異文化体験パート2

前回は、ニュージーランドで異文化体験をする中、私にとって、なかなか慣れなかった、また、抵抗があった「ニュージーランドのやり方」を紹介した。今日も引き続き、異文化体験をテーマにしたい。今回は、私が興味深く感じたことを幾つかお話してみよう。

「鼻すすり vs.  鼻かみ」

日本では皆、けっこう普通に鼻すすりをしている。学校の教室で、誰かが鼻すすりをしていたら、「風邪ひいたのかな? 花粉症かな?」と気の毒に思う。鼻すすりをしている人が近くにいても、文句を言う人はいないだろう。しかし、ニュージーランドでは、公共の場で鼻すすりをすることは、良くないことだと思われているようだ。

図書館で、面白い場面に出くわした。私の近くに座っていた日本人留学生が、鼻をすすりながらレポートを書いていた。彼女は風邪をひいたらしい。突然、見知らぬおばさんが、彼女のところへやってきて、ティッシュを差し出して、こう言った。「これで鼻かみなさい。私はあなたの鼻すすりの音が気になって、集中できないのよ」と。

おばさんにそう言われて、彼女はティッシュを受け取り、トイレに行って鼻をかんできた。おばさんは不思議そうな顔をして「わざわざトイレに行かないで、ここで鼻かみすればいいのにね」と言った。

ニュージーランドでは、人前で鼻をかむことは、失礼ではないらしい。ポケットからハンカチを取り出して、大きな音を立てて、人前で平気で鼻をかんでいる姿をよく見かける。鼻かみが終わると、鼻水のついたハンカチを丸めて、ポケットに戻すのだ。鼻をかむたびに、同じハンカチを使っているようだ。正直言って、傍で見ていて「汚い!」と思うし、鼻をかむ大きな音を下品に感じてしまう。でも、そういうのは、多くのニュージーランド人にとっては普通のようで、誰も気にしている様子はない。しかし、公共の場で、鼻をすすることは良くないとされているのだ。日本では全く逆だろう。面白いな、と思った。

「食事中の音」

ニュージーランド人家庭でホームステイをしていたとき、文化の違いを感じたのは、食事中の音だ。蕎麦やうどん、ラーメンを食べる時には、麺をすすってズルズル音を立てるのは、日本では普通である。しかし、ニュージーランドでは食べる時の音はNGだということだ。

ホストファミリーに「うどん」を披露した時、私がズルズル音を立てて食べているのを見て、彼らには滑稽に思えたらしい。ファミリーの皆も、わざとズルズルと音立てるように食べて、「音立て大会」が始まった。ファミリーの一人が言った。「こうやってズルズルと音を立てると、けっこう、美味しいね。ズルズルすれば、食べ物の味が引き立っていいよ」と。

ニュージーランドでは、子供が小さな時には、食事の時に音をたてないように、口を開けてクチャクチャと噛んで食べないように、と注意するらしい。ゲップの音も良くないので、ゲップが出たら「パードン・ミー」(失礼)と言っている姿もよく見る。

「太っている女性は美人?」

留学中に、留学生のためのパーティーによく参加した。私が留学していた都市は小さくて、街中には、ほとんど娯楽施設がなかった。そのため、学生たちが食べ物を一品持ち寄って、パーティーをすることが多かった。「留学生のためのパーティー」と言っても、参加者は留学生のみならず、現地の学生や、チューターとして大学で教えている院生たちもいた。

ニュージーランド人家庭でホームステイをしていた私は、留学一年目で10キロ太ってしまった。毎晩、デザートにアイスクリームを欠かさず食べていたからだろう。ホストファミリー宅には大きな冷凍庫があって、その中に5キロ入りのアイスクリームの箱が幾つも入っていた。キッチン棚にはケーキやマフィン等も常備されていた。メインディッシュが質素な割には、デザートは充実していた。

ある日、パーティーに行った時、「痩せている、太っている」が話題になった。私は日本から持ってきた洋服がキツクなったので、ヤバイ!と思い、ダイエットをしようかと考えていた。その話をしたところ、「ダイエット? 止めなさい! あなたはもっと太った方がいいわよ」と言ってきた人がいた。その人はパシフィック系で、やせ型でもないし、太ってもいない、ちょうど良い体型の人だった。「私の国では、太っている人の方が、美人だと思われているので、女性は皆、沢山食べて太れるように努めているのよ。ニュージーランドでは、私の体型は普通かもしれないけれど、私の国では、私はガリガリすぎて美人ではないのよ」と。

この女性がどこの出身だったかは覚えていない。南太平洋の小さな島国からだったと思う。彼女の国では、痩せている女性は魅力がなくて、太っている人が美人だ、とされているそうだ。世界にはそんな国もあるんだ、と驚いた。

ニュージーランドは肥満大国ランキングでも、上位に入っている。この国の人も、日本人のように、自分の体型を気にする人もいるが、皆がそういう感じでもない。甘いものを勧められたら、自分の体重のことよりも、お菓子の方を優先させてしまう人が多いような気がする。

ニュージーランドでも美女コンテストに優勝する人は、太った人ではなさそうだ。でも、国によっては、太っている人が美人だとされる国もあると知って、面白いな、と思った。