私たち人間は、
自分の人生に
意味を見いだしたいと考えます。
この記事では、
その思いを満たすうえで
大切な価値について、
心理学者ヴィクトール・フランクルが提唱した
「創造価値」「体験価値」「態度価値」
の三つを軸に、
人生を豊かにするヒントを探っていきます。
これらを理解し実践することで、
より充実した日々を
送ることができるでしょう。
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人生を意味で満たす三つの価値とは
私たちは、人生をできるだけ
意味のあるものにしたい
と願う生きものです。
さまざまな悩みを抱えながらも、
「何のために生きるのか」
「自分の人生の意味はどこにあるのか」
と問い続けることは、
人間の本質的な欲求なのでしょう。
心理学者ヴィクトール・フランクルは、
このような「人生に意味を見いだしたい」
という欲求を「意味への意志」と呼びました。
多くの人が人生に意味を求めながらも、
日々の忙しさに追われる中で、
自分が本当に求めていたものを
見失ってしまうことがあります。
仕事に追われ、
家庭の問題に気を取られ、
ときにはストレスや悩みに
押しつぶされそうになることも
あるでしょう。
そうした中で、
「私の人生はこれでよいのだろうか」と
疑問を抱くことも少なくありません。
そんなとき、
人生に意味を見いだすための
手がかりとなるのが、
フランクルが示した
「人生を意味で満たす三つの価値」
という考え方です。
「創造価値」「体験価値」「態度価値」
という三つの価値は、
自分にとって意味のある人生を築くための
大切なヒントとなるでしょう。
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「意味への意志」とは?
フランクルは、第二次世界大戦中、
ナチス・ドイツの強制収容所で
過酷な生活を送りました。
その体験をもとに執筆した
『夜と霧』の中で、
「どのような状況にあっても、
人は人生に意味を見いだせる可能性がある」
と説いています。
彼は、人間を突き動かす
最も根源的な力として
「意味への意志」という概念を提唱し、
これこそが私たちが生きるうえでの
原動力であると考えました。
「意味への意志」とは、簡単に言えば
「人生の意味を感じながら生きたい」
「自分の存在理由を確かめたい」
という欲求のことです。
たとえば、何かに打ち込んだり、
大切な人と時間を共有したりするとき、
「ああ、これには大きな意味があるな」
と実感すると、
私たちの心は満たされるでしょう。
どんなに小さな喜びでも、
「これがあるから明日もがんばろう」
と思えるのは、
「自分の人生には価値がある」と
感じているからでしょう。
しかし、
この「意味への意志」が満たされないと、
「何のために生きているのかわからない」
という虚無感に襲われることがあります。
そこでフランクルは、
人生に意味を見いだす具体的な方法として、
「三つの価値」を提示しました。
それが
「創造価値」「体験価値」「態度価値」です。
さっそく、それぞれを
詳しく見ていきましょう。
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創造価値とは?
「創造価値」とは、
自分の活動を通じて
新たなものを生み出すことで実現される
価値を指します。
「創る」という行為を通じて、
私たちは世の中に何らかの形を
残すことができます。
仕事でも趣味でも、
自分なりの工夫やオリジナリティを加えて
「成果」と呼べるものが生まれると、
それは人生にとって
大きな意味に感じられるでしょう。
たとえば、会社員であれば、
日々の業務を通じて顧客や社会に貢献し、
価値あるサービスや製品を提供しています。
フランクルは、
こうした生産的な活動こそが
「創造価値」の土台を築くと考えました。
ただし、
働く場は企業だけに限りません。
専業主婦や主夫の方が行う家事や育児も、
かけがえのない創造活動です。
子どもを育てることは
未来を担う人材をはぐくむことであり、
家庭を整えることは
家族の健康や幸福を支える
大切な価値創造の営みでしょう。
大切なのは、自分の行っている活動が
「誰かの役に立つ」
「何らかの新しい価値を生む」
と意識することです。
絵を描く、料理をする、
SNSで情報を発信するなど、
どんな小さなことでも、
そこに創造の喜びがあれば、
それは立派な「創造価値」と言えるでしょう。
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体験価値とは?
二つ目の価値である「体験価値」は、
自分が「この世界から受け取る価値」
と言い換えられます。
創造価値が
自分から外へ働きかけて
「生み出す」ものだとすれば、
体験価値は自然や芸術、
他者との交流などを通じて
「受け取る」ものです。
たとえば、美しい景色を眺めたときに
心が洗われるような感動を覚えたり、
好きなアーティストの音楽に
胸を打たれたりした経験はないでしょうか?
その瞬間、「自分は
こんなにも素晴らしい世界を体験しているのだ」
と実感できれば、
「生きていてよかった!」と思えるでしょう。
そうした感動は、
人生の意味を感じされてくれます。
恋人や家族と過ごす幸せな時間も、
体験価値の一つです。
また、何気ない日常の中にも、
体験価値は潜んでいます。
道端に咲いている綺麗な花に
感激することや、
子どもと一緒に笑顔で過ごす時間も、
かけがえのない体験価値でしょう。
大切なのは、
それらを意識して「受け取る」ことです。
この姿勢が、人生の意味を
さらに豊かにしてくれるでしょう。
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態度価値とは?
「創造価値」や「体験価値」は
分かりやすい概念ですが、
三つ目の「態度価値」は
少し理解しづらいかもしれません。
これは、
どのような状況に置かれても、
そのとき自分がとる態度によって
人生の意味を創り出せる
という考え方です。
人生には順風満帆なときばかりでなく、
厳しい逆境が訪れることもあります。
失業、病気、離別、経済的困窮など、
苦しい局面に直面したとき、
私たちはどのように向き合うべきかを
試されます。
ときには「もう無理だ」と投げやりになり、
諦めそうになることもあるでしょう。
それも人間らしい反応です。
しかし、そこで踏みとどまり、
「今の状況でも、私にできることは何か」と考え、
一歩でも前へ進もうとする姿勢こそが
「態度価値」を生み出します。
たとえ今はうまくいかなくても、
未来を信じて
地道な努力を続けることが、
人生に深い意味をもたらすのです。
フランクル自身、
収容所で家族を失い、
自らも死と隣り合わせの状況に置かれながらも、
「意味」を決して
手放さなかったと言われています。
そこには、
「絶望の真っただ中にあっても、
自分の態度を選び取る自由がある」
という信念がありました。
この考え方こそ、
人間の尊厳を支えるものなのです。
「態度価値」を考える際には、
以前投稿した「大いなる視点」の考え方が
役立つでしょう。
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三つの価値を日常に活かすヒント
これら三つの価値は、
互いに補い合いながら、
私たちの人生をさまざまな角度から
豊かにしてくれるでしょう。
では、具体的にどのような姿勢で
これらの価値を日々の生活に
取り入れればよいのでしょうか?
まず、「創造価値」に関しては、
日常のなかで「自分が生み出せるもの」を
探してみるのがお勧めです。
大がかりなものでなくても
構いません。
たとえば、
食事にひと工夫加えてみること、
自分の特技をSNSで発信してみること、
誰かの力になる行動をとることなど、
小さな創造行為を積み重ねるだけでも、
自分の中に生きる意味を見出せるでしょう。
次に、「体験価値」を高めるには、
意識的にさまざまな刺激を
「受け取る」姿勢を持つことが大切です。
自然や芸術に触れる時間をつくったり、
友人と会って対面で話したり、
映画や音楽をじっくり楽しんだりするなど、
方法はいくらでもあるでしょう。
大切なのは、
「どうせやるなら存分に楽しもう!」
という意識を持つことです。
そうすることで、その体験は
かけがえのないものへと変わるでしょう。
「態度価値」は、
困難に直面したときこそ
意識したいものです。
どんなに苦しい状況でも、
未来をまったく信じられないときでも、
「今の自分にできることは何か」を考え、
それを少しずつでも実践してみること。
そうした行動が、
自分自身の力を再発見するきっかけとなり、
人生の意味を
感じ取ることへとつながるでしょう。
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おわりに
この記事では、
心理学者ヴィクトール・フランクルが提唱した
「創造価値」「体験価値」「態度価値」
の三つの視点を軸に、
人生を豊かにするヒントを探ってきました。
自分の人生に
意味を見いだしたいと願う気持ちは、
私たち人間にとって自然な欲求です。
そして、この三つの価値は、
その願いを満たすための
大切な指針となるでしょう。
「創造価値」は、
自らの活動を通じて
何かを生み出すことで
実現される価値です。
「体験価値」は、自然や芸術、
他者との関わりを通して得られる
感動や学びを指します。
そして、「態度価値」は、
どのような状況に置かれても、
そのとき自分がとる姿勢によって
人生の意味を見いだせるという考え方です。
この三つの価値を意識するだけで、
日常の見え方が
大きく変わってくるでしょう。
まずは、今日できる小さな行動から
始めてみませんか?
ほんの一歩を踏み出すだけで、
昨日とは違う自分に
出会えるかもしれません。
今できることを意識し、
小さな変化を積み重ねていけば、
それがやがて
人生に大きな変化をもたらすでしょう。
もし、
今まさに困難の中にいる方がいれば、
ぜひ自問してみてください。
「この状況の中で、学べることは何か?
どんな意味があるのか?」と。
創造、体験、態度という三つの視点は、
きっとあなたの内に眠る力に
気づかせてくれるでしょう。
そして、
少しずつでも行動を起こすことで、
自分の人生が「意味」という光で
照らされる時が訪れるでしょう。
あなたにとっての「意味ある人生」が、
これからも豊かに
広がっていきますように。
心から願っています。