ポジティブ心理学の研究では、
ポジティブ感情と
ネガティブ感情の割合が
「3対1以上」になると、
物事がスムーズに運び、
人間関係がよくなり、
人生の質も向上しやすい
と言われています。
では、どうすれば
ポジティブな感情を
増やしていけるのでしょうか?
この記事では、
日常の中で無理なく取り入れられる
8つのヒントをご紹介します。
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なぜポジティブ感情を増やすことが大切なのか?
現代社会で生きる私たちは、
日々さまざまなストレスや
困難にさらされており、
ネガティブな感情を抱くことは
めずらしいことではありません。
ネガティブな感情は
自然な心の反応であり、
ときには大切なことに気づかせてくれる
サインになることもあるでしょう。
そのため、その感情を
否定する必要はありません。
ただ、ネガティブな感情が
日常の中で増えすぎると、
心が疲れてしまい、
やる気や集中力が低下しやすくなります。
その状態が続くと、
人間関係のトラブルや
体調の不調につながることもあるでしょう。
だからこそ、気持ちを整える方法を知り、
意識してポジティブな感情を
増やしていくことが大切なのです。
ポジティブ心理学の研究によると、
ポジティブな感情には
「拡張・形成作用」があるとされています。
これは、心が開かれ、
受容性や創造性が高まり、
自分の中に新しい変化を
生み出す力が引き出される
という働きです。
さらに、
ポジティブ感情とネガティブ感情の比率が
3対1以上になると、物事がスムーズに進み、
人との関わりや思考、
行動がよい方向へと向かいやすくなることが
示されています。
ここからは、ポジティブな感情を
日常の中で増やすための、
8つの実践法をご紹介します。
無理なく
取り入れられる方法ばかりですので、
できるところから試してみてください。
心が軽くなる時間が、
今よりもきっと増えていくでしょう。
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1)手軽にできる「3つのいいこと探し」の習慣
ポジティブな感情を高めるために
効果的で、しかも簡単にできる方法
のひとつが「3つのいいこと」
を書き出す習慣です。
やり方はとてもシンプルで、
毎晩寝る前に一日を振り返り、
その日にあった良いことを3つ
ノートや手帳に書くだけです。
どんなに小さなことでも
構いません。
たとえば、朝のコーヒーが
いつもよりおいしく感じられた、
電車で座れた、
同僚から優しい言葉をかけてもらった、
お昼のパスタが絶妙な味だった、
帰り道でかわいい猫に出会えた――
そんな小さな出来事で十分です。
大切なのは、それが客観的に
「良いこと」かどうかではなく、
あなた自身が「良かった」
と感じたかどうかです。
たとえば、
雨の日に傘を忘れて濡れてしまっても、
「久しぶりに雨の匂いを感じて
気持ちが落ち着いた」と思えたなら、
それも立派な「いいこと」になります。
心理学では、21日間続けたことは
習慣として定着しやすい
といわれています。
最初のうちは
「今日は特に良いことなんてなかった」
と感じる日もあるかもしれません。
でも、丁寧に一日を振り返ってみると、
意外なところに小さな良いことが
いくつも隠れているものです。
続けるうちに、
自然と良いことに目が向くようになり、
ポジティブな気持ちで過ごす時間が
増えていくでしょう。
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2)10分でもOK 身体を動かしてみよう!
運動は、
ポジティブな感情を高める力があります。
たった10分の軽い運動でも、
かなりの変化を実感できるでしょう。
身体を動かすことで分泌される
ノルアドレナリンやセロトニン、
ドーパミンといった物質が、
気持ちを前向きにし、ストレスを和らげ、
発想力まで引き出してくれるからです。
興味深い研究では、
週に3回、30分の運動を続けると、
抗うつ剤の服用とほぼ同じ効果がある
と示されています。
また、20分ほど身体を動かすだけで、
その後、約12時間
幸福感が高まりやすくなる
という報告もあります。
始めるときは、
大きな目標を掲げる必要はありません。
まずは日常の中に、
自然に取り入れられる
小さな運動から始めてみましょう。
エレベーターの代わりに階段を使ってみる、
一駅だけ歩いてみる、
お昼休みに近くの公園へ散歩に出かけるなど、
無理のない範囲で大丈夫です。
慣れてきたら、朝の軽いジョギングや
夕方のウォーキング、
週末のサイクリング、ダンスや水泳など、
「楽しい」と感じる運動に広げてみましょう。
楽しめるという感覚が
続ける力になります。
運動は身体の健康だけでなく、
心にも良い影響をもたらします。
汗を流すことで、心がスッキリして
リフレッシュできると感じられるでしょう。
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3)呼吸を整えて、心の平静を取り戻す
忙しい日々の中で
ストレスを抱えやすい人ほど、
無意識に「浅い呼吸」になりがちです。
浅い呼吸は
知らず知らずのうちに
ストレスを増大させるものです。
だからこそ、ときどき意識して
深く呼吸することが大切なのです。
落ち着いて息を吸って吐くことで、
緊張がほぐれ、心が穏やかになり、
ポジティブな感情を
感じやすくなるでしょう。
おすすめの方法は、
「3回を1セットにした深呼吸」です。
まず、肩の力を抜き、
鼻からゆっくり息を吸います。
お腹の深いところまで
空気が入っていくように意識し、
胸だけでなく、
お腹がふくらむのを感じながら
吸い込んでみましょう。
そして、息をゆっくり吐き出すとき、
「緊張や疲れが体の外に出ていく」
と想像してみてください。
ポジティブ心理学者
タル・ベン・シャハーは、
著書の中で自身が行っている
「3回の深呼吸」について紹介しています。
1回目は「今ここにいる自分」に意識を向け、
2回目は、その日もしくは
人生全体の目的に意識を向け、
3回目は、感謝したいものへ気持ちを
向けるのだそうです。
これを1日に数回取り入れるだけで、
心がゆっくり落ち着き、
穏やかな気持ちを
感じられるようになるとのことです。
深呼吸は、ちょっとしたすき間時間や、
寝る前のリラックスタイムなど、
どこでも気軽にできます。
忙しい毎日の中でも、
呼吸を整えるだけで、
心に余裕を
取り戻すことができるでしょう。
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4)心の平穏を育むマインドフルネス瞑想
瞑想は、古来より
心の平静と洞察を深める方法として
親しまれてきましたが、
現代の科学研究でも
その効果が実証されています。
マインドフルネス瞑想とは、
今この瞬間に意識を向け、
評価や判断をせずに
「ありのままを感じる」ことです。
まずは、楽な姿勢をとりましょう。
椅子に座る場合は、
足の裏が床につくようにし、
背筋をやさしく伸ばします。
横になって行ってもかまいません。
ゆっくりと鼻から息を吸い込み、
お腹がふくらむのを感じながら
深く呼吸します。
空気が体全体に
広がっていくイメージを持ちながら、
呼吸に意識を向けてみましょう。
途中で
さまざまな考えや感情が
浮かんでくることもあるでしょう。
それは、とても自然なことです。
「集中できていない」
とがっかりするのではなく、
「今、こんな思考が浮かんでいるな」
と心の内を良し悪しの判断をせず、
客観的に観察し、
再び呼吸に意識を戻してみましょう。
最初は1〜2分、
慣れてきたら5分、10分と
少しずつ時間を延ばしていきます。
大切なのは、
時間の長さよりも続けることです。
短時間でも毎日瞑想を行うことで、
集中力が増し、気持ちが安定しやすくなり、
ストレスも感じにくくなるでしょう。
朝の静かな時間や、
一日の終わりのリラックスタイムに
取り入れることで、心が穏やかになり、
落ち着いた状態で
過ごせるようになるでしょう。
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5)他者への親切が、自分の幸福を育ててくれる
「情けは人のためならず」
という言葉がありますが、
親切な行動は相手のためだけでなく、
自分自身の幸福感も高めてくれるものです。
心理学の研究では、誰かのために
親切な行動を続けている人ほど、
長く安定した幸福感を
維持できる傾向があると示されています。
親切といっても、
特別なことをする必要はありません。
たとえば、電車で席を譲る、
コンビニの募金箱に小銭を入れる、
同僚の仕事を手伝う、
家族に「ありがとう」を伝える、
近所の人に笑顔で挨拶する――
そんな小さな行動で十分です。
そして、余裕があるときには、
地域のボランティア活動に参加する、
友人の引っ越しを手伝う、
環境保護のイベントに参加してみるなど、
少し大きな行動に広げてみてもよいでしょう。
大切なのは、無理をせず、
相手を思いやる優しい気持ちで行うことです。
親切な行動は、
相手の心を温かくするだけでなく、
行動した自分にも満足感や幸福感を
もたらしてくれるものです。
人とのつながりが深まり、
支え合える関係が増えることで、
心が安定しやすくなるでしょう。
一つの小さな親切が広がって、
周りにも良い影響を与えるのです。
こうして優しさの輪は、
自分にも周囲にも、
穏やかなポジティブ感情を
運んでくれるでしょう。
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6)自然の癒しを、日常の中に取り入れる
自然との触れ合いは、
心を穏やかに整え、
安らぎをもたらしてくれるものです。
ある研究では、
病院の窓から緑が見える患者のほうが、
見えない患者よりも回復が早かった
という結果も出ています。
これは、自然が持つ癒しの力を示す
興味深い例でしょう。
都市に住んでいても、
自然を感じられる場所は
意外とたくさんあるものです。
通勤途中の街路樹、ビルの中庭、
駅前の花壇、ベランダの小さな鉢植えなど、
目を向けてみると
身近に緑があることに気づくはずです。
時間に余裕のある日は、
公園を散歩したり、川沿いを歩いたり、
山や海へ出かけるのもよいでしょう。
少し足を伸ばすだけで、
心が軽くなる感覚を味わえるでしょう。
自然を感じるときには、
視覚だけでなく
聴覚や触覚、嗅覚など、
五感をフルに使ってみましょう。
鳥のさえずりに耳を澄ませ、
花の香りを楽しみ、
木のぬくもりに触れ、
風の涼しさを肌で感じる――
そんな体験が、忙しい日常の緊張を和らげ、
ストレスを軽減してくれるでしょう。
室内でも自然の力を
取り入れることができます。
観葉植物を置く、花を飾る、
自然音の音源を流す、
自然の写真や絵を飾るなど、
ほんの少し工夫するだけで、
空間が心地よいものへと変わります。
植物の世話をする時間も、
成長を見守る喜びを感じられ、
心が満たされるひとときとなるでしょう。
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7)感謝の心が、幸福の扉を開く
感謝の気持ちを
意識して育てることは、
幸福感を高める確かな方法です。
ある研究では、
毎日1〜2分だけでも
「感謝できること」を思い浮かべた人は、
そうでない人に比べて幸福感が高く、
眠りの質がよくなり、
人に対して親切になる傾向があった
と報告されています。
意識して探してみると、
日常の中には感謝できることが
数多くあると気づくでしょう。
朝、目覚められたこと。
安心して休める家があること。
おいしい食事を味わえること。
家族や友人の存在。仕事があること。
健康であること。
季節の移り変わりを感じられること――。
当たり前に思っていることこそ、
実は大切な恵みなのです。
感謝の対象は人だけに限りません。
物や状況、環境にも
向けることができるでしょう。
たとえば、
電車が時刻通りに来てくれること、
街灯が夜道を照らしてくれること、
図書館で静かに本が読めること、
インターネットで世界中の情報に
触れられることなど、
私たちの生活を支えてくれている
仕組みやサービスにも感謝できます。
感謝の気持ちを表す方法も
いくつかあります。
心の中で思うだけでなく、
感謝日記を書く、誰かに手紙を書く、
直接「ありがとう」と伝える、
メッセージで気持ちを届けるなど、
形にすることで
より深い満足感が得られるでしょう。
感謝できることに意識を向け、
それを習慣にしていくと、
ものごとの良い面が見えやすくなり、
ポジティブな感情を感じる時間が
自然と増えていくでしょう。
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8)人生を輝かせるハピネスブースター
ハピネスブースターとは、
心を明るくし、人生全体の幸福感を
高めてくれる行動のことです。
暗い部屋でも、小さなろうそくが灯れば
空間がふんわり明るくなるように、
ハピネスブースターは、
たとえ小さな行動でも、
心に光を届けてくれます。
ハピネスブースターには、
2つのタイプがあります。
ひとつは「いつものハピネスブースター」。
これは、日常の中で気持ちを穏やかにし、
幸福感をじわっと高めてくれる活動です。
たとえば、
お気に入りの音楽を聴きながら
朝の準備をする、週末にカフェで本を読む、
お風呂にアロマオイルを垂らして
ゆっくり浸かる、
大切な人と定期的に連絡を取り合うなど、
生活の中にやさしい彩りを
添えてくれるものです。
もうひとつは「お試しハピネスブースター」。
これは、
今までやってみたことがないけれど、
興味があったことに挑戦してみる活動です。
料理教室に参加する、新しいスポーツに挑戦する、
美術館を巡る、楽器を習う、語学を学び始めるなど、
未知の世界に一歩踏み出すことで、
新しい発見や成長が生まれるでしょう。
人生に新しい色が加わり、
心が刺激される感覚も楽しめるはずです。
ハピネスブースターを選ぶときは、
「自分にとって無理なく続けられ、
心が満たされるかどうか」
を基準にしてみてください。
忙しい毎日でも、自分の好きなことや
心地よい活動に時間を割くことは、
人生の質を高める大切な投資になります。
自分だけの小さな楽しみが、
日々の幸福感を
大きく育ててくれるでしょう。
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おわりに
この記事では、
日常の中で手軽に取り入れられる、
ポジティブ感情を増やすための
8つのヒントをご紹介しました。
ポジティブ心理学の研究では、
ポジティブ感情とネガティブ感情の割合が
3対1以上になると、
物事がスムーズに進みやすくなり、
人間関係が穏やかになり、
人生の質そのものが高まるとされています。
今回取り上げたのは、
1)3つのいいこと探し
2)体を動かすこと
3)深呼吸
4)マインドフルネス実践
5)親切の実践
6)自然を五感で感じること
7)感謝の心を育むこと
8)ハピネスブースターです。
これらは、どれも
科学的な裏づけがある
ポジティブ感情を高める方法です。
気になるもの、
自分に合いそうなものから、
ひとつずつ試してみてください。
大切なのは、
完璧にやろうとしないことです。
時には忘れてしまったり、
うまくいかない日があっても、
それは自然なことです。
そんなときは、自分を責めずに、
また次の日から始めればよいのです。
小さな行動の積み重ねが、
いつの間にか
大きな変化を生み出すでしょう。
ポジティブ感情は、
気分を良くするだけではなく、
創造性を高め、人間関係を豊かにし、
健康や仕事にも良い影響をもたらします。
3対1の黄金比を意識しながら、
今日できる小さなことを
実践してみてください。
あなたの毎日が、より明るく、豊かで、
心地よいものになりますように。