他人は自分の事情をよく理解していない。他人の意見は参考程度に。

他人に意見やアドバイスを求めるのは、
けっして悪いことではない。
しかし、他人が言うことを
そっくりそのまま鵜呑みにせず、
自分でプロセスしてから
取り入れたほうが賢明だ。

その理由は、他人は自分のことを
自分ほどはよく知らないから。
どんなに仲良しで親密な関係でも、
自分のことを100パーセントは
分かってくれてはいない。
自分の事情がよく分かるのは、自分自身だけだ。
だから、他人から言われたことは、
まずは自分でプロセスしてから
受け入れる姿勢が大切だ。

「他人の意見やアドバイスは参考程度に」
というのが、今回私が言いたいこと。

時々、こんな人を見かける。
自分で答えが分からなくて、
色々な人に聞きまくっている。
同じ答えが返ってくるなら問題ないが、
聞く相手によっては、全然違うことを言う。
そんな時に、質問した本人は
余計混乱してしまう。
「いったい誰の言うことが正しいの?」
と更に別の人に聞くことになる。

他人の言うことは、
その本人にとっては、正しいことだ。
しかし、本人以外に人には
通用しない場合も多い。
Aさんが「こうこうだから」と言う時、
Aさんにとってはそうでも、
Bさんにとっては正しくない。
一つの質問に対しても、
何通りにも違う回答が返ってくることもある。

結局は、自分にとって必要な答えは
最終的には自分にしか分からない。
ただ、その最終的な答えに行き着くまでに、
他の人の言うことを参考にはできる。
参考程度に聞いて、
それは自分にとってどうなのか?
自分の内で十分プロセスしてから、
最終的には自分で答えを導き出したほうがよい。

このことを料理に例えれば、
自分が欲している料理を
そっくりそのまま提供してくれる人は
まずいないと思ってもよい。
他人にそこまで期待してはいけないのだ。
料理の一材料は
他人が提供してくれるかもしれない。
しかし、その材料を使って、
自分自身がプロセスしなければ、
自分が欲している料理は出来上がらない。
料理の作業の途中で、
他人から貰った材料を使うにしても、
自分自身が料理を仕上げなければならない
ということだ。

なぜそうなのかは、理由がある。
他人からの意見やアドバイスを
そのまま鵜呑みにして、使った場合、
もし、その結果、何か不都合が起きれば、
自分はアドバイスをした人を恨み、
相手を責めることになるだろう。
こういう事態を避けるために、
最終的には自分で決めるのが正解だ。

他人が教えてくれたことが
自分にもしっくり感じられて、
そのまま使いたいと思った場合でも、
自分が最終的にはその決断をした
と考えたほうが無難だ。
万が一、その決断により、
物事が上手く行かなかったり、
悪いことが起きてしまっても、
アドバイスをしてくれた人のせいではなく、
そのアドバイスにそのまま従った自分に
責任があると思ったほうがよい。

意見やアドバイスをする立場でも
同じことが言える。
時々、誰かを見ていて
「そんなことをしないで、
こうすればいいのに!」
と思うようなことがある。

そんな時に、親切心で相手に
「~したほうがずっといいよ」
とアドバイスしてあげたくなる。
自分は優しい気持ちで
相手に良かれと思うことを
教えてあげたい気持ちが強い。
相手が自分の言ったことを聞いて、
その通りに従えば、
相手も得すると信じているからだ。

しかし、自分がそうだと確信しても、
相手にとっては、どうだか分からない。
なぜなら、自分は相手のことを
完全には理解していないから。
相手のことをよく知っているつもりでも、
相手には自分の見えない部分もある。
たとえ相手が良くないやり方をしていても、
相手がそうするのは、それなりの理由があるからだ。
そして、自分は相手の事情をよく分かっていない。
自分には相手のことが部分的にしか見えないから、
「私は絶対にこう思う」ということがあっても、
相手に押し付けてはいけないのだ

自分が思うことをアドバイスして、
自分は相手から感謝されたい
という気持ちがあるかもしれない。
しかし、これは相手にとっては
かなりの有難迷惑になる。
自分は相手のためにと思っても、
相手には自分が思うほど役に立ってはいない。
それどころか、迷惑になることだってある。

相手から「アドバイスして欲しい」
と依頼された場合には、
もちろん、自分が思うことを話すべきだ。
しかし、頼まれもしないのに、
自分が勝手に「相手は~だろう。
だから、こうしたほうがずっといい」
と決めてしまうことは、
お節介以外の何ものでもない。

誰かからアドバイスを求められて、
自分の考えることを話した場合にも、
相手に参考程度に聞いて貰えれば、
と謙虚な気持ちで意見を言うほうがよい。
自分の言ったことが聞き入れられず、
そのことを不満に感じるのは、
相手に不当な要求をしていることになる。

聞く立場では「参考程度にさせて頂く」
と相手に最終的な回答を期待しないこと。
教えて頂いたことに対して、
自分の中でしっかり考えて、
プロセスした後に自分で決めること。

アドバイスする立場の人も、
自分の言うことは、
ちょっとだけでも参考になれば
と思うほうがよい。
自分の言った通りにしなければ、
憤慨するような態度は取らないことだ。

自分の事情は自分にしか分からない。
自分の事情の一部を他人が知っていても、
他人には自分の事情のすべてが見えている
とは思わないほうがよい。
他人は自分が期待するほど
自分のことを分かってはくれていない。
そんな他人に、重要な決断を委ねることは
かなり危険なことだろう。

自分の事情をよく理解しているのは、自分自身だけ。
だから、最終的には自分が決める。
決める時の手助けとして、
他人から意見やアドバイスを求めても、
それは「単に参考程度」に聞くだけだ。
アドバイスを求める側も「参考程度に」
アドバイスを提供する側も「参考程度に」。
結局は、本人が決めて、
その決断により起きた結果も
本人がすべて責任を取るものだ。