絆を深めるためのポイント:親密な関係を壊さないために

親密な人間関係を築けることは、
とても幸運なことです。

しかし、
その親密さに甘えすぎると、
大切な関係が
壊れてしまうことも
少なくありません。

では、なぜ
そのようなことが
起きるのでしょうか?

この記事では、
親密な関係を長く保つために
意識しておくべきポイントについて
お話ししたいと思います。

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相手を変える試みは逆効果

親密な関係になればなるほど、
相手に対して
「自分と同じ考え方や
感じ方をしてほしい」
と願うことが増えてきます。

これは決して
珍しいことではありませんが、
その思いが原因で、
かえって関係が
崩れてしまうこともあります。

その理由は、
どんなに親しい相手でも、
考え方や感じ方、価値観は
完全に一致しないからです。

たとえ多くの点で
意見が合ったとしても、
すべての面で
同じ意見を持つことは
ありません。

しかし、多くの人は
親しい相手に対して
「自分と一体化したい」
という気持ちを抱きがちです。

そして、その結果、
相手を自分の思い通りに
変えようとしてしまいます。

たとえば、
相手の誤りを指摘したり、
自分の正当性を強調して、
無理やり相手を変えようと
することがあるのです。

また、
不機嫌な態度や
怒りを示すことで
相手を変えようとすることも
あるでしょう。

一時的には
うまくいくように
見えることもありますが、
長い目で見ると、
相手を変えようとする行為は
関係に悪影響を与えることが
多いです。

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覚えておくべき重要な原則

親密な人間関係を
維持するためには、
いくつかの重要な原則を
心に留めておく必要があります。

その中でも特に大切なのは、
「人は他者によって変えられたくない」
ということです。

誰もが自分の行動や選択を
自分の意思で決めたいと
望んでいます。

そのため、
自分の自由な選択が脅かされたり、
何かを強制されると、
無意識に抵抗するものです。

たとえ、それが自分にとって
良いことであっても、
他人から強制されると
反発したくなるのです。

この現象を心理学では
「心理的リアクタンス」
と呼びます。

ロミオとジュリエットの物語で、
反対されればされるほど
二人の恋愛感情が高まったのも、
心理的リアクタンスの良い例です。

親しい相手と
意見の食い違いがあるとき、
相手を無理に変えようとする試みが
うまくいかないのも、
心理的リアクタンスが原因です。

ただし、上下関係が明確な場合や、
力関係が対等でないときには、
相手を自分の思い通りにさせることが
一時的に成功することもあるでしょう。

でもこの場合、長期的に
良好な関係を維持するのは
難しくなります。

なぜなら、相手が
我慢しているからです。

たとえば、従順な妻を持つ夫が、
妻を自分の思い通りに
動かしている間は、表面的には
夫婦関係がうまくいっているように
見えるかもしれません。

しかし、
長期的には関係が悪化し、
破綻することも多いのです。

同様に、親の期待に
従っている子どもとの関係が
一時的には良好に見えても、
長期的には親子関係が
悪化することも少なくありません。

どちらの場合も、
相手が強制されることを
我慢しているからです。

短期的には
うまくいっているように見えても、
長期的に見れば、
相手を抑えつける関係は
うまくいかないことが多いです。

親密な関係を
長く続けたいと願うなら、
この原則をしっかりと
心に刻んでおくことが大切です。

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正しさを語らず、欲求を伝えたほうがよい

相手を変えることが
できないのなら、
自分が相手に合わせて
我慢するしかない
と思うかもしれません。

しかし、この方法も
長続きはしないでしょう。

なぜなら、
自分自身を抑えて
無理に我慢することで、
自分の内に不満が溜まり
いずれ破綻する可能性が
高いからです。

理想的なのは、
自分の気持ちを大切にしつつ、
相手の気持ちも尊重する姿勢を
持つことです。

お互いの考え方や感じ方が
異なることを受け入れた上で、
双方が満足できる方法を
一緒に探るのが最善の方法です。

そのためには、
相手の意見や考えを否定せず、
しっかりと耳を傾けることが
重要です。

同時に、自分の気持ちや考えも
率直に伝えることが
求められます。

ここで気をつけたいのは、
「正しさ」を主張することを
避けることです。

たとえ相手の行動が
自分にとって間違っている
と感じたとしても、
「あなたは間違っている、
私が正しい」という言い方は
避けましょう。

なぜなら、
何が正しいかは人それぞれであり、
絶対的な正しさというものは
存在しないからです。

「正しさ」を巡る議論は、
対立や戦いを生みやすく、
建設的な結果をもたらすことは
ほとんどありません。

お互いが正しさを主張し合うと、
勝ち負けのゲームになってしまい、
負けた側は
不満を抱えることになるでしょう。

これでは、
良好な人間関係は築けません。

その代わりに、
自分の気持ちや欲求を
率直に伝えることを心がけましょう。

自分の欲求と相手の欲求を
語り合うことができれば、
そこには勝ち負けは生じません。

自分が何を望んでいるのかを
相手に伝え、
相手が何を望んでいるのかを
しっかりと聞くことが大切です。

そして、
双方の欲求を満たすために
どうすればよいかを
一緒に考えていくのです。

そのように会話を進めていけば、
建設的でお互いが納得できる結果に
到達しやすくなるでしょう。

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大学進学をめぐる親子の対話:欲求の伝え方に注意

自分の欲求と
相手の欲求を語り合い、
双方が満足できる方向を
探ることは理想的ですが、
満たすべきではない欲求も
あることを理解しておくことが
重要です。

それは、相手の境界線を越えて
侵入しようとする欲求です。

たとえば、
大学進学をめぐる
親子のケースを考えてみましょう。

成績優秀で
一流大学に合格できるだろう
と期待されている息子を持つ親が、
これまで子どもの教育に
多大な投資をしてきたとします。

親は、子どもの将来のために
大学進学が必要だと信じ、
当然のように
息子を進学させたいと考えています。

しかし、
息子はバンド活動に情熱を注ぎ、
大学には進学せずに
ミュージシャンになりたい
と言い張っています。

この場合、
親が息子の意向を無視して
大学進学を強要しようとすることは、
息子の境界線を越えて
侵入する行為とみなされます。

親としては、子どもが
大学に進学しないことに対して
不安を感じ、子どもの将来を
心配しているのでしょう。

さらに、
成績が良いにもかかわらず
大学に行かないことを
「もったいない」と思う気持ちも
強いのでしょう。

こうした状況で、親は
自分の正しさを
押し付けたくなるかもしれません。

そして、こう言います。
「お母さんはあなたの将来を
考えて言っているのよ。
一流のミュージシャンになれるのは
ごく一握りで、多くの人が
十分な収入を得られないのよ。
ミュージシャンとして生活するのは
大変なのよ」と。

この言葉は、
一見正論に聞こえますが、
実際には親の不安や
「もったいない」という気持ちが
心の中で渦巻いています。

しかし、親は
自分の不安や気持ちを
正直に伝える代わりに、
「あなたのため」という言葉で正当化し、
息子を自分に
従わせようとするのです。

このような状況では、
息子とのコミュニケーションが
困難になる可能性も高いでしょう。

理想的には、
親は自分自身の内面を見つめ、
自分の本音を認めた上で、
正直な気持ちを
息子に伝えるほうがよいでしょう。

「ミュージシャンとして
食べていけるのか、
お母さんは心配なのよ。
せっかく成績も良いのに
もったいないと思ってしまうのよね」と、
親自身の感情を
素直に伝えるのです。

もし息子が「僕は
自分のやりたいことに挑戦したい。
お母さんが心配なのはわかるけど、
僕は自分で責任を取るつもりだから」
と言ったら、それ以上は
息子の意志を尊重し、彼の選択を
受け入れることが賢明です。

無理に息子を
大学に行かせたとしても、
親は一時的に
安心できるかもしれませんが、
長い目で見れば、息子の不満が募り、
親子関係が悪化するリスクも
高まります。

幸せな親子関係を
長期的に維持したいのであれば、
息子の意向を尊重することが、
より良い結果をもたらすでしょう。

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まとめ:親密な関係を維持するために

この記事では、
親密な関係を壊さずに
長期間維持するために、
注意すべきポイントについて
お話ししました。

親しい関係ほど、
相手と自分を一体化させたい
という願いが強くなり、
考え方や感じ方、価値観まで
同じであってほしいと
望むことも珍しくありません。

しかし、現実的には、
どんなに親しい相手でも、
お互いに異なる存在であり、
すべてが一致することは
あり得ません。

人は、何かを強制されると
自然と反発心が生まれます。

そのため、相手を自分の思い通りに
変えようとする試みは、
たとえ一時的に
うまくいったように見えても、
長期的には失敗に終わることが
多いです。

親密な関係を
長続きさせたいと願うなら、
相手と自分が異なる考え方や感じ方、
価値観を持っていることを受け入れ、
それでもお互いが満足できる方向を
見つける努力が必要です。

そのためには、
話し合いの際に「正しさ」
を主張するのではなく、
「自分の気持ちや欲求」に
フォーカスすることが大切です。

相手の気持ちや欲求を真摯に聞き、
自分の気持ちや欲求も
率直に伝えることで、
お互いがハッピーになれる方法を
一緒に考えていきましょう。

異なる考え方を持つ者同士が、
対話を重ね、
どうすればお互いにとって
納得できるかを模索することが、
親密な関係を健全に保つ秘訣です。

もし、今の関係に
少しでも違和感を感じているなら、
今回お話ししたポイントを
意識してみてください。

それだけでも、相手との関係は
改善されていくでしょう。

親密な関係を
健全でより良いものに保ち、
お互いが幸せに暮らせるよう
努めていきましょう!