ニュージーランドは父親が育児に参加しやすい環境が整っている

私は、ニュージーランドに暮らして
丸30年になる。
この国で妊娠、出産、子育てを経験して、
ニュージーランドは子育てしやすい国だ
と感じている。

日本では「子育ては母親の役割」
と思う人が多いようだが、
ニュージーランドはそうではない。
夫婦が協力し合って子育てするもの
という考え方が一般的だ。
ニュージーランドは、
父親が育児に参加しやすいような
環境が整っていると思う。

父親の育児参加は、
赤ちゃんが生まれる前から始まる。
初産の場合、妊娠30週頃より
antenatal classと呼ばれる
出産教育セッションに夫婦揃って
参加する場合が多い。
このセッションでは、妊娠後期のことや、
分娩の詳しい流れ、父親の役割、
生後間もない赤ちゃんのお世話について、
専門家が色々と教えてくれる。
オムツ替えとか、授乳に関する知識を
父親も学ぶことになる。

出産時には、妊婦さんをサポートする人が
一緒に分娩室に入り、
痛みが酷い時には、マッサージをしたり、
励ましの言葉をかけたりして、
応援するのが一般的だ。
そのサポーターは、多くの場合、父親だ。
生まれた後、初めて赤ちゃんに
対面するのではなく、
分娩中ずっと付き添うことになるので、
赤ちゃん誕生の感激の瞬間も
父親が一緒に居て、
この素晴らしい貴重な体験を
夫婦で共有することができる。
へその緒を切るのも、父親が
する場合が多い。

このように
父親もチャレンジ多き出産時を
協力し合い、共に乗り切る。
赤ちゃんの産声を聞き、
自分の子供の姿を初めて見た時には、
非常に感動するようだ。

日本に比べれば、この国では
出産後の入院日数が非常に短い。
普通分娩であれば、1~2泊。
中には日帰り出産をする人もいる。
自宅に戻って来ても、
母親が一人で家事をしたり、
赤ちゃんの世話をするのは困難だ。
そのため、出産後には
父親が数週間、育児休暇を取り、
奥様のお手伝いをすることは
珍しいことではない。
特に、上の子供がいる場合には、
その子供を旦那さんが世話するためにも
育児休暇を取るのは普通のことだ。

奥さんの体調が落ち着いたら、
夫は職場に戻り、
奥さんは更に数カ月
育児休暇を取るケースが多い。
でも、時には、奥さんが直ぐに職場に戻り、
旦那さんが子供の面倒を見る家庭もある。

子供が幼稚園に行き始めれば、
親は「ペアレンツ・ヘルプ」と呼ばれる
お役目を果たさねばならない。
子供の親が交代で、
おやつの準備や、教室の片付け、
その他雑用をお手伝いをする義務がある。
我が家の子供たちが通った幼稚園では、
年に2~3回、一家庭から一人ヘルプを出す
規則になっていた。
この時に、お母さんだけでなく、
お父さんが手伝う姿もよく見られた。
我が家の旦那様も、
有給休暇をとって、子供の幼稚園の
ペアレンツ・ヘルプに協力してくれた。

小学校低学年の時にも、
学校行事があるたびに、
親がお手伝いすることが多かった。
そのお手伝いにも、お母さんだけでなく、
お父さんの姿も沢山見られた。

一般的な有給休暇の日数は
日本もニュージーランドも
あまり変わりはない。
でも、両国の違いは、
ニュージーランドでは、皆、
有給休暇をきちんと取り切ることだ。
有給を取らない社員がいれば、
雇い主が、きちんと休暇を取るように
催促することもある。
さもないと、未消化の休暇分、
お金を支払わなければならない義務が
雇い主にあるからだ。

そんな理由もあり、
多くの人は有給休暇をきちんと取り切る。
子供の学校行事には、
有給休暇を取って、
積極的に学校行事の手伝いをしたり、
子供の姿を見に行くお父さんは沢山いる。

小中高等学校では、
毎年2回ほど3者面談があった。
親と子供と教師が会って、
子供の学業やスポーツ、その他の
活動について、話し合う機会がある。
この面談には、片親だけの参加もあるが、
多くの子供は両親揃って出席することが多い。

我が家の旦那さんも、
子供たちの学校の面談には、
ほとんどすべて参加した。
面談時間が仕事中であっても、
ちょっと仕事を抜け出して、学校へ来る。
面談後には再び
職場に戻るというぐあいだ。

職種によっては、ちょっと抜け出す、
がムリな場合もあるが、
一般的には、可能な限り、
学校の面談などには、
お父さんも参加できるように、
雇い主も職場を抜け出すことに
寛容な姿勢を見せている。

社会全体的に、子供の学校関連の行事に
親が参加するのは当然だという
風潮があるので、
男性でもそのために休暇を取ったり、
仕事中に抜け出して、
ちょっと学校へ行ってきたりするのは、
多くの人が普通にすることだ。
今日、仕事を抜け出して学校へ行ったから、
明日はその分長く働けばよい、
という感じで、とてもフレキシブルだ。

ニュージーランドでは日本とは違い、
残業する人は少ない。
もちろん、この国にも残業する人はいるが、
どちらかといえば、少数派だと言える。
夕食時までにはお父さんも帰宅して、
家族皆が揃って夕食を頂くことは普通だ。
日本の子供よりも、ニュージーランドの子供の方が、
お父さんと会話したり、スポーツをする
時間が長いのは確かだ。

夏時間使用中は、
夜8―9時まで外が明るいので、
夕食後に子供と父親が公園に行って、
キャッチボールをしたり、
サイクリングを一緒に楽しんだり、
親子の時間を楽しむ姿も
よく見られる光景だ。

このような社会環境のお陰で、
ニュージーランドでは、子供は父親と
触れ合う時間もかなり多い。
このことは、子供にとっても、親にとっても、
非常に良いことだと感じている。