夫婦、恋人、カップルなど、
親密な二者の間で
あたたかな関係を長期間にわたって
維持している人たちには
共通点があります。
今回は、この共通点が何であるか、
そしてなぜそれが
良好な関係性の維持に
役立つのかについてお話しします。
親密な人との関係を
あたたかなものに変えたい
と望む方にとって、
参考になる内容です。
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悲しいとき、辛いときには共感し合える仲
では、どのような共通点が
あるのでしょうか?
それは次の二つの場面で、お互いが
共感し合える仲であることです。
まず一つ目は、
どちらかが辛かったり、
悲しかったり、
がっかりしているときに、
「それはつらいね」「悲しいよね」
「そうだよね、がっかりするよね」
と相手に共感して
寄り添うことができることです。
たとえば、次のような
夫婦の会話を想像してください。
妻が「今朝、大きな荷物を
いくつも持って
重たそうにしていた女性が
バス停でバスを待っていたから、
『バスが来るまで、
一つ荷物をお持ちしましょうか?』
って声をかけたのよ。
でも、親切に言ったのに
嫌な顔でにらまれちゃった」
と夫にその日の出来事を
話したとしましょう。
すると夫が
「君は優しい気持ちで声をかけたのに、
そんな反応されると
悲しい気持ちになるよね」と返してあげたら、
妻は「自分の悲しい気持ちを
わかってもらえた」と感じて、
悲しい気持ちも癒されるでしょう。
それとは反対に、
「知らない人から
いきなりそんな親切をされても、
相手も戸惑ってしまうよ」と返されたら
どうでしょうか?
おそらく
「ああ、夫には
話さなかったらよかった」
と思うことでしょう。
何か良くないことが起きて
ネガティブな感情に襲われたときに、
相手から共感を示してもらえれば、
心は癒えて元気を取り戻せます。
自分の辛さを
相手に理解してもらえたと感じれば、
相手に対しても安心感、信頼感、
親近感、感謝の気持ちが湧いてきます。
何かあったときに
お互いの感情に寄り添って、
お互いを癒し合える関係は、
長い間、あたたかで良好な関係性を
維持しやすいのです。
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一緒に喜べる仲
また、二人のうちどちらかが
ちょっとした嬉しいことや
楽しいことを経験したときに、
「それは良かったね」
「わ~、楽しかったね、それは!」
と一緒になって喜べる関係は、
良好な関係を長続きさせやすいです。
たとえば、カップルの間で
次のような会話がありました。
「徹夜でレポートを書いていたけれど
仕上がらなかったんだ。でも、
教授があさってまで
期限を延ばしてくれた! 本当に助かった!」
と彼が言ったとき、
「そりゃラッキーだね。良かったね」
と一緒に喜んであげれば、この二人は
あたたかな関係を維持しやすいです。
反対に、「レポートの提出があるときには、
ギリギリじゃなくて
ちゃんと余裕を持ってやらないと
ダメじゃない」なんて少し説教じみたことを
彼女が言ってしまえば、相手はあまり
良い気持ちにはならないでしょう。
一緒に喜ぶときに大切なポイントは、
感情が伴っていることです。
相手の嬉しいことや
楽しいことに対して、
「良かったじゃん」と
あっさりした反応をする人もいますが、
これでは感情が伴っていないため、
あまり効果はありません。
大切なのは言葉そのものではなく、
どんな表情で、どんな仕草で、
どのような感じで言っているかという
ノンバーバルコミュニケーションの部分です。
お互いに心から
喜びや楽しみを分かち合える仲が、
あたたかな関係性を長続きさせるのに
役立つのです。
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お互いのインナーチャイルドに寄り添うことがポイント
このように、悲しいことや
辛いことがあったときには
「つらかったね」「悲しかったね」
と共感してもらい、
嬉しいことや楽しいことがあったときには
一緒に喜んでもらえる関係であると、
あたたかな関係を
長期間築きやすくなります。
お互いにこれができるということは、
お互いのインナーチャイルドに
寄り添うことができることを意味します。
そして、これこそが
重要なポイントなのです。
インナーチャイルドとは、
「感情を感じる自分」と表現できます。
誰もが心の中に
小さな子どもを抱き続けています。
イメージとしては
5~6歳くらいの幼い子どもを
想像するとよいでしょう。
その子が起きる出来事に対して、
さまざまな感情を抱きます。
何か悲しいことがあったときには、
心の中のインナーチャイルドが
「悲しいよ」と感じています。
嬉しいときには、
心の中のインナーチャイルドが
「嬉しいよ」とはしゃいでいます。
そして、がっかりしたときには、
心の中のインナーチャイルドは
がっかり感を味わっているのです。
相手が辛いとき、
相手の中のインナーチャイルドが
「つらいよ」と訴えています。
それに対して「つらかったね」
と共感してあげると、
相手のインナーチャイルドは
癒されるでしょう。
嬉しい経験や楽しい経験も同様です。
「良かったね。本当に楽しかったね」
と一緒に喜んであげると、
相手のインナーチャイルドも喜ぶのです。
悲しいときには一緒に悲しんでもらい、
嬉しいときには一緒に喜んでもらい、
インナーチャイルドが
どんどん満たされてゆくでしょう。
このような関係の二人は心が通じ合い、
情緒的な交流ができ、お互いを癒し合い、
一緒に喜びを分かち合うことが
可能になります。
これにより、
いつまでも良好な関係を
維持しやすくなるのです。
反対に、相手が辛いときに
共感を示さなければ、
心の中の子ども心に基づいた会話が
なされなくなります。
すると、この人と話しても
理解してもらえないし、
盛り上がらないと感じるようになり、
悲しみや喜びを
相手に話さなくなるでしょう。
そうなれば、二人の関係も
冷え込んでいくことも
珍しくありません。
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あたたかな関係を望む人が試すべきこと
ここまでお話しすれば、
今の関係が冷めていて、
それをあたたかなものに変えたい
と望む場合に、
どうすればよいかは明らかです。
それは、相手が辛いとき、悲しいとき、
がっかりしたときには、
「つらいよね」「悲しいよね」
「がっかりだよね」と共感を示して
相手に寄り添うことです。
また、相手が喜んでいるときや
楽しいときにも、
一緒になって喜ぶことです。
前述した通り、ここでのポイントは
感情がこもっていることです。
言葉だけで感情が伴わないと
効果はないでしょう。
重要なのは、相手の気持ちに
感情移入して共感することです。
ただ、自分はそのようにしているのに、
相手は自分に対して
同じように接してくれない
という人もいるかもしれません。
そのような場合でも、
まずは一方的でもよいので、
自分が積極的にそのようにすることです。
おそらく3~4カ月くらいは
時間がかかると思ったほうがよいでしょう。
機会を見つけては、こちらから
一方的にやり続けることが大切です。
また、相手が悲しい、辛い、楽しい、
嬉しいといった感情を
表さない場合もあるかもしれません。
そのような場合には、
こちらで機会を
作ってあげることもできます。
たとえば、「最近、
ちょっと疲れている様子だけど、
何かストレスになっていることがある?」
などと聞いてあげます。
また、「最近、よかったことは何かある?」
とこちらから聞き出してみるのもよいでしょう。
辛い話が返ってきたときには、
相手に寄り添って共感します。
そして、良い話が返ってきたら、
一緒になって喜んであげます。
なぜ一方的でも、自分の方から
やる必要があるのでしょうか?
それは、相手に
そのようなコミュニケーション方法に
慣れてもらうためです。
相手がそのようにしてくれないのは、
そのようなコミュニケーション方法を
知らないからです。
そのため、まずはこちらから
与えてあげることが必要です。
こちらから提供して、相手に十分
共感される体験を味わってもらいます。
そして、これをしばらく続けると、
相手も次第にそれに慣れて、
相手からも同じような対応が
返ってくるようになるでしょう。
もし、3~4カ月一方的にやり続けて、
相手から期待した反応が
得られない場合には、
具体的なリクエストをしてもよいでしょう。
たとえば、
「今日はとても辛いことがあったの。
話を聞いてほしいけど、
アドバイスはしないでね。
ただ『つらかったね』と言ってほしいの」
と具体的にリクエストしてから話すのです。
これを繰り返せば、
相手も少しずつ慣れて、徐々に
お互いを癒し合える仲になれるでしょう。
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まとめ:心通じ合うあたたかな関係を築くために
今回は、夫婦、恋人、カップル、
また親密な二者の間で
あたたかな関係を
長期にわたって維持している人たちの
共通点についてお話ししました。
その共通点は、次の二つの場面において
お互いが共感し合える仲であることです。
一つ目は、相手が辛かったり、
悲しかったり、がっかりしたときに、
相手に寄り添いその感情に共感できることです。
二つ目は、相手が
ちょっとした喜びや楽しみを
経験しているときに、
相手と一緒に喜んであげることです。
この際、言葉だけではなく
感情が伴っていることが重要です。
なぜこの二つが大切なのかと言えば、
これができている二者間は、必要なときに
「お互いのインナーチャイルドに
寄り添い合えている」からです。
それにより、悲しみや辛さ、
楽しみや喜びを分かち合い、
心が通じているのです。
あたたかな関係を長期間維持するには、
この心の通い合いがポイントなのです。
もし、今の関係が冷え込んでおり、
あたたかな関係に変えたいと望む場合には、
これをヒントに
行動を起こすとよいでしょう。
まずは自分の方から相手に
そのような姿勢で接してあげることです。
相手がその姿勢に慣れると、
相手からも同じように
接してもらえるようになるでしょう。
相手がそのように振舞ってくれなくても、
まずは自分から
相手に提供することが大切です。
3~4カ月くらいは
自分からやり続けていれば、ある日、
相手からも同じような対応が
返ってくることも珍しくありません。
ならない場合には、
具体的なリクエストをしてもよいでしょう。
ただし、このやり方が通用しない相手も
いることを認識することが大切です。
それは、相手がASDの場合です。
ASDの人は悪気はありませんが、
脳の構造上
他者に共感することが困難です。
その場合は、
このアプローチは有効ではありませんが、
一般的には広く使えるものだと思います。
相手とのあたたかな関係を
維持したいと望んでいる方に、
参考になれば幸いです。