「幸せになりたい」と願う気持ちは、
私たち人間に
共通する自然な思いでしょう。
しかし、そう願いながらも、
現実はその幸せから遠く離れている
と感じている方もいるかもしれません。
この記事では、「幸せになりたい」
と強く願うあなたに向けて、
どうすれば幸せを手に入れられるのか、
すでに幸せを実感している人たちの
考え方や行動を手がかりに、
そのヒントを探っていきます。
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2つの生き方:幸せになりたい VS 幸せだ
「あなたは今、幸せですか?」
そう問いかけられたとき、
あなたはどう答えるでしょうか?
日々の暮らしの中で、
私たちは仕事の悩み、
人間関係のストレス、
将来への不安など、
さまざまな問題を抱えて生きています。
だからこそ、
「いいえ、幸せではありません」
と答える方もいるでしょう。
もしそうだとしたら、
その答えの中に、
幸せを感じられない理由が
隠されているのかもしれません。
人には、大きく分けて
2つの生き方があります。
ひとつは
「I want to be happy(幸せになりたい)」
という生き方。
もうひとつは
「I am happy(私は幸せだ)」
という生き方です。
一見すると似ているようですが、
実はこの2つのあいだには、
決定的な違いがあります。
そして、その違いこそが、
私たちの幸福感を
大きく左右しているのです。
まずは、
この2つの生き方の違いについて、
もう少し深く見ていきましょう。
「I want to be happy(幸せになりたい)」
という言葉の中には、
「今はまだ幸せではない」という思いが、
込められているのです。
つまり、
現在の自分を「まだ足りない」
「まだ満たされていない」
と感じながら生きることになります。
一方で、
「I am happy(私は幸せだ)」
という言葉には、
「今この瞬間の自分は、
すでに幸せである」
と認める姿勢があります。
ここには、「今のままで十分だ」
「今の自分には幸せがある」
と肯定する感覚があるのです。
ここで大切なのは、
私たちの心には、
「心の底で認めたものが現実化する」
という不思議な性質が
あるということです。
「幸せではない」
と無意識に認めていると、
その思いが現実の中に
いっそう強く
表れてしまうでしょう。
なぜなら、そうした状態では
「幸せではない現実」に
意識が向きやすくなるからです。
結果として、不足や不満ばかりが
目に留まりやすくなるでしょう。
それに対して、
「私は幸せだ」と
今の自分を認めることができると、
心の深いところでは「幸せな現実」が
すでにあると感じている状態です。
そうなると、
自然と「ありがたいこと」
「うれしい出来事」に目が向くようになり、
日常の中に
幸せを見つけやすくなるのです。
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幸せは「フォーカス」に左右される
では、具体的にどうすれば
「I am happy.」という生き方が
できるようになるのでしょうか?
そのヒントとなるのが、
「フォーカス(焦点)」の向け方です。
たとえば、ある友人との関係を
思い浮かべてみてください。
「その人がしてくれないこと」
にフォーカスすると、
自然と不平や不満が
湧いてくるでしょう。
「もっと連絡をくれればいいのに」
「もっと気を遣ってくれたらいいのに」
といった思考パターンになります。
このとき、心の状態は
感謝とはかけ離れた方向に傾き、
幸せからも遠ざかってしまいます。
一方、同じ友人関係でも
「その人がしてくれていること」
に目を向けると、
心のあり方は大きく変わるでしょう。
「いつも私の話を聞いてくれる」
「困ったときに助けてくれた」
「一緒にいると楽しい時間が過ごせる」
そんなふうに、
すでに受け取っているものに
気づくことができるのです。
このとき、
心は自然と感謝の気持ちに包まれ、
穏やかな幸福感が湧いてきます。
つまり、
何にフォーカスしているかによって、
私たちの感じ方は大きく変わるのです。
認知行動療法の観点から見ると、
これは「認知のクセ」
と呼ばれるものです。
私たちは
物事を客観的に見ているつもりでも、
実際には、自分の思考パターン
というフィルターを通して
世界を見ています。
気づかないうちに、
自分にとって馴染みのある視点から
ものごとを見てしまうのです。
幸せを感じやすい人は、
「感謝できること」や
「ありがたいこと」に
目を向ける習慣が身についています。
反対に、幸せになりたい
と強く願っている人ほど、
足りない部分や満たされていない点に
意識が向きがちです。
幸せではないと感じている人が
幸せに近づくためには、
まずはこの「認知のクセ」
に気づくことが何より大切なのです。
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私たちはすべてを見ているわけではない
さらに、
人間の脳の仕組みを知ることで、
この「フォーカスの重要性」が
より深く理解できるように
なるでしょう。
私たちは、常に膨大な情報に
さらされています。
目に入る映像、耳に届く音、
体が感じる刺激──
それらすべてを同時に
正確に認識することはできません。
そこで脳は、「重要だ」
と判断した情報だけを
選んで処理します。
そして、
その選別の基準になるのが、
私たちが
どこにフォーカスを向けているか、
という点なのです。
これは、心理学では
「選択的注意」と呼ばれています。
よく挙げられる例が、
「カラーバス効果」です。
たとえば、
赤い車に意識を向けたとたん、
街のあちこちに
赤い車が目につくように
なるでしょう。
本当は以前から
同じくらいの数の赤い車が
走っていたはずなのに、
意識を向けたことで、
急にその存在が際立って
感じられるようになるのです。
つまり、私たちの脳は
「自分がフォーカスを当てたもの」を、
実際以上に大きくとらえる傾向があり、
逆に「フォーカスしていないもの」
は小さく、時にはまったく
見えなくなってしまうのです。
この脳の性質を理解すれば、
なぜフォーカスの向け先が
幸せのカギになるのかが、
はっきりと見えてきます。
足りないものや
満たされていない部分に
意識を向け続ければ、
それらが実際以上に大きく感じられ、
不平や不満も膨らんでしまいます。
一方で、感謝できることに
意識を向ける習慣を身につけると、
脳は自然に感謝できる出来事を
探し始めます。
すると、
それまで見過ごしていた小さな幸せや、
当たり前だと思っていた恵みにも
気づけるようになり、結果として、
日々の中で幸福感を味わう機会が
増えていくのです。
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「感謝力」を高める習慣をつけよう!
理論が理解できたところで、
では実際にどのようにして
「I am happy」という生き方を
身につけていけばよいのでしょうか?
最も効果的なのは、
「感謝力」を高める習慣を、
日常生活の中に取り入れることです。
まずは、就寝前の感謝の振り返りから
始めてみましょう。
ベッドに横になったら、
その日一日を思い返し、
感謝したい人や出来事を
ゆっくり思い出してみてください。
家族が作ってくれた食事、
同僚が手伝ってくれた仕事、
電車が時間通りに来たこと、
美しい夕焼けが見られたことなど、
どんなに小さなことでも構いません。
それぞれに「ありがとう」
という気持ちを込めて、
心の中で静かに感謝します。
途中で眠くなったら、
そのまま眠ってしまって大丈夫です。
感謝の気持ちに包まれて
眠りにつくことで、
潜在意識にポジティブな印象が
刻まれていくでしょう。
朝は、目覚めた直後に
「今、感謝できること」を3つ見つけて、
声に出して言ってみましょう。
「今日も目を覚ますことができて
ありがとう」
「温かいベッドで眠れたことに
ありがとう」
「新しい一日を迎えられてありがとう」など、
小さなことで十分です。
一日の始まりを
感謝とともに迎えることで、
自然と感謝に目が向きやすい
心の状態が整い、その日一日を
前向きに過ごせるようになるでしょう。
日中は、できるときには
「ありがたい」「ありがとう」
「ありがとうございます」といった言葉を、
意識して使うようにしてみましょう。
エレベーターで
扉を開けて待ってくれた人に、
家族が何かしてくれたときに──
感謝を伝えるチャンスは、
実は日々の中にたくさんあります。
最初は
意識的に行う必要がありますが、
続けていくうちに、
自然と口から出るようになるでしょう。
また、感謝日記をつけるのも、
「感謝力」を高めるうえで
とても効果的な方法です。
毎晩、その日にあった
「感謝できること」を
3つ書き出してみましょう。
文章にする必要はなく、
一つの出来事につき
一行ほどで構いません。
「今日は雨だったけど、
久しぶりに本をゆっくり読めた」
「友達から励ましのメッセージをもらった」
「夕食の味噌汁がとても美味しかった」など、
日常の中の小さな出来事を
記録していきます。
この習慣を続けていくことで、
自然と感謝できることに
目が向きやすくなり、
日々の中にある幸せに気づく力が
育まれていくでしょう。
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変化を信じて続けることの大切さ
これらの実践により、
すぐに劇的な効果が
現れるものではありません。
しかし、意識して
感謝の習慣を日々続けていくことで、
やがて確かな変化を
感じられるようになるはずです。
最初のうちは、
「本当に効果があるのだろうか」
と疑問に思うかもしれません。
感謝できることを探しても、
なかなか見つからない日も
あるでしょう。
それでもあきらめずに
続けていくうちに、ある日ふと、
これまで見過ごしていた
小さな幸せに
自然と目が向くようになります。
いつものコーヒーが
いつもより美味しく感じられたり、
友人の何気ないひと言に
深い思いやりを感じたり、
道端に咲く花の美しさに
心が和んだりするのです。
ここで大切なのは、
完璧を求めすぎないことです。
感謝を忘れてしまう日があっても、
ネガティブな感情に
心が傾いてしまう日があっても、
それは人間としてごく自然なことです。
大事なのは、
また新しい一日が始まったときに、
もう一度感謝の実践に戻ること。
続けることで、
あなたの「感謝を見つける力」と
「感謝にフォーカスする力」は、少しずつ、
しかし確実に育っていくでしょう。
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おわりに
この記事では、
「幸せになりたい」と願いながらも、
なかなか幸せを感じられない方に向けて、
幸福を手にするためのヒントを
お伝えしてきました。
幸せが
なかなか感じられない背景には、
もしかすると「物の見方のクセ」
が影響しているのかもしれません。
そのことに気づき、
意識的に「感謝できること」に
フォーカスを当てるようにすれば、
やがて現実の見え方も
少しずつ変わってくるでしょう。
不足に目を向けるのではなく、
すでに与えられている恵みに
目を向けること。
それこそが、感謝の心を育み、
幸福感を高めるための
大切な一歩となるでしょう。
そのための具体的な方法として、
就寝前や起床後の感謝の振り返り、
日常の中で感謝の言葉を積極的に使うこと、
そして感謝日記をつける習慣などを
ご紹介しました。
最初のうちは意識して
取り組む必要がありますが、
続けていくうちに、自然と
感謝できることが
目に留まりやすくなるでしょう。
もちろん、ときには
うまくできないことも
あるかもしれません。
でも、それでいいのです。
大切なのは、
完璧を目指すことではなく、
気づいたときにまた
実践を始めることです。
どうか焦らず、あきらめずに、
あなたの毎日に小さな感謝を
積み重ねていってください。
その積み重ねが、
きっとあなたの人生に、
たくさんの幸せを
運んできてくれるでしょう。
この記事を
読んでくださっているあなたには、
すでに多くの恵みが与えられています。
インターネットにアクセスできる環境、
新しいことを学ぼうとする意欲、
そして何より、
よりよい人生を送りたいと願う気持ち。
これらすべてが、感謝に値する
かけがえのないギフトです。
幸せは、あなたが思っているよりも、
ずっと身近なところにあります。
そのことに気づく力を
育てていくことで、
今までよりも豊かで、
心満たされる日々を
過ごせるようになるでしょう。