「ハート 対 理論」 が険悪な親子関係を生む

毒親・毒親育ちの専門家
カウンセラーの高橋さんから
「親子関係が悪化する原因」
について興味深い話を聞いた。
高橋さんは、親子関係に悩む
クライアントに接する機会が多く、
子供の立場、親の立場の両面から
様々なケースの解決お手伝いを
されてきた方だ。

人それぞれ状況は違っても、
突き詰めれば、本質的には
同じことが原因で親子関係が
悪化するそうだ。そして、
その原因も一つにまとめられるとのこと。
それは、ハート(感情)を大切にする子供と、
頭でしか物事を考えられない親との間で
摩擦が起こり、お互いに理解し合えないこと。

高橋さんによれば、
親子関係が上手く行かない親の多くに
「感情マヒ」があると言う。
感情マヒとは、自分自身の悲しみや、
恐怖など、本当の感情を感じないよう
シャットアウトした状態だ。
なぜ、感情マヒが起こるのかと言えば、
不安や警戒心が極度に強く、
心身ともに常に緊張状態にあるからだ。
敵がいつ攻撃してくるか分からないので、
それに備えて、「戦うか、逃げるか」の
臨戦態勢になっている。
このような状態だと、
自分の悲しみなど、
しみじみと感じる余裕などない。
シャットアウトしなければ、
生きてゆけないからだ。

感情マヒの親は、
自分の気持ちがよく分からない。
当然、人の気持ちを思いやることはできず、
子供の気持ちなども分からない。
子供がツライ思いをしていて、
親に自分の気持ちを分かって貰いたくても
こういう親は子供の期待に沿えない。
子供が自分の気持ちを前面に出せば、
頭で考え理屈や正論で返してしまう。
これが親子間のバトルの原因となる。

なぜ、親は不安や警戒心が極度に強く、
感情マヒまで起こすのだろうか?
それは、親自身の育ちに問題があるからだ。
「アダルトチルドレン」とか、「毒親」
という言葉は最近、流行っている。
それは、子供の時に、戦争の悪影響を
受けた親が多いからだろう。
子供の頃に戦時中だったり、戦後の混乱期で
親自身が大変ツラく苦しい思いをした。
大人になっても後遺症が出るほど、
病んでいる人が多いということだろう。

目の前で多くの人々が亡くなるのを目撃したり、
自分の近親者が次々と死んでいく姿を
見たかもしれない。
食糧難で食うや食わずの状態で、
自分の命すら、いつまで続くか分からない。
そんな異常な状況で子供時代を過ごせば、
健全な大人になれるはずがない。
小さな頃から、自律神経がアンバランスで、
常に交感神経優位で緊張状態が続いても、
不思議だとは思えない。
こういう親たちは「世の中は恐ろしいところだ」
とすっかり心に刷り込まれている。

その結果、感情の機能は止めて、
すべてのことを頭の思考で
処理するようになった。
さもなければ、生きてこれなかった。
ある意味、仕方なかったとも言える。
親には親のツライ事情があるわけだ。

でも、親自身は自分の感情マヒを
気づいていない場合が多い。
当然、子供も親がどんな育ちをして、
なぜ、感情を止めて、頭だけでしか
考えられないのか分からない。
これが両者がいつまで経っても
噛み合わず、理解しあえない理由だ。

毒親の元で育てば、
幼い子供は自分の気持ちを
汲んで貰ったり、共感して貰えない。
子供もサバイバルしなければならないので、
親と同じように感情をマヒさせて、
適応する場合もある。
この場合には、親子関係はたいして悪化しない。

問題なのは、子供が自分の気持ちを
大切にするハートタイプの人間の時だ。
こういう子供は優しくて、
家族の幸せを願っている。
だからこそ、感情をマヒさせた
親の言動に激しく傷つけられる。

子供は単に自分の気持ちを親に
分かって欲しいだけ。
ツライこと、悲しいことがあったら、
「そうだったのね。ツラかったね」と
優しく言って貰いたい。
でも、感情マヒの親は、子供の気持ちが
分からないから、理屈で返してきたり、
正論で反論してくる。
子供が何を訴えているのか、
何を不満に思っているのか理解できないから、
子供から攻撃されれば、反撃するという
不毛な繰り返しをずっと続けてしまう。
いつまで経っても、平行線で
お互いが噛み合うことはない。

どうすれば、親子関係が少しでも
改善するのか?
親は自分の感情マヒに気づくこと。
また、子供はなぜ、親が自分の気持ちを
汲むことなく、理屈ばかり返すのか、
この背景を理解することだ。
親も子供もこのことが分かれば、
お互いに歩み寄る気持ちも
出てくるだろう。

私もアダルトチルドレンの一人。
そして、私の親も紛れもない毒親だ。
私が子供の頃、親から戦争の話を
ほとんど聞くことがなかった。
親の背景を理解しておらず、
親を一方的に非難ばかりしてきた。
でも、今は私も少し成長した。
確かに子供の頃に辛い思いをしたけれど、
親も親なりに事情があることが理解できた。
親に対して強く責める気持ちもなくなり、
仕方なかった、と良い意味で諦めもついた。

親が感情マヒである事実や、
なぜ、多くの親が感情マヒを起こすのか、
その原因を知るだけでも、
親に対する気持ちは
大分変ることだろう。

高橋さん、役立つトークを
有難うございました。

参考動画:「親子関係が悪化したり、母娘喧嘩が激化する原因はコレだけ! – 毒親講座
(ユーチューブ 人生を楽にするカウンセラー高橋リエさん)