、
それを言葉にして伝え続ける姿勢が
欠かせないのです。
今日からぜひ、お子さんの
小さな変化に目を向けてみてください。
靴をそろえたこと、
朝のあいさつができたこと、
友達に優しく接したこと。
そんな何気ない日常の
ひと場面ひと場面に、
「気づいているよ」「うれしいな」
と声をかけてみてください。
その積み重ねが、
子どもの心に自信という種をまき、
やがてその子らしい花を
咲かせていくことでしょう。