お天気の話題は、初対面やよく知らない人との会話に便利

私の住むウェリントンは
天気がコロコロと変わりやすい。
さっきまでお日様がさんさんとして
青空が綺麗だと思っていたら、
急に雨雲がやってきて、大雨が降り出した、
なんてこともよくある。

天気が良い時と、悪い時の
ギャップが大きいことも多々ある。
晴天で透き通るような青空が広がり、
「ウェリントンはなんて美しいところか!」
と感激するような時もあれば、
大雨と強風で荒れ狂った天気になり、
「ああ、最低なお天気だ」と
文句を言いたくなることもある。

おまけに1日の中での
気温の変化も激しい。
朝は寒くてヒーターをつけ、
厚手のセーターを着ても、
昼過ぎには気温が上昇して、
半袖のTシャツに着替えることも珍しくない。

「今日は寒くて底冷えがするね」とか、
「最近は晴天続きですね」とか、
「なんて気持ちのよいお天気なんでしょう」とか、
「ああ、風が強すぎて参っちゃうね」とか、
天気や天候についての話題で
知らない人や初対面の人と
話すこともしばしばある。

日本に居た頃には、
電車やバスで近くにいる人や
道を歩いていた時に会った人と
会話をすることはまずなかった。
知り合って、仲良くなって、
それで初めて会話をする
という感じだった。

ところが、ニュージーランドでは、
知らない人と突然会話をすることは
けっこうよくある話だ。
散歩の途中で道ですれ違った人や、
バス停でバスを待っている時に
近くにいる人、また、バスの中で
たまたま自分の隣に座った人と、
話をすることが普通に起きる。
相手がどんな人だか、
全くわからないのにだ。

もちろん、話の内容は
どうでもよいことが多い。
私のような中年世代では、
その日の天気や最近の天気の話題が
多いような気がする。
その場の雰囲気で、
何かを言わなければと思う時にも、
天気の話題は非常に便利だ。

私は毎朝、自宅周辺を散歩している。
私の散歩ルートに住んでいる人たちと
挨拶しあうことも多い。
最初のうちは
「お早うございます。
今日はいい天気ですね」とか、
「ああ、なんて寒いんでしょう。
温かくしてね」とか
お天気のことを話すだけ。
でも、そのうちに、
「あなたのそのジャケット
けっこうイケているね。
どこで買ったの?」なんていう話も始める。

自宅から徒歩10分の場所に住んでいる
全然知らなかった人と、
そんな会話をしているうちに、
「あなたちょっと時間ある?
もし、良かったら、家でお茶していかない?」
と誘われて、その人の家にお邪魔した。
そして、色々な話をしているうちに
仲良くなって、お友達になったこともあった。

最初は何をしている人なのか、
どんな家族構成かも分からずに、
どうでもよい話をしている。
でも、そのうちにだんだん仲良くなって、
どんな仕事をしている人なのかなど、
パーソナルなことを知るようになった。

日本で誰かと仲良くなる場合とは
全く違う感じで人と仲良くなることが
ニュージーランドではあるんだ、
と興味深く思ったほどだ。

日本の場合には、
まずは相手がどんなことをしている人で、
社会的地位はどうなのか?
自分とお付き合いするのに、
適切な人なのか?なんてことを考えてから、
仲良くなったりする。

まず最初に
「どこの会社で仕事しているの?」など
パーソナルな質問をいきなりする。
で、相手の人も名刺を差し出して、
「私はこの会社でこういう部署にいます。
いつも、こんな仕事をしているんです」
なんて言う会話から始める。

私の肌感覚では
日本ではどこの組織に所属しているか?
がすごく大切で、まずはそれを確認する。
はっきり口には出さなくても、
相手がどんなことをしている人か、
それを明らかにしてから、
自分と付き合うのには適切か、
心のどこかで考えているような印象を受けた。

でも、ニュージーランドは違う。
相手がどんな仕事をしていて、
何で生計を立てていて、
ということはどうでもよくて、
話してみて何となく気が合いそう、
または、自分とファッションセンスが似ている、
同じ趣味を持っている
の方が大切なような気がする。

スポーツ好きが多いニュージーランドでは、
同じチームのファン同士で、
仲良くなることもよくある。
お互いに、どんな仕事をしているのか、
どんな家族構成なのか、
そんなことは知らないけれど、
スポーツ観戦の話題で盛り上がっている。

私が日本を離れてから、
日本社会も大分変っているようだ。
今はそんなことはないかもしれないが、
昔の日本はそうだった。
人と仲良くなる前には、
どの組織に所属して、
何をしている人で、
どんな社会的地位があるのか?
それを確認してから、仲良くなっていた。

でも、ニュージーランドでは逆で、
どうでもよい話をしてみて
自分と気が合いそうな人なのか?
趣味や好みが似ているのか?
そちらの方が大切で、
何を仕事にしているのか?
どんな社会的地位があるのか?
は二の次で、あまり重要ではない。

お天気の話はホントに便利で、
初対面の人や、よく知らない人と
話す場合がある時に、
他に言うことが思いつかなければ、
これを使うと良いと重宝している。