心の奥に潜む思い込みが人生を形作る

心の奥底で
無意識に抱いている
思い込みや信じ込みに
焦点を当ててお話しします。

自分の心に潜んでいる
思い込みや信じ込みは、
普段意識することはありませんが、
それが私たちの人生に
大きな影響を及ぼすからです。

良い影響の場合は望ましいですが、
悪い影響の場合は、そのために
不幸な人生を送ることにも
なり得ます。

そのため、
十分注意が必要です。

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私たちの人生を大きく左右するスキーマって何?

私たちは日々、
さまざまな出来事や
人々との関わりの中で
生活しています。

何かが起こったとき、
私たちの反応や感じ方の多くは、
普段は意識していない「スキーマ」に
大きく影響を受けています。

スキーマとは、
無意識のうちに形成される
思い込みや信じ込みのことです。

ほとんどの場合、
私たちは自覚していませんが、
スキーマは私たちの物の見方や解釈に
強い影響を及ぼします。

スキーマに基づく解釈から感情が生まれ、
それが人の反応や行動を促します。

さらに、その行動が
私たちがどのような人生を歩むかを
決定するのです。

つまり、
自覚せずに持つスキーマが
人生を左右する
と言っても過言ではありません。

スキーマには、
幸せな人生を実現するのに
役立つものもあれば、
それを妨げるものもあります。

幸せな人生を実現するスキーマは
そのままにしておくとよいでしょうが、
それを妨げるスキーマについては
見直すほうが望ましいでしょう。

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能力を活かせないAさんの事例から学ぶ

例を通じて、スキーマが
どのように人生に影響を与えるかを
見ていきましょう。

Aさんは
中堅企業に勤める社員です。

頭が良くて優秀ですが、
職場での人間関係に悩み、
持っている能力を
うまく活かせていません。

Aさんは上司からのアドバイスを、
自分に対する嫌がらせと感じてしまい、
素直に受け入れることができません。

表面上は
聞いているかのように振舞いますが、
内心では上司への不満と不信感を
抱いています。

この感情は、
非言語コミュニケーションを通じて
上司に伝わり、
上司との信頼関係の構築も
困難になっているのです。

また、Aさんは
同僚たちとのコミュニケーションも
スムーズにいきません。

自分の意見を言ったとき、
別の意見を言われれば、
それを過度に
自分への否定と捉えがちで、
その後はその人を
避けるような態度をとります。

その結果、同僚たちとの間にも
微妙な距離感が
生まれてしまうのです。

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Aさんのスキーマとその影響

Aさんは「自分は評価されない」
「自分は拒絶される」
というスキーマを持っていました。

このスキーマの形成には、
彼女の学生時代の経験が
大きく関わっています。

中学生のとき、Aさんは
学校の文化祭で舞台に立ち、
その活動を通して
クラスメートとの絆を深めることを
期待していました。

しかし、彼女が提案した
演出アイデアが何度も却下され、
最終的には彼女の役割は
小さくなりました。

この経験から、
Aさんは強い失望を感じて、
「自分の意見や能力は評価されない」
という思い込みが強まったのです。

また、彼女の家庭環境も
スキーマの形成に寄与しています。

Aさんの両親は非常に厳しく、
彼女の成績や活動に対して
高い期待を持っていました。

Aさんがどれだけ努力しても、
両親の期待に応えることは少なく、
努力が認められないことも
多かったです。

これが、
「どれだけ頑張っても認められない」
という感覚を強めました。

これらの学校での出来事や
家庭環境が組み合わさり、
Aさんは「自分は評価されない人間」
「自分は拒絶される」という
根深いスキーマを持っています。

これが大人になってからの
職場での人間関係にも影響を及ぼし、
人間関係がうまく築けず、
仕事にも悪影響を与えているのです。

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スキーマが生む職場での問題

このような背景から、Aさんは
自身のスキーマに
強く支配されるようになりました。

たとえば、チームミーティングで
新しいプロジェクトを提案する際に、
「どうせ却下される」という思い込みが強く、
彼女の提案は消極的で
自信がないものになりがちです。

どんなに素晴らしいアイデアでも、
自信なさげに小さな声で述べるため、
周囲はなかなか
その価値を認めてくれません。

これにより、
Aさんはさらに傷つき、
自信を失ってしまいます。

また、Aさんは
フィードバックを受けることにも
非常に敏感です。

上司や同僚からの
建設的な助言であっても、
それを個人的な批判と捉えがちで、
不必要に防御的な態度を
とってしまいます。

このような反応は、
同僚とのコミュニケーションを困難にし、
しばしば誤解や摩擦を引き起こします。

さらに、Aさんは、
他人の成功を
自分の失敗と捉える傾向があります。

同僚が表彰されたり、
昇進したりすると、
「自分は評価されていない」と感じ、
自分には価値がないと思い、
落ち込むのです。

このような感情は、
職場での孤立感を深め、
チーム内での彼女のポジションを
さらに困難なものにしています。

これらの問題は、Aさんが持つ
「自分は評価されない」
「自分は拒絶される」
というスキーマに根ざしており、
職場での行動や対人関係に悪影響を与え、
結果的にAさんを
生きづらくさせているのです。

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変化のきっかけと成長

Aさんが変わり始めたのは、
ある心理学のセミナーに
参加したことがきっかけでした。

セミナーで
スキーマについて学んだAさんは、
自分の思考や感じ方の背後にある
深い信じ込みに
気づくことができました。

そして、その気づきが
変化をもたらす
一歩となったのです。

Aさんは子ども時代を振り返り、
「自分は評価されない」
「自分は拒絶される」
という思い込みに至った背景を
探りました。

そして、家庭環境や親の姿勢、
学校での出来事が原因だった
と理解することができました。

このような背景があれば、
そのような思い込みを持つのも
無理はないでしょう。

でも、「自分は評価されない」
「自分は拒絶される」
という思い込みは
正しいことではありません。

間違った思い込みにより、
自分の能力を活かせず、
良好な人間関係を築く妨げにも
なっていたのです。

Aさんはこのことを
認識することができました。

そして、生きづらさから
解放されることを願い、
スキーマを緩める活動を
始めました。

具体的には、
提案があるときには、
意識して堂々と話すよう
努めました。

また、上司からの助言を
批判と受け取るのではなく、
自分を改善するための
建設的な助言と
思うようにしました。

この姿勢で
仕事に臨むようになってから、
上司や同僚との関係も徐々に改善され、
Aさんの職場での評価も
向上したのです。

結果として、
Aさんの気持ちもポジティブになり、
前向きな姿勢で
活き活きと
働けるようになりました。

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スキーマ緩和のための実践的アプローチ

Aさんは、
自分の心の中に潜むスキーマに気づき、
その形成背景を探り、
実際にはそのスキーマが
誤っていることを認識しました。

それに縛られていた自分を
解放するために
小さな行動を通じて、
Aさんはスキーマを緩めることが
できたのです。

そのおかげで、
より良い人間関係を築き、
自身の能力を活かす方向に
進み始めました。

スキーマを緩めるためには、
まずスキーマの存在に
気づくことが重要です。

そして、
そのスキーマが形成された
背景を探ります。

背景を理解すると、
スキーマが形成されたのは
それなりの事情があったため、
仕方ないことだった
と受け入れられるでしょう。

ときには、子供の頃に
自分を守るために
スキーマが働いてくれることも
あるのです。

そう考えると、
スキーマを悪者扱いしなくても
よいでしょう。

「そういうことだったのね」
と自分を労ってあげることが大切です。

その上で、スキーマを緩める方向へ
少しずつ進んでみましょう。

スキーマを
いきなり取り除こうとするのは
あまり現実的ではありません。

しかし、徐々に緩めていくことは
十分可能です。

具体的にやるべきことは、
そのスキーマが必ずしも
正しいわけではない
と証明するような行動を
繰り返し行うことです。

たとえば、Aさんのケースでは
意見を堂々と述べる練習をしたり、
上司のフィードバックを
建設的な助言として
受け入れるよう努めました。

そうすることで、Aさんは
堂々と意見を述べれば、
自分の考えを
聞いてもらえる体験ができ、
その体験により、
徐々に自信を取り戻せたのです。

Aさんの新たな姿勢により、
自分が受け入れられる体験を通して、
スキーマが正しくなかった
と体感できます。

何度もそのような体験をすれば、
以前は自分を縛り付けていた
スキーマからも
解放されてゆくのです。

最初は自分が無理なくできる
簡単なことから挑戦して、
徐々にハードルを高めていくと
よいでしょう。

焦らずに、自分のペースで
そのスキーマが必ずしも
正しいわけではない
と証明するような行動を
繰り返してみましょう。

それが
スキーマを緩める秘訣です。

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まとめ:スキーマを見直す重要性

Aさんの例は、
私たちが持つスキーマが
どのようにして形成され、
私たちの人生に
どのような影響を与えるかを
教えてくれます。

スキーマを手放すことは
容易ではありませんが、
不可能でもありません。

自分を生きづらくしている
スキーマを手放すチャレンジは、
人生において価値ある挑戦と
なるでしょう。

自分の心の奥底に潜む
スキーマに気づき、
それを克服しようとすることは、
思考パターンや感情の発生源を明らかにし、
成長への旅路を始める
きっかけになります。

これは、より自由で
満たされた生活を手に入れる
第一歩ともなるのです。

Aさんのように、
自分のスキーマに気づき、それに挑み、
積極的に行動することで、
過去の自分を乗り越え、
新たな可能性へと進むことが
可能となります。

もし生きづらさを感じているなら、
自分がどのようなスキーマを
持っているのか
探ってみるとよいでしょう。

そして、そのスキーマが
自分の物の捉え方や解釈、感情、行動に
どのような影響を与えているかを
分析することが大切です。

スキーマが
自分を生きづらくしている
と気づいたら、その背景を理解し、
それが適切な考え方ではなかった
と気づくことが重要です。

その後、
スキーマから解放されるための
小さな行動を積み重ねていくことが
望ましいです。

自分の内面と向き合うことは
簡単ではありませんが、
その努力はあなたの未来を
変える力となるでしょう。