あなたは大丈夫? 子供に必要以上のお世話をしていませんか?

子供に暴力を振るい、虐待する親は
子供を傷つけ、子供を不幸にする。
ネグレクトのように
子供が必要とするニーズを
満たしてあげられない親も、
子供を傷つけ、子供を不幸にする。

では、子供に愛情をたっぷり注ぎ、
子供に尽くす親はどうだろうか?
一見、良さそうに見えるが、
親の子供に対するお世話が
行き過ぎれば、これも問題だ。
子供から生きる気力を奪い、
子供を不幸にすることさえある。

今日のテーマは、
子供が可愛いばかりに、
子供に過剰なお世話をしてしまう親
と子供の問題点について。

皆さんは、こんな人に
出会ったことがないだろうか?
とても親切で、気が利く。
自分は何も頼んでいないのに、
よく気がついて、気を利かせてくれ、
自分のために、何でもササっと
やってくれる人。
何から何まで先回りして、
自分のために尽くしてくれる人。

こういう人が近くにいれば、
ある意味、ラクだと感じる。
その人が何でもやってくれるから、
自分は何も考える必要はない。
この人に任せておけば、安心だ。

でも、こういう人の傍にずっといれば、
ある日、自分も気づく。
「あれ、自分はあの人にすっかり
お任せしてしまっているけれど、
そのせいか、自分は力が抜けて、
何だか元気がなくなった。
あの人の指す方向に自分の
身体や精神状態が引っ張られていくのを
感じる。これは、ちょっとヤバいのでは?」と。

自分は何も考えなくてもいいし、
自分で決断する必要もない。
あの人の言う通りに従えば、すべて安全、
という環境内で生きていると、
自分の自由意志や選択権が失われ、
気がついたら、他人に
自分の心を侵食されていた、
ということになりかねない。
冷静に考えれば、かなり怖いことだ。

これが親子の関係で、
子供の生活面のすべてにおいて、
親が何でもかんでも、
子供のためを思い、先回りして、
子供のためにやって上げれば、
子供は自分で生きる力を失う。
子供は自分の生き方が分からなくなり、
酷い場合には、自分は何が好きで、
何が嫌いなのかも曖昧になる。
こうなれば、子供は成長して、
親から独立する年齢になっても、
親にずっと依存して、
自分をどんどん見失うことになる。

親の立場では、
自分のお世話や親切が
子供の役に立っていると思えるから、
この上ない喜びを感じる。
もっともっと子供のお世話を
頑張ろうという気になる。
親は愛情という名を借りて、
子供のことを支配し続ければ、
気がついたら、子供の心を侵食して、
子供の自由意志や選択権を
奪っていたということになる。

こういうことが起きていても、
親も子もなかなか気づかない。
いや、深い所では気づいて
いるかもしれないが、
親も子も両者とも、
こういう関係が当たり前になり、
ラクに感じるので、
なかなかそこから出ようとはしない。
「共依存」の関係は、このようにして
作られてゆく。

私の息子アレックスは
高校の同級生T君と仲良くしていた。
T君は原因不明の慢性疲労疾患がある。
そのため、学校をお休みすることも
しばしばだった。
T君がアレックスと遊ぶのに、
T君のお母さんが
私にしょっちゅう連絡してくる。
このお母さんと話をするたびに、
私はどっと疲れていた。

T君のお母さんは、
気が利くタイプで超親切。
アレックスとT君のプレイデート
のお世話を積極的にやってくれる。
午後1時にアレックスを自宅まで迎えに来て、
その後、T君の家に行き、ドローンで遊ぶ。
3時になったら、近くのピザ屋さんに行って、
おやつを食べる….。
こんな風に、何から何まで、
親が子供の遊びのプランを立てている。

幼稚園や小学校低学年の子供なら、
まあ、こういうのもありだろう。
でも、高校生になってまで、
親がここまで口出ししてくるのは、
ちょっと変ではないか?
と私は感じていた。

T君の体調が悪くて学校へ行けない時、
お母さんはアレックスに直接連絡を取り、
授業のノートをコピーさせてくれないか
とお願いすることもよくあった。

T君のお母さんは、私に対しても超親切。
アレックスが食物アレルギーがないか、
嫌いな食べ物がないか、
色々と親の私に質問してくる。
「アレックスがオニオンが嫌いだったら、
オニオンは抜くようにするから、
大丈夫。安心してね」と。

親切にしてくれる気持ちは
大変有難いと思ったが、
正直なところ、私はこのお母さんと
10分も会話をすれば、
精神的にどっと疲れている、
と感じることを何度も経験した。
私の夫も子供のプレイデートのことで
T君のお母さんと何度か会話をしたことがある。
そして、夫も私と同じように感じていた。
「T君のお母さん、僕、ちょっと苦手。
彼女と話すと疲れる」と。

こんなことを言ったら、大変失礼だが、
T君の原因不明の慢性疲労は、
もしかしたら、お母さんに原因があるかも?
とまで思ってしまった。

人間は本来、人の役に立つことで
喜びを感じる生き物だ。
人のために何かできれば、気分が良い。
人のために自分が役立っている、
と知れば、とても嬉しくなる。
でも、他人に対する親切が行き過ぎると、
他人を良くしてあげるのではなく、
逆効果であることも知っておいた方がよい。

子供をネグレクトするとか、
虐待するとかいうニュースを聞けば、
自分は絶対にそんなことはしない。
子供には十分な愛情を注いで、
できるだけ子供のために尽くしてあげる、
という気持ちになる親がいる。

その気持ちはよく分かるけれど、
子供に対して過保護になって、
必要以上にお世話をしてしまえば、
子供の生きる力を奪って、
けっきょくは、子供を不幸にしてしまう
こともある、と心得ておく方が賢明だ。

子供の自主性を促すために、
あえて子供のお世話をしない時も必要だ。
お世話をしてはいけない時には、
お世話したい気持ちをグッとこらえて、
我慢するのも親の愛情だ。