この記事では、
心の奥底に隠された
好ましくない欲求や感情について
考察します。
これらは無意識のうちに抑圧され、
日常では意識することが
ほとんどありません。
しかし、
時折心の中に浮上してきて、
私たちを苦しめることもあります。
抑圧していた感情や欲求に気づき、
それを受け入れることができれば、
より豊かな人生を
送ることができるでしょう。
これが今回の話の主旨です。
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こんな経験はありませんか?
職場や学校、地域社会で、
さまざまな人々と接する中
「なんかこの人は嫌だな」
と感じることはありませんか?
その人の近くにいると、
理由もなくイライラしたり、
無性に腹立たしくなる
といった経験です。
なぜイライラするのか
はっきりしない場合もありますが、
相手の特性や行動パターンが
自分をイラつかせると
自覚することもあるでしょう。
「あの人の
こんなところが気に食わない」
「こんなことをするあの人は
むかつく!」といった感じです。
こうした場合、
相手の性質や言動が原因で
イライラしていると思いがちです。
そして、もし相手が
その性質を手放してくれたり、
言動を改めてくれれば、
自分はイライラしなくなる
と考えることもあるでしょう。
つまり、問題は「相手にある」
と考えてしまうのです。
しかし、意外にも
本当の問題は相手ではなく、
自分自身の心の中に
隠されていることが多いのです。
いったい
どういうことなのでしょうか?
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抑圧された感情や欲求に振り回される
私たちは皆、「好ましくない」
と思われる感情や欲求を
感じないように、認めないように
抑えつけて生きています。
これらの感情や欲求は
無意識の中に押し込められ、
自覚できなくなることも多いです。
しかし、
それらは消えたわけではなく、
無意識の中でエネルギーとして
残り続けています。
この無意識に抑え込まれた
感情や欲求を
「シャドー(影)」と呼びます。
問題は、無意識の領域から
時折浮かび上がってくる
シャドー化した感情や欲求に
振り回されてしまうことです。
多くの場合、
自分のシャドーを自覚できないため、
無意識にそれに
支配されてしまうことになります。
「なぜか分からないけれど、
あの人を見るとイライラしてしまう」とか、
「何となく気に入らないから、
相手に失礼な態度を取ってしまう」といった
行動を繰り返すのです。
たとえば、「自分は
常に完璧でなければならない」
という価値観を持つ人は、
「完璧でなくてもよい。失敗してもよい」
という欲求を抑圧しています。
この欲求がシャドーとして
無意識に押し込められているため、
他人が失敗を恐れずに
挑戦している姿を見ると、
不快感を覚えます。
「あの人は無責任で自分勝手だ。
ちゃんとできないのに
色々なことに挑戦するなんて!
もっと慎重に行動すべきだ」
と思ってしまいます。
「完璧でなくてもよい。失敗してもよい」
という自分自身の欲求を
「好ましくない」と思っているため、
その欲求が込み上げてくるのを
無意識に抑えてしまっています。
しかし、
そのことに気づいていないため、
自分が抑圧している感情や欲求を
他人の中に見出すと、
その相手に対して嫌悪感が
湧いてくるのです。
これをシャドーの「投影」と呼びます。
このように、
自分の中で抑圧している感情や欲求を
他人を通して見せられると、
不快感を覚えるだけでなく、
その相手に対して
攻撃的になることも少なくありません。
たとえば、周囲の人が
失敗を恐れずに挑戦している姿を見て、
「うまくできないのに、
どんどん挑戦するのはみっともない!」
と相手の失敗を笑ったり、
「もっと慎重にやれ」と上から目線で
アドバイスをすることもあります。
相手に対して過剰に反応したり、
腹を立てたりするのは、
まさにシャドーに振り回されている状態
と言ってもよいでしょう。
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シャドーは必ずしも悪いものではない
無意識の領域から浮上してきて、
人を怒らせたり
望ましくない行動を
引き起こさせたりするシャドーは、
悪者として捉えられるかもしれません。
しかし、
必ずしもそうではありません。
自分自身のシャドーに気づき、
その欲求や感情を受け入れて、
建設的に満たすことができれば、
シャドーに振り回されることは
なくなりますし、人間的にも
成熟することができます。
私たち人間は誰もが
対極に位置する性質を持っています。
たとえば、明るい自分と暗い自分、
優しい自分と意地悪な自分、
勤勉な自分と怠け者の自分、
即断即決できる自分と
優柔不断な自分などです。
これらの対極にある性質の
一方を望ましいとし、
もう一方を望ましくないと
抑圧することが多いです。
そのため、抑圧された性質は
無意識のうちに隠され、
自分の一部とは認識されていません。
しかし、自覚はなくても、
それらは自分の一部なのです。
人間的に成熟するためには、
自分の中の矛盾に気づき、
対極にある性質を
統合していくことが求められます。
シャドーを統合することで、
人間としての深みが増し、
より豊かな人格が形成されるのです。
このプロセスこそが、
自己受容の深い段階
と言えるでしょう。
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ミッドライフクライシスの意義
若い頃にある価値観に従って
順調に生きてきた人でも、
人生の中間地点で
その価値観に行き詰まりを
感じることがあります。
これは「ミッドライフクライシス」
として知られていますが、これを機に、
これまでの価値観とは異なるものに気づき、
それを受け入れることができれば、
ミッドライフクライシスを乗り越え、
人生をより豊かにすることも可能です。
たとえば、「常に完璧にこなして成果を上げ、
他人に認められたい」と考え、
その価値観で生きてきた人がいます。
若い頃にはこの考え方で
多くの成功を収めてきました。
しかし、人生の中盤に差し掛かると、
その一面的な価値観だけでは
行き詰まりを感じることがあります。
仕事は順調でも、
家庭内で深刻な問題が発生したり、
人間関係のトラブルに
次々と見舞われることもあるのです。
このような状況に直面すると、
それを災難と
捉えるかもしれません。
しかし、長期的な視点で見ると、
この状況を克服した先には、
より良い未来が
待っていることも多いです。
この危機的状況は単なる危機ではなく、
新たな成長のチャンスだからです。
これまでの価値観だけでは
対応しきれない場面が増えたときには、
そのことを素直に認めたほうが
よいでしょう。
「その価値観に沿って、
よくここまで頑張ってきた」
と自分を労うと同時に、
これまで抑え込んできた
感情や欲求に気づき、
それを受け入れることができれば、
この危機を新たなチャンスに
変えることもできるのです。
若い頃に
完璧主義・成果主義一筋で
生きてきた人でも、
「失敗してもいい」
「自分の弱さを認めよう」
と思えるようになると、
他人の苦しみにも共感しやすくなります。
すると、周囲の人々や
家庭内の人々に対しても
完璧を求めることがなくなり、
寛容に接することができるでしょう。
そのおかげで結果的に
人間関係も改善されるでしょう。
良好な人間関係を築くことは、
健全に幸せに生きるためには
不可欠です。
人間関係のトラブルから
解放されるだけでも、
人生は大きく変わるものです。
これまでの完璧への執着を手放し、
新たな価値観を統合することで、
より豊かな人生を送ることが
可能になるでしょう。
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両極を包み込むことの重要性
幸せで
充実した人生を送るためには、
一見望ましいことだけに
固執するのではなく、
望ましくないと感じることも受け入れ、
両方を統合することが鍵となります。
現代社会では
ポジティブ思考が
高く評価される傾向にありますが、
ポジティブだけでは
本当の意味でベストとは言えません。
理想的な状態は、
ポジティブとネガティブ、
プラスとマイナス、陰と陽、
善と悪など、
両極の要素を統合することです。
相反するものを統合するためには、
これまで抑圧してきた
感情や欲求に気づき、
それらを受容することが大切です。
シャドーの存在に気づき、
それを認めて、
建設的に満たしてあげることで、
人間として成長し、
より自分らしい自分に
なることができるのです。
たとえば、「完璧であること」
に固執してきた人は、
「完璧でないこと」も
自分の一部として認め、
受け入れることが大切です。
そうすることでバランスが取れ、
人間的にも厚みが
増してゆくでしょう。
つまり、「完璧であること」と
「完璧でないこと」の両方を
包み込んで受け入れることが、
豊かな人生への道なのです。
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まとめ:より豊かに幸せに生きるために
この記事では、
心の奥底に押し込められた
「好まない感情や欲求」
に焦点を当て、
その影響について探りました。
無意識のうちに抑圧されている
これらの感情や欲求が、
私たちの行動や感情に
どのように影響を与えるかを
考察しました。
他人に対する
嫌悪感やイライラの原因は、
自分自身の心の中に隠された
感情や欲求が引き起こしていることが
少なくありません。
これらの抑圧された感情や欲求は
「シャドー」と呼ばれ、無意識に
私たちを振り回し、
望ましくない行動を
引き起こす原因にもなります。
しかし、シャドーは
必ずしも悪いものではありません。
自分の中にある
矛盾した性質を統合することで、
人間的に成熟し、
より豊かな人生を
送ることが可能になるからです。
シャドーの存在に気づき、
それを受け入れることが、
深い自己受容のプロセスなのです。
また、ミッドライフクライシス
の意義についても触れました。
この危機的状況を乗り越えるためには、
これまでの価値観だけでなく、
望ましくないものとして
抑え込んできた考え方を
受け入れることが重要です。
それによって、より豊かに
生きることができるでしょう。
最後に、両極を包み込んで
統合することの重要性を強調しました。
ポジティブとネガティブ、善と悪など、
相反するものを受け入れ、統合することで、
私たちはよりバランスの取れた、
充実した人生を送ることが
可能になります。
他人に対して無性に腹が立ったり、
イライラすることがあったなら、
それは自分自身の心の奥底に
抑え込んだ感情や欲求に
気づくチャンスかもしれません。
そのチャンスを上手に活用し、
これまで抑えてきたものを
受け入れることで、より成熟し、
豊かな人生を歩んでいきましょう!