私は日本で20年以上、
ニュージーランドで30年以上の
生活経験がありますが、
両国での生活を通じて、
日本とニュージーランドの違いを
感じることも多いです。
今回は、
そのうちの一つをお話しします。
それは、日本人は
楽しみ下手な人が多いのではないか、
ということです。
対照的に
ニュージーランドでは
楽しむことの達人が
多いように感じられます。
そこで、なぜそうなのか、
その理由について、
私個人の意見を
述べてみたいと思います。
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苦労や我慢を美徳とする社会風潮
まず、日本人が
楽しむことに対して
消極的になりがちな一つの理由として、
苦労や我慢を美徳とする
社会風潮が挙げられます。
努力や苦労は高く評価される一方で、
楽しむことは良くないこと
とされる傾向があるため、
楽しむことに
罪悪感や後ろめたさを
感じてしまう人も少なくありません。
その結果、無意識のうちに
楽しむことを
避けるようになるのでしょう。
特に昭和生まれの人々には、
この傾向が強く見られます。
私が日本に住んでいた頃、
周囲にはそのような考えを
持つ人々が多く、
私自身もその影響を受け、
楽しむことに対して
あまり積極的になれませんでした。
もし私が日本に住み続けていたら、
その考え方を未だに
持ち続けていたかもしれません。
しかし、他の文化圏での生活を
経験することで、
そのように考えることは
妥当ではないと気づきました。
時代が変わっても
日本社会には未だに
苦労や我慢を美徳とする風潮が
あるように感じます。
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心底望むことをしていないから
日本人が
楽しみ下手な理由の二つ目は、
自分が心底望むことを
していないからだと思います。
心底望むことは、
自分自身の興味や関心に基づいて
行われるものです。
その行動が
楽しいと感じられるから
するのであって、
実際にそれをしているときには
自然とエネルギーが湧き、
活き活きとした気持ちになり、
心から楽しむことができます。
心底望むことをしていると、
自然と幸福感が
溢れてくるものです。
これに対して、
自分の真の欲望に従わない行動とは、
誰かに褒められたり、
認められたりすることが
目的となる場合があります。
このような行動の背景には、
他人から「偉い」と言われたい、
「立派だ」と思われたい
という願望があるのです。
もし
その行動が評価されなければ、
自分はそれを
やりたくないと感じるでしょう。
私の感覚では、
日本人の中には
こうした外的な動機で
行動している人が
少なくないように思えます。
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学歴重視の社会が原因
先に述べた
「心底望むことをしていない」
という理由をさらに発展させると、
学歴重視の社会が
その背景にあると考えられます。
多くの日本人は、
子供の頃に「勉強しなさい」
という指示のもと、
過度な制限を受け、
自分の思うように
遊びを楽しむことができませんでした。
その結果、自由に好きなことを
追求する機会を失い、
やがて自分が本当に
何を望んでいるのかさえ
わからなくなってしまった人もいます。
当時の日本では、
子どもを塾に通わせたり、
家でたくさん勉強させたりすることが
当たり前とされ、これも親が
子供の将来を思ってのことでした。
しかし、
こうした行動の背景には、
社会全体で学歴を重視する風潮が
強く影響していました。
受験戦争が激化する中で、
一流の学校に合格し、
高学歴を得ることが
子供の将来の成功に直結する
と考えられていたのです。
私が子供の頃の昭和時代には、
受験戦争がピークに達し、
高学歴を得ることが
立派で素晴らしいことだ
とされていました。
特に一流大学への進学は
高いステータスの象徴とされ、
多くの親たちは自分の子供にも
そのステータスを手に入れてほしい
と強く望んでいたのです。
こうして「勉強を優先すること」が
当たり前とされる中で、
子どもたちは自分の本当の
欲望や楽しみを追求する機会を
失っていったのです。
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高く評価されることが目的
このような環境では、
子供がよい成績を収めると
親も喜び、褒めてくれるため、
子供は親に褒められたいがために
頑張るようになるでしょう。
子供の頃に
そのような時期が長く続けば、
次第に高く評価されるために
一生懸命努力を続けていくことが
習慣化されてしまいます。
そして気がつけば、
親や周りの人たち、
世間一般が高く評価するものに
力を注ぐことが
普通になってしまうのです。
勉強を頑張ることが
自分の本当に望んでいることの場合も
あるかもしれませんが、実際には、
自分が心底望んでいるわけでは
ないのでしょう。
親や他人から褒められたり、
高く評価されるから、
自分もそれを望んでいる
と錯覚しているのでは
ないでしょうか?
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あるエリートの悩み
かつて、こんな話を
聞いたことがあります。
東大に現役で合格し、
一流とされる会社に就職した
エリートの方がいました。
彼はこれまで、
自分が望むことを
すべて叶えてきた
と信じていました。
東大に入学することも、
一流企業に就職することも、
彼自身が心から望んでいたことであり、
その夢を実現できたのです。
しかし、それにもかかわらず、
彼は幸せを
感じることができませんでした。
誰が見ても、
エリートコースを歩んで
安泰な将来を
約束されたように見える彼ですが、
内心では何かがしっくりこず、
幸せを感じられなかったのです。
それどころか、
漠然としたつまらなさや
正体不明のモヤモヤを感じ、
人生の満足度が低かったそうです。
そんな彼は、ある日、
意外なことに気づきました。
東大に合格し、
一流企業に就職することは、
自分が心底望んでいたことだ
と思っていましたが、
実はそうではなく、
周囲の人々が
それを素晴らしいことだと言うから、
自分もそうだと錯覚していたのです。
つまり、もし誰も
それを立派なことだと称賛しなければ、
彼自身はそれを望んでいなかった
ということです。
彼はおそらく、子供の頃から
親や先生に褒めてもらいたい一心で、
一生懸命に勉強を
頑張ってきたのでしょう。
良い成績を収め、
みんなに「すごい」と称賛されることが、
彼の頑張る原動力に
なっていたのでしょう。
言い換えれば、
勉強すること自体が
楽しかったわけではなく、
勉強することで
周囲から褒め称えられることが
嬉しかったため、
それが彼の勉強の動機に
なっていたのだと思われます。
もし、彼が良い成績を取っても、
親も教師も褒めることがなければ、
彼は勉強を頑張ることも
なかったでしょう。
彼の場合、勉強という行動が、
内なる声ではなく、
外からの刺激や条件に
左右されていたということになります。
つまり、自分の内なる声に
従った行動ではなく、
外から与えられた条件や刺激によって
行動していたのです。
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幸せを感じられない理由
長い間、他人の期待や
社会の基準に従って生きていると、
自分の心の内なる声を
聞くことができなくなり、
本当に自分がやりたいことが
わからなくなってしまうのも
無理はありません。
もし、
自分の心の声に従って
行動していれば、
その行動自体を楽しむことができ、
エネルギーが自然と湧き出し、
活き活きとした感覚を味わい、
幸せな気持ちになれるはずです。
自分の内なる声に従うことで、
自分の人生を自分で選び、
決めて歩んでいるという実感が得られ、
充実感と喜びを
感じやすくなるでしょう。
それに対して、
外部の刺激や条件に
左右された行動をしていると、
その行動がうまくいき、
周囲から注目されているときは
表面的な幸せを感じることができても、
それが途絶えると
幸福感を感じるのは難しくなります。
なぜなら、その行動が
自分が心の底から
望んでいることではなく、
真に重要だと思えるものでも
ないからです。
誰かが「すごいね」
と言ってくれる間は、
優越感に浸り気分も良いでしょうが、
その評価がなくなると、
途端にやる気を失ってしまいます。
他人の意見に左右されて生きると、
本当の意味で自分の人生を
生きることが
できなくなってしまうでしょう。
もしかすると、日本には
このように他人の評価に
依存して生きている人が少なくなく、
それゆえに本当の意味で楽しむことや、
幸せを感じることが
難しいのかもしれません。
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ニュージーランドでは子どもを存分に遊ばせる親が多い
ニュージーランドで
子育てをして感じたのは、
ニュージーランドの親たちは、
子どもに対して
勉強を強制することが少なく、
習い事にも
それほど熱心ではない
ということです。
むしろ、子どもを
自由に遊ばせることを
大切にしているように感じます。
もちろん、例外もあり、
中国系移民の中には
日本の親以上に
子どもの勉強に力を入れる人も
見られますが、一般的には、
子どもが思い切り遊ぶことを
奨励する親が多いと感じました。
その結果、
ニュージーランドの子どもたちは、
自分が本当にやりたいことを
見つけやすくなり、
大人になってからも
自分の望むことに
専念する傾向があります。
そのため、彼らは
自分の楽しみを追求して
幸せを感じやすいのではないか
と考えます。
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おわりに
今回お話しした内容は、
あくまで私が考えることであり、
正しいかどうかはわかりません。
一つの意見として
受け取っていただければ幸いです。
この件に関しては、YouTubeでも
トーク動画を投稿しています。
こちらも合わせてご覧いただければ
嬉しいです。リンクは以下の通りです。
https://youtu.be/mu0Ue8ifZa8?si=AnCJP8t2W9D08M34
また、その他にも定期的に
トーク動画を投稿しています。
日本とニュージーランドの違いで
驚いたこと、
日本の外から日本を眺めて感じたこと、
異文化体験で学んだことなど、
私自身の主観ではありますが、
さまざまなトピックについて語っています。
こちらも
応援いただければ嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
https://www.youtube.com/@midori-in-nz