ネガティブな感情に
苦しむことが多いとき、
その原因が自分特有の
固定されたものの見方
にある場合があります。
私たちは気づかないうちに、
同じ思考パターンを繰り返し、
同じ感情を味わい続ける
傾向があるのです。
この記事では、自分特有の
「ものの見方」から自由になり、
思考の柔軟性を高めることで、
より楽に生きるための
ヒントをお届けします。
====
私たちは無意識のうちに「ものの見方」を固定している
私たちは誰もが、自分特有の
「ものの見方」を持っています。
これは長年の経験や価値観、
性格などによって形づくられ、
多くの場合、無意識のうちに
定着しているものです。
たとえば、雨が降るという
同じ出来事に対しても、
「天気が悪くて最悪だ」と嘆く人がいれば、
「恵みの雨だ」と感謝する人もいます。
多くの人は、出来事そのものが
感情を引き起こすと思いがちです。
しかし実際には、
「出来事→ものの見方による解釈→感情」
という流れで感情が生まれています。
つまり、出来事そのものが
直接感情を生み出すのではなく、
その出来事をどう解釈するかによって
感じ方が決まるのです。
同じ出来事でも、人によって
まったく違う感情を抱くのは、
そのためです。
ある出来事に対して
不安になったり、怒りを覚えたり、
喜びを感じたりするのは、
それぞれの「ものの見方」に基づく
解釈があるからです。
そして多くの場合、私たちは
同じような「ものの見方」を
繰り返すため、
似たような感情パターンに
陥りがちです。
残念ながら、私たちの多くは
自分の「ものの見方」のクセや偏りに
気づかないまま過ごしています。
自分の思考パターンを、まるで
「客観的事実」であるかのように捉え、
それ以外の見方が存在することに
気づかないのです。
そして、それが原因となって、
生きづらさを感じてしまうことも
多いのです。
====
「唯一の真実」という幻想：多様な視点の重要性
私たちは、
自分が感じていることを、
まるで唯一の真実
であるかのように捉えがちです。
しかし実際には、
「唯一の真実」というものは
存在しません。
同じ出来事を経験しても、
それによって生まれる「真実」は
人それぞれ異なるのです。
たとえば、
江戸時代の終わりに起きた
「明治維新」を考えてみましょう。
教科書では
「近代国家への第一歩」
「文明開化の始まり」として
肯定的に語られることが多いですが、
武士階級にとっては
「生活基盤の崩壊」であり、
伝統文化を守ろうとした人々には
「西洋化への屈服」
と映ったかもしれません。
農民にとっては
税制の変化による混乱の時期であり、
各地の産業にとっても
大きな転換点でした。
このように、一つの出来事でも
立場や価値観によって
まったく異なる意味を持ち、
人それぞれが異なる真実を
経験しています。
それにもかかわらず、
私たちはしばしば
「自分が感じていることこそが
唯一の正しさだ」
と思い込んでしまいがちです。
自分の真実に固執すると、
他の可能性や視点に気づけなくなり、
狭い視野の中だけで
判断を下すようになります。
そしてそれは、
物事を広く捉える力を弱め、
人生の選択肢を狭めてしまう
原因ともなるでしょう。
この思い込みから
抜け出すためには、
自分にとって
当たり前に感じられることも、
一度立ち止まって
疑ってみる必要があるでしょう。
====
思考パターンが作る感情の罠
日常生活の中で、
私たちの「ものの見方」が
どのように感情や行動に
影響を及ぼすのか、
具体例を見てみましょう。
友人にLINEでメッセージを送ったのに、
なかなか返信がこない場合を
想像してください。
このとき、
「私のことを
大切に思っていないのでは」
「無視されているのかもしれない」
「自分は相手にとって
優先順位が低いんだ」
「友人関係を軽く見られているのかも」
といった見方をしていると、
どのような感情が湧いてくるでしょうか？
きっと、悲しさや寂しさ、不安、
そして場合によっては、怒りさえも
感じるのではないでしょうか？
そして、
これらの感情は次第に強まり、
やがて友人関係に
悪影響を与えてしまうかもしれません。
実際には、
自分が思い込んでいるようなことが
起きていないのに、
不当な解釈によって
感情が大きく揺さぶられ、その結果、
行動にも悪い影響が
及ぶことがあるでしょう。
こうした反応は、その人特有の
「ものの見方」から生まれています。
過去に無視された経験がある人や、
何らかの理由で
「自分は愛される価値がない」
という思い込みを持っている人は、
返信の遅れを
ネガティブに解釈しやすい
傾向があります。
けれども、この解釈が
必ずしも正しいとは限りません。
他の可能性も
考えられるはずです。
たった一つの可能性だけを
「これが正しい」と信じ込み、
心配したり、不安に駆られたり、
怒りを抱いたりすれば、
自分自身を苦しめ、
生きづらさが増してしまうでしょう。
では、どうすれば
他の「ものの見方」に
気づけるようになるのでしょうか？
====
サイコロ思考：思考の可能性を広げる方法
ここで役立つのが
「サイコロ思考」です。
これは、「サイコロに
6つの面があるように、
どんな出来事にも少なくとも
6つの解釈の可能性がある」
という考え方です。
つまり、一つの出来事に対して、
最低でも6つの異なる
「ものの見方」を考えてみよう
という思考法です。
先ほどの、
LINEの返信がないというケースで
サイコロ思考を試してみましょう。
最初に自然と思い浮かんだ
解釈以外に、あと5つ、
どのような可能性が
考えられるでしょうか？
１）相手は今、
仕事や学業でとても忙しく、
LINEを見る余裕さえ
ないのかもしれない。
２）体調を崩して
休んでいるのかもしれない。
３）スマホの調子が悪いか、
電池切れで
使えない状態かもしれない。
４）メッセージを見たけれど、
ゆっくり考えて返信したい
と思っているのかもしれない。
５）通知をオフにしていて、
まだメッセージに
気づいていない可能性もある。
これらの解釈を考えるだけで、
最初のネガティブな感情は
少し和らいでいきませんか？
サイコロ思考の目的は、
必ずしも「正しい解釈」を
見つけることではありません。
むしろ、複数の可能性を
思い描くことで、
一つの解釈に固執せず、
思考の柔軟性を
高めることにあります。
サイコロ思考を実践する際の
ポイントは、「良い考え方」を
探そうとしすぎないことです。
役に立たない
と思われる解釈でも構いません。
大切なのは、
とにかく複数の可能性を
思い浮かべてみることです。
サイコロ思考を続けることで、
さまざまな角度から
物事を見られるようになり、
一つの可能性だけに
縛られずにすみます。
すると、
以前よりも視野が広がり、
気分が落ち込むことも
少なくなるでしょう。
====
サイコロ思考がもたらす効果
サイコロ思考は、
単なる気休めではありません。
思考の柔軟性を高めることで、
実際にさまざまな効果が
期待できます。
まず、感情のコントロールが
しやすくなるでしょう。
一つの解釈に縛られず、
複数の可能性を考えることで、
極端な感情に振り回されることが
減るからです。
たとえば、
「友人は私を無視している」
という解釈だけにとらわれていると、
強い怒りや悲しみを
感じやすくなりますが、
「忙しくて返信できないのかもしれない」
という別の解釈を持つことで、
感情は穏やかになっていくでしょう。
次に、
人間関係の改善が期待できます。
相手の行動を
一方的に解釈して反応するのではなく、
さまざまな可能性を
考えられるようになることで、
誤解による対立を減らせます。
「絶対に～に違いない」
という思い込みが減れば、
より健全なコミュニケーションが
できるようになるでしょう。
そして最も大切なのは、
人生の選択肢が広がることです。
「これしかない」
「このやり方が正しい」
という思い込みから解放されることで、
新しい解決策や可能性に
気づけるようになるでしょう。
行き詰まった状況でも、
異なる視点から眺めることで
突破口が見えてくることが
あるのです。
思考の柔軟性は、
創造性や問題解決能力とも
深く関わっています。
新しいアイデアや革新的な解決策は、
既存の枠組みを超えた
柔軟な発想から生まれるものです。
ビジネスの世界でも、
固定観念にとらわれない発想が
成功を導くことは少なくありません。
このように考えると、
柔軟な思考を持つことは、
個人的な場面でも仕事の場面でも、
よりよく生きるための
大切なヒントになるのです。
====
思考の柔軟性を高めるためのステップ
サイコロ思考を実践し、
思考の柔軟性を高めるためには、
いくつかのステップが役立ちます。
まず、自分の思考グセに
気づくことが大切です。
ネガティブな感情に襲われたとき、
一度立ち止まって考えてみましょう。
次のことを
紙に書き出してみると役に立ちます。
（1）実際に何が起きたのか？――
ここでは解釈は一切入れず、
客観的な事実だけを書き出します。
（2）そのとき、
どのような感情を抱いたのか？
（3）どんな解釈をしたから、
その感情が湧いてきたと思われるのか？
まずはこれらを整理してみましょう。
次に、自分が最初にした解釈を
いったん脇に置き、
他にどのような解釈が可能か、
できれば5〜6つの異なる可能性を
考えてみます。
そうすることで、
最初の解釈に縛られずに済み、
心に余裕が生まれて、
気持ちも落ち着くでしょう。
そして、可能であれば、その中から
より建設的で役立つものを選び、
必要に応じて行動に移してみましょう。
たとえば、LINEの返信がない場合、
「何か緊急事態が
起きているのかもしれない」
と考えたなら、
電話をかけてみるのも一つの方法です。
思考の柔軟性を高めることは、
一朝一夕にはできません。
最初は難しく
感じるかもしれませんが、
練習を重ねるうちに
少しずつ身についていくでしょう。
継続することで、
次第に思考が柔らかくなり、
より穏やかな気持ちで
さまざまなことに
対処できるようになるでしょう。
====
まとめ：柔軟な思考が開く新しい世界
この記事では、
私たちの「ものの見方」が
感情や行動に
どのように影響を与えるのか、
そして思考の柔軟性を高めるための
サイコロ思考について紹介しました。
一つの出来事に対して
複数の解釈を考えることで、
固定的な思考パターンから解き放たれ、
より自由な心と人生の選択肢を
手に入れることができるでしょう。
私たちは無意識のうちに、
自分特有の「ものの見方」を持ち、
それによって感情や行動が
左右されています。
しかし、その「ものの見方」は
唯一の解釈ではなく、
数ある解釈の中の一つに過ぎません。
サイコロ思考を通じて
複数の可能性を考える習慣をつけることで、
思考の柔軟性が高まり、
感情のコントロール、人間関係の改善、
そして人生の選択肢の広がりに
つながっていくでしょう。
今日からでも、ネガティブな感情に
襲われそうになったときには、
ぜひサイコロ思考を試してみませんか？
最初は少し
難しく感じるかもしれませんが、
続けていくうちに、
あなたの心はより自由に、
そしてしなやかになっていくでしょう。
思考の柔軟体操を通じて、
一つの「ものの見方」から解放され、
より豊かな人生を歩んでいきましょう！