ここが困った、ニュージーランド

前回は、ニュージーランド日常生活の中で、私のお気に入り面を紹介した。今日は、私が困った面、イマイチだと思った面のお話をしてみる。

ニュージーランドは、国土面積では日本よりも20パーセント以上小さい国だが、全人口はたったの500万人ほど。東京都の人口の半分以下だ。人口密度が低いせいか、空間的には広々としていて、ゆったりした感じがある。ゆったりしているのは空間のみならず、時間的にも同様なことが言える。

公共のバス、電車が5~10分遅れることは日常茶飯事で、あまり文句を言う人もいない。ちょっとした遅れなら、まあ許せるが、バスが定刻時間よりも早くに出発してしまうことは、かなり不便を感じた。昔のことだが、私が留学していた都市では、街中から、私の住む郊外へ行くバスが一時間に1本しかなかった。しかも、月曜日から木曜日までは、最終バスの時間は午後5時45分。金曜日だけは特別で、最終バスはもう少し遅い時間だった。そんなわけで、私は5時45分のバスに乗り遅れないよう、いつも、時間に気をつけていた。どんなに遅くても、5時40分にはバス停に着くようにしていた。ある日、待てど、待てど、バスが一向に来ないことがあった。時計をチラチラ見ながら、落ち着かない様子でいたら、近くにいた人が私に教えてくれた。「ロズリン行きのバスを待っているの? それだったら、もうとっくに出発したよ」と。5分以上前にバス停に行ったのに、バスはもう既に出てしまっていた。仕方ないので、雨に打たれながら、4キロの道のりをとぼとぼと歩いて帰った記憶がある。

我が家は結構古くて、水回りや、電気関係の設備に不具合が生じることがよくある。そして、そのたびに、電気工事をしてくれる人や、配管工にお世話になっている。基本的には、電気工事も、配管工事も、割と質の高い仕事をしてくれる業者が多いが、時間厳守の点では、ちょっと困ると思った。

シャワールームの排水口が詰まってしまい、シャワーを使用できなくなった時があった。すぐに配管工に電話をして、修理してもらう手配をした。「分かりました。午前11時にお宅に伺います」と言われて、ひと安心。でも、午前11時を過ぎても、配管工は来なかった。多少の遅れは当然だと思ったので、暫く黙って待つことにした。正午になっても、誰も来ないし、連絡もない。仕方ないので、こちらから配管工に電話をしてみた。すると、「あ~、ごめん、ごめん。今朝はちょっと忙しくて、お宅に伺う前に、未だやらなければいけないことがあるんだよ。悪いけど、午後4時までには必ず行くから」とのこと。

自信満々で「午後4時」と言ってくれたので、「まあ、いいか」と受け入れた。夜にシャワーを浴びる時間までに来てくれれば、問題ないと思ったのだ。しかし、午後4時になっても、配管工は来なかった。結局、その日に修理して貰えることはなく、翌日の午後まで待つことになった。

同じような話は、友人や知人からもよく聞くことだ。約束の時間をいう時には、皆、絶対に来るという響きで自信ありげに約束する。しかし、今までの私の経験では、約束の時間にきちんと来てくれた人は、ほとんどいなかった。たまに、5分遅れくらいで来て貰えた場合、「うそでしょ! ラッキー!」と思うほどだ。

こういう時間の遅れに対して、謝罪の言葉をきちんとしないのも、ニュージーランドでは普通のようだ。「ごめん、ごめん」と軽くは言うものの、日本のような感覚で「申し訳ありませんでした」とお詫びをする業者は、今までお目にかかったことはない。

ニュージーランドでは、すべての面で「時間にルーズだ」という印象を持っていたが、そうでない時もあった。それは、大都市の街中の駐車時間だ。すべての地域でこのことが言えるかは分からないが、私の住む地域では、駐車違反の取り調べがかなり厳しい場所もある。実は私も、もう少しで駐車違反のチケットを食らいそうになったことがあった。たった15分のオーバーだったのに、監視員はきちんとチェックをしていた。「ちょっと待った。ごめんなさい~」と慌てて駆け込んで、ギリギリセーフで許して貰えた。

その駐車場では、駐車監視員が常に目を光らせてチェックしているようだった。30分もオーバーするものなら、その車は牽引車で駐車場から退去させられるのだ。もし、そうなった場合、駐車違反の罰金のみならず、牽引車の費用も、車の持ち主が支払わなければならないとのこと。もちろん、駐車場の前には、違法駐車は牽引の対象になると注意書きはされている。でも、ゆったりとしたお国柄なので、「まあ、大丈夫でしょ」と気が緩んでしまいそうだ。すべての駐車場が厳しいわけではないだろうが、時々、チェックが厳しい駐車場もある。ということで、ニュージーランドでレンタカーを借りて旅行する人は、駐車場の時間には気をつけた方がいいだろう。特に大きな都市では、ご注意を。