今回取り上げるテーマは
アドバイスに関するものです。
特に、上の立場にいる人が
部下や後輩に対して行う
アドバイスにスポットを当てて、
話しを進めていきたいと思います。
上の人が
良かれと思ってしたアドバイスが、
受け取る側にとって役に立たず、
ときには望ましくない結果を
招く可能性もあるからです。
不適切なアドバイスがもたらす
負の影響について、
一緒に深掘りしていきましょう。
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親切心のアドバイスが人間関係の亀裂を生む?
日本は古来より、
上下関係を重んじる文化が
根付いています。
年上の人は、
豊富な経験を持つ先輩として、
後輩たちから敬意を払われ、
しばしばアドバイスを行う場面も
あるでしょう。
「私はこの方法で成果を上げた!」とか、
「こんな手法で成功を収めた!」
といった経験を持つ先輩は、
自分のやり方が最善だ
と信じているかもしれません。
そして、自分より立場が下の人たちに、
その成功のノウハウを伝えたくなるのは、
彼らの成長を願ってのことでしょう。
もちろん、アドバイスを受ける側が
先輩の助言に納得し、
それに従いたいと思えば、
何の問題もありません。
しかし、全てのケースで
アドバイスを受け入れたい
と思うわけではないでしょう。
特に、自分に合わない
と感じた場合などです。
そんなとき、
先輩が自己の見解を強く主張すると、
後輩にとっては
重荷になる恐れがあります。
親切心から出たアドバイスであっても、
結果的には後輩へのプレッシャーとなり、
ストレスの原因になってしまうことも
少なくないのです。
これが原因で、
先輩と後輩の間にわだかまりが生じ、
人間関係に亀裂が生じる可能性も
あるでしょう。
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正解は一つではない!
どれほど有益なアドバイスであっても、
先輩が後輩に自身の見解を
強要することは控えるべきです。
その理由は、特定の方法で
成功を収めた先輩にとっては、
そのアプローチが最適と
思えるかもしれませんが、
同じ手法が後輩にとっても
有効である保証はないからです。
人間は多種多様であり、
全員に適用可能な
唯一無二の最良の方法というものは
存在しません。
私たち一人ひとりは
ユニークな存在であり、
性別、年齢、育成環境、
これまでの人生経験、受けた教育など、
さまざまな面で異なります。
また、能力や性格、特技や苦手、
適性、考え方や価値観なども
千差万別です。
したがって、自分にとって
ベストと感じられる方法が、
他人にとっても同様に
最適であるとは言えません。
「このやり方でうまくいった」
という自身の経験があったとしても、
他人が同じ方法で
同じように成功するとは
限らないのです。
このことを理解し、
受け入れることが大切です。
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不適切なアドバイスは共依存の関係を生むリスクがある
先輩が正しいと考えることを、
後輩が乗り気でないのに強くすすめると、
望ましくない結果を招くことがあります。
後輩は自分なりの方法で
進めようと考えているかもしれませんが、
その方法は先輩から見れば
誤りであることもあります。
そのため、先輩は
後輩が考えた方法で進めれば、
うまくいかないのではないかと
懸念するかもしれません。
そこで、
「その方法は良くないよ、
こうするべきだよ」と後輩のためを思い、
注意を促すこともあるでしょう。
この先輩の行為は善意からのものであり、
決して悪意があるわけではありません。
しかしながら、この種の親切心が
長期的に見れば、後輩にとって
有害な影響を及ぼす可能性もあります。
なぜなら、後輩は
自分自身で考え試みる機会を失い、
それによって得られる
貴重な試行錯誤の経験を
逃してしまうからです。
このような状況は、
後輩の自立の機会を
奪うことを意味します。
細かな指導により、
後輩が自分で
物事を考えるチャンスが減少し、
結果的に先輩への依存度が
高まることになるでしょう。
この状態は、
後輩の自立を阻害するだけでなく、
先輩にとっても
大きな負担になり得るのです。
先輩が後輩の力になるのは
喜ばしいことかもしれませんが、
それが先輩の自己満足に終わってしまうと、
先輩は自分の喜びのために、
後輩に依存してしまう可能性があります。
同時に、
後輩も先輩からの支援を当然と考え、
共依存の関係が生まれるでしょう。
残念ながら、このような関係は
健全なものとは言えません。
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失敗は学びの機会になるもの
後輩が先輩のアドバイスを取り入れずに
独自の方法で進め、
結果として失敗に終わることが
あるかもしれません。
そのような場面を目の当りにすると、
「だから言ったでしょう!
僕の方法に従っていれば、
こんなことにはならなかったのに」
と後輩を非難したくなるかもしれません。
そう思うのも無理はありませんが、
そうした反応は
好ましいものとは言えません。
たとえ失敗したとしても、
その経験は後輩にとって
貴重な学びのチャンスとなるからです。
後輩はその失敗を通じて
「この方法ではうまくいかない」と学び、
その教訓を今後の行動に
生かすことができるのです。
私たちは失敗から学び、
それを教訓として、
さらなる成長の糧にするものです。
大切な人が
失敗や間違いを犯さないように、
先回りして良かれと思うことを
代わりにやってあげる場合もあるでしょう。
このような介入は
表面的には親切に映りますが、
実際にはあまり望ましい結果を
もたらすことはありません。
それは、相手から
貴重な学びの機会を奪うことに他ならず、
成長や自立の妨げになるからです。
結果として、他人の支援なしでは
生きてゆけない人を
育ててしまうでしょう。
長期的に見れば、
これは本人にとっても
大きな障害となるのです。
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時代が変わればやり方も変わる
時代が進むにつれ、技術が進化し、
さまざまな作業手法も
変化していきます。
上司や先輩の時代と、
部下や後輩の時代では、
同じタスクをこなす方法が
異なることも珍しくありません。
かつて有効だった手法が、
新しい世代には
古臭く感じられることもあるでしょう。
このような変化を理解し、
受け入れることは、
上の立場の人にとって大切です。
たとえば、情報検索や学習方法において、
従来は図書館での調査や
紙の辞書の利用が一般的でしたが、
今日ではインターネットを用いた
検索やオンライン教育プラットフォームが
主流となっています。
コミュニケーションの手段も、
従来の手紙や電話から、
電子メールやSNSへと移行しています。
職場における変化も同様で、
プロジェクト管理における
紙ベースの文書や手書きのスケジュール表が、
オンラインのプロジェクト管理ツールに
取って代わられています。
教育分野では、従来の対面授業に加えて
オンライン学習の機会が増え、
学習者は時間や場所に縛られずに
自分のペースで学ぶことが
可能になっています。
特に最近では、オンライン教育の役割が
一層重要視されています。
このように、技術の進化は
私たちの生活や仕事のやり方に
大きな影響を与えています。
したがって、
年長者は既存の方法にこだわらず、
新しい技術や手法を学び、
柔軟に適応する姿勢が求められます。
上の立場にいる人はこのことを理解し、
新しい技術や手法に対して
オープンな心を持つことが
望ましいと言えるでしょう。
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アドバイスは単なる一つの意見
先輩から後輩へのアドバイスは、
「この方法は私にとって良かったので、
参考にしてみて」と
軽く伝えるのが理想的です。
アドバイスをした後で、
もし後輩からの反応が芳しくない場合には、
同じアドバイスを繰り返し伝えることは
控えるべきでしょう。
アドバイスを受ける側も、
先輩の助言を盲目的に受け入れるのではなく、
「そのやり方は自分にとってどうなのか?」
をじっくり考え、その助言に従うかどうかを
自ら決めることが大切です。
先輩にとっては有効だった方法でも、
自分には適さない可能性も
あるからです。
先輩のアドバイスを聞いて、
「これなら自分も試してみたい」
と心から思えたならば、
そのアドバイスを受け入れるとよいでしょう。
しかし、「先輩には良かったかもしれないけれど、
自分にはそうではない」と感じる時には、
そのアドバイスをただの一つの意見として
軽く受け止めるのが賢明です。
最終的には、自分が正しいと信じる道を
ためらわずに進んでください。
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まとめ:不適切なアドバイスを避けるために
今回は上下関係における
アドバイスに焦点を当てて
お話ししました。
経験豊かな年長者から
年少者への知恵の伝達は、
確かにその価値が認められますが、
必ずしもすべての場合において
好ましいわけではありません。
善意からのアドバイスが
逆に問題を引き起こす可能性があるため、
注意が必要です。
不適切なアドバイスは
相手にプレッシャーを感じさせ、
それが人間関係の悪化に
つながる恐れがあります。
また、個々人の多様性を考えると、
ある人に適したアドバイスが
他の人には必ずしも適さないことも
あるのです。
親切心からのアドバイスが
相手の学びのチャンスを奪うことや、
共依存の関係に陥るリスクも
考えられます。
時代によって方法や考え方が
変化する事実を受け入れて、
年長者は自分の方法が絶対であると考えず、
若い世代から新しい技術や手法を
学ぶ姿勢を持つことも重要です。
理想的なアドバイスは、
「こういう方法もあるよ。
もし興味があれば
参考にしてみて」というように、
一度だけ軽く、謙虚に提案することです。
相手が関心を示した場合にのみ、
詳細を共有しますが、そうでなければ
そこで話を終えたほうがよいでしょう。
アドバイスを受ける側も、
提供されたアドバイスを鵜呑みにせず、
自分にとって有益かどうかを慎重に考え、
必要ならば受け入れ、
そうでない場合は参考程度にとどめ、
自らの判断で行動するべきです。
アドバイスの提供者も受け手も、
この点を念頭に置き、双方にとって
最善の結果を目指して
行動することが望ましいでしょう。