子どもをいじめから守るために、親ができること

学校でも、職場でも、地域社会でも、
いじめは日常的に起きています。

子どもがいじめに
遭わないようにするために、
親として何ができるでしょうか?

いじめる側が悪いのはもちろんですが、
親の日ごろの接し方が、
知らず知らずのうちに
子どもの自己防衛力を
下げてしまうこともあります。

この記事では、
気づかぬうちに子どもを
いじめのターゲットにしてしまう、
親の言動について紹介します。

====

なぜ「いじめられやすい子」になってしまうのか?

いじめの現場を観察すると、
標的になりやすい子どもには
いくつかの共通点があります。

自己主張が苦手で、
理不尽な要求に対しても
うまく言い返せないこと。

さらに、自信がなく、
他人の顔色をうかがいがちで、
周囲に流されやすい傾向が
見られます。

これらの特徴は、
生まれつきの性格とは限りません。

むしろ、家庭での
親の言葉かけや接し方、
そして家庭全体の雰囲気が、
子どもの自己肯定感や対人関係スキル、
自己防衛力に深く影響しているのです。

親が「よかれ」と思ってかける言葉や、
子どもを守ろうとする行動が、
かえって子どもの自己肯定感を下げ、
自己防衛力を
奪ってしまうこともあります。

子どもの自己肯定感や対人関係のスキル、
自己防衛力は、親の育て方や接し方に
大きく左右されると言ってよいでしょう。

ここからは、
知らず知らずのうちに
子どもをいじめのターゲットに
しやすくしてしまう
親の言動をいくつか紹介し、
それを防ぐためのヒントも
お伝えします。

====

子どもの「言い返す力」を奪っていませんか?

子どもが
自分の意見を言おうとしたとき、
「子どもは黙っていなさい!」
「言い訳は許しません!」
といった言葉をかけていないでしょうか?

こうした対応をされると、
子どもは自分の考えを
表現する機会を失い、その結果、
友達と対立したときにも
言い返せなくなってしまいます。

また、理不尽な状況に遭遇した際、
子どもにただ我慢させるのも
望ましいことではありません。

親としては、
寛容な子に育ってほしい
という思いがあるのかもしれませんが、
たとえ寛容さが美徳であっても、
必要な場面で
反論できなくなるようでは問題です。

そのような子どもは、
いじめっ子にとって
都合のよい存在に
なりやすいからです。

事なかれ主義の親であれば、
揉めごとを避けたくて、
子どもに謝るよう促すことも
あるでしょう。

たとえば、兄弟げんかのときに
「お兄ちゃんなんだから謝りなさい」
と年上の子に一方的な謝罪を求めたり、
「理由はどうでもいいから
謝って終わらせなさい」
と言ったりするような対応です。

このように育てられた子どもは、
友達との関係でも、
いつも自分ばかりが謝ってしまい、
強く出る相手の
ターゲットになりやすくなります。

理由よりも和解を優先させる姿勢は、
子どもの正義感や
自己防衛力を奪ってしまうのです。

本当に大切なのは、
「謝るべきとき」と
「主張すべきとき」の違いを
しっかり教えることです。

自分に非があるときには
素直に謝る、
そうでないときには
堂々と自分の立場を説明できる――
そうした力を育てることが、
健全な人間関係を築く
土台になるのです。

家庭では、
子どもの意見にしっかり耳を傾け、
たとえ親と考えが違っていても、
まずは「そう考えるのね」
と受け止める姿勢を見せることが
大切です。

子どもが自分の気持ちを
言葉にできる環境を、
親が意識して整えること。

それが、
将来子どもが身を守る力、
つまり自己防衛力を育むことに
つながっていくのです。

====

過保護になっていませんか?

子どもが困る前に、先回りして
何でも解決して
あげてはいないでしょうか?

たとえば、
友達とのトラブルにすぐ介入したり、
問題が起きたとたんに
先生や相手の保護者に
連絡を取ったりすることです。

これらは一見すると
愛情深い対応のように
思えるかもしれませんが、
実は子どもの成長を
妨げてしまうことになります。

常に助けてもらって育った子どもは、
問題に直面した時に、
どう対処すればいいのか分かりません。

自分で考え、自分で行動する力が
育っていないため、困難な状況では
完全に無力になってしまうのです。

親への依存が強くなり、
周囲の同年代の子どもたちからは
幼く見られて、
からかわれることもあるでしょう。

また、子どもが失敗しないようにと、
先回りして手を出してしまうのも
望ましいことではありません。

失敗は一見すると
避けたいものに思えますが、実際には
成長のために大切な経験です。

失敗を通して学ぶことや、
そこから立ち直る過程で得られる力は、
子どもにとって大きな財産になります。

そのため、失敗を避けさせようと
過剰に介入するのは控えるべきです。

さらに、
子どもがうまくいかなかったときに、
叱ったり責めたりすることも
避けたいものです。

その代わりに、
どこに問題があったのかを一緒に振り返り、
次に同じ失敗を繰り返さないためには
どうすればよいかを、
一緒に考える姿勢が大切です。

親は、子どもが困らないようにと
先回りするのではなく、
「まずは任せて見守る」
というスタンスでいることが重要です。

そして、いざ子どもが
本当に助けを必要とするときには、
すぐにサポートできるよう、
そばで温かく見守る姿勢が求められます。

そうすることで、子どもは
自分の力で
困難を乗り越える経験を積み、
自立心が育っていくでしょう。

結果として、
いじめの標的になりにくい、
たくましさを
身につけることにもなるのです。

====

世間体を気にしすぎていませんか?

「恥ずかしいからやめなさい!」
「周りにどう思われるか考えて!」
「世間さまに笑われてしまうよ」
といった言葉で、子どもの行動を
抑え込んでいないでしょうか?

親が常に他人の目を気にする姿を
見せていると、子どもも自然と
他人の顔色を
うかがうようになってしまいます。

また、世間体を気にするあまり、
子どもの服装や持ち物を
親が勝手に決めたり、
行動の一つひとつに
細かく口出ししたりすると、
子どもは自分らしさを表現する機会を
失ってしまいます。

そうなると、
他人の評価ばかりを気にするようになり、
自分の軸を持てず、
周囲に流されやすく
なってしまうでしょう。

自分自身の気持ちよりも
世間体を優先するよう育てられた子どもは、
当然ながら、自分で自分を守る力を
育むことができません。

大切なのは、
他人がどう思うかよりも、
「自分がどう感じるか」を
尊重する姿勢を伝えることです。

人と違っていても、
自分の信念を大切にできるように――
そのためには、
家庭の中で子どもの個性を認め、
ありのままを受け入れる姿勢を
親が示していくことが
何より大切です。

====

ネガティブなことばかりを言っていませんか?

家庭の中で、無意識のうちに
ネガティブな会話を
たくさんしていないでしょうか?

たとえば、学校の先生や
他の保護者への不満を口にしたり、
誰かの悪口を言ったりすることです。

こうした会話が
日常的に繰り返されると、
子どもも知らず知らずのうちに、
攻撃的なふるまいを
身につけてしまうでしょう。

他人を批判する言葉を
聞き慣れてしまうと、自分でもつい
相手の反感を買うような言動をしてしまい、
結果としていじめの標的になってしまう
可能性もあるのです。

良いことも悪いことも、子どもは
親の姿をそのまま模倣します。

だからこそ、
親自身の振る舞いを意識し、
子どもに与える影響に
注意することが大切なのです。

家庭の中で耳にする言葉や
目にする光景が、
子どもの人間関係やふるまいに
大きく影響するからです。

できるだけ建設的な会話を心がけ、
たとえ問題があっても、
どう解決していけるかを
一緒に考える姿勢を
見せるようにしましょう。

批判するより理解しようとする姿勢、
否定よりも受け入れる姿勢を
大切にすることで、
子どもも他人との関係において、
同じような態度を
とれるようになるでしょう。

それが、
健全な人間関係を築くための
基盤となるのです。

====

子どもの心配ばかりをしていませんか?

心配すること自体が
悪いわけではありません。

それは、子どもを思う気持ちから
自然に生まれる感情であり、
親としての優しさや
責任感のあらわれでもあります。

しかし、
その心配が行き過ぎてしまうと、
かえって子どもの心に
悪い影響を与えることになるでしょう。

たとえば、
「そんなことして大丈夫?」
「心配だからやめておきなさい」
といった言葉を、
親が日常的に口にしていると、
親の不安な気持ちは
知らず知らずのうちに子どもに伝わり、
子どもは自信を持てなくなってしまいます。

すると、挑戦する意欲が薄れ、
自分の可能性を試すチャンスも
減っていくでしょう。

そうした傾向は、やがて
「自信のなさ」として
子どもの表情やふるまいに
あらわれてくるでしょう。

自信を持っている子どもは、
堂々としていて、
周囲とも健全で対等な関係を
築きやすいです。

一方で、
自信のない子どもは、
軽く見られたり、
馬鹿にされたりしやすく、
いじめの標的になることも
少なくありません。

親として大切なのは、
心配の言葉をかける代わりに、
子どもの力を信じる姿勢で
接することです。

信じて見守る勇気も、
愛情のひとつです。

親が子どもを
信頼する姿勢を見せることが、
子どもの安心感と、
内面から湧き出る自信を
育てていくからです。

====

「優しさ」を美徳として教えすぎていませんか?

子どもが
思いやりのある行動を見せたとき、
「よい子ね」「優しい子ね」と、
子どもの従順さや配慮を
過剰に褒めてはいないでしょうか?

もちろん、
優しさは大切な美徳です。

でも、自分を犠牲にしてまで
他人に尽くすことを
「よいこと」として教え込んでしまうのは、
決して望ましいことではありません。

なぜなら、
そのように育てられた子どもは、
嫌なことでも断ることができず、
他人にいいように
利用されやすくなるからです。

「よい子」でいようとする気持ちが
最優先になり、自分の思いや意見を
後回しにする習慣が
身についてしまうでしょう。

「優しくしなければいけない」
という思い込みがあると、
理不尽な要求にも応じてしまったり、
嫌なことをされても
我慢するようになるでしょう。

こうした傾向があると、
どうしてもいじめのターゲットに
なりやすくなってしまいます。

子どもには、優しさと同時に
「自分の境界線を守る力」
を教えることがとても大切です。

「嫌なものは嫌」
「できないものはできない」
と伝える勇気も、
優しさと同じくらい
価値があるということを、
日々の関わりの中で
しっかり伝えていきましょう。

====

これから親としてできること

ここまで読んで、
「もしかしたら、
自分もやっている」
と感じた方も
いらっしゃるかもしれません。

でも、大丈夫です。どうか
ご自分を責めないでください。

親である私たちも、
完璧ではありません。

今からでも、
気づいたところから
少しずつ変えていけば、
子どもの自己防衛力を育てていくことは
十分可能です。

大切なのは、子どもが
いじめのターゲットにならないように、
今の自分にできることを、
無理なく実践していくことです。

まず重要なのは、子どもの話に
きちんと耳を傾けることです。

たとえ子どもの意見が
親と違っていても、否定せずに
「そう考えるのね」
と受け止めてあげましょう。

そして、子どもが
どんな感情を抱いていても、
「そう感じるんだね」
と気持ちに寄り添う姿勢を
持つことが大切です。

そうすることで、
子どもの自己受容力が育ち、
やがて自己肯定感も
高まっていくでしょう。

また、子どもが困らないように、
失敗しないようにと
親が先回りして何でもやってあげるのは、
できるだけ控えたいところです。

それよりも、子どもが自分で考え、
解決する力を育てられるように、
親はそっと優しく
見守る気持ちでいましょう。

「いつでも相談していいよ」
「困ったときは支えるよ」
というスタンスで、
子どもが自分でできることは
信じて任せていくのです。

親自身が「自分軸」を持つことも、
とても大切です。

他人の目を気にしすぎず、
自分の価値観を大事にして
生きる姿を見せることが、
子どもにとって
何よりの学びになります。

そのような親の背中を見て
育った子どもは、
自分らしさを大切にしながら、
しなやかに、幸せに
生きていけるようになるでしょう。

子育てに「これが正解」
というものはありません。

でも、
子どもの将来を考えたときに、
自分で自分を守る力、
自分らしく生きる力を育ててあげることは、
親として子どもに贈ることができる、
最も大切なギフトに
なるのではないでしょうか?

完璧である必要はありません。

今、気づいたことを、
少しずつ実践していきましょう。

====

おわりに

この記事では、
「いじめられやすい子」にならないために、
親として
どのような関わり方ができるのかを
考えてきました。

いじめの原因が
すべて家庭にあるわけではありません。

しかし、
親の日々の言葉かけやふるまいが、
子どもの自己肯定感や自己防衛力、
人との関わり方に
深く影響するのは確かです。

子どもの意見を
頭ごなしに否定したり、
心配のあまり先回りして
何でもやってあげたり、
世間体を優先して
子どもの気持ちを後回しにしたり――
そうした関わりが、結果的に
子どもをいじめのターゲットに
してしまうこともあるのです。

また、「優しさ」や「よい子であること」
ばかりを重視すると、
子ども自身の境界線があいまいになり、
他人に都合よく扱われやすく
なってしまうこともあります。

だからこそ、子どもが
自分の気持ちや意見をしっかり言葉にし、
自分らしさを守りながら
人と関われる力を育てることが大切です。

そのためには、親が子どもを信じて
任せる勇気を持つこと、そして、
何かあったときには
「いつでも力になるよ」と
安心感を与えてあげること――
それが、子どもにとっては
何よりの支えになるでしょう。

もし、これまでの接し方を
「少し変えてみたい」と感じたなら、
どうか、今できることから
始めてみてください。

完璧である必要はありません。

親の小さな変化の積み重ねが、
子どもの自己肯定感と
自分を守る力を
少しずつ育てていくでしょう。

そしてそれは、やがて、
子どもが健やかに、幸せに、
自分らしく生きていくための
大きな力になるはずです。