脳科学者・中野信子先生と
映画監督・河瀬直美さんの対談の一部を
ユーチューブ上で聞いた。
ポジティブ思考について語られており、
色々考えさせられる内容だったので、
今日はこれをテーマにしたい。
このトークの中で
中野先生は私達に大切な
メッセージを送って下さっている。
それは「人間には必ず暗いところもあるし
闇もある。毒々しい自分だって
もっと大事にしてほしい」ということだ。
中野先生によれば、人間である以上、
誰でも必ず闇の部分を持っている。
闇と言えば、聞こえは悪いが、
心の暗い部分は、人類が生き延びる上で
重要な働きを担っているとのこと。
中野先生はポジティブ心理学が嫌いだと言う。
その理由は、ポジティブでいることの
プラス面ばかりが強調されているから。
そのため、ポジティブでいられない時に、
自分を責めてしまったり、罪悪感を抱いたりして、
自分を苦しめてしまう危険があるからだ。
ポジティブ思考主義に偏り過ぎれば、
自分が苦しい時に、苦しいと言えず、
人に助けを求めることもできず、
自分一人で苦しむことになる。
その結果、自分の身を滅ぼしてしまう
ケースもあるということだ。
そうなってまで、ポジティブ思考主義を
素晴らしいもと称賛するのは疑問だ、
というのが中野先生のスタンスだろう。
私は、中野先生が仰ることが
身に染みて分かる。
ポジティブ思考を追い求めて、
そうできなかった時の自分を責め、
罪悪感を抱き、自分一人で
苦しんだ経験があるからだ。
昔の私は超ネガティブ人間で、
子供時代に起きたことや、
実の両親との険悪な人間関係に苦しみ悩み、
親元を離れた後でも、
何年も、何年もずっとそのことを
心の中に持ち続け、悔やんだり、
親を憎み続けたりしてきた。
つまり、過去の私はネガティブ側に
傾き過ぎていた。
そんな超ネガティブのせいで、
私の身体や心の状態が
非常に不健康になっていたとき、
私はカウンセリングを受けた。
時間はかかったが、私は
カウンセラーの協力で
自分をポジティブな方向に
持ってゆくことができたと思う。
カウンセラーから教わったのは
正にポジティブ心理学だった。
物事のポジティブ面を
見れるようになってから、
私はポジティブ追求をしていたと思う。
ポジティブに考えられる時には、
自分を良しとして、褒める。
でも、ポジティブになれない時、
「あ~、やっぱり自分はダメだな」
なんて、自分を責めていたこともある。
自分の首を自分で絞めて、
自分が自分を苦しめる時、本当に辛くなる。
ポジティブ思考の良い面は分かったけれど、
ポジティブ思考だけでは、
人生上手くは行かないんだと
つい最近、感じ出したところだ。
以前の私のように、超ネガティブな場所に
いる人にとっては、ポジティブ心理学は
かなり役立つと思う。
ネガティブ側に傾き過ぎた私に
バランスを与えてくれたから、
そういう意味では非常に良かった。
しかし、そのバランスが
ポジティブの方向へ行きすぎると、
それもまた、弊害となる。
中野先生が仰る通り、
人間には心の闇があり、
暗い部分もあることが普通だから、
それを全否定して、ポジティブだけしか
見ないことは不自然なことだ。
ポジティブに偏り過ぎれば、
危険信号を見逃すことになり、
そのために、大きなミスや失敗を
してしまうこともあるだろう。
ネガティブであるために、
危険の可能性も見えていて、
慎重に振舞うことができる。
そのお陰で、ミスすることもなく安全でいれる。
ネガティブを受け入れられる人は、
都合の悪いことに耳を塞ぐこともないから、
同じ失敗を繰り返すこともないだろう。
一番健全な心の場所はニュートラルな位置
ではないか? と私は最近、強く思うようになった。
この位置では、ネガティブもあり、
ポジティブもあり、両方がよく見えている。
視野が広くなるので、適切な判断が
できやすくなると考えるのだ。
昔の私のように、超ネガティブ人間には
「もうちょっと、ポジティブな方向へ
移動した方がいいよ」と
ポジティブ心理学を勧めることはよくても、
すべての人にポジティブ心理学を
万能薬のように勧めるのは
問題があるように思える。
要は「バランスが大事だ」と考える。
また、どんなに良いと言われることでも
完璧を目指すのは人の心を病ませる
と覚えておくことも大切だ。
完璧にポジティブ思考をやり通そうとすれば、
心が病んでしまい、メンタル疾患になるだろう。
所詮、人間は不完璧な存在。
そんな人間が完璧でなければいけない、
と完璧に固執すれば、ムリが出る。
一時は上手く行っても、
ずっと上手くいくはずがないのだから、
いつかは心が折れて、
しまいには病んでしまうだろう。
ポジティブ思考は
確かに素晴らしい点もあるが、
これを完璧にしようと思うと、
無理があるから、止めた方がよい。
超ネガティブに傾いた人に、
ポジティブ思考の薬を
適量あげるのはよいけれど、
すべての人に万能薬のように
処方すれば、皆を不幸にするだけだと思う。
大切なのは、ポジティブにも、
ネガティブにも偏り過ぎない
バランスなのだろう。
それから、どんなに良いことでも、
やり過ぎはよくない。
適度にやって、完璧を目指さないことが
心の健康には非常に大切だ
と感じている。
中野先生、役立つお話を
有難うございました。
参考動画:「中野信子 – 私はポジティブ思考主義を嫌います!なぜならコレが理由です!」
(ユーチューブチャンネル 一流びとの思考 Mind of first classより)