外国語を勉強する学生が、
その言葉が話されている国で
ホームステイをして、
語学習得や異文化体験をすることは
最近、とてもポピュラーになっている。
日本では英語は一番重要な外国語。
アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、
ニュージーランドのような英語圏の国に、
短期間滞在して、英語の勉強をしたり、
現地の人たちとの交流を楽しむ学生も多い。
海外で現地の人たちと寝食を共にすることで、
日本とは違った生活習慣や考え方に触れて、
視野を広めることは、素晴らしことだ。
ホームステイは、
ホステルや他の宿泊施設では得られない
貴重な体験もできるので、
文化や言語を学ぶのには最適だと言える。
しかし、残念なことに
受け入れ家庭がどんな人たちなのかで
学生が経験することも、全く違ってくる。
ホームステイはくじ引きのようなもので、
どのようなホスト宅に行くのかで、
当たり外れの差が大きい。
大分昔、
日本からの短期留学生と接した時、
ホームステイをする大学生たちから
色々な話を聞いた。
そのうちの一人は
受け入れ先家庭でとても良い思いをしている。
その一方で、別の一人は、
ホストペアレンツが冷たい人たちで、
ホームステイ先でも、
ほとんど自分の部屋にこもったまま。
せっかく来たのに、楽しい経験はしていない。
ハッピーな学生のホストファミリーは
日本に非常に興味を持っている。
その家族の息子が大阪に
交換留学生として
一年間住んだことがあるからだ。
息子が日本に居る間、
その家族も短期間日本を観光した。
日本文化や日本語に惹かれて、
家族皆が親日家というわけだ。
日本からの学生を受け入れたのは、
もっと日本のことを知りたいから。
日本人ともっと交流したいから。
息子も日本語を練習する機会になるから。
そんな感じで、学生を受け入れる前から、
日本に対してとても良い印象を持ち、
日本大好きファミリーだ。
この家族は経済的にも恵まれている。
すごくお金持ちというわけではないが、
中間層の平均よりは高い収入を得ているようだ。
家も広くて、庭も広くて、
日本からの学生が与えらえた部屋も
トイレ、シャワー付きのオンスイート。
ホストマザーは料理も上手で、
美味しい夕食を毎晩作ってくれる。
週末には日本食の材料を買いに行き、
皆で日本食をクッキングする時もある。
雨が降れば、ホストマザーが
車でバス停まで送ってくれたり、
迎えに来てくれたり。
ホームステイのルールでは、
ホストはそこまでする必要はないが、
喜んでしてくれるそうだ。
その一方で、もう一人の学生は、
全く違うホームステイ体験をしている。
ホストファミリーがあまり親切ではないのだ。
どちらかと言えば、冷たい感じで、
交流しようという雰囲気もなく、
英語のレッスンから帰って来ても、
その学生はホスト宅の自室で
一人で時間を過ごすことが多い。
食事は一応用意してくれても、
その食事も時には「これ犬の餌?」
と疑うようなものもある。
すごく不味くて、食べられたものではない。
ある日、夕食の時間に寝ていたことがあった。
起きてから夕食を食べたいと思ったのに、
無視されてしまい、食べる物もなかったそうだ。
仕方がないから、
自分で買ったポテトチップスの袋を開けて、
夕食にした。
学生を受け入れる動機は、人それぞれ全然違う。
異文化や外国語に興味があり、
純粋に国際交流を目的に
学生を受け入れる家庭もある。
その一方で、どちらかと言えば、
お金目当てで、ビジネスでホストになる家庭もある。
学生の受け入れを希望する家庭に
学校側は一応、
その家庭が学生を受け入れるのに適切かどうか
審査することはあっても、
最低限の必要条件が満たされれば、
ほとんどすべての家庭がホスト宅になれる。
特に受け入れを希望する家庭が少なければ、
審査も緩くなり、個室が提供できれば、
それだけでホームステイの受け入れ家庭になれる。
私がその学生たちと話したのは
今から何年も前のこと。
受け入れ家庭は週180ドルの報酬を得る
ということだった。
その当時のニュージーランドでは、
週180ドルという金額は、
かなり大きなものだった。
経済的報酬だけを目当てにするホスト宅は、
学生に対しては、必要最低限の食事を提供して、
できるだけ自分たちの利益を最大限にするよう
努めていたようだ。
こういう家庭は、
ビジネスで学生を受け入れているので、
報酬さえ貰えれば、その他のことは
どうでもいいと考えているようだ。
学生が満足しているか?楽しんでいるか?
は二の次で、別に自分たちには関係がない
とまで思っている。
ホームステイ先の家族と
学生をマッチングする際、
アンケートにより両者の好みを聞くことはある。
例えば、どんな趣味を持ち、
普段、どんな活動に従事しているのか。
また、動物好きなのか、そうではないのか。
子供の年齢はどうなのか等々、
学生に合った家庭に行けるよう、
できる限り希望に沿うことにはしている。
しかし、必ずしも、それが可能なわけではない。
たとえ表面的には希望に沿えても、
ホスト側も、受け入れられる学生も人間なので、
相性が合わないということもある。
私が話をした大学生たちは、
初めての海外短期留学という人が多かった。
初めての体験の場合は、
その人が受けるインパクトもかなり強い。
良い家庭に受け入れられて、満足する学生にとっては、
かなり良い印象を抱くようになる。
ホストファミリーが素晴らしければ、
その国が大好きになり、
その国の人たちは、皆、いい人ばかりだ
と信じてしまうこともしばしばだ。
逆に悪い経験をした学生は、
たまたま運良くなく、
ホームステイでツライ体験をしてしまい、
たったそれだけでも、
「この国はなんだかイマイチだな」
と思ってしまう。
ラッキーな学生も、アンラッキーな学生も、
たった一つのサンプル家庭しか経験していないが、
それだけでも、その国の人々の印象が
良くなったり、悪くなったりしてしまう。
受け入れ家庭がイマイチの場合には、
もう二度とその国へは行きたくない
とまで思うこともある。
ホームステイのような体験は、
年がら年中できるわけではない。
通常はかなり高額な参加費用を支払って、
来ているので、
それなりに素晴らしい体験がしたい
と期待してしまうのも当然だ。
しかし、残念なことに、
どんな家庭に受け入れられるかで、
楽しい体験になるのか、
ツライ体験になるのか、
大きな差が出てしまう。
かなり不平等だとは思うけれど、
それが現実のようだ。
ホームステイは、ある意味、くじ引きのようなもの。
当たり外れの差が大きく、
残念なことだと思われる。